–覚悟の体は限界を超えているなり
–無理もあるまい、我らが居た世界で休むことなく戦い続け、あまつさえ時空をも超え、超えた先でも即死闘仕るとは、いくら覚悟といえど立ち上がる事も困難な筈であろう
–しかし覚悟は不屈なれば、直ぐにでも立ち上がろう。牙なき人に一刻も早く安息をもたらさんが為に
ーーー
気が付いた時、俺は暖かい布団で惰眠を貪っていた。
あれしきの事で意識を失うとは、我ながらあまりにも情けない。
しかし、布団で眠るなど何時以来だろうか。
少なくとも、あの崩れた世界で覚醒して以降初なのは間違いないだろう。
だがいつまでも休息する訳にもいかぬ。
後ろ髪引かれる思いはあれど、速やかに起床、布団を整頓するなり。
部屋の窓より外を見る。
激しい攻撃を受けた事を物語るように多くの瓦礫が散乱し、巨大なクレーンは中央辺りで折れ曲がり倒壊している。
復旧作業に当たっているのは恐らく海兵たちだろう。誰も彼も皆傷を負っていた。
その海兵たちを手伝うように、掌に収まりそうな程小さな少女たちが慌ただしく動いている。
–急ぎ手を貸さねば
踵を返し、上着を羽織る。扉を開けると彼女、長門殿の姿があった。
「起きられたか。」
「ご迷惑をおかけして申し訳ない。
復旧作業の手助けをさせてくれ。」
「まだ無理をしてはダメだ。」
「問題ない。体力は回復した。」
よそ者の俺がいつまでも休んでいていい筈はない。体が動くなら、少しでも皆の力にならねば。
「丸二日も眠り続けていたのだ。そうそう回復するはずもあるまい。」
優しい笑みを湛えたままそう言われ、俺は愕然とした。
二日!それほど長期の休眠は我が人生においては非常事態なり。
情けない。尚のこと動かねばなるまい!
「怨霊・・・零殿から聞いたよ。碌に休息を取らず、戦い続けていたそうではないか。今はゆっくりと休んでくれ。」
休んでくれ、か。
心温まる、有難い言葉だ。
たが俺は戦士なれば、これ以上の休息は怠惰に他ならぬ。
「心遣い、誠に痛み入る。もう大丈夫だ。」
姿勢を正し、一礼する。と、俺の腹が空腹を訴え、ぐぅと鳴った。
彼女はくすっと笑い、言った。
「失礼、まずは食事にしよう。」
俺は同意するほかなかった。
ーーー
「君はよく食べるのだな。」
真顔でそう言われ、思わず顔が赤くなる。女性に対してデリカシーが無いのだろうか・・・。
「そ、そうでもないさ。彼女を見てみろ。」
すまない加賀と心の中で謝罪し、彼の気を逸らしている内に一気に平らげる。
「しかし葉隠殿はそれだけで足りるのか?遠慮する必要はないんだが・・・。」
彼の食事量はかなり少なく見えた。白飯は小盛り、あとは味噌汁と浅漬けのみ。好みの物が無かったのだろうか。
「遠慮はしていない。私にとっては充分すぎる馳走だ。」
–そうは見えない量だが・・・
–・・・私が量しか見ていない大食漢みたいではないか
「久しぶりだ。この様な暖かい食事は。」
・・・迂闊だった。零から聞かされたというのに。
彼をよく見れば、目尻に薄っすら涙を浮かべてすらいる。
–それほど過酷な環境下で戦い続けてきたのだろう。今日の食事を満足に得られる私たちは、それだけでも幸せなのだろうな
「ご馳走様でした。」
彼は静かに手を合わせ、礼をする。
「では私は皆の手伝いをする。長門殿、ありがとう。」
彼は膳を返却口へ運び、直ぐに外へと走って行く。
その姿を目で追っていた時。
「あらあら、フラれちゃったの?」
そちらに目をやる事もせず、私はため息を吐く。
「陸奥か。ちょうどいい、話がある。」
ーーー
「では佐官級の軍人は・・・。」
「えぇ、ほとんどが戦死、あるいは大陸へ脱出しています。」
「大陸へ脱出・・・?民を残して・・・。」
「そうなります・・・。呉鎮守府の海兵はその殆どがここに留まったのですが、先日の爆撃で・・・。生き残った兵の七割は、兵役についてから一年未満の新兵ばかりです。」
今現在、この鎮守府・・・いや、日本そのものの現状、危機的状況なり。
民を守るべき兵は大半が大陸へと遁走し、残りしは力なき民と帝、経験の浅い新兵たち、及び長門殿等、護国艦艇戦乙女・・・艦娘のみ。
「守るべき民を捨て置くなど、何の為の軍人か。」
「しかし、最早日本陥落も時間の問題なのです。」
彼、早坂少尉が言うには、
すでに各地の島国は軒並み壊滅。民は虐殺され、敵補給基地へと改装されているという。
奴らに今現在対抗可能なのは、彼女ら艦娘のみであると。
通常兵器は悉く無力化され、大火力の火器はいたずらに世界を汚染するのみであると。
そして日本。
日本は艦娘の配備が比較的早く、これまで戦いを優位に進めてきた。
しかし、太平洋、インド洋の島国が陥落。さらに豪州が殲滅されたとき、戦局は一気に悪化。
いまでは近海の戦線を維持するのが精一杯であると。
そして、艦娘。
彼女達はーー
「あ・・・あれは!」「!」
近海の空に小さな黒点が多数現れた。
それは徐々に大きくなり、その形を明確にした。
「深海棲艦の・・・爆撃機だ!」
–あの数は・・・
「多すぎる・・・!この間の比じゃない!」
空襲を告げるサイレンが、鎮守府に鳴り響く。
『こちらは長門、長官秘書官の長門だ!復旧作業を直ちに中止!敵艦載機来襲に備えよ!』
–長門殿が指揮を執っているのか
「葉隠さん、私は無事な対空銃座へ行きます!あなたも避難を!」
「いや、私も征こう。早坂少尉、また後ほど。」
踵を返し、俺が寝ていた施設を目指して走り出そうとした時、
–ヴォン
我が下僕の声が聞こえた。
「モーント・ヴォルフ!」
異常を察し、俺を探しに来たのだろう。そして、その背にはトランクが収まっている。
「零!」
『応!』
俺は戦意をみなぎらせ、叫んだ。
「瞬着!」
凄まじい閃光が辺りを包んだ。
トランクから飛び出した零が装着されてゆく。
着装完了!
「な・・・!」
「早坂少尉、私はこのまま敵機撃滅に向かう。」
俺は呆けている少尉に声を掛け、軍用犬に跨る。
『往くぞ覚悟!』
「応!」
敵爆撃機、約三百七十機と確認
沿岸部に近づく前に撃滅する
自分の文章力の無さがモロに。。。・゜・(ノД`)・゜・。
次回
多数の敵機に単身挑む覚悟!
覚悟よ!忘れるな!君は一人ではない!
この世界にはもう、君には仲間がいるのだから!