ル・ロウド信者が往く!   作:生パスタ200g

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01話:Hello world

【リーンカーネーション】達成値算出。32、成功。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

【1998/6/13(Sat) 高鴨家 7:15a.m.】

 

「……にぃ、椎名にぃ」

「どーした、星?」

「んー……椎名にぃはこれからお稽古?」

「そ。御神もバタついていたとはいえ自主練は欠かさないとね。恭也兄さんにも呼ばれてるし」

「星乃、お留守番?」

「ごめんな」

 

椎名と呼ばれた少年が幼子の頭を撫でる。

 

「んーん。なのはちゃんによろしくね?」

「りょーかい。昼過ぎには帰ってくるから、母さんに晩御飯よろしくって言っといてくれ」

「ん!」

 

自身を星乃と呼ぶ幼子は重大な役割を任されたかのように大きく頷いた。

 

「いってらっしゃい!」

「ああ、いってきます」

 

これがこの一家――高鴨家の日常。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

「星のやつも大きくなったもんだなぁ……同い年のなのはよりちっこいけど」

 

今年で2歳か。そう思うと自然に頬が緩くなる。

この――諸事情によって俺が転生した世界、『魔法少女リリカルなのは』。

その日常を、俺は謳歌していた。

 

「最初はどうなることかと思ったが……」

 

自我の確立が生まれた瞬間っていうのは、中々に堪えるものがあった。

子供のふりをするのに気を使う。まぁ精神が肉体に引っ張られているせいか無意識で年相応な対応をすることもあって、『少し大人びた子』だと思われる範疇だろ。

 

目下の事態はこれから先に起きるイベント。

 

「恭也兄さん、無茶してないといいけど……」

 

原作知識が正しいならいずれ起きる、オーバーワークによる恭也兄さんの膝の不調。

士郎さんの事故自体は未然に防げなかったけど、特典による魔法をこっそり使い、回復の経過は順調。今ではリハビリの日々を送っている。

そう、俺こと高鴨椎名は転生者で、御神流(表)の門下生であり魔法使いなのだ……長いな。

高鴨家は高町家とはちょっと遠い親戚。同じ海鳴市ということもあり幼いころから入り浸っては少しずつ振るわれる剣を見ていた。

いずれ始まる原作を前に強くなりたいという下心は否定できないが、恭也兄さんと美由希姉さんに混ざりたいといった気持ちの方が強かったのが事実。何度も頼み込んで士郎さんから門下生として御神流を教えてもらえると許しを得た晩は、中々寝付けなかったことを覚えている。

ただし、表の顔としての要人警護を主とした御神流のみ。まぁ、親戚の子供に暗殺術は教えられないよな。

 

「俺が潤滑油になって高町の皆も関係は良好みたいだし」

 

まず、なのはの心の闇である孤独感を拭う事には成功しているんじゃないだろうか。

道場での稽古の合間、なのはと遊んで恭也兄さんから『光源氏とは感心しないな』とお小言をもらっているが……恭也兄さん、貴方12歳ですよね。古文の勉強は未だの筈ですが。

最近ではたまに星を連れて行って二人で遊ばせている。うんうん、仲良きことは美しきかな。たまにそこに美由希姉さんも突っ込んで行ったりして。

とまぁ、二次創作にありがちな展開もありながらの日々。これはこれで割り切れば楽しいもの。

生前はキャラクターとして愛着を持っていた人々も、実感を伴えばさらに好きになってくる。

 

「星のやつも転生者かと思ったんだが、あの様子だと違うな」

 

俺の両親は地球生まれでリンカーコアは持っていない。星がリンカーコアを持っているか調べたが結果は白。普段の仕種も俺の覚えている限り年相応のものだし。

それじゃあ他に転生者はいないのか、となると限りなく黒に近いグレー。魔力の痕跡がこの海鳴市のあちらこちらにあった。リーゼ姉妹のものかとも考えたが、彼女らならもっと上手く隠匿するだろ。

 

「……難しいことを考えすぎたな。それじゃ、今日一日も楽しく過ごしますか」

 

特典と前世の経験と原作知識で、幸せな結末(ハッピーエンド)を目指したいな。

最悪、状況になったらこのカード(魔法)を切るか、なんて考えながら道場兼高町家への道を歩いていった。

 

――その後、美由希姉さんから振舞われ(てしまっ)たおやつによって、晩御飯が食べられなかった、とだけ追記しておく。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

【2001/4/2(Mon) 高鴨家 8:43p.m.】

 

その日、一つの怪異が起きた。

命より転じた生。神の奇跡。

 

誕生日のお祝いにケーキを食べて、ゲームソフトを買ってもらって、明日から遊ぼうと兄と約束したその夜。

子供には少し遅いそんな時間帯に、星乃――高鴨星乃は星を見ていた。

 

良好な高町家との関係。自分を魔法使いと言い、ハッピーエンドが大好きだと断言する椎名にぃ。

父も、母も。満たされた環境であるには違いない。おそらく転生者であろう兄、椎名にぃの人柄も悪くない。

それは鎖とは言わない、それは絆である。

でも、ごめんなさい。星乃は星乃で、これからも星乃だけど、同時に今日からボクになる。

 

……初めの一言は決めていた。

 

「Hello world」

 

 

この一家――高鴨家の日常は、どうやら少し変わっていきそうだ。

 

 

幼きル・ロウド神官は記憶を取り戻す。

神聖魔法【リーンカーネーション】。効果は――転生。

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