【2001/8/12(Sun) 高鴨家 6:55a.m.】
――とか、そんなこともあったなぁ。
よっし、朝ごはんの前に回想終わりっ!!
それじゃあ今日一日も頑張って生きますか!!
「おはよー」
「おはよう」
「おはよう星乃。椎名起こしてくれないかしら?」
「珍しい。椎名にぃ、未だ起きてないの?」
あの椎名にぃが。朝食は三杯目すら豪快に出す――いや、居候でもなければ和食でもないからこの表現は不適当か。
昨日何かあったのだろうか? 別に御神の修行(山篭りブートキャンプ)があったわけでも、美由希姉さんの料理(マッドパーティ)があったわけでも……うーん、流石に美由希姉さんの料理ネタで弄り過ぎかなぁ。これからは少し自重、出来(る腕になってくれ)ればいいんだけどなぁ。
「ま、見てくるね」
二階にある、にぃの部屋の扉を開けると、そこには。
「椎名にぃ、起きて――」
「あっと、こら!! 暴れるな!!」
「嫌です。このままじっとしてたらシイナにサンボウされますから」
「そりゃペリ子さんの万能中距離兵器で……ってサンボウも乱暴もしないって!!」
Q.兄がベッドの上で喋る木刀を抱きながらごろんごろんしています。どうすればいいですか?
「A.そっとしておこう」
「ほ、星!? お兄ちゃんそのな!?」
「何も言わなくていいよ、椎名にぃ。腹話術の練習だからって朝ごはんは抜いちゃいけないよ? 母さんが待ってるからね?」
「星、星ぃ――!!」
しっかり扉を閉めてやる。魔法使いだもんね、仕方ないね。
実際問題、アレは椎名にぃのデバイスだと考えるのが妥当か。今まで兆候らしい兆候が無かったんだが、はてな? 拾ってきた? 降ってきた? 沸いてきた? 急にPOPしてきた?
――そうか、誕生日か。
本日8/12は椎名にぃの誕生日だったのをすっかり忘れていた。恐らくは11歳の誕生日を境目にデバイスが支給されたのだろ、う……? 原作開始時ではなく、その4年前? 少し疑問が残る。
可能ならば生まれてすぐに所持することも出来るし、原作介入時に手に入れればいい。そもそも、高町家で散々回復魔法を披露している。回復魔法以外は使っていないが、デバイスを所持していた様子は無かった。
今手に入れるメリットは、4年間の練習期間? 早期のネタばらし?
どうにもしっくりこない。そもそも、椎名にぃは良い意味での原作介入派の転生者だ。しかも、パッピーエンド主義者。
その時こぼれ落ちそうな砂を拾い集めるのが目的で、原作を根本からぶち壊すようなことはしないはず。
本来4年後の誕生日に贈与予定だったものが……否、8月にデバイスを渡されても一期は終了している。
ならば……バグ?
本人の意にそぐわない形の受領。うん、まだ納得できる内容だ。その原因が不明とは、モヤモヤしなくもないが。
ふむ。――仲介者さんの通信時に考えた予測の一つに『干渉の為のエネルギー』というものがあったはず。
三上役がそれぞれ残りの転生者に品を送るとして、原作開始時当日にデバイスを手に入れるという要望が複数名に渡った場合、瞬間的なエネルギー不足に陥るのではないのだろうか。逆説、継続的になら問題はないと言うこと。
そうして原作前に送られてきた現象が、椎名にぃのアレ、と。ふむ、中々悪くない想像だと思う。
しかし――これで椎名にぃの戦闘能力は向上したわけだ。
心では良きかな良きかなと思う自分が居る。
その反面、羨ましがる自分が居るのも事実だった。
精神が肉体に引っ張られた所為か、年甲斐もない。しかし――目に見える華々しい力を目の前に、まるで宝くじが当たったかのような偶然さでそれが現れたのは……ボクは嫉妬している? それとも対抗心を燃やしているのだろうか?
あさはかな だれがしんだと いうのです いやいやちょっと お手伝いをね?
転生の際にデバイスについての注文をするのを忘れた自分が悪い。忘れていたのだ。キャラクターシートを作るのが楽しすぎたのだ……駄目だ思考が纏まらない。自分の気持ちの高ぶりが手に取るように判る。
そうだ。羨望している。待望している。未知の力を。新たな力を。
そうだ。疎ましく思っている。一歩ずつ進むのではなく、段飛ばしで力を手に入れることに。
――そういえば、仮GM権限なんてもの、あったな。
そんなタイミングで、そんなことを思い出してしまった。
――試して、みるか。
まるでけん玉の大皿を試してみるかの如く。
――【今回のミッション達成を、
そんな気軽さで。
――第二スキューズ数×6回分の達成とする】
引き金を引いた。
◇◆◇◆◇◆
「椎名にぃすぐ来るってさ」
「珍しいわね、椎名がおそようさんなんて」
「かあさん、椎名だって子供なんだし寝坊ぐらい珍しいことじゃないよ」
「そうね。星乃、もう少し待てる?」
「うん、大丈夫だよ……あれ?」
「ん? ああ、箸、折れちゃったのか?」
「その箸も結構長いこと使ってたからねぇ。今日あたり買いに行きましょう?」
「う、うん。今は割り箸を使うね?」
「おはよう、寝坊してごめん……どうしたんだ、星?」
「あ、あはは、ちょっとね。箸が折れちゃった」
「ほう? 怪力にでも目覚めたか?」
「握撃出来る様になっても恭也兄さんに勝てそうに無いなぁ」
「……それもそうか」
「ま、椎名も座って。少し遅くなっちゃったけど、朝ごはんを食べましょう!」
「「「「いただきます」」」」
◇◆◇◆◇◆
てってててー、てってててー、ててててて、ぽん。
はーい。星乃君とほっしーのなぜなに豆知識のじかんだよー。
今回は第二スキューズ数について説明するね。
わーい。星乃君、第二スキューズ数ってなんなのさ?
うん、それはね。素数の個数関数π(n)が対数積分li(n)より大きくなる、つまりπ(n)>li(n)が真となるnのことなんだ。
は?
それで、リーマン予想が真の場合のnを第一スキューズ数Sk1、偽の場合のnを第二スキューズ数Sk2と呼ぶんだ。簡単だね!!
いやいや。は?
それで、第二スキューズ数の解nはn=e^[e^{e^(e^7.705)}]とされ、近似値は10^{10^(10^963)}。慣習的に10^{10^(10^1000)}なんて使われ方もするね。今回ボクが定義した第二スキューズ数Sk2はこの10^{10^(10^1000)}のことだよ。
待って、ねぇ、待って。タイム。ウェイト。ストップ。
大きさがわからない? しょうがないにゃあ。じゃあ累乗数の上位桁10^1000ですらどれだけ大きな数かについて説明しようかにゃあ。
ブレイク、ブレイク!!
観測可能な宇宙の直径が930億光年。つまり大体8.80×10^26m程度かにゃあ。電子の直径がシュヴァルツシルト半径を真とした場合の2.6×10^(-57)mだったとしても、タったの電子3.4×10^83個分しかナイにゃあ。ハハッ少な杉ワロリング。ニゃあ。
もういい……!もう……休めっ……!休めっ……!
どうしタノカナほっしー君にャア? 続ケルニゃあ。10^1000と3.4×10^83がどレダけ違うカって? 10倍すレば3.4×10^830になる……なんて考えナイデほしイにゃあ。10倍しテも3.4×10^84みゃあ。こレが累乗表記のおっそろしイトころみゅう。だから、必要な倍率は単純に考えて10^917倍になルのデしゃア。根本的に比較ノ対象にすらナラナカッタにょが。ゴミが。
押せっ……押せっ……!押せっ……!押せっ……!
ま、10^1000ですラたかが累乗数の上位桁っていうンだから第二スキューズ数Sk2がどれだけの数字かっテノは良くわかっタよね。第二スキューズ数×6回数分の成長をしタボクの力は留まる事を知らナい。有頂天ニナる。ちなミに第二スキューズ数はクラス4の巨大数に分類さレルんだ。モウ判ルヨネ? ソウ、上ニハ上ガ居ルンダ。グラハム数、夏おこじょ数、ふぃっしゅ数、ラヨ数――
わ、わ……なぜなに豆知識、完。終了。終わり!!続かない!!続かないったら続かない!!
◇◆◇◆◇◆
『高鴨星乃
種族:人間 [特徴:剣の加護/運命変転]
生まれ:一般人
HP:Sk2+x MP:Sk2+x
器用Sk2+x 敏捷Sk2+x 筋力Sk2+x
生命Sk2+x 知力Sk2+x 精神Sk2+x
・冒険者レベル15
【全技能】15
【全一般技能】15
・特技
【タフネス】【追加攻撃】【投げ攻撃】【鎧貫き】【ルーンマスター】
【バトルマスター】【トレジャーハント】【ファストアクション】【影走り】【トレジャーマスター】
【匠の技】【治癒適正】【不屈】【ポーションマスター】【韋駄天】
【縮地】【鋭い目】【弱点看破】【マナセーブ】【マナ耐性】【賢人の知恵】
【ワードブレイク】【魔法拡大/数/距離/時間/範囲】【防具習熟A/S/非金属鎧】【防具の達人】
クエスト達成:【いっぱい】回
経験点残 【いっぱい】点 成長回数 【いっぱい】回』
――どうしてこうなった……。
頭に血は昇っていましたが、ギャグのつもりだったんです。ホントに承認されるとは思わなかったんです信じてください。お願いしますなんでもしますから。ん? 今なんでもするって……って、そうじゃなく!!
どうしよう、コレ。海鳥たちも迎えてくれそうにないよ。
……あ。
ありがとう仲介者さん。ありがとう過去の自分。ありがとう特典③。ありがとう【自己の能力を完全に可逆的に制御出来るものとする】。万が一のため、手加減を必要とする際の保険のためにとっておいてよかった……よかった……。