超鋼を纏いし戦士たち -神武の艦隊-   作:Violet

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【邂逅編】最終話 希望の光

二度と戻ることはないと思っていた港に、私は帰ってきた。

 

ここを発ったのはまだ昨日のことだというのに、懐かしく感じている自分が少し可笑しく思う。

 

各施設に目をやると、先日の爆撃の傷がまだ生々しい。妖精さん・・・軍用挺身妖精の皆が慌ただしく復旧作業を進めている様子が見えた。

 

鎮守府全体で無事な設備は、艦娘専用ドックと宿舎、工廠くらいで、あとは大なり小なり損傷を被っていた。

 

–施設だけではない

 

司令官を始め、勇敢なる海兵を大勢喪った。

最後まで私達の整備をしてくれていた彼らのお陰で、私達は戦い抜くことができたのだ。

 

–司令官・・・

 

私は司令官の願いを果たせなかったのだろうか。

 

いや、違う。違うはずだ。

 

司令官は一言も、『日本を諦めろ』などと言わなかった。

最後まで諦めてはいなかった。

 

–私達は、司令官の〝真の意思〟を継ぐのだ

 

やるべきことは山ほどある。

鎮守府の修繕を始め、軍の再編、現在の日本の状況の把握・・・。

 

–そして・・・彼

 

〝奴〟をも一撃で葬り去った戦士。

 

彼はまだ眠っている。

無理もないだろう。僅か一撃・・・その僅かに至るまでに、常人であれば即死、ましてや戦闘行動など取れるはずのない重症を負っていたのだから。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「体は、もう良いのか。」

 

その言葉が私に向けられたものだと言うことは分かった。

ただこの状況下では彼のほうが遙かに重傷に見える。

私は思わず黙ってしまった。

 

「・・・。」

 

「君に投与した薬は、副作用として君の体に数十日分の疲労を与えるものだ。」

 

・・・この疲労感はそれのせいでもあるのか。

 

「強いな。君は。」

 

彼は表情を崩さず話す。その時、

 

「ちょっと待つネー!!」

 

金剛が痺れを切らしてしまった。

 

「ユーは一体誰デース!所属と役職を述べるネ!」

 

一気にまくし立てる。が、彼はさして気にもせず、明瞭に述べた。

 

「私の名は葉隠覚悟。今日この地に辿り着いた故、どの組織にも属してはいない。」

 

「むーん・・・。」

 

私はため息を吐き、金剛を睨めつけたのち、彼に向き直る。

 

「失礼した。先ほどは危うい所を助けてくれて礼を言う。ありがとう。」

 

私は礼を述べる。私が今生きているのは、この青年のお陰に他ならない。いくら感謝しても足りないだろう。

 

「私は長門。長門型一番艦、艦娘だ。こちらは金剛型一番艦、金剛。同じく三番艦の榛名。二人とも。挨拶を。」

 

我先にと金剛が、後に続いて榛名が進み出る。

 

「ただいまゴショーカイに預かりマシタ、金剛デース!さっきはソーリーネ!」

 

金剛が手を差し出す。彼もそれに応じ、握手を交わす。

 

「榛名です。秘書官を助けて下さり、ありがとうございます!」

 

こちらも握手を交わす。

私は折を見て話を進める。

 

「葉隠殿。貴公はなぜこの海域に居たのだ?それに先ほどの言葉、海外から来訪した、という事で間違いないだろうか?」

 

彼が答えたのは、にわかには信じ難い内容だった。

 

「信じることは難しいと思うが、私はこの世界とは別の世界から来たのだ。」

 

「はぁ?」「What!?」「えぇ!?」

 

私達は素っ頓狂な声を上げた。まるでお伽話ではないか、と。

 

「私と〝零〟は呼ばれたのだ。助けを求める者の声に。」

 

「〝零〟?ゼロとは・・・。」

 

『左様!』

 

「ッ!!」「わーっ!」「ひぃっ!」

 

突如として聞こえた声。彼が抱える兜の目が赤く燃える。

 

『我は零!我は鎧!鎧に宿りし三千有余の怨霊なり!』

 

「な・・・!」「Ghost!?Nooooooo!」「オバケさんですかぁ!?」

 

兜が、鎧が口を聞くだけでなく、自らを〝怨霊〟と名乗った。私は驚愕し、金剛は半狂乱、榛名はただただ驚いている。

 

『我らは聴いたのだ!助けを求める少女の声を!自らでなく、愛する者の無事を願う声を!』

 

怨霊は語り続ける。

 

『しからば我ら推参せり!苦しむ者を救う為なれば、時空を隔てる壁を超えるなど紙を割くより容易なり!』

 

 

その後

 

 

彼、葉隠覚悟と怨霊・・・零の言葉の真偽は一先ず不問にし、一度私達の鎮守府へと同行を求め、彼は承諾した。

直ぐに信じられない事ではある。しかし、事実私は助けられ、彼は〝奴〟と敵対していたのだ。

 

「感謝する。」

 

彼から突然の言葉に、私は何故と聞いた。

 

「〝生きる意志〟を意味を見出したのだ。君の中にある〝火〟によって。」

 

「私の中の、〝火〟・・・?」

 

彼はその身に纏っていた脚甲以外の鎧を解いた。

 

そのまま眠るように、静かに意識を失ったのだ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

–零。俺はもう、過たぬ

 

–この世界で強き〝火〟を持つ者に出会ったのだ

 

–お前と俺ならば守り抜ける筈だ

 

–この世界の、遍く〝火〟を!希望の光を!

 

 

 

ーーー

 

 

 

彼が目覚めた時、全てを伝えねばなるまい。

 

この国が、世界から孤立してしまっているという事実を。

 

そして

 

私達の真実を。

 




次回

再起編です。

よろしくお願いします。
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