「もし小早川隆景が祝言を挙げていたら」というIFものです。
久しぶりに信奈を読んだら小早川さん可愛すぎか???
と思ったので、慣らしを兼ねて書きました
およそ三年ぶりの投稿、書くのは5年ぶりとなりますので、稚拙な文章となりますが良ければどうぞ
――安芸国厳島神社
「父上も側室をもっていたが
恋したおのこと、良晴と祝言を迎えることが出来るなど夢のようだ」
相良良晴と小早川隆景は祝言を挙げた。
公正明大にして無私の人が報われた瞬間であった。
「小早川隆景だけだからね!!」
不承不詳ながら織田信奈は自身の最強にして最大の恋敵の側室入りを認めた。
本当に不承不詳ながら。
まさか僚友たる明智光秀をも越える恋敵が現れるとは。
まあ光秀と違い、隆景は一歩引けるからこそ側室として妥協したのもある。
側室同盟、大奥では止める側にたっていたのも大きい。
なにより苛烈すぎる自身に対して、鈴である小早川隆景が必要なのは信奈自身も理解していた。
「うう~まあしょうがない……でも……うう!」
くれぐれも妥協しただけであり、心からの納得はしていないが。
良晴と隆景。良晴が記憶を失っていたとはいえ間違いなく互いに恋に落ちた二人である。
信奈と恋仲であった良晴を奪った隆景は下手をすれば泥棒猫と言われかねなかったが、隆景の公正さと無私さが謗りの声があがることはなかった。
隆景自身、木津川口の戦いでは記憶を取り戻した彼を慮り身を引いており、その後も事前祝言や小田原、十字軍や本能寺で信奈と良晴のサポートに回っていたのも大きかった。
むしろ隆景がいなければうまく回らなかったであろう。
その代わり我らが良晴に対してはエロ猿といった声はあがったがそれは些細なことであろう。
陪臣でありながら実質的な毛利家の指導者として幼い後継者を支えてきた小早川隆景。
関ヶ原で想い人たる良晴を救おうとしたところを宇喜多直家に裏切られた過去がある彼女に対し、彼女が報われてほしいという世間の声は大きかった。
足利将軍が無造作にばらまいた手紙の中に、良晴に想いを寄せる姫たちの中で一歩引いている隆景の様子が書いてあり、どうか今明石の君を幸せになってほしいとという世間の声も大きかった。
また各姫武将たちも
「わたしも御館の乱で迷惑かけちゃったしね」
「まあ謙信がいうなら」
「納得いかないですぅ! というかなぜこの位置なんですか!本能寺で汚名を被った十兵衛に何かあっても良いのでは!?」
「まあ、私は独占欲は薄いし。毛利とやりあった道雪がうるさいかもだけど。ねえ宗茂?」
「ええ。ですが、姉様として尊敬する小早川様が報われるのであれば」
「まあ良いんではなか。あんな表情見せられたら叶わん」
「家久に同感だ。うう、でも私もいえなんでも」
「ああ~殿が毛利と。くっ、これはこれで新たなものに目覚め…」
一部の不満を除けば概ね賛成多数であった。違う意味で喜んでいるのもいたが。
とはいえ嫉妬深い信奈が隆景の側室入りを容認したのは、この二人が信奈を説得したのが大きかった。
「まあいいじゃないですか。サルくんや小早川様には姉上や私を一度ならず救ってもらっています」
「信奈。夫も側をもっていましたし、信澄の言う通り本能寺では小早川様に救っていただきました」
信奈の実弟信澄、実母土田御前である。
特に本能寺では織田家全滅ということもありえただけに信奈に反論の余地はなかった。
「よ、良晴。今さらだが、ほ、本当に私でよいのか?」
むしろこうした声を受けた隆景のほうが一歩引いていた。
「良いんだ。小早川さん。むしろごめん」
「ううん。私はこうして良晴と祝言を上げられただけで私は」
幸せだと、隆景は目を閉じた。
どこまでも謙虚であった。
「良かったのおおおお」
「うむうむ、これも将軍様の威光じゃ」
「よし、これで少しはお尻ぺんぺんされなくなる」
「隆景様、本当に良かった……元清様?わあっ……大丈夫ですか?」
「……」
吉川元春、足利将軍、三代目輝元、恵瓊の喜びもひとしおだ。元清にいたっては喜びのあまり失神していた。
いや、三代目の喜びは間違ってるかもしれないが。
相良軍団もまた
「兄上お幸せに。でもなんかむかつくのはなぜ?」
「人の兄くんに手を出すとはおのれ人面獣心なり三年のうちに祟りをなさん……と言いたいけど、小早川様は決してそんな人ではないのよね……はあ……」
「まあまあお二人とも。今日はお祝いの席ですよ」
一番幼い宇喜多秀家に窘められる石田と大谷。
「兄様、主君である信奈さまに加えて小早川様とも祝言をあげるとは女好きでありますな。小早川様は兄様にはもったいない人、ちゃんと幸せにするのですぞ」
「兄貴おめでとうございます!」
「お兄ちゃんめでたいっす!!」
ねね、加藤、福島は彼女たちは隆景と仲が良いのもあり、純粋に祝っていた。
なお外様大名でこの祝言を一番喜んでいたのは鍋島直茂である。
家久を応援していた彼女ではあるが、もともとは隆景の身の上を義昭がばらまいた手紙で知ったのがきっかけである。
そこに加えて自身の兄への悲恋もあり、訴えるものがあったようで「報われてよかった」と喜んでいた。
「さあ次は家久ね」
「みゃあ」
「くすんくすん。良晴さん、小早川様。わ、私も知恵者なのでま、末席に……」
「半兵衛を嫁にやれるか。半兵衛は第一信奈に対して鈴になれないだろう」
「そ、そんなことはないです。ちゃんと鈴になれます」
「本当か~?」
「くすんくすん。いじわるです」
軍師コンビは変わらずであった。
「や、やっぱりだめええ!!」と信奈が乱入し、「ええい、往生際の悪い。一度認めたからには観念せい」と吉川元春らによって止められていたことを除けばつつがなく進んだ。
「小早川のお嬢!隆元や元就も喜んでいるぜ」
「武吉……そうだな」
父上、兄者……。見ていますか?
「そうじゃそうじゃ」
吉川元春もやってきていた。視界の脇には土田御前に説教されている織田信奈の姿があった。どうやら元春が土田御前に信奈を引き渡してきたらしかった。
良晴はその信奈の姿に「おお、信奈が殊勝に怒られている」と感動を覚えていた。口に出すと怒られるので、決して口には出さないが。
「姉者……姉者もこれ以上腐らんようにな」
「ななな! い、言うにことかいて今それを言うけ?」
隆景はその言葉にふふっと笑い
「姉者ありがとう。あの時、木津川口で負けた時に姉者が諦めるなと言ってくれたおかげで今がある」
実姉に対してこれまでの感謝を伝えた。
「吉川さん。俺からもお礼を言わせてくれ。毛利家では良くしてもらった。あの半年間は本当に楽しかった」
「むむむ。お、おどれら。む、むずがゆいぞ。な、何を笑っておる! 良晴、妹を泣かせたら承知せんぞ」
言い残して元春は退散した。その顔は真っ赤であった。
「吉川さんは良いお姉さんだな」
「ああ」
こてんと隆景は良晴の肩に頭を乗せた。
「小早川さん?」
「良晴。私はいまとても幸せだ」
愛しています。私の旦那様と、隆景はおのが伴侶に向けて満面の笑みを送った。
小早川さん強すぎてつい書いてしまいました。
一部ん?となるところがありますが史実ネタです。
具体的には石田、大谷、立花、加藤、福島です。
石田と大谷は関ヶ原での小早川秀秋に向けての、宗茂は隆景に向けての。
宗茂は正確には義父ですが信奈世界では隆景と母子ほど離れてるようには見えなかったので。
加藤、福島は隆景とともに文禄の役に従軍しているので。