萌えっ娘もんすたぁSPECIAL -Code;DETONATION- 作:まくやま
心に信じ固めたもの。魂を託し掲げたもの。
それはあまりにも気高く、尊く、そして愚かしい義に対する真っ直ぐな想い。
二つ目の巨壁を乗り越えた少年に、偶然は新たなる者を呼び寄せる…。
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- ハナダシティ 萌えもんセンター -
ダイヤは考えていた。
現在のメンバーはマグマラシのノア、モココのメルア、サンドのサーシャ、トゲピーのソーマの4人。奇しくも全員♀だ。いくらみんなが気兼ねなく接してくれるとは言え、正直肩身が狭くなるんじゃないかと考えたこともある。
というか昨日の同衾はかなり参った。身体つきは皆幼いものの、生々しい肌の温もりには青少年の少年たる部分が青年へと進化しかねない。
そんな中で出会ったストライク♂。しかも向こうから仲間に加えてほしいと言ってきている。それはいい。むしろ大歓迎したいところだ。
…なの、だが。
「なァ頼むZE!ミーをミスター達の旅にDo go(同行)させてくれってばYO!!」
よりにもよってこんなヤツだった。分からないと思うが分かっていただきたい。こんなヤツ、だったのだ…。
とにかく相手を振り切るように一度話を切るダイヤ。そうしないと話が前に進まない。
「ち、ちょーっと待ってくれ…。まずは、だ。その…なんで俺に?」
「…ミーには目的がありマース。But、そいつぁミー独りじゃどうにもなんねぇと確信したのSA…」
「目的?」
「強くなること…。そう、もっともっと強い力を手にすることなんだッZE!
そんな感じでMUSHA-SHUGYOしながら他所から余所への根無し草やってたんだが、ちょーっとばかりケアレスなミスをやらかしちまってYO。不覚を取ってあの川でドンブラコッコやってた時、そう!正にその時ユーが助けてくれたってワケSA!あのTesticle Bridge(キン○マ橋)からDive inしてくれてなッ!!」
「うぜぇ。ちょっと黙ってくれ。あとンなもん英語で言うな」
「オーゥ、ミスターは案外短気ネ。短気は損気。マジメが過ぎても付いてくるヤツぁすくねぇZEヨ」
「言うんじゃねぇよ!これでも結構気にしてんだぞ!」
「HAHAHA!まぁそんなワケで、命の恩人たるミスターに惚れ込んでお願いしてるのSA!」
刃の峰で肩をバンバン叩きながら気楽にそう言ってくるストライク。最初の片膝ついてくる仰々しさは何だったのか。というか叩かれてるところがちょうどコイツを助けた時に傷付いた場所なせいで、肩がズッキズキ痛んでいる。
「痛ぇ!痛ぇって!大体な、強くなって何をするつもりなんだ!?」
ダイヤが思わずそう言ったほんの一瞬、俯いた彼の目が怒りで鋭さを増した。奥歯を軋め、身体も一瞬固まって止まる。そこから放たれた言葉は、思いも寄らぬ深い感情が籠っていた。
「――…Revenge…同胞の、仇討ちだ…!」
椅子に座って向かい合い、ストライクが抱く目的の理由を聴くダイヤ。
曰く、彼らは自分達の住処が何者たちに襲撃されたと言う。その中で命からがら生き残ったこのストライクが、仲間たちの仇をとる為にその”何者たち”の足取りを探りながら、独りその連中を討つ為の力を求めていたそうだ。
その旅の中でロケット団の数々の悪事を知り、自分が復讐する相手も連中であると確信したのだと言う。
悲惨な境遇。凄惨な過去。ダイヤの眼前に座るストライクはそれを痛ましく語ってくれた。…のだが、ところどころに挟まる英語とか明らかになんかどこか間違った日本語使いとか擬音とか、とにかく理解と把握に時間がかかったせいでさほど感情移入出来なかった。
少年はこの瞬間初めて痛感した。「言葉って、大事だ」と。
「…とりあえずは分かった。それで復讐、か…」
「イエース…。ミーはヤツらが許せナイ。だから!抹殺すると宣言したッ!!」
「何処の赤い三倍速だお前はッ!!」
「ヒュー、よく分かってるじゃねぇか我がトレーナーのミスター・ダイヤ。流石だZE。ナガレイシだZE」
「なんか知らない間にトレーナーにされちゃってる!?いいのかコレで!いいのか俺ェ!!」
「HAHAHA!!人生なんてEnjoy and Exciting!!カゲキに楽しんだヤツが勝ちなのサァ☆」
「復讐なんて大仰なモン掲げてるくせになんだその言い草は!!仲間が泣くぞ!大泣きだぞ!!草葉の陰から枕を涙で濡らしまくってんぞッ!!」
全力でツッコミに回るダイヤ。矛盾を孕んだハイテンションに晒されてしまっては、さすがの彼もツッコまざるを得ない。
そんなツッコミの連続で息が切れる彼の背後に、謎のプレッシャーが感じられた。空気が重く沈み、地鳴りのような音が聞こえるようである。直感で分かった。これは、怒りの念だと。
「…坊、喧しい。一体何を糞五月蠅く騒いどるんじゃ。妾の休息をそうまでして邪魔したいのかぇ?」
「センターでは騒音注意のルールが有ることを忘れたとは言わせませんよマスター。せっかく私たちも安眠させて貰っていたというのに…」
顔を固まらせながら振り向くダイヤが見たものは、白い身体が黒く見えるほどにオーラを迸らせるソーマと、同じく黒いオーラの中で眼鏡だけが白く輝いているサーシャ。憤怒に燃える二人の姿だった。俺は悪くねぇと言いたくもなったが、それを聞いてくれる空気ではない。またボコボコにされるのがオチだ。だがそんな彼女らを制してくれる、ダイヤにとって一番の味方がいた。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて…。その、ご主人様だって好き好んでうるさくしたわけじゃない、でしょうし…」
「そぉだよぉ~。まだお昼なんだし、きゅうけい終わりにしよっ」
ノアとメルアが間に入り、怒りに滾るサーシャとソーマを抑えこむ。こう、良心的なメンバーがいるだけで当たりが弱くなるのは本当にありがたい。
「の、ノア!メルア!悪い助かった…!」
「ったく、二人はマスターに甘いんですから…。それでマスター、そちらが昨日の?」
「あぁ、コイツが――」と紹介しようとしたその時だった。
「Hoooooooo!!!ブラーボゥ、やるじゃねぇかミスター!正統派従順タイプ、無邪気な妹タイプ、真面目な委員長タイプ、そして年増ペドタイプまで揃い踏みたぁYO!
ユーは中々にHENTAIの素質を秘めてやがるZE。ミーが保証してやる!ユーはBIGになる!その嗜好性癖は万国共通のOh Do!だからなッ!!」
「意味分かりたくないけど止めてくんないそんな言い方!!そういうビッグ目指してんじゃねーし!!」
…会話とは、言葉と言葉が意思を持って相手同士に交錯する様をいう。それを言葉のキャッチボールと喩えるのは、至極真っ当な表現と言えるであろう。
だがダイヤとその手持ち…メルアを除く3人は感じていた。眼前のコイツの放つ言葉は、投げてくるボールは明後日の方向からスライダーの軌道を描きキャッチャーの後頭部へぶつけてくるような、端的にいうと辛うじて話が通じるんだけどお前は一体何を言っているんだと返答せざるを得ない言葉の数々だった。疲れる。ただ疲れる。
そんな悪意なき全力ストレッサーに歩み寄ったのは、やはり最も悪意なき存在、メルアだった。
「おにーさん、元気になったんだ。良かったね!」
「おうYO!それもこれもミスターのおかげだッZE!今日からユーたちとトゥゲザーさせてもらうから、夜露死苦フレンズ!!」
「わぁ、仲間になるんだ!よろしくねっ!おにーさん、名前はなんていうの?」
「Oh Year!よくぞ聞いてくれましたってんDA!耳ン穴ァかっぽじって、とくと聞いて刻み込むんだゼェーット!!」
「えぇから早よ言わんか…。一々前置きの喧しい奴じゃ」
「ならば聴けッ!!!そう、ミーこそは…」
テーブルの上へお立ち台のように立ち、演武をするように回る馬鹿。まるでスポットライトを浴びてるような、逆光を受けているような…そんな、世界で今一番輝いているのはこの俺自身であり、なおかつガイアがもっと俺に輝けと言っているのだと言わんばかりのオーラらしきものを纏っているように思えてくる。
一挙手一投足、そのそれぞれの動きがなまじ滑らかなのが余計腹立つ。無駄に洗練された一切の無駄が無い無駄な動きとは、かく言うものだとダイヤは思った。そんな波紋使いみたいに時々ポージングを挟みながら、馬鹿は自分の名前を高らかに、何処か色めかしく名乗りあげるのだった。
「I am a Super Ultra Sexy Hero!…Xan<斬>」
今まで見た中で史上最高のドヤ顔。完膚なきまでにやり切ったって顔でダイヤ達の方を向く馬鹿野郎。ダイヤとサーシャは呆然としノアは困惑。メルアはまたカッコいいものを見たような輝かしい目で見つめている。そんな中でただ一人、ソーマだけが冷淡なツッコミを行うことが出来たのは僥倖だった。場の空気的に。
「――あぁ、つまりジョニーじゃな」
「Whyッ!?Why Japanese Peapleッ!!?り、リトルBBAガール…Why何故にミーのファーストネームを知っているアルか…?」
「ド阿呆めが。スーパーウルトラセクシィヒーローなどと言うたらジョニーしかあるまいて。つか誰がババアじゃバ○サン殺すぞこの糞虫が」
「フッ、バル○ンやフ○キラーなんかじゃあミーは殺れねーZE。ってぇButそうじゃねぇ!ミーの名は斬だッ!本来ならばZ・A・NなところがX・A・Nで斬と読むのだッ!!どうだ、カッコイイだろうッ!!?」
「カッコイイかどうかは置いといて、お前は斬なのかジョニーなのかどっちなんだ…」
「ジョニーは確かにマイファーストネームだが、それは世を忍ぶ仮の名前…そうフィクティシャスネーム!だぁっが違う!斬は我が魂…真実の名前ッ!トゥルーソウルネームなんだZEッ!!」
「え、えぇーと…サーシャ、一体どういうことなんです…?」
「私に振らないでノア。理解したくもないわ」
「うゅぅ~…よく分からないから、メルはジョニーって呼ぶね!その方が呼びやすいし!」
「Oh shit!聞き分けのないおジョーちゃんだZE!HAHAHAHAHA!!」
意味の解らないテンションに圧倒されながら、ダイヤは呆れ果てて疲れ切った顔を前面に押し出ていた。今まで感じたことのないほどのとんでもない疲労感である。
…考えてみればそれもそうだ。幼少からの友人であるロイは、自己中心的なところがあるけども基本的にダイヤよりも遥かにしっかりした男だ。相棒のノアは忠実なタイプと言って間違いないし、メルアもよく言う事を聞くいい子。委員長気質なサーシャに至っては説明の余地はないだろう。ソーマにしても、時々無茶振りを食らうことはあれどそこまで派手に動く方じゃない。
しかしそこでコレだ。こんなド真ん中予想GUYストライクを仲間に引き入れてしまっては、心労が増える一方である。最悪癒しを求めて間違いを犯しかねない。ダイヤの脳内は、速やかにその結論へ辿り着いた。だったのだが。
「なんか…すごい方が仲間に加わっちゃいましたね、ご主人様」
「ノア、俺はアイツを仲間にした覚えはない。まだ野生の今ならばそのまま野生に返してあげることが出来るしな。彼はきっと野生の中で野性を持って自分の目的を果たす方が良いと思うんだ、うん」
「そうなんですか?図鑑にもちゃんとパーソナル入ってますし、もう決められたものだと…」
「あっれー?そんなワケないだろノア。俺はまだそんな操作は一度も――」と言いながら図鑑を見てみる。そこにはハッキリと、【ジョニー…種族:ストライク 親:ダイヤ】と表示されていた。
それが信じられないように何度か見直す。目を逸らしたりパチクリしてみたり、とにかく何度も確認した。本当に本当なのか。本当だった。
「ウゾダドンドコドーン!!」
「HAHAHA、また懐かしいネタだなミスター!まぁそんなワケで、てめーらミンナよろしく頼むッZEィ!!」
とても清々しい笑顔でポージング。キラッと星が輝いているようだ。
もちろん、一度親として登録されたとしても逃がすかどうかは彼らの関係次第。自由ではある。だが、ダイヤは思わず悟ってしまった。コイツは離れる気が無いんだと。
なんとなく、腹が痛くなったような気がした。
「……サーシャ、胃薬買ってきてくれない?」
「…私の分も貰いますね。あと頭痛薬もつけてきます」
「…おっけー。頼むわ…」
重要な任務を、そう言う面に対して最も信頼のおけるサーシャにお願いするダイヤ。一体どれだけそんなクスリに頼らなければならないのか。そう考えるだけでも、胃が痛くなりそうだ。