織田信奈の野望 もし小早川隆景に拾われたら?   作:リトマス

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第10話 乱世の家族

隆景と恵瓊は誰もが居なくなったことを確認し、隆景から口火を切った。

 

「恵瓊。ご苦労だった」

「いやいや中々憎まれ役というのも大変です。報酬は期待させてもらいますぞ」

「あとで、父上秘蔵の梅酒をもっていかせよう」

 

 

 

 

 

評定終了後、隆景と良晴は元就に呼び出されていた。傍には見知らぬ少年がいた。

どことなく隆景や元就に似ているような――良晴がそんなことを考えていると、

元就が口を開いた。

 

「隆景どの。先の評定の通り京と尾張に向かってもらう。同盟するかしないかはともかくとしてな」

 

隆景がうなずく。

 

「現在、毛利家は尼子家残党との小康状態じゃから、隆景殿を京に向かわせるのは良い。

随行として反良晴殿派として恵瓊をつけるつもりじゃ。これは後ほど合流させる。だが、この乱世。道中なにがあるかわからん。隆元殿のようにな。だからといってさすがに元春殿まではつけられん。そこで」

「なるほど、そこにいる虫けらをつけると」

「虫けら?」

 

小早川さんしてはだいぶ毒がある言い方だなと、

良晴が思っていると虫けらと呼ばれた少年が前にすっと出てきた。

 

「初めまして、良晴殿。穗井田元清です! よろしくお願いします。ともに 景様の力になるため、頑張りましょう!」

「うるさい、黙れ虫けら」

「はうう。ですが、京に上がるにしても備中の浦上というより宇喜多がどうもキナ臭くて」

「隆景殿の言葉が聞こえなかったか虫けら?」

「は、はい。申し訳ありません。元就さま」

 

元就のその様子にすごすごと引き下がる元清。

その迫力に良晴も思わず息を止めて背筋を伸ばしていた。

これが謀神、毛利元就なのだと。

 

「さて隆景殿。宇喜多じゃが一度会ったことがあるが、どうも胡散臭い。腹の中では何を考えているのかわからん」

 

宇喜多直家。史実において奸悪無限の将とも評される男である。

嫁いだ娘の家族を幾度と殺して乗っ取り、勢力を広げた男である。

もっとも宇喜多直家からすれば毛利元就に言われる筋合いはないぜと、即座に突っ込んでいただろう。

実際隆景が「それは父上が言えることだろうか」と、突っ込んでいた

「はうっ! し、心の臓が。反論しようにも確かに事実じゃからなんとも言えぬ!」

 

元清君への扱いは評定での恵瓊さんとも扱いが違う、何か事情があるのだろうか――。部外者である俺に殿を使う元就さんがなぜこんなにも違うのだろうかと、良晴は疑問を感じながら元清に声を掛けた。

 

 

「元清くん? ええっと、よろしく」

「はい、よろしくお願いします! 良晴殿。それと元清で構いません!」

「でも殿とかは要らないんじゃないかな。俺は小姓なわけで」

「良晴殿、こやつは虫けらのような息子じゃ、遠慮はいらん」

 

心底どうでもよさそうに一瞥すらせずに言う元就。

 

「ってええ?元就さんの息子、でも苗字が」

 

と、そこまで考えて良晴は、小早川さんも吉川さんも苗字が違うなと気づいた。

 

「うむ、そういうことじゃ。側室に産ませた子じゃから」

「元就さまの言う通り、私は虫けらのようなものですから! それに良晴殿は景様が信頼なさっておりますし」

「や、やかましい。瀬戸内に簀巻きにして放り込むぞ って、良晴なぜ笑う!」

「い、いや笑ってないよ」

 

明らかに照れ隠しに感情を露にする小早川さんが可愛くてなんて言えないので、良晴はごまかす他なかった。

 

 

 

 

「良晴、元清のことだが」

「ああ、うん。何か事情があるんだね」

 

そうだ、と隆景が頷いた。

「父上も言ったが、元清は父上が側室に産ませた子なのだ。

後継者争いに巻き込まれないよう養子に出し、虫けらと冷遇しているのだ」

 

そしてこう続けた。

 

「実は父上は友だけではなく、自身の弟も殺しているのだ」

「なんだって!?」

 

良晴は驚いた。三本の矢で家族の話を説いていた元就が、自身の弟を殺していたとは。

 

「父上とは仲の良い兄弟だったが、毛利家の家督相続に不満をもったところで尼子家の支援を受けてな――」

 

なんというか

 

「やるせないな」

 

血を分けた家族同士で争う。歴史上において珍しいことではない。

だからといって平和な時代に生きた良晴にとって、はいそうですかで済ませられることではなかった。

 

「良晴、君は優しい人間だな。」

 

そんな良晴の様子を見て隆景が言った。

 

「実際……父上も悔いているのだろう。だからこそ三本の矢を私たちに、説いたのだろうな」

 

もっとも、既に二本の矢となってしまったが、と隆景は自嘲するように笑った。

いますぐに消えてしまいそうな――そんな雰囲気だった。

小早川さん――。

そんな隆景に良晴はぎゅっと胸が苦しくなった。そして放っておけない、そう痛感した。

 

「小早川さんは隆元さんのことを尊敬していたんだね」

「ああ」

 

毛利隆元さんか。一度会ってみたかったな。そう呟いていた。

 

 

「私も一度、君を兄者に合わせてみたかった。

良晴、君とは出会ってばかりだが、君はきっと兄者と仲良くできただろうな」

 




お久しぶりです
需要があるかわかりませんが、モチベが続く限りまた書きたいと思います

更新停止中の感想もありがとうございます

余談ですが、以前の執筆中は元清も恵瓊も本編にはまだいなかったので、だいぶ動かしやすくなりました(11、12巻が出た直後?)。

恵瓊はそのうち原作と整合性合わせます。もともとそれを見込んではいたので。

小早川さんについて この先の展開でちょっとアンケートです 参考までにどちらか先に見たい小早川さんを教えてください ①凛々しい姫武将小早川さん ② か弱い少女小早川さん

  • ①姫武将小早川さん
  • ②少女小早川さん
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