超鋼を纏いし戦士たち -神武の艦隊-   作:Violet

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少し修正しました。


【邂逅編】第二話 覚悟完了

右腕から伝わる、今にも消え入りそうな細い拍動が、この女性がまだ生きていることを俺に教えてくれている。

 

–・・・

 

悪姫はこちらを睨めつけ、微動だにしない。

その間に、彼女の治癒を開始する。

 

悪姫の巨腕を投げ捨て、懐より『細胞賦活剤・桜』を取り出し、彼女の首筋に打つ。

 

『桜』は少量の注入で5日間の生命維持を約束する劇薬。効果と引き換えに〝魂〟の活力を消耗するが、これほどの戦いを見せる彼女の〝魂〟ならば大丈夫だろう。

 

続いて、『治癒細胞・肉虫』を腹部の銃創へ塗布する。

傷口の修復がなされる代わりに凄まじい疲労が襲うが、『桜』の効果もある。耐えることは可能な筈だ。

 

「う・・・。」

 

俺は待機している機械化軍用犬–月狼–に命じる。

 

「モーント・ヴォルフ。ホバーモードのまま彼女を乗せ、安全域にて待機せよ。」

 

俺は彼女を月狼に乗せる。そのまま静かに、戦闘海域より離脱してゆく。

 

–良し

 

–・・・

 

敵はその間、俺が投げ捨てた巨腕を再生させていた。

 

–キサマ・・・

 

「言葉を・・・。」

 

発した。この敵は意思の疎通が可能と見たり。

 

–キサマ〝ラ〟、ナニモノダ・・・

 

 

敵は俺だけを見ている訳では無い!

 

『奴は我らをも認識しているなり!』

 

–零!

 

零との会話、中断せり。

敵、無言での強襲を開始!

 

「爆芯!」

 

脚部爆芯、最大出力にて後方へ跳躍!

着地と同時に敵へ問う。

 

「突然の攻撃、すまなく思う。我が名はエクゾスカル零、葉隠覚悟。」

 

敵の動き、静止せり。

 

「そちらの名を教えてもらいたい。」

 

–・・・

 

敵の顔が凶相を孕んだ笑みを浮かべる。

 

 

–静止したわけではない!攻撃手段を変えたのか!

 

 

敵が背部の三連装カノンの砲口をこちらに定める。

 

『回避だ覚悟!』

 

「否!このまま不動を保つ!」

 

『覚悟!?』

 

 

次の瞬間、凄まじい衝撃と閃光が俺を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

気が付いた時、目の前には星空が広がっていた。数瞬、その美しさに魅入っていた。

体が異常に重く、考える事すら苦痛を覚えるほどの疲労を感じた。

 

 

–ここは・・・わたしは・・・ッ!!

 

 

頭を跳ね上げ、周りを見る。

体が浮いていた。

正確には、〝何か〟の背中に寝かされていた。

 

–〝これ〟はなんだ?支援兵器なのか?この海域にはそんなものは存在しないはずだ。持ち込んですらいない。

 

そこまで考え、私は自分の置かれた状況をようやく把握し、全身が震えた。

 

–何故!何故私は生きているのだ!?全身余すことなく傷つき・・・傷?

 

 

私は再度驚愕することになった。

腹部に空いた大穴が〝消えている〟。

全身に負った戦傷も、程度は違えど回復しつつある。

異常な疲労感だけが消えずに体に残っている。

 

私は記憶を辿り、最後に見た光景を思い出す。

 

–私は〝奴〟に敗れ、巨大な手で潰されたはず・・・

 

–否違う!潰される寸前に、〝何か〟が〝奴〟の巨腕を打ち抜いたのだ!

 

ふと目に入った〝支援兵器〟の黒鉄の装甲が、私を真実へと導いてくれた。

 

–そうだ!この装甲と同じ鎧を纏った〝何者か〟に、私は助けられたのだ!

 

黒鉄の装甲と、白い羽を纏った鎧武者の如き風貌の戦士。その腕に〝奴〟の巨腕を持ち、反対の腕で私を守るように抱きかかえてくれた者。

この体の回復も、恐らく彼から受けたものだろう。

 

–戻らなければ!

 

悲鳴を上げる体に喝を入れ、立ち上がろうとしたその時。

 

 

 

「見つけたネー!ナガモーン!」

 

 

 

どこか懐かしい、もう遠い過去に聞いたように感じる声が聞こえた。

私をそう呼ぶ者は一人しか居ない。

 

「っ!金剛!?」

 

「お姉様だけでは無いですよ!秘書官!」

 

戦艦型とは思えぬ速度で近づいてくる四人の艦娘たちの姿が見えた。

 

先頭を走る金剛型戦艦一番艦・金剛は、そのままの勢いで私の体に飛び込んできた。

 

「無事で!無事で何よりネー!」

 

状況が飲み込めない。夢では無いとするならば何だというのか。

 

 

「お、お前達!何故この海域に居るのだ!」

 

「決まってマース!ナガモーンを助けるためデース!」

 

–私を?助けるため?何故・・・

 

仲間と再会した高揚が引き、私の胸に微細な怒りが沸き始めた。

 

「・・・陸奥は、陸奥は何と言っていた?」

 

「そのことですが、秘書官。」

 

四姉妹、末妹の、霧島が進みでる。

 

「艦隊旗艦・陸奥から私たちに下された指令をお伝えします。」

 

「聞かせよ。」

 

 

ーーー

 

 

大陸への回航は中止。呉鎮守府への帰港を決定。高速戦艦隊と水雷戦隊とで私を捜索、保護。

要修復艦は直ちに入渠。損傷軽微な者は艤装の整備を終え次第、直ちに再出撃準備に入り、艦隊を再構成する。

 

これが陸奥が伝えた命令の内容だった。

 

「何故大陸を目指さなかったのだ!」

 

怒りに任せて叫ぶ。

しかし、心ではもう分かっていたのだ。

これが陸奥の指令だけでなく、仲間たちの総意であることは。

金剛が、燃料タンクを差し出し言った。

 

「ナガモーン・・・。私たちもアナタのキモチは分かりマス・・・。でも私たちだけが助かっテ、アナタだけが沈んで・・・。そんなことで、天国にいるテートクが喜ぶハズありまセーン!」

 

–分かっていたよ、初めから

 

「秘書官!私たちも!思いは同じです!」

 

–ああ、そうだったな

 

「榛名も、最後までこの国の為に戦います!」

 

–私たちの〝絆〟はこんなにも強くて

 

「戻りましょう秘書官!呉の港へ!」

 

–私が、間違っていたんだ

 

「・・・。」

 

–だけど、まだ戻れない

 

私は黒鉄の支援兵器から降りた。

金剛から燃料タンクを受け取る。

 

「比叡。」

 

「はいっ!」

 

「お前の艤装を、私に預けてくれないか?」

 

「!?」

 

「ナガモーン!?」

 

–彼は、戦士は恐らくまだ戦っている

 

「皆よく聞いてくれ。私を助けてくれた者が、作戦海域でまだ戦っている。いま私を乗せてくれているものは、その者に預けられたのだ。」

 

「oh!このキュートなドッグがデスか?!」

 

「犬かどうかは分かりませんが、見たこともないコですね。」

 

–そして・・・〝奴〟を野放しにする訳にはいかない

 

「これより私と金剛、榛名とで作戦海域へと戻る。霧島は機動艦隊へ連絡、合流後に作戦海域へ。比叡は全速で呉へ向かい艤装を再装備。その後、再編された艦隊を率いて後詰めを頼む。」

 

–ここで、確実に止めを刺す!

 

「ラジャー!」

 

「りょ、了解っ!壊さないで下さいねー!?」

 

「榛名!了解しました!」

 

「了解しました!」

 

 

–そして・・・

 

 

「作戦終了後、呉鎮守府及び新たに海軍を編成、再編する。」

 

 

「!」

 

 

–私はもう、諦めたりしない。最後などと考えることは、もう二度としないのだ

 

機械の犬が、主機を唸らせる。

 

 

「往くぞ!各自。作戦行動に移れ!機械の犬よ!彼の下へ導いてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の巨砲直撃せしめる時

 

零が装甲赤熱化を使用。熱による被害を相殺。

しかし、衝撃甚大なればすべてを防ぎようは無し。

 

『胸骨数カ所破断!内臓複数箇所損傷!重傷だ!』

 

喉奥からこみ上げる血を飲み込み、答える。

 

「委細問題なし。俺も相手の腕を千切り飛ばしたのだ。これで五分なり。」

 

『内臓応急治癒開始!賦活剤投与!覚悟!』

 

「応!」

 

零式鉄球、破断箇所の修復開始!

 

 

爆煙が晴れ、敵と再び相対する。こちらを驚愕の眼差しで見つめている。

 

「今の一撃、宣戦布告と判断する。」

 

敵に告げる。その目には驚愕が消え、怒りの様相が浮かんでいた。

 

「当方に迎撃の用意あり!」

 

左手を前に、右手は力強く弓引く姿勢。

〝破邪の構え〟にて相対する。

こちらの戦いの意思を明確に伝えるべく、叫ぶ。

 

 

「覚悟完了!」

 

 

瞬間、敵が全速にて突撃を開始。一気に距離を詰め、巨腕を振り被る。

 

 

巨腕が正に直撃せんとする瞬間

 

背部爆芯を最大噴射

 

正調零式防衛術

 

 

 

 

 

「因果!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ〝奴〟と交戦した海域の筈だ。

私と吹雪が蹴散らした敵の残骸はすでに無く、海は何事も無かったかのように穏やかだった。

 

その時、

 

「ナガモーン!一時の方向を見るデース!」

 

「っ!」

 

宵闇の中、星明りに照らされた二つの影が相対していた。

 

手前に〝奴〟、奥に彼が立っている。

 

「艦・・・娘?」

 

「敵だ!〝奴〟は!奥の〝鎧〟を援護せよ!」

 

「まっくろデース!?」

 

お互いの距離が近い!援護射撃をすれば、確実に彼を巻き込んでしまう。

 

「急行するぞ金剛!榛名!」

 

「イエス!」「了解ですっ!」

 

その時、〝奴〟が動いた。

彼に対し突撃していく。

 

「!!」

 

彼は構えたまま動かない!

 

–間に合わない!

 

 

 

〝奴〟の巨拳が彼を捉えた、瞬間

 

 

〝奴〟の上半身が木っ端微塵に消し飛んだ

 

 

 

「!?」「What's!?」

 

 

〝奴〟の艤装擬きが火花を上げ、爆発。

爆煙で夜空に巨大な大輪の花を描いた。

 

 

「っ!彼は!?」

 

 

煙で何も見えなかった。

至近距離でこの爆発、無事とは思えない。

 

煙が晴れたとき、彼の姿はなかった。

 

「あ・・・あぁ・・・。」

 

「ナガモーン・・・?!見るデース!」

 

「!!」

 

すぐ側の海面が盛り上がり、爆ぜた。

 

彼が、黒鉄の戦士が、背中から火を噴き飛んでいた。

 

海面に着水した彼を見る。

 

 

その鎧は星々の明かりを受け鋼鉄の輝きを放ち

 

瞳は燃え盛る炎よりなお赤く

 

額には【七生】の文字が浮き彫りにされ

 

背中からは羽と見紛う白いマフラーが風に揺れていた

 

 

戦士が鋼鉄の兜を外す。

現れた顔は、まだ若い青年のものだった。激しい戦いを物語るように、血に濡れていた。

 

 

「体は、もう良いのか。」

 

 

その言葉が、青年が発した最初の言葉だった。




読み辛くて本当にすみません。。


次回
邂逅編最終話 希望の光



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