戦局悪化せり。
超鋼の損壊拡大。降り注ぐ雨にすら穿たれているかの様だ。
残月、残弾なし。曳月、徹甲弾残弾なし。
敵爆撃機残り僅か。敵艦、四十余残存。
「零、拳脚の装甲はあとどのくらい保つ。」
『それぞれあと一撃!それで完砕する!』
「了解。」
俺は焦りを強くしていた。
我が肉体は必勝の手段。なれど如何ともし難く、敗北が脳裏をよぎるのだ。
足の力が抜ける。脚部爆芯の機能不全のためだ。
爆芯だけではない。もはや零は満身創痍だ。
敵駆逐艦級が急迫。巨大な顎で俺を砕かんとする。右拳の因果にて迎え討つ。しかし、
「っ!」
右拳装甲、完砕せり。
因果を受け、吹き飛んだ敵が爆散。
爆風を受け、左肩部より掌までの装甲、瓦解。
左右腕部の皮膚を零式鉄球により装甲化する。
–来い!来い悪鬼!我が肉体は必勝の手段!我が心境、常在特別攻撃なり!
敵艦隊が俺を包囲する。砲身を擡げ始める。今まさに一斉砲撃が加えられんとした、その時
『・・・バーニングゥ、ラァァァヴ!』
「!」
大きな声と砲撃の爆音共に、俺の真後ろの敵が粉砕されてゆく。
–あれは!
「・・・!お姉様!葉隠殿、健在です!でもボロボロです!」
「間に合いましたねー!さっすがお姉様!素晴らしい砲撃です!」
「んっふっふー!もーっと褒めてもいいネー!」
「急ぎましょう!葉隠さーん!こちらへー!」
–金剛殿!榛名殿!他の二人も似たような格好をしている。長門殿が話していた、金剛型戦艦だろう。
俺は合流すべく後退を開始する。と、
『覚悟』
–零?
『我らは既に孤独ではない。』
–・・・!
〝あの世界〟で俺は常に〝一人〟だった。
仲間と呼べるのはモーント・ヴォルフのみ。記憶を無くし、零との疎通を失い、あまつさえ他の『エクゾスカル戦士』迄も〝敵〟として相対することとなったのだ。
–『エクゾスカル震電』、動地 憐は俺に言った。お前は壊れている、と
人を思いやる心を失っていると。それは人の心を、思いを鑑みることが出来ないということなのだろう
–俺は忘れていたのかも知れない。
孤独の中で戦い、出会うことのできた『牙なき人』も時を待たずして『到達者」と化してしまう世界で
–いや恐れていたのだ。深く親交を持つことを。仲間と呼べる存在を失うことを
『お前が彼女達を希望の光と呼んだように、お前もまた皆の希望となりつつあるのだ。お前が眠っていた時、一人の少女が見舞いに来ていた。』
–ありがとう、ございます。秘書官を、長門さんを助けてくれて
「・・・!」
『そうだ。我らを呼びし者の声なり。』
–俺は・・・
『お前は希望なのだ覚悟よ!これより先、安易なる特攻はするな!〝共に〟征くのだ!お前の手は、彼女達と硬く結ばれているなり!そして信じよ!仲間を!護国戦乙女達と防人達を!』
–・・・応。応!!
行こう。仲間の元へ。
共に立ち向かうのだ。俺はもう、孤独ではない。
ーーー
「秘書官。霧島より入電。『我ら、葉隠覚悟と合流。鎧の損壊が激しく交戦に難あり。戦闘を継続しつつ後退を開始。水雷戦隊と合流次第、反撃に転じます。』以上です。』
「・・・そうか。間に合ったか。」
私は胸をなで下ろす。
あとは後詰めの陸奥たちが加われば乗り切れるだろう。
「峰﨑、救護班の手配を。時期に皆帰還するだろう。」
「了解です。」
中尉は笑顔で答える。と
「秘書官!霧島より打電!」
「ッ!?どうした!」
–・・・まさか!
「敵艦隊に・・・特異個体発見!大量の艦載機を排出している模様です!」
–・・・!
「このまま後退を続ければ、鎮守府にも被害が及びます!」
「金剛達にその海域で対空射撃を開始させよ!水雷戦隊はまだ合流出来ないのか!?」
「あと十数分は掛かります!」
「く・・・!急がせよ!陸奥達もだ!」
「了解!」
〝奴〟・・・〝棲姫級〟がこうも立て続けに・・・!
皆無事で・・・無事に戻ってきてくれ!
ーーー
「なんて数・・・!」
「shit!対空射撃ネ!」
「三式弾を装填してくるべきでしたぁー!」
「仕方ありませんよ比叡姉様!いまは一機でも多く撃ち落としましょう!」
敵艦隊中央部にいる者。
あれは意匠こそ違えど、この間の悪姫と同じ存在だろう。
巨大な機械に優雅にその肢体を横たえてこちらを見ている。
しかしその目は、憎悪を孕んでいた。と、
–ハガクレ カクゴ
「っ!?」「what!?」「えっ!?」「喋った!?」
「・・・。憎むか、私を。」
悪姫に問う。
–ワガイトシキアネヲシズメシ アクマ。キサマダケハ イカシテオケヌ!
姉。先に屠った悪姫だろう。
奴にとって、俺は憎き姉妹の仇。
–ニンゲンゴトキガ!ウミヲヨゴスガイチュウゴトキガ!ワガアネノイタミヲオモイシレ!!
敵艦載機が俺に突撃してくる。
–特攻か!
「カクゴ!逃げるネ!」
「葉隠さん!我々の後ろへ!」
–すまない。皆
「皆、後退を。私に・・・俺に任せてくれ。」
「!?カクゴッ!ゼロも脱いだ状態じゃ無理ネ!早くコッチに・・・。」
そうだ。俺は既に零の着装を解いている。残っているのは脚部のみ。
『金剛殿。』
「ゼロ?!」
『覚悟を信じてくれ。』
「むーん・・・。」
金剛殿が渋る。皆も同じだろう。
しかし、
「わかりました!榛名は信じます!」
「榛名!?」
榛名殿・・・!
「ふぅ・・・。なら、私も。」
霧島殿!
「おおおお姉様!どうしますー?!」
「金剛殿!比叡殿!」
「あーもう!カクゴ!必ず生きて帰るネ!OK!?」
「了解!」
必ず生きて帰る。当然なり!
「では皆!離れてくれ!」
特攻機、間も無く到達せり!
文章を綺麗に見せる方法を模索しています。。
次回
敵の悲しみを判らぬ覚悟ではない!
しかし!守るべき人々が彼には居るのだ!
愛する仲間が彼には居るのだ!
そして果たすべき大義が!彼の中に生まれたのだ!