「生前の名前……ということは裕也は、死んだのね?」
「ああ……最後は戦争で、敵の大将を刺し貫いたのは覚えているんだがな……気が付いたらな」
ティアナの問い掛けに、裕也はそう答えた
それを聞いて、ティアナは
(人造魔導師計画ね……)
と気づいた
そして
「つまり貴方は、兵士だったと?」
と問い掛けた
しかし裕也は、首を振って
「いや、俺は……生態兵器だった」
と答えた
それを聞いて、ティアナは
「人を殺すための、生態兵器?」
と二度問い掛けた
その問い掛けに、裕也は
「そうだ……効率的に人を殺すために、造り出された」
と言った
それを聞いたティアナは
(冬也さんと、同じか……)
と思った
そして
「そういえば、洞窟に居た犯人達はどうしたのかしら?」
と裕也に問い掛けた
すると、裕也は
「あの洞窟に放置している」
と端的に告げた
時間的には、撃ち込んだスタンバレットはまだ持つ
安堵したティアナは、少し考え始めた
(彼……裕也は、冬也さんと同じ人間兵器……それに、ネギと同種の魔法体系とかなり高度の戦闘技術を有してる……そして何より、その裕也をベースにした人造魔導師計画……管理局に知らせたら、確実に研究所か施設に入れられる……)
本来だったらティアナには、起きたことを詳細に知らせる義務がある
しかしティアナは、直感的に躊躇った
その最たる理由が、裕也の使った魔法技術だった
ネギ達が帰ってから、約一年
ネギ達が居なくなったことにより、その魔法技術を調べる機会を失っていた
中には、ネギを捕まえて実験しようと画策した輩も居たらしい
もし、裕也のことが知られたらどうなるか
JS&R事件後に不正をしていた汚職管理局員が大規模逮捕されたが、未だに残っているのはほぼ確実なのだ
もし、そんな輩に知られたら
そう考えたティアナは
「上司に連絡を取ってもいいかしら?」
と裕也に問い掛けた
すると裕也は
「構わないが」
と言った
それを聞いたティアナは、通信ウインドウを開き
「フェイトさん、今いいですか?」
と呼んだ
すると、私服姿のフェイトが映り
『どうしたの、ティアナ?』
と問い掛けてきた
今フェイトは、産休に入っている
冬也との間に出来た子供だ
妊娠が分かった時、フェイトは嬉しそうにしていた
フェイトはエリオやキャロの母親代わりだったが、妊娠したことにより本当の母親となったのだ
「実は、相談したいことが」
ティアナはそう言うと、裕也のことを言った
それを聞いたフェイトは
『うん……聞いた限りだと、間違いなくネギ君と同種の魔法体系だね。それに、闇の魔法まで使ってるなんて……』
と呟いた
するとティアナは
「闇の魔法?」
と首を傾げた
するとフェイトは、真剣な表情で
『いい、ティアナ。今から話すのは、秘密だからね』
と前置きしてから、闇の魔法のことを説明した
その使い方から効果
そして、リスクについて
すると、それを聞いたティアナは
「つまり……使っていく度に人間ではなくなると……そういうことですか!?」
と驚愕していた
ティアナの言葉を聞いたフェイトは、頷いて
『彼、生態兵器だって言ったんだよね? だったら、自分の命を捨ててるんだと思う……だから、闇の魔法を修得・使用してるんだと思う……』
と言った
それを聞いたティアナが黙っていると、フェイトが
『ティアナ、一つ聞くよ……死にに行こうとする人を、放っておける?』
と問い掛けた
すると、ティアナは
「放っておけません。それに、ようやく分かりました……」
と言って、焚き火の様子を見ている裕也を見た
正確には、絶望に染まっている裕也の目を見た
「彼の目は、あの子供の姿だった冬也さんによく似てます……絶望している目に」
ティアナがそう言うと、フェイトは頷いて
『良かった、そう言ってくれて……じゃあまずは、管理局には隠れていた民間人として連絡』
「その後に、あの違法研究所を見つけたことにする……ですね」
フェイトの提案にティアナは同意するように、そう言った
そして
「その後は……」
『多分、彼はかなりの魔導適性を持ってるはずだから、検査して民間協力者として登録……ティアナが保護して』
フェイトの言葉を聞いて、ティアナは頷いた
そして
「私が保護するんですね?」
と問い掛けた
すると、フェイトは
『うん。聞いた話じゃあ、前衛型。ティアナの補佐って立ち位置にしよう』
と言った
その理由は、ティアナにも分かった
それは、ティアナのポジションに起因する
ティアナの適性ポジションは、中距離から遠距離だ
一応近距離も出来るが、手練れが来たら負ける可能性が高い
しかしそれは、裕也が前衛をすれば解決する
裕也の腕前は、既に把握している
「では、そうします。後で彼と口裏を合わせます」
『うん、そうして。詳細に決まったら、また連絡して』
フェイトのその言葉に頷くと、ティアナは敬礼してから通信を終えた
そして、裕也に視線を向けて
「裕也、少し話があるんだけど」
と裕也を呼んだ
これが、ティアナの右腕的存在との出会いになる