「クローン……なんですか?」
ネギが問い掛けると、フェイトは無言で頷いて、正座していたクロノに視線を向けた
視線を向けられた意図を察したのか、クロノは頷いた
そして、フェイトはネギ達に見えやすいようにウィンドウを開いた
そこに表示されていたのは、一組の親子だった
一人はフェイトによく似た、小さい少女だった
「フェイト隊長、この親子は……?」
武が指差しながら問い掛けると、フェイトは悲しげな表情を浮かべながら
「灰色の髪の女性が私の母さんのプレシア・テスタロッサで、小さい女の子がアリシア・テスタロッサ……私の元になった人」
と語った
そして、フェイトは訥々と語り始めた
今から約十数年前、プレシアとアリシアは二人で暮らしていた
プレシアはとある企業で新型の駆動炉の開発に携わっていて、アリシアは一人家で寂しく待っていた
だが、プレシアが帰ってきたら、アリシアは元気よくプレシアを出迎えてくれた
仕事が忙しく、帰りはいつも遅かったが、それでも幸せな日常だった
だがある日、無茶な命令で事故が起きてしまい、アリシアは亡くなってしまった
プレシアはそれを受け入れられず、アリシアを蘇らせようとした
それが、プロジェクト・FATE
クローニングによって作られた個体の脳に、元の個体の記憶を転写するという計画だった
それにより、フェイトは産まれた
産まれた当初、プレシアは喜んだ
アリシアが蘇ったと
だが日を重ねる毎に、プレシアはフェイトに違和感を感じた
利き腕の違いや、魔力の量と質
何よりも、アリシアが持っていなかった魔力変換資質だった
そのことを、プレシアは受け入れられなかった
そして、プレシアは産まれたフェイトを使って《P・T事件》を引き起こしたのである
「だから、私は自然に産まれた訳ではないんです……」
フェイトが語り終わると、会議室は沈黙に包まれていた
すると、当麻が頭をボリボリと掻いて
「それがどうしたよ」
と言った
「当麻くん?」
なのはが首を傾げていると、当麻が人差し指を立てて
「前に任務で海鳴に行った時さ、双子の姉妹に会ったろ?」
と問い掛けた
すると、はやてが頷き
「覚えとるで、全身から放電してた姉妹やろ? 確か、御坂美琴と美優ちゃんやったか」
と答えた
「そう……その妹の美優なんだがな……御坂美琴のクローンなんだよ……」
当麻の言葉を聞いて、なのは達は驚愕した
「しかも、一人だけじゃない。他にも約一万近く居るんだよ」
「そんなに居るんか!?」
続いた当麻の言葉に、はやては思わず立ち上がった
「ああ……そのクローンを作ったのは、学園都市なんだがな……」
「一体、なんのために……」
フェイトが呟くが、当麻は覚えてないと首を振って
「だけどよ、あいつらはそれでも生きてるんだよ……クローンだからどうした? クローンでも、一人の人間じゃねえか」
「当麻くん……」
当麻の言葉にフェイトが固まっていると、次にネギが立ち上がって
「冬也さんが人間じゃないって言うなら、僕ももう人間じゃないですよ」
と言った
「どういうことですか?」
カリムが問い掛けると、なのはに視線を向けて
「なのはさんが見せた先ほどの映像……あれは闇の魔法と言いまして、本来は外に放たれる筈の攻撃魔法を自身の体内に取り込んで、魔法の力で体を強化する魔法なんです……でも、適性が合わなければ下手したら、死に至る可能性がありますし、何よりも暴走すれば、闇に捕らわれます」
というネギの説明に、再び会議室は静かになった
「僕は三度の暴走によって、人ではなくなりました……どんな怪我を負っても、死ななくなりました」
「なに……?」
「死ななくなったって……つまりは、不死ですか?」
クロノは驚き、カリムはネギに問い掛けた
カリムからの問い掛けに、ネギは頷いて
「ええ……不老かはまだわかっていませんが、人ではなくなったことは確かです……でも、明日菜さん達は一人の僕として扱ってくれます」
と言うと、ネギはフェイトと冬也に視線を向けて
「だから、産まれや経緯なんて関係ありません。冬也さんは冬也さんで、フェイトさんはフェイトさんです」
と告げた
すると、今度は武が立ち上がって
「そうですよ……俺の居た世界では、遺伝子調整を施されて、人工ESP体が産まれていましたから」
と告げた
「遺伝子調整だと?」
クロノが首を傾げていると、冥夜も武に視線を向けて
「人工ESP体とはなんだ?」
と問い掛けた
「人工ESP体とは、俺と冥夜が関わったオルタネイティブⅣ以前に行われていたオルタネイティブⅢ計画で作られたある意味クローンです」
武はそう説明すると、視線を冥夜に向けて
「そして、霞がその人工ESP体だったんだ」
と説明すると、冥夜は驚愕の表情を浮かべた
「霞が、人工ESP体だと……?」
冥夜の言葉に武は頷き
「霞は人工ESP体の中では最後発だったらしくて、ハイヴに投入される前に第四計画に移行して横浜基地に来たんだ……冥夜はどう思う?」
武が問い掛けると、冥夜は毅然とした態度で
「確かに、産まれには驚いたが、それだけだ。社は社ではないか」
と語った
冥夜の言葉に武は頷くと、冬也に視線を向けて
「隊長、これが俺達の総意です。俺達は隊長を一人の人間だと認識しています」
と宣言した
武の言葉を聞いて、冬也は小さく
「まったく……この世界は優し過ぎる……俺みたいな存在を一人の人間として、認めてくれるとはな……」
と呟いた
すると、夜叉が歩み寄り
「マイスター雪音様も、主達を人として認めていたではないですか」
と告げた
「そうだったな……」
冬也は頷くと、視線を上げて
「人として扱ってもらって、嬉しかったな……忘れていたよ……」
と呟くと、僅かに涙を流した
それを見て、フェイトが歩み寄って
「忘れないでください……私達は、冬也さんを一人の人間として認識してますし、扱います……ですから、生きてください……雪音さんも、冬也さんの生存を望んでいる筈です」
と言うと、冬也の頭を抱き締めた
「だから、生きてください……亡くなった人達の分も、雪音さんの願いと一緒に……」
「ああ……ありがとう……」
フェイトの言葉を聞いて、冬也は微笑みを浮かべた
なお余談ではあるが、フェイトが抱き締めた瞬間にクロノが立ち上がったが、カリムの肘打ちを脇腹に受けて床に沈んだ