魔法少女リリカルなのは!?「魔導殺しのペンキ屋さん」 作:ヘルカイザー
それはある年に起こってしまった事件……一人の男の起こしたそれは知らぬ者のいない大事件に発展してしまう。その事件とは無謀とも思える行為……一人の男が魔導師を手当たり次第に狩り始めたのだ。当然次元世界における司法機関である管理局がそれを黙って見ている訳もなく、すぐさまその男を逮捕するべく動いた。しかし誰を差し向けた所で誰一人男には歯が立たない。このままでは魔導師が滅びかねないと、ついに管理局はとんでもない暴挙に出る。管理局の魔導師総出で男を逮捕する為に差し向けたのだ。そしてついにそれは起こってしまった。そのお陰でこの場所は一面焼き野原……そこには沢山の魔導師が傷つき倒れている。しかしその倒れた魔導師達の中心に立つ一人の男。名を鈴木吉数……彼は右手に一本の刷毛を持ち、左手に小さなバケツ……サゲツを持ち、その中には赤いペンキが入っている。彼が着ている物、ペンキ屋が着る作業着……ズボンを黒いショートニッカ、上に長袖の青いシャツにその上から黒いベストを着ている。背は175㎝程度で髪が黒く短い、黒い瞳で歳は19歳位の青年だ。彼は倒れている魔導師に円を描くように囲まれており、その後ろにはさらに戦闘態勢の沢山の魔導師に囲まれている。
「数君おとなしく投降するんや! 手荒な真似はせぇへん、お願いや!! 」
男と戦闘態勢の魔導師がこれから更に戦闘を始めようと言う時、彼を囲う沢山の魔導師の中から一人の女性が顔を出した。彼女は茶髪で左側に黄色と赤の髪留めをそれぞれ二本している。彼女は必死に男を説得する。しかし彼は聞く耳を持たない。右手に持った刷毛を左手に持ったサゲツの中に入れペンキを含ませる。そしてそれを自分の囲う魔導師に向け空中を塗るように三日月型の模様を空中に完成させる。するとその瞬間、それが魔導師達の方へと飛んでいきそこにいた魔導師は吹き飛ぶ。勿論魔導師はシールドを張って防いでいるがそんな物はまるで意味をなさない。まるでそれが飴のように消えてなくなり魔導師を吹き飛ばす。
「数君……くっ……しかたあらへん。全員攻撃準備! 手加減は無用や、したらこっちがやられるで! 全力で攻撃開始!!! 」
指揮官である彼女が合図を出した瞬間、一斉に魔力スフィアが男を襲う。その数はたかが一人に当てるにはあまりに多い量だ。下手をすれば怪我では済まない。勿論彼女もそれは理解している。しかしやめるわけにはいかない。彼女も目的があって……仕方なくこうしているのだ。そして攻撃を受けた男はまた刷毛にペンキを含ませると自分の周りを囲うように、塗り潰し自信を隠す。すると被弾した魔力スフィアは次々に消えていき全てが消えた後その男を囲んでいる半円状の球体は一瞬で広がり自分を囲う魔導師を全て吹き飛ばした。もはや男の周りには誰一人として立っていない。全ての者は倒れ、その痛み故に悶えている。それは指揮官の彼女も例外ではない。
「ぐっ……数君、やめてや。もうやめて? なんでこないな事するや……私はただ、数君にこれ以上罪を重ねて欲しくないだけなんや!? 」
彼女は訴える、必死で痛む身体を起こし。ゆっくりと彼女の方へ歩いてくる男に訴える。だが男は彼女を見ていない。そのまま彼女の横を通り過ぎ何処かに行こうとする。しかし彼女はそれを許さない。男に飛び付き男の腰にしがみつく。でも男は彼女の手を無理矢理解き、解いた腕を掴んだまま真横に放った。彼女は抵抗一つ出来ずに投げ飛ばされる。投げられた彼女はもう限界でもう受け身を取る事も出来ない。けど彼女が地面に身体を打ち付ける事は無かった。何故なら彼女はその場に駆けつけた金髪でツインテールの女性にキャッチされたからだ。
「はやて、大丈夫!? しっかりして!? 」
「はやてちゃん!? 」
更に金髪の女性の他に茶髪でツインテールの白いバリアジャケットを着た女性も駆けつけた。彼女達は指揮官の彼女を心配した後大した怪我じゃない事に安堵し男を睨みつける。男もまたジッと彼女達を見たままその場に停止していた。しかし彼女達は睨んでいるが敵を見るような目ではない。どちらかと言えばそれは悲しみの目、まるで裏切られたかのようなその眼差し。
「どうして……どうしてはやてを傷つけたの!!! 」
「数君もうやめてよ!? 私達が戦う理由なんてない、私達は友達でしょ? 」
彼女達もまた……男に訴える。この無利益な戦いを。だがそれはあくまで彼女達の思考、判断だ。それは今目の前に立つ男には関係のない話。男には男の目的があって行動を起こしている。決して意味のない行動ではない。でなければ男は泣いていない。涙を流していない。その事に彼女達は今更ながら気がつく。しかしそれを知る術は彼女達にはない。理由もわからないまま彼女達は男が構えたことで構えざるおえない。男は自分の理由の為に、彼女達は男を止める為に…………
「吉数、貴方はどうして泣くの? もし私達を傷つけて泣いてくれるならどうしてこんな事まだ続けるの? 私は吉数と戦いたくない! 吉数と今まで通り……友達でいたいんだ!!! 」
「……アの為だ…………」
「え? 数君何? どういう事? 」
男は口を開いた。ゆっくりとかすれた声で……でも彼女達はそれをよく聞き取れない。男の声が本当に絞り出すような声だったからだ。しかし男はもう一度言葉を紡ぐことなく彼女達に向け魔導師達に放ったのと同じく三日月型の模様を放つ。だが男を知っている彼女達はそれを防がず空中へと避け男から距離をとった。
「やはり俺はあいつの言う通りの男だ。全ての魔導師の敵になり全ての魔導師を滅ぼす男…………」
そう言い男はさっき放った三日月型の攻撃を数を増やし大量に放つ。彼女達はそれをただ避け攻撃が止むのを待つ。単純に戦いたくないのだ。友である男と…………
「違う!? 吉数はそんな人じゃない! 吉数は優しい私達の友達だ!! 」
「そうだよ!? 数君は今まで私達を沢山助けてくれた、私達に笑顔をくれたよ?だからもうやめて? 私達と一緒に! 」
「無理だ……俺はお前らを……管理局の魔導師を全て倒す。仕方ないんだ……全てアリシア達の為に……俺は氷麗を、アリシアを助けるんだ。だから……だから邪魔をするなぁぁぁぁぁああああ!!! 」
彼女達と男は分かり合えない、それが宿命であり男への一つの試練だ。全ては神同士の迷惑な『争い事』の為に…………
◇◆◇◆
「ああ〜今日も暑いですわね〜?はぁ……本当に真夏は嫌ですわ…………」
「なんだよ氷麗?もうヘコたれたのか?情けないなぁ〜? 」
「うるさいですわよ吉数君は!? ペンキ屋は黙って仕事しなさいですわ! 」
今彼女がいるのはとあるアパートの一室。そこでたまたま彼女はペンキ屋である鈴木吉数と現場が一緒になった。彼は彼女と同い年で20歳の一人親方、しかしそれは彼女も同じ。吉数は建築塗装技能士で彼女はクロス屋……つまりは壁紙屋だ。彼が塗り終わった部屋から彼女が壁紙を貼っていく。クロス屋の彼女の言う事じゃないのかも知れないが吉数はかなり腕のいい職人だと思っており、彼女は彼程腕のいいペンキ屋を知らない。今やっている作業も彼女が先に壁紙を貼ったとしても彼は新しい壁紙にペンキをつけずに窓枠……つまりサッシを綺麗に塗ってくれるだろうと思っており、そこまで信用していいくらい彼は腕がいい。これがもし他のペンキ屋なら彼女は絶対に先に仕事をしたりしない。絶対にペンキで汚さないと言われたとしても彼女はそこまで信頼を寄せることはできない。
「ねぇ〜吉数君? ここ私が先に作業してもいいかしら? その方が効率がいいと思うのだけど? 」
「ん? ああ、別に構わないぞ? 氷麗がそこをやっている間にこっちは終わらせるから頼むわ」
やっぱり吉数君は話が分かる、彼女はそう思った事だろう。さらには一緒に仕事が出来たらこんなに楽なことはない。そう感じている筈だだ。それに彼女と吉数の付き合いはもう10年以上になる。実は彼女達は小学校からの同級生で互いに親が職人なのだ。だから今は互いに自分の会社を継いでいる。そして彼女が吉数に入れ込む理由はこれだけではない、彼女からすれば彼は初恋の人なのだ。理由なんかない。毎日一緒に遊んで時が経ってもこうして付き合いがある。だからいつの間にか好きになっていたのだ。でも彼女は彼にはまだ好きとは言っていない。何故なら彼女はそれを言うのが少し照れ臭く、今更だと思っているからだ。
「なぁ〜氷麗? 」
「ん? 何かしら吉数君? 」
「俺と付き合ってくれないか? 」
その瞬間、その空間の時間は止まった様に彼女は感じただろう。彼女は一瞬何を言われたのか分からなかった、けどすぐに頭を回転させ今言われた事を考える。すると彼女は胸の鼓動が激しくなり、顔が沸騰するくらい熱くなった。嬉しかったのだ。彼女がいつかは言おうと思っていた事だが……まさか彼から言ってくれるとは思わなかったからだ。それに彼女は両思いだったなんて思ってもいなかった。それが……その事実が余計に彼女の顔を熱くする。当然、彼女の返事は決まっている。しかし突然の事で彼女は上手く言葉が出てこない。少し間を置き、深呼吸した後彼女は言葉を詰まらせながらも返事を返そうとする。
「わ、私でいいなら……よろしくお願いしま……きゃっ!? 」
「氷麗!? 」
彼女が返事をしようと思った時だった、突然部屋が揺れた。正確にはこの土地が揺れたと言うべきなのかもしれない。彼女が後ろに倒れそんな彼女に対して吉数は急いで駆け寄る。しかしその瞬間、彼女達のいたアパートは崩れた。何故ならこの時この辺り一帯は今までにない程の大地震に見舞われたからだ。辺りは火の海になりその町は壊滅した。そして崩れたアパートの中……彼女はまだ生きていた。でも死ぬのは時間の問題だ。ここでは身動きは取れないしここはいつ崩れてもおかしくない。しかし不思議なのだ、彼女は特に怪我がある訳でもない。二階から崩れ落ちたのに奇跡だ。彼女はそう思った。しかしそれは間違いだとすぐに彼女は気づく。彼女は自分の上が妙に熱い事に気付き自分の上をよく見た、するとそこには彼女の代わりに瓦礫の直撃を受けた吉数がいた。彼女に覆い被さるようにして彼女を守っている。
「吉数君? ねぇ〜起きて下さいですわ? そんな……どうして起きてくれないですの……嫌!? ねぇ!? 吉数君!? 嫌!? 嫌ですわ!?なんで……せっかく…………」
吉数はピクリとも動かない。完全に絶命している。彼女は泣いた、今までの人生でここまで泣いた事があっただろうか?いや、ない。自分の想いが叶った、なのにそれがもう叶わない……儚く消えてしまった。彼女の好きな人は今この瞬間にこの世から消えた。でもそれもいいのかもしれない、彼女はそう感じていた。彼女ももう時期死ぬ、これだけの地震だ周りも同じ状況の筈だと彼女は察していたのだ。だからこんな状況で誰かが助けに来るわけがない、そう思っていた。だから彼女はこのまま瓦礫に押し潰されて死ぬ。彼と同じ所へ逝く、そう思った彼女は不思議と恐怖を感じていない。
「吉数君……次は……次の人生も私の事好きでいて欲しいですわ? 私は……次も吉数君の事好きになりますから……だから…………
その瞬間瓦礫は彼女達を容赦なく押し潰した。
◇◆◇◆
「お兄ちゃん、今日もお仕事? 」
「ああ〜ごめんな?なるべく早く帰るからさ、いい子で待っててくれないか? 」
一人の青年が少女を撫でながらそう諭していた。その青年は大工である。そして少女はその妹だ。今日少女の兄である竹倉源はいつもより出て行くのが遅かった為に少女に家を出て行く所を止められた。少女達の親は事故で亡くなっておりもうこの世にいない。その為、源は妹の為に昼も夜も必死に働いていた。それは妹である少女も当然理解している。でも少女は寂しかったのだ。たまには一緒に家にいて遊んで欲しかった。少女はまだ小学生なのだ、だから20歳である源に甘えたいと思うのは当然の反応で何もおかしい事はない。しかしお兄ちゃんを困らすのは私は嫌だ!と彼女は幼いながらもそう言う気遣いをしているのだ。だから何も言わない。おとなしく源の帰りを待ってる事を選ぶ。
「お兄ちゃん、いってらっしゃい! お仕事頑張ってね? 」
「ああ、ごめんな? じゃ頑張って……な!? 」
「きゃっ!? 」
丁度源が家を出ようとした時の事だ、突然地面が揺れた。源達は大きな揺れで上手く動けずその場に倒れる。そしてその瞬間、家が崩れた。源達はそのまま崩れた家の下敷きになった。しかしそんな中、源はしっかり少女を抱え少女を守ろうとしたのだ。でもそんな努力は実らなかった。人間の身体が家の重量に耐え切れる筈もない。二人は何の抵抗も出来ずに潰されこの世を去った。
◇◆◇◆
「そろそろおきてよ!? 」
「ううっ……ん? なんだここ……真っ白だ」
真っ白、それは当たり前の事だ。何故ならここは天国、周りは汚れのない純白の白。そんな中目を覚まし周りをキョロキョロと見回すのは瓦礫に潰され死んだはずの鈴木吉数。彼は今目の前にいる赤髪の少女を発見し首を傾げていた。しかしそれは当然だ、こんな真っ白な空間でこんな小さな子と二人きりなのだ。
「お兄ちゃんに言わなきゃいけない事があるんだ……ごめんね? 」
「いや……何が? 」
「お兄ちゃん死んだの」
吉数は固まって動かなくなった。一体何の冗談だ、彼はそう思った。しかし少しずつ自分が死んだ時の記憶が鮮明に蘇っていく。雪山氷麗を庇い瓦礫の下敷きになった自分を。
「そうだ……地震で……瓦礫の下敷きに…………」
「ごめんなさい」
「いや……君の所為なの? 」
彼女の所為それは語弊があるのかもしれない。しかし彼女は自分の所為だと思っている。いや、そもそもそれは誰の所為でもない。偶然だ。しかし彼女は責任を感じる。何故ならば彼女の正体は吉数がいた世界の神なのだから。
「私の所為……なの。私が守りきれなかったからお兄ちゃん達は死んでしまった」
「守りきれなかった? ごめん言っている意味が分からない。あれは自然災害じゃないのか? なら、君が責任を感じる意味が分からないんだが? 」
吉数は自分の疑問を全て吐き出す。確かにあれは自然災害がしかしそれは彼の世界で起きていた表立っての現象に過ぎない。その真意は少女達神が争い、その飛び火により起きてしまった事なのだ。しかしそれを普通の人間が知る事などある訳もない。ただ自然災害の様な偶然に巻き込まれこの世から消える。
「信じられないかもしれないけど一応私は神様なんだよ? 」
「え? 神? 冗談だろ? 」
「あはは♪ 信じられないよね?なら……我、この星の全てを統括せし者なり、今その命によりこの者に全てを見せよ」
「っ!? 」
少女がそれを唱えた時、吉数の頭には全ての事象が流れ込んでいた。それは全ての記憶、思い、力の姿。そして何故こんな事が起きてしまったのかという過程の映像。その全てが真実であり彼はそれを受け止めざるおえない。
「今のは……」
「これが真理。さて、信じて貰えた所で本題だよ? 貴方にはこれから新しい人生を歩んで貰う。ただしそこは今までの貴方の世界とは違って少し物騒なの。だから貴方には力をあげる。何がいい? 」
「力ねぇ……いや、いらない」
この言葉に神である彼女は驚いていた。物騒だと言っていたのにも関わらず、力は要らないと言うのだから。だが彼女も一度言われただけでは素直に送り出すわけにも行かず再度聞き直す。
「悪い事は言わないから素直に受け取ってくれると嬉しんだけど? じゃ無いとお兄ちゃんすぐ死ぬよ? 」
「どんな所に送り出すつもりなんだよ……でもまぁ〜やっぱりいらないよ。俺はさ……建築塗装の仕事が出来れば良いんだ。だからさ、俺からお願い出来るとすれば建築塗装士にしてくれないか? それだけで俺は満足だよ」
「お兄ちゃん変わってるね? 他の四人は遠慮なく持って行ったの……でもその内の三人はお兄ちゃんと同じ様なお願いだったよ? 不思議だよね?職人ってさ」
彼女は呆れ果てていた、しかしその理由は簡単だ。吉数の他にも何人か同じ世界に送ったのだが、その内の三人は吉数と同じ職人。しかも吉数と同じ様な願いを叶えて貰っている。だから彼女はつくづく職人と言う人種に疑問を持っているのだ。
「はぁ……分かったよお兄ちゃん。建築塗装士にはしといてあげるから安心してね♪ 」
「ありがとう神様、それと……ん? ちょ!? 」
「行ってらっしゃい♪ 」
その瞬間吉数は強力な力で引っ張られた。そしてその先には大きな扉がある。吉数はそこへ向かいあっという間に吸い込まれ彼女は手をひらひらと振り彼を見送った。
「ごめんねお兄ちゃん……お兄ちゃんにはまた迷惑をかけると思う。でもお兄ちゃんがさっき見た記憶は持って行けないのもだから消させて貰う。それと……私達神の争いはまだ終わってないんだよ。だから……お兄ちゃんには……いやこれは必要にならないといいね♪ お兄ちゃん♪ 」
次回もよろしくお願いします。