萌えっ娘もんすたぁSPECIAL -Code;DETONATION-   作:まくやま

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第1話『始まりの君と』 -2-

 

 

 

 …1週間後。

 閑散としたのどかな町であるマサラシティと、そこにある小さな一軒家。物語の始まりを告げるのは、いつだってこの家からなのである。

 「……あー、朝かぁ…」

 カーテン越しに入り込む朝日を浴びて、ぼんやりと目を覚ます少年。

 気怠そうに上半身を起こし、欠伸をしながらぐぐぅっと寝起きの身体を伸ばす。

 階下からはテレビから流れるニュースの声と、食欲を刺激する朝食の匂い。これぞ朝って感じだ。

 寝惚け眼を擦りながらベッドから降り、ボサボサの短髪をわしわしと乱雑にいじりながら階段を降りだした。

 

 「おはようダイヤ。朝ごはん、出来てるわよ?」

 「ん、おはよう母さん」

 階段から降りてきた少年…ダイヤが、母アオイの挨拶に生返事で返す。

 そのままテーブルに座り、用意された朝食をかじり出した。今朝はベーコンエッグとトースト、木の実のミックスジュースだ。

 「そういえば、オーキド博士に仕事を手伝って欲しいって言われてたわよね?

  もう一週間くらい前かしら…」

 「…そんな前だっけ?2~3日前ぐらいだった気がするけど…」

 おもむろに話しかけるアオイ。

 その問いに答えるダイヤも、随分曖昧としたものだった。完全に失念していた、って顔である。

 「どっちにせよ、そろそろ行かないと博士も怒るわよ。

  ったく、いくら余裕を持たせてくれたからって、一週間も何してたんだか…」

 「半分は私用。もう半分は誰かさんの布教に付き合わされたんですがねー。ったく、何がマイナーアニメ特撮祭りだよ…」

 「そういう口答えする子には…」

 言うが早いか、アオイがダイヤの背後に回りこむ。

 音もなく残像を纏って背後に回るそれは、正に某なんとか閃空だ。そして――

 「くおぉだッ!!」

 相手の右の脇の下に体を入れて両手で挟み込むように首をホールド。そしてこちらの左足を相手の腰から股へ回し込み、上体を起こす。

 すると歪に折れ曲がったダイヤの身体から、ギリギリという嫌な音が発せられ、彼にはもれなく激痛が贈呈されていた。

 あまりにも有名すぎるプロレス技、コブラツイストである。

 「ちょ!痛ッ!痛いッ!!

  コブラ?コブラツイストッ!?昨日何見やがったママーン!!」

 「こどくぅなぁ~~シィルエェ~ット♪ 動きだぁ~せぇ~ばぁ~~♪」

 「それは紛れも無くヤツかぁッ!!!」

 コブラツイストを極められながら、ダイヤはある男の姿を思い出す。

 短い金髪に丸っ鼻、赤い全身タイツを身にまとい、左腕がサイ○ガンの”ヤツ”の姿を。

 …それが、この家の日常なのだから恐ろしい限りである。

 

 「あー、痛ってぇ…。ったく、ちょっとは自重しろよな」

 逃げるように家を出てきたダイヤ。色を合わせた赤のジャケットとキャップを被り、黄土色の小型リュックをぶら下げながら、家の前で体を動かしてコブラツイストによってもたらされたダメージを緩和させる。

 体の調子を戻したら、晴天の空に向かってもう一度大きく背伸び。

 一息ついて戻したら、すぐさま持ち物を確認する。

 「…財布、良し。ポケナビも良し。その他諸々オールオッケー、と…。

  さって、何を頼まれるのやら」

 呟きながら歩き出す。目的地はマサラタウンの名物とも言える建物、オーキド博士の萌えもん研究所である。

 

 

 多くの荷物や機材が置かれた白い空間。パソコンやよく分からない計測機器、ギッシリと綺麗に並べ詰められた本棚があり、中でも目に付く大きな機械は、萌えもんセンターに備えられている萌えもんの回復設備と同じものだ。その向かいに置かれているテーブルには、一週間前と変わらずに3個のボールが鎮座していた。

 しかしその研究所の中にオーキド博士の姿はなく、そこには代わりに、回復マシーンにもたれかかった少年が一人居た。

 背格好はダイヤと同じぐらい。やや釣り上がった目に、赤みがかった明るい茶髪の尖った髪型が印象的な少年だ。

 彼の名はロイ。オーキド博士の孫であり、ダイヤの幼馴染でもある。

 「ようダイヤ」

 「おうロイ。博士は…居ないのか。まぁあの人も忙しい人だけどさぁ」

 「なに、あの爺さんのことだ。どーせまたどっかその辺をほっつき歩いてんじゃねェのか?」

 「だったらまだ近くに居そうだな。俺ちょっと探してくるわ」

 「おう、じゃあ頼むな。入れ違いになったら連絡ぐらいはしてやるよ。

  ったくあの爺さん…ヒトを呼び出したんならちゃんと来いってんだ」

 (…なんだ、ロイも博士に呼ばれてたのか。いや、どっちかってーと俺がロイのオマケなのかね。

  しっかし、一体何の用なんだろうねぇ?)

 ボヤくロイに呆れた笑いを返し、適当な思考を巡らせながら研究所を出るダイヤ。

 こうして自分から面倒を名乗り出るのも、一週間もの時間を空けてしまったという小さな負い目である。責任感が有るのか無いのか微妙なトコロだ。

 外は相も変わらず晴天真っ盛り。日も高くなり始める時間帯で、見事な洗濯日和と言えよう。

 「さーって、あのフーテン博士は何処に行ったのかなぁ」

 思い当たる場所があるわけでもない。が、ジッとしてても何もならない。なので思い付くままに、動くことにした。言い換えれば、テキトーってことだ。

 町の中は勿論、東西でを柵に仕切られた森や南にある21番水道の入り口付近にも、博士の姿は見えなかった。ダイヤが最後に行き着いたのは、北にある1番道路手前。町を出る一本道だった。

 「…まさか、トキワの方にまで行ったんじゃないだろうな…」

 あまり考えたくないケースを考えながら道路の先を見据えるダイヤ。その顔は、明らかにイヤな…面倒くさいと言わんばかりの顔をしていた。

 そんな彼の背後から、突然大きな声が放たれてその動きを止める。

 「おーい!待て、待つんじゃぁー!!」

 「な、なんだ!?」

 驚き振り返るダイヤ。彼に向かって一人の元気な老人が慌てたような小走りで寄って来た。ダイヤが探していた、オーキド博士その人である。

 「危ないところだった…。

  まったく、草むらでは野生の萌えもんが飛び出すことぐらい知っておろうに?」

 「そうは言うがな大佐、こっちはアンタを探しに行こうとしてたわけでさ。それをそんな風に言われるのは、ちょっとばかし心外ッスよ」

 博士の心配に対し、戯けたように返すダイヤ。だが博士には、そんなナメた態度を取る孫の幼馴染に対しても強いカードを持っていた。

 「…ほぅ、人からの呼び出しに対して一週間待たせた挙句そう抜かすか」

 鋭い一撃。そのカミソリのように鋭利な一言は、ダイヤの未熟な考えを瞬時に改めるに容易い言葉だった。

 「すいませんでした博士。何なりとご指示を」

 腰を直角に曲げて、最上級の敬礼して博士の指示を待つ。きっと静かに怒りを秘めていると思っていたが、博士の声はそれを一切感じさせないほど、”いつも通り”だった。

 「うむ。それでは、ちょっとワシについてきなさい」

 オーキド博士の先導で道を進む。辿り着いた其処は、先ほどダイヤが出て行った研究所だった。

 

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