織田信奈の野望 もし小早川隆景に拾われたら?   作:リトマス

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第14話 蝮救援作戦

今川対策に向かう軍議を向かおうとした最中である。

「なんだか騒がしいな」

「確かに。良晴殿、今川が攻めてきたのでしょうか?」

「いや。何か別のことが起きたように思える」

今川が攻めてきたならもっと騒ぐはずだ。どうも予想外のことが起きたというような

 

 

「別のなにか」

隆景の意見に、良晴は考える。

信勝の粛清、今川の進行直前……このタイミングで起こり得ること……

 

「そうだ。斎藤道三の死だ!」

「斎藤道三……美濃の蝮か」

 

良晴は織田信奈は美濃の道三と同盟を組んでいるはずなんだ、と隆景に教えた。

 

「分かった。ともかく織田信奈のもとに向かおう。今川対策もしなければならない。良晴、今川軍に勝つとしたら桶狭間もしくは田楽狭間だな?」

「うん、俺のゲームの知識ならそうだった」

「分かった。策を考えてみよう」

 

そして良晴の知識は正しかったことが証明された。

 

 

 

木下藤吉郎の配下の忍び蜂須賀五衛門から斎藤道三が謀反を起こされたという情報がはいったのだ。

その数、道三軍の十倍。

 

「信奈様、いかがしますみゃ」

「是非もないわ。援軍は送らないわ。今私が動けば今川が動く。蝮には残念だけど……」

「ですが……」

「くどいわ、猿。斎藤道三から受け取った美濃譲り状があるのよ。これがある限り私たちは岐阜に攻めいる大義名分があるのよ」

 

「織田信奈、織田家と斎藤家は同盟しているとは聞いていたが、譲り状とはどういうことだ?」

 

隆景の言葉に信奈が肩を震わせながら言った。

 

「…………私は蝮の娘を妹に貰ったのよ。だから蝮は義父にあたるの」

だから生前贈与とのことだった。

 

「なるほど、そうなのですね。しかし一国を譲るなんて道三様は信奈様に深い愛情をお持ちなのですね」

「っ!」

 

信奈が元清の言葉に、目を見開いた。

 

あ、あれ。僕変な事言っちゃいました?と元清が慌てていると、

「申し上げます! 美濃から斎藤家の帰蝶様が落ち延びられました」

 

伝令が飛び込んできた。

それに続いて乳母と思わしき女性が少女、おそらく帰蝶を抱いて、斎藤道三は信奈に援軍不要であると信奈に伝えた。

 

「…………とのことよ……。このまま今川対策にうつるわ………」

「姫様よろしいので?」

「万千代、ここで蝮の意見を無視すれば蝮に笑われるわ…………」

 

信奈が道三を助けに行きたいのはその場に居た誰もが分かった。

だが、今川が迫っている今で向かうことは出来ない。そのはずだった。

 

「いや、織田信奈。斎藤道三の救援に向かうべきだ」

「小早川隆景、勘十郎のことでは世話になったけど、今美濃に行けば今川が大挙して攻め込んでくるわ」

「私に策がある」

 

隆景は冷静に言った。

 

「本当なの?」

「ああ。だが、時間がない。もし道三を救うつもりがあるなら、私の指示に従ってもらいたい」

「分かったわ。小早川隆景、あなたに任せるわ」

 

 

 

「諸君。時間が惜しい。真っ先に道三のもとに向かえる部隊はあるか?」

「ワシなら今すぐにでも。川並衆とともに向かえるみゃあ」

 

木下藤吉郎だった。藤吉郎は一報が入ったときから既に出撃準備を進めていたのである。

 

「では木下殿、先に向かってくれ」

「お待ち下さい。小早川殿、藤吉郎殿の川並衆は川賊です。正規の兵ではありませんが、よろしいので?」

 

長秀が意見した。

 

「む、そうか。だが、此度は速度が大事だ。木下殿、直ちに美濃へ向かってくれ」

「はっ」

 

藤吉郎が退出していった。

 

「柴田勝家と織田信奈も準備が出来次第出陣だ。」

 

この発言に織田家臣の中に動揺が拡がった。

「毛利家はやはり主家のっとりを…………」

「元就の娘ならやりかねん…………」

という囁きが評定の場に広がる。

 

つまり織田信奈がいない間に、隆景が今川軍を手引きするのではないかという不安である。

通常であれば彼らの心配は正しい。そういった例も枚挙のいとまがない。

 

「黙りなさい。私も小早川隆景の策が読めたわ。つまり全軍で出撃し、斎藤軍を撤退させるのね?」

 

「ああ、そうだ。道三救援は間に合わないかもしれないが、先行できる木下藤吉郎のあとに柴田勝家と君が行けば斎藤軍は織田本隊がくるとは想定していないだろうから、すぐ引く。

そこから大返しで、この清洲城にもどってくるんだ」

 

とはいえ信用できないだろうから。

 

「元清、織田信奈とともに道三救援に向かってくれ」

 

つまり元清に人質になれと隆景は非情な命令を下した。

 

「はい! 景様の言う通りに」

 

だが、元清は疑うことなく隆景の言に従う。

 

「待て待て!なら俺も行く」

「良晴……」

「元清だけに行かせられない……」

「良晴殿……」

元清は驚いた。この人はこうも簡単に命を張れるのかと。

 

「確かに実戦経験を積むには良い機会かもしれないが……」

 

隆景は不安だった。確かに先発ではないし、柴田勝家、織田信奈がいる。

だが戦場では何があるかわからない。

乱戦になればどんな英傑でさえ死ぬのだから。

 

「小早川さん、今は時間がおしい」

軍師、小早川隆景はその判断を支持した。

 

「分かった……だが、無理はしないようにな」

 

本当に心配してくれているのだろう。言葉の端々から良晴は隆景の優しさが伝わってきた。

ああ、この人は本当に優しい人なのだと。

 

「大丈夫です。景様、私が良晴殿をお守りしますので」

「ああ、元清頼む」

「はい!」

 

 

 

「小早川隆景。それにしてもあの小姓には気を使うのね」

「あ……ああ、彼には期待しているのだ」

 

隆景は信奈に答えながら、心臓が飛び出しそうになっていた。何故、私は今胸がどきっとしたのだろうか。隆景はそんな自分自身の変化に戸惑いを隠せなかった。

 

「ふーん」

 

織田信奈はなんとなくだが、隆景の様子が気に入らなかった。

それが嫉妬であることを彼女はまだ知らない。

 

「こほん、織田信奈、尾張の全域の地形に詳しいものはいるか? 今川対応を立てる」

「万千代!」

「はい」

丹羽長秀

「丹羽殿、頼みたいことがある」

とはいえ寡兵で勝つには限られるが……。

 

勝家から全軍出撃可であることが伝えられた信奈は全軍をもって出陣した。

 

 

 

信奈たちとともに出陣した良晴は初めて乗る馬に戸惑っていた。

 

「こ、これが馬!」

 

元清の腹に腕を回し、必死にしがみつく。

悲鳴をあげなかったのは男としてのプライドだった。

 

「ははは。良晴殿、そんなに力を入れずとも大丈夫です」

「だからといって乗馬の経験は俺には……おおっ!?」

 

がくがくと揺られながらだんだんとペースが分かってきた。

 

「なあ元清」

良晴にはどうしても聞きたいことがあった。それは

「はい?」

「どうして君は小早川さんを応援しているんだ?」

「良晴殿。初めて出会ったときに父上から私が虫けら呼ばわりされていましたよね」

「ああ。だけどそれは……」

「はい。父上が私を虫けら扱いしている理由はわかっています。後継者争いに巻き込ませないためですよね?」

「元清……」

 

元清も知っていたようだ。

 

「ですが、私はどうしても辛くて、悲しくて。一人で泣いていた時、景様が虫けらではなくちゃんと名前を呼んで炮烙焼きを下さったのです。

「元清、ほら炮烙焼きだ。食え」と。

その優しさに、ますます泣いてしまいました。景様はそんな私を見て慌ててながらも、慰めてくださいました。私は景様に救っていただいたのです。もし景様に救っていただけなければ、生きるのをあきらめてしまっていたでしょう」

「元清……」

 

良晴は自分よりも小さく、実の父親から虫けら扱いされてきた少年になんと声をかければ良いか悩んだ。今の彼が求めているのは同情ではない。

であれば――

 

「元清、君は立派だ。」

「良晴殿?」

「俺だったらとてもじゃないけど耐えられない。よく頑張った」

「良晴殿……ありがとうございます!」

 

元清は隆景が信頼しているからという理由以外で、良晴に親愛の念を抱いた。

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