萌えっ娘もんすたぁSPECIAL -Code;DETONATION-   作:まくやま

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第2話『冷たい夜を、突き抜けろ』 -2-

 

 昨日通った1番道路を再度進むダイヤ。今度はノアをボールに仕舞い、腰のホルダーに装備している。

 「それでご主人様、まずはどこに?」

 ダイヤの耳に響くノアの声。右耳につけたイヤホンマイクから流れるものである。ボールとリンクさせることでワイヤレスで中の萌えもんと話ができる便利グッズだ。

 コレも、萌えもんがヒトと酷似した知能を持っているが故に生み出された叡智といえる。

 「とりあえずもう一度トキワまで行って、あとは俺のセンサーを頼りに新しい仲間をゲットしに行くつもりだ」

 「センサー、ですか?」

 「あぁ、萌気センサーと言ってな…」

 

 

『説明しよう!

 萌気(ほうき)とは、この世界に存在するあらゆる物体から発せられる気のことである。

 そして、全ての生き物には其々が固有のセンサーを持ち、萌気に触れることで反応を示すのだ。

 その反応こそが世間一般で言う【萌え】であると、筆者はそう仮説を建てた。

 勿論センサーの感度には個人差が存在するし、どの萌気にどの程度反応するかに至っては、一度も同じ結果になったことがない。

 嗜好は千差万別。まだまだ研究が必要ということだな。

 

 なお、反応した際の具体的な症状について知りたい場合は、よく【変態】と呼ばれる諸兄の活躍や行動を参照すればひと目で分かるぞ!』

 

 

 「…そんな感じで、センサーを当てにしてココをうろついてるんだが…」

 そう言って入り込んだのはトキワシティは西にある、22番道路に続く小さな草むらだった。

 先ほどとは打って変わって、攻撃的な鋭い目と小さな羽根を持つオニスズメや、まるで少年みたいな格好で格闘戦を好むバルキーなども飛び出してくる。

 その其々を、ノアがバトルで打ち負かしたり話し合いで去って貰ったりしていたその時の事だ。

 二人の目に前に現れた…と言って良いのか、暖かな陽気を受けて気分よく眠っている萌えもんを見た瞬間、ダイヤに電流が走った。

 「――ッ!?」

 眼に前にいたのは、ふんわりカールした黄色い髪と、同じく黄色いモコモコした着ぐるみを着た少女。耳からは黒と黄色の縞模様をした突起、腰辺りからも耳の突起と同じ色の尻尾が伸びており、その先にはまた輝く黄色の玉が付いている。

 紛うこと無く彼女も萌えもんであり、懐から神速で開いた図鑑からは【メリープ】だと読み込まれた。

 そこまで分かれば、行動は早かった。

 「…あの、ご主人様?」

 「ノア、捕まえるぞ。俺のセンサーは既にレッドゾーンを振りきっている」

 「り、了解です…」

 モンスターボールを構えるダイヤの隣で戦慄するノア。そこで彼女は、あることを思い出していた。

 (…変だ。ご主人様がなにか変だ…。あの眼は、初めて私を見た時と同じ…)

 というところまで思考が至り、結論が導き出される。否、多少鈍くてもコレで分からないなどありえない。

 (―――なるほど。これが、萌えですか…)

 「っしゃあああああいっけぇええええええ!!!」

 派手に叫びながら大きく振りかぶってぶん投げる。

 その声に気付いたのか、メリープが目を覚ました…が、寝惚け眼では現状を把握する事など出来るはずもなく…

 「きゃうっ!」と、可愛らしい声をあげて頭にボール直撃。そのまま赤い光になってボールへと吸い込まれていく。

 その後ゆらゆらと2,3度揺れ動くが、やがて動かなくなりカチッという閉鎖音が鳴った。

 「おぉっし!ゲェェッット!!」

 「お、おめでとう、ございます…?」

 さすがに疑問形である。と、そこに…

 「ちょっと待ちなさい、そこのトレーナー!」

 草むらからまた一人、別の萌えもんが飛び出してきた。黄金に流れる髪と小さく飛び出た耳。前面が白のワンピースは袖から背面にかけてが髪色と同じ黄金色で、どこか砂岩をイメージさせられる。

 スカートの裾から覗く太く短めの尻尾を引きずる少女は、ノアや先ほどのメリープよりも、体格を含めてやや大人びて見えた。

 そして最大の特徴として、彼女はあたかも真面目そうな、楕円形のメガネを装着していたのだ。

 「見ましたよ。貴方今、メリープの彼女と話も何もせずに突然ボールを投げましたね?それは萌えもんにとって非道に違いありません!」

 「うっ、えっと、その…す、すまない。つい衝動的に…」

 「すまないで済んだらジュンサーさんの仕事はありません!貴方のようなヒトには、粛清が必要なようですね!」

 長い袖の先から小さな…しかし人の身と比べるには大きな爪を伸ばし、ダイヤに襲い掛かる萌えもん。即座にノアが、ダイヤの前に出て彼女の攻撃を受け止める。

 「クッ…邪魔をしますか!」

 「わっ、私はご主人様の萌えもんだもの…!」

 「ノア!相手の娘は…!?」

 少し怯んだものの、すぐさま図鑑を開いて確認する。映しだされた姿にメガネは付いていなかったが、それ以外の外見では完全に【サンド】であるとハッキリした。

 「地面タイプか…!ノア、体当たり!」

 「…!たあぁっ!」

 受け止めていたサンドの爪を弾き飛ばし、開いた身体に体当たりを放つノア。それを受けて退くサンド。だがすぐに体制を立て直して、再度爪で襲い掛かる。

 「ノア、かわして火の粉だ!」

 「てぇぇいッ!!」

 ダイヤの指示に合わせノアの後ろ髪が炎と化して伸びる。炎タイプであるヒノアラシ種の特徴であり、炎技を用いる時はこのように髪の一部が燃え上がるのだ。

 サンドの爪攻撃を横に避け、同時に右手へ集められた炎を、薙ぎ払うように外へ振るう。手の中の炎は小さな火種の雨となり、サンドへ直撃していった。

 「きゃああっ!」

 「ご主人様、今です!」

 「お、おう!モンスターボールッ!!」

 思わぬノアの言葉に反応して、空のボールを投げつけるダイヤ。弧を描く一投はサンドの頭にぶつかり、先ほどのメリープと同様に彼女を光と化してボールへと吸い込んだ。

 やがて動きを止めるボール。ほんの僅かな時間に、ダイヤは二人の萌えもんをゲットするに至ったのだった。

 「…っぷはぁ~…お疲れノア。一度戻って、萌えもんセンターに行こうか」

 「ふぅ…はい、分かりました」

 ひと声かけてノアをボールに戻すダイヤ。草むらには他の萌えもんの気配もするが、特に突っかかってくるようなことは無さそうだ。

 なんとか刺激しないように草むらを離れ、センターへと帰るダイヤだった。

 

 

 

 -トキワシティ:萌えもんセンター-

 「マサラタウンのダイヤさーん、萌えもんたちの治療と回復、終わりましたよー」

 センター内に響く綺麗な女性の声。それを聴いてすぐにカウンターへと駆けるダイヤ。全国各所のセンターを取り仕切るジョーイが、笑顔でダイヤのモンスターボールを返してくれた。

 「ありがとうございます」

 「遠出する時などは、フレンドリィショップで傷薬や異常回復薬をお持ちになっておくと良いですよ」

 などといった些細なやりとりを経て、再度センター内の一角、ソファーの置いてある休憩所に陣取った。

 「ふぅ…よし、みんな出てこい」

 言いながら軽くボールを投げる。3つのボールが開き、光を発して3つの影が顕現した。

 ノアの隣に、さっきゲットしたメリープとサンドの二人。メリープはきょとんとした眼で、サンドは何処か責めるようなむーっとした眼でこっちを見ていた。

 「…あー、なんだ。まずははじめまして、かな」

 「うん、はじめましてっ!」

 元気な笑顔で答えたのはメリープだった。とても無邪気で、元気のいい返事だ。それだけで外見相応に年下な雰囲気が漂ってくる。

 「おにーさんがあたしをゲットしたの?」

 「おう。突然で悪かったな」

 「ほんとだよ~。ひなたぼっこしてたらとつぜんボール投げられたんだもん」

 ちょとだけ不満気だが、コレはどちらかと言うと妹が上のものに対して露わにする可愛らしい不満の声だ。

 やっぱり可愛い。ダイヤのセンサーは、彼にとって最も都合のいい萌えもんをしっかり捕捉していたのだ。

 「本当にゴメン。怖かったか?」

 「ん~、ビックリしただけ。でも、ゲットされたってことはあたしもなかまってことだよねっ!」

 「あぁ、これからよろしくな!」

 小さな手とキュっと握手し、互いに笑顔になる。二人共特に深い考えはないのが良かったのか、こうしてメリープはあっさりと仲間入りしたのだった。

 …だがもう一方の新顔は、未だ厳しい物だ。

 「…で、私までゲットした理由は何なのでしょうか?」

 「あー、その…勢いで」

 サンドの顔に青筋が立ったような気がする。

 「…つまり私は、信義や大義…いえ、そこまで言っては大仰でしょうが、目標や目的も無い方に捕らえられてしまったと」

 「いや、まぁ、その…当面の目標はあるんだけど、ねぇ…。…なぁ、ノア?」

 「え、えぇ、まぁ…」

 怪訝な顔でダイヤとノアの顔を見比べるサンド。メガネの奥の黒い瞳に、つい呑まれそうになってしまう。

 「……その目的というものは?」

 「ろ、ロイ…って言っても知らないもんな…。昨日一緒にトレーナーになった幼馴染でさ。俺達昨日そいつにしっかり負けちまって、それのリベンジをしてやろうと思っておりまして、はい…」

 更にジッと見つめてくるサンド。

 可愛らしい、というよりも整った美人顔を寄せられて、ダイヤも少し赤面してしまう。

 そして再度ノアとメリープの姿を見回して、ふーっと溜め息を付いた。

 「…分かりました、ご一緒してあげましょう」

 一体何を納得したのか、上から目線でそう言ってきた。嫌味はないし傲慢という訳でもないが、やはりちょっと気になってしまう。

 「いや、その、気に入らなかったら逃がすよ?だから――」

 「私が良いと言っているのです。まずはその目的を達成するのでしょう?それにバトルならば、手段を選ぶ必要はないと思いますが」

 謎の眼力に圧倒され、ダイヤはただ首肯するしかなかった。そこでようやく、サンドが微笑んだ。

 「決まりですね。よろしくお願いします、マスター」

 「…おう、よろしく。それじゃまず、二人にもニックネーム付けることから始めようか」

 そう言って考えだすダイヤ。片やメリープ、片やサンド。種族を考慮した上で、周りに聞かれても恥ずかしくない名前がいい。

 あぁ、名前決めるのってこんなに悩むのか。そんな無駄な親心を解しつつ、慎重に決める。間違っても【げろしゃぶ】や【フーミン】みたいなのは駄目だ。

 「……よし、決めた。君はメリープだから、【メルア】。君はサンドだから、【サーシャ】にしたいと思う」

 指を指しながら決めた名前をゆっくりと呼んでいく。呼ばれた二人は、その名を刻みこむように黙っていた。

 「…気にいらなかったか?」

 「いいえ、思ってたより普通の感性をしていてくれたことに感謝します」

 「あたしはメルアでいいんだねっ!かわいい名前、ありがとうマスターっ!」

 満面の笑顔のメルアと強かな笑顔のサーシャ。それを横で嬉しそうに見つめるノア。

 「改めて、俺はダイヤ。昨日トレーナーになったばかりの人間だ。こっちが相棒のノア」

 「よろしくお願いします、サーシャさん、メルアちゃん」

 「よろしくね、ノアっ!」

 「こちらは呼び捨てでも構いませんよ。よろしくお願いしますね、ノア」

 3人揃った。偶然の産物だとは思うが、それでも心強い戦力であり仲間だ。ダイヤは思う。これなら、ロイの奴にも勝てるんじゃないかと。

 「よっし、ロイとのバトルは午後からだし、少しの間だけどトレーニングしてからヤツに臨むぞ!」

 「おーっ!」

 メルアの合いの手も元気よく、まるで光明の様に感じられたのだった。

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