織田信奈の野望 もし小早川隆景に拾われたら?   作:リトマス

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第9話 謀略家たちの宴

それは隆景が皆の前で良晴を正規の小姓とする前のこと。

良晴が元就に認められた日の夜。

「父上」

元就の自室に隆景がやってきていた。

「おうおう隆景どの。では昼に約束した久しぶりに父と娘で水入らずの会話など」

「父上、ふざけるのなら私は帰る」

「ちょ、ちょっと待つのじゃ隆景どの。今のは冗談じゃ冗談」

 

本当に帰りそうな隆景に、元就は慌てて引き留めにかかる。

(全く元春といい隆景といい、老人に対する扱いがひどくないかの)

元就はそう内心でごちるが娘たちからすれば、普段の元就の長くて説教くさい話が原因だったりする。

 

「では父上さっさと本題を話せ」

「いや、まだ一人来ておらぬ。にしても隆景どの。何故儂がふざけていると分かったのじゃ?」

「父上……そこまで耄碌したのか。だいたい水いらずで会話するなら、私だけではなく、姉者も呼ぶだろう」

「ははは。謀将と名高い元就様でも、娘の前では形無しですな」

 

現れたのは安国寺恵瓊だった。

 

「来たか。恵瓊」

「はい。少々遅れてしまったようで」

「それで父上、私だけではなく、恵瓊まで集めていったいなんの話だ?」

さっさと話せと、隆景は元就に迫る。元就の話は長くなりがちなのだ。

「う、うむ、良晴どののことだ」

「良晴がどうかしたのか?」

「た、隆景どのそう睨まんでくれんか?」

娘の視線にたじたじとなる元就。

 

「隆景どの。既に先ほど文で、良晴どのの言う毛利家の未来については了解した」

「まどろっこしい。結論から話せ」

「た、隆景どの……」

「くっくっく」

 

にべもない隆景のいいように、恵瓊が思わず笑いを漏らした。

日本史に残る謀将も愛娘の前では単なる父にしか過ぎないようだ。

 

「う、うむ。結論から話すと隆景どのと良晴どので、まず京へ。そして織田家との同盟を組むため尾張へ向かってもらいたい」

「父上、それはつまり織田家と同盟を結び、織田家の元で天下を治めるということか?」

「そうじゃ。可能ならそのまま天下を攫ってしまっても良い。あくまで可能ならじゃがな。もっとも、まずは今川に織田が勝てればの話じゃがな」

 

元就としては織田家と同盟を結ぶことには抵抗はなかった。勿論、良晴の未来の情報を全部信じたからというわけではない。今川家によって滅亡へのカウントダウンが始まっている織田家が天下を取れるとは思っていない。どちらかといえば、もしもの可能性である。もしも織田家が天下を取れるのならば――というあたりだった。加えて――

 

(それに上方の信頼出来る情報も欲しいと思っていたころだったからの)

 

いずれにせよ今の織田家からすれば、勝手に期待されてるだけなのだが、信奈たちはそれを知る由はなかった。

もっとも、信奈ならそんなことするくらいなら兵の一人や二人でも寄越せと言うだろうが。

 

「了解した。だが、いきなり私が新参の良晴と共に京へ上るとなれば、家臣たちから反対が起きるだろう。それについては、なるほどそのための恵瓊というわけだな」

「はい。拙僧が、隆景さまの憎まれ役を担当させていただきます」

 

言葉こそ殊勝だが、多少のふてぶてしさが残るのは、この坊さんの人柄ゆえか。

安国寺恵瓊。毛利家の重臣だが、坊さんにしてはやや野心が強く、それが原因で家臣の中では少々嫌われている存在である。もっとも外交僧としての手腕は元就や隆元、隆景が認めるほどの能力を持っているため、重臣の中でも特に重臣と言える人物の一人である。

 

「流れとしてはこうじゃ。まず儂が隆景どのに良晴どのの小姓とし、京へ上らせることを家臣の中で反対意見を恵瓊に担当してもらう。そうすれば良晴どのの素性に関しては、儂が一言言えば文句は出ないじゃろう。どうせまた儂が悪だくみしていると思われるだけだし……うう」

 

「いや、父上。私が言いだそう。幾ら今毛利家が平穏とはいえ、いやだからこそいたずらに父上の信用を下げるような真似は避けるべきだ。ただでさえ父上は信用が薄いのだから余計にだ」

 

「同感ですな。それと元就様、いくら元就様の言葉とはいえ、少々説得力が欠けるかと思います。良晴どのとやらはまだ実績を挙げてはいないのでしょう?」

 

「恵瓊はそもそも良晴の話を信用しているのか?」

「正直、拙僧とすれば信じがたい話ですな」

 

恵瓊の反応こそ当然と言えた。知り合いが未来からやってきたという人を連れ立って来て、その言葉にはいそうですかと頷けるだろうか。

 

「ですが、それはそれとして託された仕事は果たしてみませましょう」

 

元々毛利と敵対した外部の人間ということ、胡散臭さもあり――というより主に後者が原因で憎まれがちな恵瓊だからこそ出来るという仕事もあるのもまた事実である。

 

またそれが原因で武人気質な者たちから余計な反感を買っているのは悪循環としか言えないが、恵瓊本人が気にしない図太さがあった。

もっともそうでなければ外交という魑魅魍魎が住む世界で生きてはいけないだろうが。

 

「話はまとまったようじゃな。ではこれにて解散じゃ。下がってよいぞ」

 

元就の言葉で二人は下がった。

 

 

「さて悪巧みをするとしようかの」




本当にお久しぶりです
PCのファイルを整理してたら書きかけの次話があり、お恥ずかしながら加筆し投稿してみました 

以前あったはずのgdgdなプロット、知識・資料その他色々を紛失し、本当にわけわからん状態ですが、本当にゆっくりとですが続きを書けたらいいなあ


ただこの予約投稿がされているときはたぶんエターかと
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