織田信奈の野望 もし小早川隆景に拾われたら?   作:リトマス

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第7話 ブレイクタイム

「隆景は儂の血をいちばん濃くついでくれた。既に隆元は死に、輝元はまだ幼い。元春は智がからっきしじゃ。儂は儂の死後、毛利を背負うことになる隆景が心配なのじゃ。良晴殿。隆景……いや徳寿丸の友達になってやってくれんか」

 

そこに謀将毛利元就の姿はなかった。居るのは家族を慮る父親だった。

良晴は是非もなかった。

そう。俺は小早川さんの力になると決めたのだから。

 

「俺は小早川さんの力になると決めました。その言葉に嘘偽りはありません」

「良晴どのありがとう」

 

そういって元就は頭を下げた。

 

 

 

 

 

「さて話はこれで終わりじゃ。二人とも下がってよい」

「うむ。失礼する父上」

「それはそうと隆景どの。あとで、久しぶりに父娘水入らずに話など」

「断る」

 

即答だった。

 

「た、たかかげどのぉ~」

「説教でしかも長い上にくどい話など、私は聞きたくない」

「うう~」

「こ、小早川さんちょっと可愛そうじゃないかな」

 

良晴が元就に助け舟を出す。いい歳した爺さんが、娘に泣きつく様はあまりにもあまりにもの光景だったからだ。

元就は良晴の助け舟にぱあっと顔を輝かせた。この爺さんそんなに父娘での会話に飢えてたらしい。

 

「むぅ……はあ。仕方ない父上。たまにはつきあってやろう」

「!! 隆景どの!!」

 

元就の目がキラキラしたものになった。それを見て隆景は、はあとため息をついた。

全くいい年になってこの父は……。

 

「目下の用件は済んだ。父上、失礼する。良晴行くぞ」

 

隆景は息つく暇を与えず、元就に背を向けた。

 

「え、あっ、小早川さん。ちょっ、そんな強く裾ひっぱらないでっ! 自分で歩けるからっ」

 

どこにこんな力があるのかと思う少女の細腕に、ずるずると良晴は引きずられていく。

そんな良晴に元就が声をかけた。

 

 

「良晴どの。ありがとう」

 

 

それは何に対してなのか、良晴には分かった。さっきの助け舟のことではない。良晴はあえて言葉にせず、うなずくことで返した。

もっとも、隆景に引きずられてるせいで、返事が出来なかっただけかもしれなかったが。

 

 

 

 

 

 

「父上は厳島で友を討ったのをまだ悔いていたのだな」

 

元就と話を終え、自室に戻ってきた隆景がつぶやいた。

 

「小早川さん……」

「すまない良晴。つい弱音を吐いてしまった」

 

バツの悪そうな顔をして隆景が謝ってきた。

 

「あ、謝らなくていいよ小早川さん。それに元就さんがあんな風に言ったのは、自分の後悔を小早川さんたちにさせたくないからだと思う」

「良晴……」

 

ぐ~。

不意にそんな音が鳴った。良晴の腹からだった。

 

「良晴?」

(うう……なんてタイミングでなるんだ。そりゃ何も食べてないけれど、タイミングってものが)

良晴が顔が熱いのが分かった。

 

「ふふふ」

 

見れば隆景が笑っていた。

(まあ、良いか。小早川さんが笑ってくれたし)

 

 

 

 

「さて良晴、何か食べたいものはあるか?」

 

良晴と隆景は城下町に来ていた。城で食べないのは、隆景の部下に紹介していないからだ。良晴を召し抱えることについて、元就の了解を得たとはいえ、男嫌いとして有名な隆景がおおっぴらに城の中で良晴と行動を共にするのは避けるべきという判断からだ。

 

「こばやか……じゃなかった徳さん」

「なんだ良晴」

 

越後のちりめん問屋……ではなく、安芸のちりめん問屋のお嬢「徳」となったた隆景が応える。

 

「こばやか……徳は何か食べたいものはある? まだ来たばっかりでいまいち分からないんだ」

「そうだな。良晴の時代にも残っているか分からないが、お好み焼きはどうだ?」

「ばっちし俺の時代に時代にも残ってるよ。」

「そうかではいってみよう。なじみの店があるんだ」

 

 

 

「んん!!美味い美味いよ。こばやか……『じー』徳さん。具は豚、キャベツ、とろろ、卵――そしてそば。本当に広島風のお好み焼きだ……」

「そうかそれは良かった」

 

言葉自体はそっけないものの、安心した表情の隆景。

はふはふと食べ進む良晴。緊張から解放されたせいだろう。その勢いは海賊衆にも劣るとも勝らないほどだった。

 

「待て、良晴」

 

食べ進む良晴に隆景が待ったをかけた。

 

「え?」

 

驚く良晴に隆景が近づく。

 

「良晴、そのまま動くな」

「え、ああ、うん」

(小早川さんの瞳ほんと綺麗だよなあ。って小早川さん近い近すぎるよ)

 

まるでキスするかのような距離まで隆景が近づいてきた。

 

「よし、とれたぞ。ってどうした良晴? 顔が赤いぞ?」

「こばやか……徳さんその……顔が近い……」

「っ!?」

 

良晴の言葉で気づいたのだろう。はっとして、隆景は良晴から離れた。

 

「す、すまない良晴」

「い、いやこちらこそ!」

 

油とソースの匂いがあふれる中でも漂う甘い雰囲気に、周りがやたらと暑そうにしているのに、終ぞ二人が気づくことはなかった。

 

 

 




時代背景と原作背景を考えなくてはいけないこういう日常シーン書くのが結構大変です。そしてキャベツは江戸時代になってから入ってきたらしいです。リトマスです。

いちゃいちゃはとても難しい。甘く感じてくれる人がいるといいなあ。


後半のお好み焼きで日常シーンを少しだけ書く予定が、何故かいちゃいちゃ?シーンが増えて、自分でもびっくりしています。当初なら油とソースでへったくれもないとかそういうギャグにするつもりだったのに。

一応プロットはありますが、ほぼ勢いで書いているのが原因ですね?


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