「マズいって、ルールー! これはマズいって!」
融合器のアギトは隣に立っている少女、ルーテシアを制止していた
理由は二人の視線の先に居る巨大な召喚虫
地雷王だった
地雷王の見た目は、トラック二台分ほどの大きさのカブトムシといったところである
そんな地雷王の能力は、角からの発電による攻撃と、地震の発生である
つまり、ルーテシアはフォワード陣を生き埋めにしようとしているのだ
それを知ったアギトは、必死にルーテシアを止めようとしているのだ
「下手したら、あいつら死んじゃうかもなんだぞ!?」
「……あいつらなら、この程度じゃ死なない」
アギトの忠告を聞いても、ルーテシアは静かにそう言い返した
「確かに死なないかもしれないけど、レリックケースはどうやって回収すんだよ!」
「……ドクターに頼んで、セイン辺りに回収してもらう」
アギトの言葉にルーテシアがそう返すと、アギトは眉根を上げて
「あんな変態博士を信じちゃいけないって! 口先はいいけど、なにを考えてるかわからないって!」
アギトが声を荒げてそう言った直後、二人の耳に轟音が聞こえた
二人が轟音のした方向に視線を向けると、地雷王の居る場所が沈み込んでいた
「やっちまった……」
その光景を見て、アギトはガックリと肩を落とした
そんなアギトを無視して、ルーテシアは視線を横に向けた
「……ガリューはケガ、大丈夫?」
視線の先には、肩のアーマーが砕けて右側胸部から出血しているガリューの姿があった
やはり、ヴィータの一撃は厳しかったようだ
「……戻っていいよ。アギトが居るから」
ルーテシアがそう言うと、ガリューは恭しく頭を下げて消えた
ガリューが消えたのを確認すると、ルーテシアは視線を地雷王に向けて
「……地雷王も、戻って」
いいよと告げようとした
だが、それより先に地雷王をピンク色の鎖が締め付けた
二人がそれに驚いていると、オレンジ色と青い魔力弾が二人に迫った
二人はそれに気づき、アギトは飛び上がって避けて、ルーテシアは飛び降りる形で避けた
そして、アギトが魔力弾の来た方向に視線を向けると、それぞれデバイスを構えているティアナとマックスが居た
「こんにゃろ!」
アギトは罵りながら、火炎弾を両手で精製して二人に投げつけた
だが、ティアナとマックスの二人は跳ぶことで軽く避けた
そして、ルーテシアが高架橋に着地すると、何かを叩く音と共に黄色い魔力光がルーテシアに迫り、気づけば、胸部にエリオがストラーダを突きつけていた
それを見たルーテシアは、後ろに飛ぼうとしたが
「動くな」
「大人しくしろ」
それは、武と冥夜により未然に防がれた
「ルールー!?」
ルーテシアが捕まったことにアギトが驚いていると、左右をスバルとギンガが挟み込んだ
そして、ゆっくりとした速度でリインが現れて
「ここまでです」
と言いながら、アギトを拘束した
アギトは脱出しようともがいたが、拘束は弛まず、諦めて地面に座った
すると、最後にヴィータが着地して
「子供を虐めてるみてぇで気が進まねーが、公務執行妨害の疑い、その他もろもろで逮捕する」
と宣言した
その頃、とある高層ビルの屋上に二つの人影があった
片方は三つ編みにした茶髪にメガネを掛けていて、もう一人は一房だけ長く伸ばした茶髪が特徴の少女達だった
二人は互いにお揃いのスーツを着ており、胸元にはそれぞれ、XとⅣという文字が刻印されている
「どーう、ディエチちゃん。ちゃんと見えてる?」
メガネを掛けた少女が甘ったるい声で問い掛けると、ディエチと呼ばれた少女は空を見ながら
「ああ……雲も無いし、空気も澄んでる」
と言いながら、遥か遠くを飛んでいる六課のヘリを見つめている
その距離は普通の人間ならば、見えない距離である
すなわち、彼女たちは普通の人間ではないという証拠である
「それで、いいのかい? 撃っちゃって。レリックケースは無事かもしれないけど、マテリアルはどうなるのかわからないよ?」
ディエチがそう言うと、メガネを掛けた少女は手をヒラヒラさせて
「構いやしないわ。それに,ドクターの話の通りなら、今回撃つ砲撃程度は防げる筈だし」
と言った
「了解。それじゃあ、準備を始めるね……」
ディエチはそう言うと、抱えていた巨大なモノから布を剥ぎ取った
姿を表したのは、巨大な砲だった
全長はディエチに匹敵するほど長く、砲身の太さは人の頭が入りそうだった
ディエチがそれを脇に抱えて座り込んだ時、メガネを掛けた少女の前にウィンドウが開いた
そこに映っているのは、スカリエッティ一味の一人、ウーノだった
『クアットロ、準備は大丈夫かしら?』
ウーノが問い掛けると、メガネの少女
クアットロはメガネを押し上げて
「あら~、ウーノ姉様。こちらは大丈夫ですよ~」
と答えた
クアットロの返答を聞いて、ウーノは無表情で頷き
『それは良かったわ。それよりも、ちょっとルーテシアお嬢様を助けて上げてほしいのよ』
ウーノがそう言うと、クアットロは人差し指を顎に当てて
「あ~……そういえば、チビ騎士達に捕まってましたねぇ」
と言ってから、鋭い目つきでウィンドウに視線を向けて
「フォローします?」
と問い掛けた
『お願い』
ウーノからのお願いに、クアットロは無言で頷いてウィンドウを閉じると
《セインちゃーん、聞こえるぅ?》
と、近くの仲間を呼んだ
《あいよ~、クア姉》
答えたのは、地面に潜っているセインである
《こっちから指示を出すわ。お姉さまの言う通りに動いてね~》
《了解~》
クアットロの言葉を聞いて、セインは移動を開始した
そして、クアットロは念話をルーテシアに繋いで
《はぁ~い、ルーお嬢様》
《……クアットロ》
ルーテシアはクアットロからの念話に、軽く驚いていた
なお、ヴィータ達が尋問しているが全て無視している
《なにやらピンチのようで……お邪魔でなければ、クアットロがお手伝いいたします》
《……お願い》
《はぁい、ではお嬢様。今からクアットロの言う通りの言葉を、目の前の赤い騎士に……》
クアットロがそこまで言うと、ルーテシアは視線をヴィータに向けた
《逮捕はいいけど……》
「逮捕はいいけど……」
ルーテシアが喋り出したことに、ヴィータ達は驚いて固まった
《大事なヘリは、放っておいていいの?》
「……大事なヘリは、放っておいていいの?」
ルーテシアが言い終わった直後、クアットロは何かを思い出し
《ああ……ついでに……あなたは、また》
「……助けられないかもね」
ルーテシアのその言葉を聞いて、ヴィータは反射的に視線をヘリが飛んでいった方向へと向けた
同時刻、機動六課ロングアーチ
「っ!? 旧市街地にて、高エネルギー反応を確認!」
「物理破壊型! 推定……オーバーSランク!」
シャーリーとアルトが悲鳴混じりに報告を上げた直後
場所は変わり、旧市街地
「IS、ヘヴィバレル……発射!」
ディエチが抱えていた巨大な砲から、極太の火線が発射された
それはあっという間にヘリに迫り
大きな爆発を起こした
場所は戻って、機動六課ロングアーチ
「……砲撃、ヘリに直撃?」
「そんなはずない! もう一回再捜査!」
「はい!」
アルトが呆然としていると、シャーリーが一喝して指示を出した
ちなみに、千雨と茶々丸は無言でキーボードを高速でタイピングしている
再び場所は変わって、高架橋
「そんな……ヴァイス陸曹が……シャマル先生……」
「ユーノ司書長まで……」
スバル達フォワード陣は呆然としているが、ヴィータは落ち着いていた
「ヴィータ副隊長、どうしてそんなに落ち着いてるんですか!」
冥夜が大声で問い掛けると、ヴィータは嘆息して
「そりゃあ、落ち着くさ……なにせ、あのヘリには、あたしが知る限り、最高峰の結界魔導士が乗ってる」
ヴィータがそう言っている頃、旧市街地
「うっふふのふー。どぉう? 私の完璧な作戦は」
人を小馬鹿にしたようにクアットロが笑うと
「クアットロ、少し黙って」
ディエチは爆発の起きた場所を見て、目を細めた
そして、爆煙の中から翡翠色の障壁に守られて飛んでいるヘリが姿を表した