「はぁ・・・。」
「ヘーイ陸奥!どうしたデース?浮かない顔してるネー。」
・・・貴女が能天気すぎるんじゃないかしら。
「ため息も出るわよ・・・。棲姫・・・奴が鎮守府に居るのよ?」
金剛は、あ!と声を上げた。
「まさか忘れていたの?!貴女が曳航して来たんじゃない!まったくもう!」
「忘れてなんかいないデース!あのコの武装はカクゴがぜーんぶ壊したネ。ノープロブレムネ!」
・・・だといいけどね。
棲姫。私たちの敵。
そして
姐さんは決して認めないけれど、恐らく私たちにとっては・・・
「ッ!?」
「what's !?」
鎮守府に振動が走った。
「shit!また爆撃ネ!」
いや違う!この振動は建物の内部からだ!
・・・まさか!
「金剛!最低限の艤装でいいわ!すぐに装備して地下牢に向かって!私は先に行くわ!」
「っ!?カクゴとナガモンが危ないネ!」
金剛もすぐに事態に気づいてくれたみたい。勢いよくドックへ走っていった。
そう。
いま姐さんと覚悟くんは、棲姫の尋問をしているハズ。
2人とも非武装だった。
・・・そしてこれは私だけが知っていることだけれど。
–〝奴ら〟の武装は無尽蔵だ。まるでそこに初めから置いてあったかのように、何もない空間から武器を呼び出す。原理は分からないけれど・・・
2人とも、無事でいて・・・。
ーーー
爆煙が私の視界を塞いでいた。
地面には地下牢の破片が散乱している。
・・・目は大丈夫だ!しかし耳が利かない!彼は!葉隠殿はどうなった!?
無事とはとても思えない。至近距離からの砲撃、それも近代兵器すら穿つ悪魔の砲撃をまともに受けたのだ。
ゆっくりと視界が開けた時、最初に見たものは、驚愕と恐怖の表情を浮かべた〝奴〟だった。
「ッ!貴様ああぁ!」
私は拳を〝奴〟の鼻柱に叩きこむ。
激しく吹き飛び、剥き出しのコンクリートの壁に体をめり込ませた〝奴〟は、それでも私を見ることは無かった。
〝奴〟の視線を追う。
〝奴〟の視線の先には、首から上を鋼鉄に変容させた彼がいた。
砲弾が直撃したであろう額に浮かび上がる『七生』の文字。頭髪すらも鋼鉄と化している。
鋼鉄が彼の中に溶けるように消えてゆく。
「葉隠殿無事か!?」
発言してから、我ながらなんとも間抜けな問いかけをしたものだと恥じる。しかし、
「仔細問題ない。我が肉体に不当な攻撃は通じぬ。」
彼は一切動揺せずに答える。
「悪姫。」
〝奴〟はびくりと体を震わせる。
私の拳を受け鼻血を流し、涙を浮かべた顔で彼を見る。
「囚われの身と成りてもなお、自ら大義を果たそうとする気概、見事なり。しかし、今の貴様に俺を討つことは出来ぬ。」
–・・・コロセ
〝奴〟が怒りと悲しみと無念を滲ませ唸る。
「拒否する。貴様はこのまま海へ放逐する。」
–ッ!?
〝奴〟が目を見開く。
そして私は耳を疑った。
放逐?敵を?
あり得ない!今ここで〝奴〟を逃しては、また我々の脅威として立ちはだかる!力なき人々の命が危険に晒される!
「葉隠殿、それは無理だ!〝これ〟はここで〝処分〟する!」
私は再び拳を握る。次はない。今ここで、〝これ〟息の根を止める!
「長門殿。」
彼の手が私の拳を優しく、しかし絶対的な意思を持って包む。
「ッ!葉隠殿!?」
彼を睨む。
今の私の目は怒りと困惑、そして悲しみを孕んでいるだろう。
彼は正面から私の視線を受け止める。
今まさに命を狙われたというのに、その瞳には微塵も怒りを感じさせなかった。
静かに拳の力を解く。
彼は私の手を優しく握る。
「すまない。全ての責任は私が持つ故、なにとぞご容赦を。」
「・・・。」
私の手を離し、〝奴〟に手を差し伸べる。
–・・・ナゼコロサヌ
「貴様の命は俺が預かっている。どのように扱おうが俺の勝手なり。」
–ッ!
「今から俺が勝手に貴様を海へ放逐する。それだけの事だ。」
–・・・
〝奴〟が彼の手を払いのけ立ち上がる。
–・・・カナラズ、キサマダケハカナラズコロシテヤル・・・!
彼は表情一つ変えずに言う。
「今の言葉、準宣戦布告と判断する。次に対峙せし時は容赦せぬ。」
–ッ!
葉隠覚悟。
私は彼の事が分からない。
–何故、私を助けたその手で〝それ〟の命を助けるのだ
–何故、貴方はこの世界にやってきてしまったのだ
この時の私はまだ知らなかった
全てが動き出すことを
非常に間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。。
次回
長門は思う。彼は危険な存在なのかと。
長門は思う。これから先の日本を。
長門は想う。彼の心の内を知りたいと。
そして覚悟は決意する。この世界の真に〝守る〟事を!
再起編 第七話 正義の理