GOSICK-黒い死神と金糸の妖精-(仮)   作:サバ缶12号

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今話、前話より少し短いです。後投稿送遅れて申し訳ないです、ごめんなさい。
お気に入りが増えていたことが、恐れ多くてどきどきです。
六日に投稿できませんでした。すいません。

皆様の時間つぶしになれれば幸いです。


第4話 妖精の心は何処にあるか

占い師ロクサーヌの遺したヨットから見つけた。野ウサギディナーの招待状に導かれるままに近くの港に停泊していた豪華客船へと乗り込んだ僕とヴィクトリカは、入ってすぐに係りの人に案内され食堂に通された。案内された食堂は、薄暗く、その光源は部屋の端にある光量の低い橙色の明かりとディナーの用意がされている長机の上に置かれている蝋燭の火位だ。室内では、既に食事が行われているらしくお皿とナイフやフォークなどの食器が接触する音が聞こえ、また座席がすべて埋まっていることから僕らが最後の招待客であろう事がわかった。だが、この暗さで、少し隣席との距離が空いている為に隣席に着いてる他の招待客の顔を伺う事は少々困難であった。精々人影がいくつ薄暗い室内で動いているか程度が分かるだけだった。

と、僕が室内を見回しているうちにヴィクトリカがちゃっかり空いている最後の座席、本来生きていたら占い師の老婆が着席するはずだった場所を陣取って準備されていた食事に手をつけようとする所が目に映った。

「ちょっと!ヴィクトリカ、1人だけ先に席に着くだなんてずるいと思わないか?」

一先ず、先ほどから手に持っているトランクケースが重たいので、ヴィクトリカが座っている座席の横に置きながら、彼女に話しかける。すると彼女は、ステーキのお肉を丁寧に切り分け口に運びながら憮然とした様子で回答してくる。

「我々は、ロクサーヌ宛の招待状で此処を訪れたわけだからな、当然、座席もディナーも1人分しかない。」

ヴィクトリカの視線は目の前のお肉に固定された状態で僕との会話を成立させている、お肉料理がよほど口にあったのか、パクパクと軽快に食事を進めている。咀嚼の為に上下させている様子がなんとも微笑ましい。しかし困ったな、座席が無い事については少々不満を洩らしたいが、それはイレギュラーな招待客である僕らには対応しろと言うのが無茶な話である。仕方無しと割り切ってしまう事にして、残った問題は食事かな。

「僕だって、此処まで君の荷物が詰まった、それなりに重量のあるトランクケースを運んで来たので若干空腹を感じているんだ。ソレに対して、パンの1つ分ほどでも報われても良いじゃないかなと僕は思うのだけれど。」

ヴィクトリカは、口をナプキンで拭いながら応えてくれる。

「私が君と議論を交わして削られていった必要最低限だと考えられた道具たちの内、君と折半する事で目出度く荷物入りを果たした非常食があった筈だな。まぁ、体格が小さくても君も男の子なのでもの足りないだろう、ほら。」

そう言って、僕の労働の対価になったロールパンを手渡してくれる。

彼女の荷物分けに際して議論による譲歩などせずに問答無用に仕分けていたら、きっとこの時の彼女は烈火の如く攻めて来ただろうな、と彼女が渡してきたパンを齧りながら、別の在ったかもしれない未来を夢想していたら少し背筋が冷たくなってしまった。

「あ、このパン、意外と美味しいかも。」

僕はそのあと、ヴィクトリカと言葉を交わしながら室内の他の招待客であろう人影に気を配っていたのだが、ヴィクトリカが夢の国への船を漕ぎ始めた辺りで、僕自身も次第に視界がぼやけて行き、そのまま周りの薄暗さに溶け込むように意識が薄れていった。

 

 

「おい君、仕切り屋で屁理屈こきの留学生の人。さっさと起きたまえ。」

次に僕の意識が覚醒したのは、目蓋を開けた先の視界が知らない天井とヴィクトリカを映し出した時だった。起き上がって周りの状況を確認すると、僕とヴィクトリカ、その他の招待客全員が先ほどの食事に混入されていたであろう眠り薬によって眠らされている間に別の部屋(ゲストルームだろうか?)に運び込まれ、今全員が目を覚ましたところのようだ。

「うぅん…。ここはどこだい?」

寝起きによくある余韻を振り払うように頭を振って眠気を飛ばそうとする。どうやら僕が寝かされていたのはソファの上だったようだ。彼女・ヴィクトリカは淡々と事実を伝えてくる。

「どうやら先ほどの食事に眠り薬が一服盛られていたようだ。目が覚めたら全員このラウンジに移されていた。」

僕は状況の理解に勤めようとしたところで、覚えのある臭いを感じ取るがそれが何の臭いなのかは思い出せないので一先ず保留にし、他の招待客を見回しながら、ようやく覚めてきた頭で現状を把握する。他の乗客たちも目が覚めてきたようで徐々に困惑し始める。

「あ、開かないっ!?もうっ!どうなっているのよっ、この船は!?」

赤いパーティドレスに身を包んでいた黒髪を腰近くまで伸ばした女性がこの部屋の扉をガチャガチャと鳴らしながら叫び声を上げ、扉から離れつつ上機嫌とは言いがたい様子で室内の方に戻ってくる。その際にポーチを振り回し余所見をしながら歩いてきて丁度通路のようになっている僕が座っている横を通ったとき、たまたまだろう、僕の頭に直撃しそうになったポーチを手で遮った。彼女は当然、ポーチが何かに引っ掛かったことに気づいたのだろう、此方に振り向いてくる。

「何よ。の持ち物に気安く触れないでくれるっ!」

ドレスの彼女を刺激しないように諭す事に勤めるとする。僕は彼女のポーチから手を離す。

「申し訳ありません。貴女の持ち物が僕にぶつかってしまうところだったので思わず受け止めてしまいました。」

「そう。こちらこそ、悪かったわね。」

そう言ってドレスの彼女はバツが悪そうにして一言謝罪をすると早足に僕らから離れていった。頭部への事故を防いだ僕がソファに座りなおしたところでヴィクトリカが話しかけてくる。

「九条、可笑しなことがある。先ほどまで食堂には9人の人間がいた、我々を含めて11人だ。しかし、今この部屋には12人いる。」

僕は立ち上がって今この室内にいる人数を数えてみると確かに増えている。

「恐らくは食堂にいなかった人間が1人この中に紛れ込んだものと思われる?」

ヴィクトリカは僕の意見に頷きで返してくれる。

「眠ってしまった我々をこの部屋に運び込んだのも恐らくはその人物だろう。」

 彼女の話から、その紛れ込んだ人間は一体何の意図があっての行動なのだろうか?そのことについてヴィクトリカに聞こうとしたところで他の乗客達の会話が聞こえてきた。

「では、やはりここは箱庭の…。」

「どうやら、そのようだな。」

「では、野ウサギはあの子供たちか?」

  部屋の隅の方で壮年の紳士が3人でこそこそ話している内容が部分的に耳に入ってくる。

 

 耳に入ってきた情報を整理していると部屋の奥の暖炉の上に安置されいる船の模型が目に入る。それは、今現在搭乗している豪華客船の模型だと思われる。よく出来ているな、と思い近寄って触れようと手を伸ばしたところ、

「それに手を触れるなっ!!」

 先ほどの会話をしていた内の1人が血相を抱えた様子で声を張り上げたようだ、その静止を呼びかける声に振り返ろうとしたところで、僕のこめかみ付近を掠るようにして船の模型の上辺りに矢が突き刺さり周囲がどよめいた。

 自分が寸でのところで生命の危機を脱した事に頭が追いついたこと自分でも解かる位に顔の血の気が引いていったのが分かった。

 少年が発動させてしまった致死性のトラップを確認すると此方に視線向けていた壮年の紳士たち得心が行ったと口々に洩らす。

「やはりこの船っ!?」

「あ、ああ」

「間違いない」

 ヴィクトリカが数瞬置いて駆け寄りながら安否を聞く。

「大丈夫か、九条?」

 彼女のしわがれた声を聴いて、我に返ったことで血の気が顔に戻ってくると僕は彼女に今しがたの出来事で思い出したことを彼女に告げる。

「思い出した。この船の模型を見て、どこか既視感を感じていたんだ。それが漸く分かったよ。」

 ヴィクトリカはこちらが続けるの促す。

「君と出会った日にあの大図書館で読んでいた怪談話の内容だ。10年前に沈んだ筈の船、幽霊船クイーンベリー号、死者の魂は浮かばれず嵐の夜になると生者を呼び寄せ生贄として沈める。と、確かそんな内容だった。」

 僕が彼女と出会う際、図書館でセシル先生の勧めで怪談話を探していたときの事だったか、そんな怪談話を見つけた。その情報を聞いて、何か考え込むようにヴィクトリカが呟いた次の瞬間だった。

「10年前…、ッ!」

 室内の証明が落とされ目の前が闇に包まれた。そのとき他の乗客たちは困惑と動揺で大声を上げたりしながら何が起こったのかとうろたえている様だった。当然だ、食事に盛られた眠り薬、知らぬ間に運ばれた我々、犯人の思惑がどうであれ警戒せずにはいられないだろう。

 僕は、次に何が起こっても庇えるようにヴィクトリカが居た場所に手を伸ばし抱き寄せる。

「ヴィクトリカッ!!」

「九条っ!?わぷっ!!」

 どうやら彼女を掴む事が出来たようでその事にホッとしたところで唐突に引き寄せたことを弁明し始めるべきだろう。

「次に何が起こるか判らないからね。知っている人同士で近くに居たほうが安全だと思ったんだ。いきなりだったけど大丈夫?」

 周りを暗闇に囲まれ、引き寄せた腕の中で何となくだが彼女が返事を返そうとするのが伝わってきて、明かりを探す声が響き渡り他の皆の混乱が頂点に達する直前、停電したときと同様、唐突に室内にパッと光が戻ってきた。

「き、君、一体何をしているのかね?」

 光が戻ってきたと同時に腕の中の彼女が若干上ずった様な声を上げるので視線を向けると、僅かに頬を紅潮とさせたヴィクトリカの顔がが思っていた以上に近い距離にあると気づき、途端に自分がしたことを思い返し妙に気恥ずかしくなってしまった。

 直ぐに距離を取りながら、先ほど暗闇の中でした物と同じ釈明をしようとするが言葉が上手く出ず、口ごもる。

「あ、いや、これは、ははは、その…。」

 以下、九条一弥の脳内で刹那に行われた思考である。

 

 おかしい!僕は紳士たるべきを身に付けるために留学して来た筈なのに女性と普段より少しばかり近づいて顔を合わせただけでこんなにもシドロモドロしてしまうなんて大日本帝国の三男として情けないにもほどがあるっ!いやそうじゃない違う、しかしヴィクトリカの顔って間近でみると本当に白磁のように綺麗で頬に指した紅色がまた愛らしさを感じさせる、ってこれではただの変態ではないかっ!喝っ!煩悩退散色即是空っ!落ち着け、落ち着くんだ僕よ、あれは危険が身に迫る恐れがあり事態は急を擁した為、ああした緊急策をとらざるを得なかった。決して疚しい気持ちは無い。よしこれだ!

 

と、少年が少女に先の所業についての弁明をしようと思索していた所で、部屋の僕たちが居り皆の視線を向けられていた丁度反対側の方から悲鳴が聞こえてきた。

「キャアアアア------!!!!!」

悲鳴は部屋の反対側で赤いドレスを着た女性が上げたものだった、乗客たちは彼女の方に視線を向けたことでその原因を理解した、それは壁に掛けられた絵だった。それだけならなんの変哲も無いが、問題はその上に書かれた血文字による文章だった。

血文字で文章が書かれていることを確認して壁の方に歩み寄る。壮年の紳士たちは動揺を隠せずにいるようで口から不安がこぼれだす。

「これは、一体っ…。」

「こんな血文字、さっきまで無かったはずだぞ!?」

紳士の1人が血文字で書かれた文章を声音を恐怖に震わせながらたどたどしく読み上げる。

「あ、あれから10年、早い物だ、今度は貴様たちの番だ、箱は用意された。さぁ野ウサギよ、は、走れ。」

読み終えたところでこの怪奇的事象に脅えていた紳士の1人が尻餅を着く。その尻餅の音が合図になったのか、紳士たちの混乱が頂点に達する。

「う、うわぁっ」

「箱庭の夕べ、野ウサギ」

「野ウサギ走りを楽しめるんじゃなかったんだ、私たちこそが野ウサギだったのだ。」

「ひっ、ひぃぃぃぃ、こ、殺される!あの子供たちに殺されるぅう!」

1人の紳士が足をもたつかせながら部屋の唯一の出入り口であるドアに向かって走りより手をかける。

「無駄よっ!そのドアには鍵が掛かっていてっ!」

 そう僕が目を覚ましたときに赤のドレスの彼女がドアには鍵が掛かっていると口を大にして言っていたのを思い出す。だが、その想像とは反対にドアは容易く開き、

「あ、開いた、ぐぁっ」

 紳士が部屋を出ようとしたところで、脳天を矢で撃ち抜かれ死んだ。

 「あ、」

 死んだ、額のど真ん中だ間違いなく彼は死んだ。僕は、目の前で初めて人が殺されたのを目撃した事で思った以上にショックを受けている僕自身に動揺している事に驚いた。様々な感情が錯綜する。元々怪談や幽霊の話などは御伽話や勘違いだろうと信じてはいない。だが、人が殺された事実に動揺した僕が心を落ち着けるのを待ってくれるほど現実は優しくない。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 女性が悲鳴を上げた事で正気に戻った。他の紳士たちはたった今、話をしていた仲間が死んだというのにも関わらず逃げ出すことを優先したようだ。

「あ、あのドアの罠はもう安全だ!に、逃げるんだ!罠は解除されたはずだっ!」

「よし!逃げるぞ!」

「行こう!野ウサギが来る!」

「急げ!船に殺されるぞ!」

紳士たちが脅えながら走って部屋の外に駆け出していく中、紳士達の内で一番若く1人だけ白いスーツを着た人物が呆然としていた僕といつの間にか横に居たヴィクトリカに声を掛けてくれたので、取り敢えず返事は返しておく。

「君たち!君たちも早く急がないとっ!」

「はいっ!」

 声を掛けてくれた相手も言いながら駆けていき、赤いドレスの女性も続くように部屋から出て行く。

 部屋は出遅れた僕とヴィクトリカが最後になった。僕は改めて死んだ紳士の遺体を見てしまうが、気を取り直して今まで無言だったヴィクトリカに声を掛ける。

「君は大丈夫かいヴィクトリカ?」

 声を掛けるが返事は無く、するすると死体の横を通り過ぎながら部屋の外に出る彼女を見つめる。僕の横を通り過ぎる際にちらりと窺えた横顔に読み取れる感情は浮かんでおらず無感動に見えた。

 

 船の廊下を出て先に部屋から飛び出して行った彼らを追いかけるとデッキに出た。外の天候は雨風が酷く波は大きく荒れている中、どうやら救命ボートで船自体からの脱出を試みようとしているようだがそれは自殺行為としか思えない。

「救命ボートを使う気か!?」

 白スーツの人が正気を疑うかのようなニュアンスで叫ぶが、僕も全く同意見だったし、目の前で死地に飛び込んでいく人に見かねて声を掛ける。

「こんな大荒れの海に出るなんて自殺行為ですよっ!?」

「危ないってば!!」

 デッキの手すりに駆け寄って赤い彼女も忠告するように声を荒げるが、彼らには聞こえていないようだった。

「待てよっ!落ち着けおっさん!」

 そう言って白い彼は救命ボートに乗り込もうとしていた紳士の1人を羽交い絞めにして止めるが、紳士は死にたくないと言わんばかりに暴れて喚き散らす。

「は、離せっ!この船に居ては、私も野ウサギになるっ!」 

「おいっ、もう下ろすぞ!」

 横着しているうちに操作していた別の紳士はボートに飛び乗り、無情にもボートは船から下ろされていく。

「お、おいぃ!待ってくれぇぇ!私を置いて行かないでくれぇ!」

「なんて無茶な事をっ!?」

 只でさえ大荒れの海に、操作ハンドルを手放しで勢いよくボートが落ちていくのだ、当然波によって傾いた海面に落ちた事でバランスが崩れ不安定になった重心が傾き、支えになっていたロープも千切れ飛び、救命ボートが揺れる。足場が不安定になった事で立っていられなくなった紳士たちが重なり合うようにして倒れこんだ視界には、ボートを飲み込むような高い壁が迫ってきて、

「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」」

 呆気なく、そうまるで手の平で弄ばれたかのようにボートは波で転覆し、直ぐにボートも飲まれて消えてしまった。

 僕は紙が水に溶けるように消えた人の命を、その光景を直視する事が出来ず、どうにか引き止める事が出来た紳士はこの世の終わりを見たかのように意気消沈し、白い彼は1人しか止める事が出来なかったことを悔やむように声を張り上げた。

「馬っ鹿!!馬っ鹿野郎ぉぉぉぉぁっ!!」 

 赤い彼女は手すりから離れ、僕らからも距離を取って、

「だから、警告してあげたのに。」

と呟いた。

「終わったな。」

 これまで出来事に口を出さず、傍観に徹していた彼女・ヴィクトリカがやっと口に出したのはやはり変わらず路傍の石をみるように無感動なものだった。どうしてかは分からないが、彼女のその時の表情は植物園で初めて会ったときの人形のような彼女、不思議な不思議なヴィクトリカ。彼女は一体何を思っているんだろうか?




バトルまでもう一話!がんばれわたしっ!
小学生並の文章で申し訳なしです。
友人にボロクソ言われてしまいました。がアドバイス貰って続けていけたらと思ってます。
こんな私ですがどうかよろしくお願いします。

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