織田信奈の野望 もし小早川隆景に拾われたら?   作:リトマス

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第11話 京へ

「小早川さんは隆元さんのことを尊敬していたんだね」

「ああ」

 

毛利隆元さんか。一度会ってみたかったな。そう呟いていた。

 

「私も一度、君を兄者に合わせてみたかった。良晴、君とは出会ってばかりだが、君はきっと兄者と仲良くできただろうな」

 

 

 

 

良晴は隆景、元清、武吉、武吉配下の海賊とともに京へと向った。

 

道中の船中では、隆景つきの小姓である良晴も容赦なくこき使われた。

甲板の掃除や食糧確保といった慣れないことばかりで、良晴にとっては大変であったが、それ以上に海賊の連中は気が良くて居心地がよかった。

 

「おう、なかなか櫂捌きの筋があるじゃねえか」

「あれにみっともなく喚かずに立ち向かったんだってな」

「そら小早川のお嬢が見込むわけだぜ」

 

海賊の儀式をやったことで気に入られたようだった。

京につく頃にはすっかり海賊たちとなじんでいた。

 

 

 

 

「これが京都……」

たどり着いた京は荒れ果てていた。

道路は窪み、家屋は半壊し、焼けた匂い、そして死体が野ざらしとなっていた。

良晴は死体から思わず目を背けた。

 

「応仁の乱で京は荒れ果ててしまいましたからね」

「良晴、元清とともに朝廷に献上する金を運んでくれるか?」

「分かった」

「分かりました!」

 

時代が違うせいもあるけど、なんというか……。

良晴は自分が知る京都とは違い、禍々しく思えた。

 

 

 

「これはこれは毛利どの。かたじけないでごじゃる。任官や調停にて報いようぞ」

「はっ、ありがたき幸せ」

 

隆景たちを迎えたのは関白近衛先久であった。

 

朝廷が献金をありがたがるのは、やはり応仁の乱が原因であった。

なにしろ10年近く京都で争いあったのである。

将軍家の権威はもちろん朝廷もその力を失っていた。

史実においても正親町天皇《おおぎまちてんのう》は毛利元就の献金にて即位三年後にようやく行う、内裏の修繕を織田信長が行うなど朝廷は力を失っていた。

 

端的に言えば自分たちの家を修理するお金すらなかったのである。

それほど朝廷は困窮していた。

 

「疲労が見えるでおじゃるな」

 

近衛先久以外が退出したのを見計い、先久が話しかけてきた。

 

「はい、凄く疲れた」

「同じくです」

 

良晴と元清は慣れない貴族たちとの会話に疲れ切っていた。

 

「ほほほ、麻呂も武家の気持ちはわかるつもりでおじゃる。長尾景虎、いまは上杉謙信とともに関東に下っておったからの。上杉謙信の元、早く戦乱を沈めたかったのおじゃるが……」

 

関白、近衛先久。

見た目こそ貴族然として貴族であるが観応の擾乱※1、享徳の乱※2と長尾景春の乱※3で動乱する関東に、上杉謙信とともに朝廷の威光回復のため関東平定を目指したこともある武闘派である。

 

※1 観応の擾乱――室町幕府創始者である足利尊氏とその弟足利直義兄弟、そして執権の高師直の間で起きた争い。

※2 京徳の乱――関東で起きた鎌倉公方※4の足利氏と関東管領※5の上杉氏の争い。後述の長尾景春の乱もあり、結果的に30年近く関東では戦乱が続いた。

※3 長尾景春の乱――関東管領上杉氏の家宰(実力者)であった長尾氏の家督争いに発端する騒乱。京徳の乱の最中に景春が反乱を起こしたため、上杉氏は最前線拠点かつ中心地である五十子陣を失う等大打撃を受けた。

※4 鎌倉公方――室町幕府の代理人。

※5 関東管領――鎌倉公方の補佐。

 

「もっとも太田道灌が生きていたら、こんな苦労はしなかったのじゃがな」

「太田道灌?」

 

と、元清。

 

「太田道灌。八面六臂の活躍をした名将だな。いまの太田家は太田三楽斎が継いでいるかな」

 

良晴の発言に隆景と元清が感嘆の声をあげた。

元清はともかく隆景は太田道灌の名こそ知っていたが、現当主である太田三楽斎の名まではさすがに知らなかったのだ。

 

太田道灌。京徳の乱、そして長尾景春の乱を一人で解決し、30年近く戦乱の続いた関東に平和を取り戻した英雄である。

 

だが、乱の終結後に上杉氏にその活躍を疎まれて暗殺されてしまったのである。

道灌が暗殺された結果ようやく戦乱が収まりかけた関東は時代が逆戻りし、現在まで戦乱が続くこととなった。

 

「お主、見てくれと口調は良くないし、教養もないように見えるが、若いのに太田道灌を知っているのは博識であるな。しかも太田三楽斎の名まで」

「いやまあちょっと」

 

未来から来たなど関白の前ではさすがに言えなかった。

 

「ふむ、おぬし名をなんと申す」

「はい、相良良晴です」

「冴えない顔じゃが、覚えておこう」

 

 

 

 

「良晴。君は凄いな」

「良晴殿すごいですよ」

「へ?」

 

朝廷を後にした後に隆景と元清が揃ってそんな声をかけた。

 

「関白殿下はご機嫌であった」

「名を覚えられるなんて」

 

近衛先久の機嫌がよかったのは、懐かしい関東の話が出来たせいである。

 

「やはり未来の知識というものか?」

「ああうん、太田道灌と太田三楽斎は芸無でちょっとね」

統率、武勇、知略、政治万能の人なんだ。

「未来にはそのようなものが。だから私のことも」

知っていたのか?

と隆景。

 

「うん。俺はゲームが好きである程度この時代のことを知っているんだ。

もちろん小早川さんも名将としてその名を刻んでいるよ」

「そ、そうか」

 

真正面から褒められた隆景は照れ照れだった。

 

「景様、顔が赤いですよ? 大丈夫ですか?」

「う、うるさい。虫けら。」

「景様の照れ隠しの虫けらが出ました。ありがとうございます! ところで良晴殿、私はどうなのでしょうか?」

「元清? 元清はうーん……」

 

あれ元清の能力はどうだったかな……。うーん……あんまり記憶にない。だからといって素直に覚えていないっていうのも傷つけるし……うーん……

と良晴が悩んでいると

 

「良晴、応える必要はないぞ。虫けら自身に努力させなければならないのだから」

「うう、粉骨砕身、景様の力になれるように努力しますね」

 

そんな扱いをされながら穗井田元清はどこまでも隆景に献身的だった。

 

 

 




観応の擾乱、上杉禅秀の乱、享徳の乱、長尾景春の乱とか話し出すと長くなるので超概要のみでなるべくわかりやすく書いたつもりですが、難しい気がする

まあ、本編とはあまり関係がない話ではあるのですが、つい筆が乗ってしまいました。

次回はようやく織田家にいけるかと。

先日気づきましたが、春日みかげ先生がなろうで学園信奈の続きを書いてくださっていて、ありがたい限りです
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