爆煙の中から、翡翠色の障壁と共に現れたヘリを見て、襲撃者達は固まった
「本気じゃなかったとはいえ……マジ?」
砲撃を行ったディエチは思わず、そう呟いた
そして、ヘリの中では
「やれやれ……いきなり、随分な挨拶だね」
と、ユーノが呟いた
彼、ユーノ・スクライアの総合魔導士ランクはAAである
しかし、この総合ランクというのはその魔導士の絶対的な強さを表してはいない
彼、ユーノが得意としているのは後方支援系の魔法であり、その中でも結界系を最も得意とする所謂、結界魔導士である
更に、彼の最も評価すべき点はそのマルチタスクだろう
彼はデバイスを用いず、同時に複数の魔法を発動することが出来るのだ
その神懸かった技は、彼の職場である無限書庫で遺憾なく発揮されている
この無限書庫というのは、その名の通り無限に広がる書庫である
何時、誰が作ったのはわからないが、なんでも管理局が始まる前から存在しているらしく、有形書籍が乱雑に収納されている
この無限書庫が一部署として活用されるようになったのは、今から十年前に起きた通称《闇の書事件》が理由である
それまでは、現場からは情報は軽視されており、何か大きな事件が起きると対処は後手後手に回るのが多かった
だが、闇の書事件が起きた直後、ユーノが一人で無限書庫の中から重要な文献を発掘し、それを解読
前線で戦っていたメンバーたる、なのはとフェイト。更にクロノに教えたことにより、迅速に解決出来たのだ
なお、この時ユーノは一人で探したが、その時までは十人単位でチームを編成し月単位で探さないといけなかった
だが、ユーノは一人で僅か1ヶ月で有力な情報を探し出したのだ
しかも、闇の書事件の最終決戦時には自ら前線に立ちなのは達を支援
最後には、アルフとシャマルの二人と共同ではあるが、闇の書の闇のコアを衛星軌道まで転送するという離れ業をやってのけている
そして、その後は無限書庫の開拓と部署設立の立役者となり、19才という若さで無限書庫の責任者となった
そんな彼を、同じ結界魔導士は畏敬の念を込めてこう呼ぶ
《翡翠の守護者》と……
閑話休題
そして、予想外の光景だったからか襲撃者達が固まっていたら頭上から数十発に及ぶ魔力弾が迫ってきた
二人はそれに間一髪で気づき、隣のビルの屋上に飛んだ
その直後
「逃がさない!」
「ここで捕まえる!」
フェイトとなのはが着地、二人の頭上に冬也とネギが居た
それを見た二人は、あっという間に飛び出した
「すいませんけど、逃げます!」
「待ちなさい! 公務執行妨害、並びに、殺人未遂の疑いで逮捕します!」
逃げ出した二人を追って、四人は揃って飛んだ
「今日は遠慮します! IS、シルバーカーテン!」
クワットロがそう言うと、二人の姿が四人の視界から消えた
「はやてちゃん!」
「準備OKや!」
なのはの言葉に、はやては杖を高々と掲げて答えた
「了解!」
「反転する!」
はやての言葉を聞いて、四人はその場で後退した
「後退した?」
「なんで?」
四人が後退したことに、二人は首を傾げながら着地して前方に視線を向けた
そこには、はやてが居た
「闇に沈め……デアボリック・エミッショッン!」
はやてが発動した魔法を見て、二人は顔を青ざめた
「広域、空間攻撃!?」
「うそーん!?」
二人が驚愕している間に、はやてが発動した空間魔法は爆発的勢いで広がり、二人に迫った
「「うわぁぁぁぁ!?」」
二人は叫びながら、必死に逃げ出した
その結果、なんとか効果範囲からは逃げられたが、無傷ではなかった
そして、二人が安堵していると
「トライデント……」
「ディバイン……」
「魔法の射手……」
「ブラック……」
二人は四人に包囲されており、しかも四人は砲撃を放とうとしていた
包囲されていることから、二人はどこに逃げようか考えるのに固まっていた
その時
「クワットロ、ディエチ、ジっとしていろ!」
と彼女達にとっては、頼もしい声が聞こえた
その直後
「スマッシャー!」
「バスター!」
「戒めの風矢!」
「インフェルノ!」
四人が魔法を放ち、あっという間に直撃、爆発を起こした
それを見ていたシャーリーは、嬉しそうに
『ビンゴ!』
と言いながら、指を鳴らした
だが
「違う! 避けられた!」
『え?』
なのはの言葉を聞いて、シャーリーはキョトンとした
「当たる直前に救援が入った! 追って!」
『はい!』
フェイトの言葉を聞いて、シャーリー達はすぐさまキーボードを叩き出した
その時、フェイトが
「あれ……冬也さんとネギ君は?」
と二人が居ないことに気づいた
場所は少し離れて、数十秒後
主戦場から少し離れた廃棄都市区画に、突如として三人の姿が現れた
とはいえ、その内二人はディエチとクワットロである
そして、新たに現れた女は二人と同じような服装をしていることから、仲間だと分かる
その女は抱えていた二人を降ろすと、その二人を見下ろして
「さっさと立て、馬鹿者共が」
と吐くように告げた
すると二人は、緊張していたからか大きく息を吐き出して
「トーレ姉さまぁ、助かりましたぁ」
「感謝……」
と感謝していた
そんな二人の言葉を聞いて、トーレと呼ばれた女は腕組みしながら
「まったく……念の為に見にきて正解だった……お嬢達はとっくに脱出済みだ」
と苦言を呈した
トーレが話している間に、二人は立ち上がった
「では、撤退するぞ」
二人が立ったのを確認して、トーレがそう言った直後だった
「逃がすと」
「思いますか?」
いつの間にか、冬也とネギがディエチとクワットロの背後に現れた
二人が現れたことに驚きながらも、三人は振り返ろうとした
だが、それよりも早く
「がっ!?」
「ぐっ!?」
冬也がディエチの頭部を峰で強打し、ネギがクワットロの脇腹に肘打ちを叩き込んでいた
そして、トーレが両手足の武装を展開しようとしたが、一瞬にして冬也は刀を、ネギは杖を突きつけ
「動くな」
「あなた方を捕縛します」
と宣言した
(こいつら、報告にあった民間協力者か!?)
二人を目視したトーレは、予想外の二人の強さに驚愕していた
その報告には、目の前の二人は良いとこS++と表記されていた
だが、二人からにじみ出ている
しかし、それも仕方ないだろう
二人は今までの戦闘で、手加減をしていたのだ
これは、二人の考えだった
相手はおそらく、こちらの情報も容易く手に入れてくるだろう
だったら、迂闊に本気を出すのは危険だと
今回はそれが功を奏したのだ
そして、トーレは素早く視線でクワットロとディエチの状態を確認した
クワットロは脇腹を抑えて痛みに顔を歪ませているが、なんとか動けそうだった
だが、ディエチは近くの廃ビルに体をめり込ませて、意識を失っていた
その二人を助けようにも、冬也とネギの二人に隙が無いために動けない
しかも、そのタイミングで
「見つけた!」
「もう、逃がさない!」
フェイトとなのはが到着
僅かに遅れて、はやて、ヴィータ、当麻の三人がトーレの頭上を抑え
楓、明日菜、刹那の三人が後ろに着地
フォワード陣が包囲するように布陣した
この状況は、如何にトーレとは言えども完全に積みの状態だった
彼女はスカリエッティのメンバーの中では、かなり戦闘力が高いほうである
しかし、いくら彼女でもこの人数相手は分が悪かった
「皆さん、今の内に気絶している人の捕縛を」
「了解」
ネギの頼みを聞いて、気絶していたディエチをティアナがバインドで拘束した
その前にスバルが陣取り、なのはがクワットロへ、フェイトがトーレへと近づいた
まさにその時だった
「ふむ……念の為に残って正解だったな……」
という、男の声が聞こえた
それと同時にフェイトの足下の影から、まるで水の中から出てくるように黒いマントを纏った人物が現れた
しかも現れると同時に、影がまるで刃のように鋭くなりフェイトに伸びた
だが、瞬時に冬也がフェイトを突き飛ばしたことにより、フェイトは難を逃れた
だが彼女の視界に入ったのは、影により左腕が肩から斬り飛ばされ血が吹き出している冬也の姿
しかも、その冬也に対して更に現れた人物が蹴りを放ち、冬也はまるで砲弾のように吹き飛ばされて、廃ビルを三つほど突き抜けて、瓦礫の中に埋まった
「冬也さん!?」
あまりの光景にフェイトは冬也を助けようとしたが、それをネギが遮った
「フェイトさん、動かないでください!」
ネギの叫ぶような声で、フェイトは気づいた
周囲をいつの間にか、黒いマントを被った人物達が包囲していることに
しかも、フェイトは雰囲気で分かった
(この人達……冬也さんと同じくらい強い!)
故に、少しの隙が命取りとなる
(冬也さん……っ!)
フェイトは視線のみで、冬也が吹き飛ばされた方向を見た
だが、冬也が出てくる様子はなかった