超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活   作:諷詩

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(`・ω・´)チラッ

チラッ(´・ω・`)

(;´Д`つ81話

(´∀`)バレテネェナ...


81.え?薄い本の人来るの?

ーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

候補生を届け、上陸した私。

ニ、三ヶ月ほど開けた期間だが、景色は全く変化していない。

新造のレンガ造り風の建造物が並び、広い敷地はフェンスで囲われている。

 

一応145式歩兵小銃を肩に下げ、候補生の後ろを歩いて行く。

他の生徒らはまだ戻ってきていないのか、大学校は伽藍の堂だ。

 

射撃練習場や武道館、海を見れば海防艦娘に守られた漁船群や哨戒艦隊、演習艦隊が見える。

上空には軍事施設だからか航空機は一機もおらず、居たとして対潜哨戒機だ。

 

事務的な処理を手早く済ませつつ、帰還手段を準備する。

候補生らは先ほど別れ、ちゃんと返したぞと書類を作成しているのだ。

一々報告に書類を作るのは非効率だと常々思うが、なぜかこれは変わらない。

さっさと電子化はよ。

 

「アメストリアさん、大本営から電文です」

「......大本営から?」

「はい」

 

そう答えるのは事務員。

このタイミングで入れてくる大本営はやはりウザイと思う。

またなんか押し付けてくるんだろ?知ってる。

 

「第一級軍機の電文です」

「たしかに受け取った」

 

渡された封筒。

開封して字面を一瞬で読み取り、意味を咀嚼する。

ふむ、内容を要約するとこうだ。

 

艤装の改修終わったから、艦娘の方の訓練が必要やん?

だから訓練をしてくれる艦娘必要やん?

 

でもあんたらやらないやん?

だから代わりに練習艦送るからその艦娘育ててや。

 

とのこと。

まぁ理に適っている。

艦娘だって今までと全く仕様が違う艤装なのだ。旧史の使い勝手が全ての経験の艦娘を実戦で活躍できるようにするには新艤装の扱い方を把握しているエキスパートが必要だ。

だからそのエキスパートを育てなさいという事だが、じゃあ練習艦は誰だろうか?

まず今どこなん?

香取か?鹿島か?香椎か?

 

機密保持の都合上、書類を跡形もなく消し飛ばす。

そしてあたりを見回しても艦娘の姿はない。

古い学校の廊下が見えるだけだ。

 

既にナウル鎮守府に向かっているという事なのだろうか?それなら色々納得出来る。

もしそうだとしたらさっさと引き上げた方がいいだろう。

 

方針を決めた私は出口へと向かった。

この建造物は軍事施設とあってそこそこシンプルな作りになっている。

まぁラビリンス作っても使いづらいのだがら当然だ。

何箇所かある出入り口の一つ、桟橋方面のドアを開けると、そこには一台の黒塗りの車。

 

あらー、出待ちされてましたわ。

どこから出るのかはあたりがつけられていたか。

ナウルだから陸路じゃ行けんしな。大体分かるか。

周囲をさりげなく索敵しても護衛やら何やらは確認出来ない。

車にも一名のみが確認でき、驚くべき事にそれは艦娘の反応だった。

 

艦娘が運転できるのはナウル鎮守府がなによりも証明していたため驚きはないが、許可されているということに驚いた。

本土でも出来るのか。いやまぁ私達堂々とやってたけど妖精さんが実際は運転してたからセーフと思いたい。妖精さんが付属品か、独立した勢力かどう思われているのかは知らんが。

 

ガチャリと、ロックが外れる音と共にドアが開く。

風に揺られる銀髪。

ツインテールにしたその艦娘は士官服のような制服を身に纏っていた。

白を基調としたジャケットには肩章や飾緒もあり、一般的な艦娘の制服とは一線隔した意匠は戦闘艦ではない事を教えてくれる。

だが階級章はないことから艦娘には階級といった縛りを付けていないのが察することができる。

 

ともあれ、練習艦娘、鹿島が来たのだ。

そう、あの薄い本の人だ。いや失礼。

ゲームだと艦隊に編成するだけで獲得経験値が上がるという演習に有難い存在であった鹿島だが、ここは現実。

練習艦という艦種ながら本来の役目である海兵育成の役割は外され、新人艦娘の指導が専ら。

実際史実でも球磨型や夕立も教官をやっていたと聞く。それと同じようなものだ。

戦闘訓練が果たして香取型にできるのかは少し疑問だが、艤装、おそらく足回りやら船体に関してではないかと推論する。

砲やらは先輩艦娘に任せるしかないだろう。

砲撃方法だって今じゃ現代艦と同じだ。砲精度は上がり、探知精度もある。

艦娘のする事なんて戦闘指示だけになっている。

 

私が来る前は照準から舵取りまで艦娘がやっていたらしく、妖精さんは補助をしていたらしい。

揚弾やら装填やら缶のご機嫌とりやらな。

しかし私の技術支援により機械化は進み、艦娘の負担は減りつつある。

やる事なんて妖精さんの指揮と照準だけだ。

足は妖精さんがやってくれる。実際砲照準は妖精さんでもやってくれるのだがここは艦娘がやった方が早い場合がある。

てか艦娘の存在価値的にそれくらいはやらせてほしい。

 

妖精さんだけでも艦が運用できるのはミッドウェーの一件で分かっているので、お飾りにはなりたくない。

 

「貴様は鹿島にちがいはないか」

「はい。香取型練習巡洋艦二番艦、妹の鹿島です。この度、ナウル鎮守府にて次代の艦隊を育てるための艤装技術訓練を受けるために派遣されました。よろしくお願いしますね、アメストリアさん」

「あぁ、よろしく頼む。...そう硬くならないでくれ。」

 

なんか距離があるのですが。

私、怖いかなぁ?たしかに仏頂面だが、別に怒ってる訳では無いぞ?

 

「いえ、申し訳ありません!つい、緊張してしまって...」

「すまないな、仏頂面が通常なんだ。まぁまずはナウルに向かおうか。鹿島の船体はどこにあるのだ?」

「はい、ナウル鎮守府に向けて出航準備の為呉鎮守府の方に。缶の調整に時間がかかるそうです」

「やはり妖精さんも慣れていないか?」

「えぇ、既に現代化改修が終わった子達は習熟訓練をしていますが、どうにも扱いきれないようで、望むタイミングで停止できなかったり速度の振り幅を間違えたりしているそうです」

「成る程、艤装の指導は急務か。あぁ、それと船体だがナウル鎮守府から使いを出して船体ごと輸送する。私達は先にナウル鎮守府に向かうとしよう」

「船体ごと!?そんな事も出来るんですか?」

「うむ。ウチの艦載機は推力が大きいからな。6697tなど容易く輸送できる能力はある。」

 

なんたってドーラたんをヘリ4機で輸送できちゃうのだ。

 

「こちらアメストリア。ナウル鎮守府からC-134を四機ほど回してくれ。鹿島の船体を運び込む。あと船渠も一つ用意してくれ」

『リバンデヒよ。承知したわ。C-134を送るわね。船渠は現在準備中よ。地下じゃなくていいのね?』

「あれは地下も何もあるものか。」

『いえ?お姉ちゃん見てなかったのかしら。妖精さん達地上のドックを改造してパラオ鎮守府みたいに地下にいくつかドックを作っていたわよ?』

 

............え?

聞いてないよ私。え?マジで?

本当に何やってるんですか妖精さん。

暇になるととんでも無いことをやらかすのやめてくれませんかね?

イメージは多分格納式の駐車場。地上の船渠が水抜きして船渠ごと下がって地下にある空間にセット。そこがドックになるのだろう。

あれだ、紙パックの自販機みたいな。

以前の某潜水艦アニメみたいな感じではなく、規模はまぁ小さい。

同時並行的に修理が出来るし、空襲対策やらドミートリーを隠すのにもってこいだろう。

まぁ有用だし許すか。

 

 

兎も角艦娘の方を運ばなければならない。

どうしようか。用意してたのF-222なんだけど。早いし便利かなって用意してたが想定は私一人だ。

うーん、F-222のコクピット異様に広いし大丈夫...か?

重力制御装置のお陰でGの影響はないからそっちの心配はしなくていいが、本人がどう返答するか...

 

「鹿島、生憎と私の帰還手段は一人乗りなのだが、手狭になってしまってもいいだろうか?」

「え?あ、はい...一人乗りってどういうことでしょう?」

「あぁ、こういう事だ」

 

そういってF-222を操作する。

航空機用粒子エンジンの圧力をあげ、スラスターを解放。

主翼は垂直に回転させ、海面を叩き割る。

 

何を隠そう、F-222は海中に待機していたのだ。

噴式機からして色々とおかしいが、ターボプロップエンジンではないので水中も行けるのだ。そもそも宇宙空間での戦闘を想定しているしな。

眩いスラスターの光を瞬かせながらF-222は半浮上する。

完全に浮いたら私達が乗り込めないから船のように半浮上状態だ。

 

「......鹿島?」

「ふぇ!?....えぇ、大丈夫です。大丈夫、です...ここまで進んでいるとは思わなくて」

「確かにSTOL機は配備されていなかったな。艦娘には」

 

そうなのである。

流石にアメストリアスペックの艦載機をそのまま配備すると核兵器以上の戦略兵器が溢れかえる事になるので配備はされていない。

大日本帝國が独自に開発した多目的戦闘機を採用し、魚雷が全廃された。

対艦、対地は噴進弾へと置きかわり魚雷は対潜攻撃用へと専門化していった。

さながら現代艦艇である。

まぁ、実際艦娘達に配備されている艤装もナウルのとは違い最低限の改修で装備可能なそこそこの性能の物だ。十分火力あるがな。

噴進弾は限定的配備に止め、主砲は連射力が上がりバルジや水密壁など安定性を重視。

艦橋などの重装甲化に機関の無限化。

電子機器の完全導入にアメストリアスペック直乗せの高性能電探。

 

正直言ってめっちゃ強い。

扱いになれればアメストリアスペックの深海棲艦との十分渡り合えるだろうが、まだ扱えない。そこを今回なんとかするべく鹿島がここにいるのだが。

 

「貴官の荷物はあるか?」

「は、はい」

 

そういって出されたキャリーバックを量子変換器に収納し、F-222に飛び移る。

やはり平べったいな。亀みたいだ。

 

「鹿島、貴官も此方に飛び移って欲しい」

「え、えぇ!?この戦闘機...?にですか?」

「うむ。大丈夫だ。出力が大きいのでな。ビクともせん」

 

派生型に35.6cm単装砲を括り付けたものがあるくらいだ。

推力比には余裕があるし、大体鹿島は軽いから重量のうちに入らないだろう。

 

「分かりました...えぃ!」

 

ぴょん、と飛び移ってきた鹿島を受け止め、コクピットに乗り込む。

しかしF-222は一人乗り。

 

「あ、あの...座席が一つしかないのですが...」

「む?貴官も乗ってくれ」

 

左手でF-222の最終チェックを済ませながら右手で自らの太腿を叩く。

まぁ、これしか方法が思いつかんかったんじゃ。

 

「え、えぇ!?し、しかし貴女に失礼じゃ...」

「いや、どうという事はない。それに貴官は軽いからな。負担にも入らないだろう」

「そうでしょうか...?それに、操縦もし難いのでは?」

「それについては大丈夫だ。これは自動航法があるからな。勝手にむかってくれる」

「其処まで言われましたら、承知いたしましたわ。失礼しますね」

 

F-222のコクピットというのは外界との遮断機構の関係上そこそこ深く、乗り込むのには手間がかかる。

それでいて機械類は少なく、態々手すりが付いているくらいなのだからバリアフリーは進んでいるのだろう。

 

視界が銀色に染まる。

華やかな薔薇の香りが仄かに漂い、一瞬で戦闘兵器の空間からフローラルな小部屋へと姿を変えた。

こんなにも変わるものなのかと正直驚きを隠せない。

私の膝の上に背中を丸めてちょこんと座る鹿島。彼女がいるだけで最低限の内装だった戦闘機は華やかになり、また優雅に見える。

いや、F-222の造形美を否定するつもりはないがな?やっぱ初めてのタイプの艦娘だし、こんなに密着したの初めてだからね、仕方ないね。

 

右手側にあるキーを押すと駆動音と共にキャノピーが下がってくる。

涙を引き延ばしたようなシャープな強化ガラスのようなこれも、アメストリアの技術によって防弾性能は飛躍的に上昇し、ここにHUDの情報を表示する事もできる。

といってもアメストリアはヘルメットを使用しないのだが。返って見えにくいらしい。

そんなのお前らだけだよ。

 

「では発進する」

「お願いしま...きゃっ!?」

 

右腕で鹿島を抱き寄せつつ操縦桿を握りしめ、左腕でスロットルレバーを掴む。

先程自動航法があると言ったな。あれは嘘ではない。

だが直接操縦したほうがいいのは当然で、更にアメストリアの事情もある。

このF-222を始めとしたアメ製航空機は基本的に宇宙空間での使用を前提としており、大気圏内はおまけのようなもの。

 

「あ、あの...当たって......」

「む?ああ、申し訳ない。だがこうしなければ飛べないからな、少し我慢を。」

「はぃぃぃ...」

 

真っ赤になった鹿島にニヤニヤしつつ、レバーを倒す。

タービンのような唸り声が更に大きくなり主翼のスラスターから蒼い火焔が吹き出し機体を浮き上がらせる。

何をどうやったのか主翼に設置されたスラスターだけでこのT-34くらいはあるF-222を浮かせるのだから出力はF-16に匹敵するのではないだろうか?

流石アメストリアの技術だ。

 

離水したF-222は私の操縦に忠実に従い、機首をナウル鎮守府方面へ向けるとノズルを拡大。

一気に増速した。

 

F-222の強みたる瞬間的な加速により、キャノピー越しに映る世界は線となり塗りつぶされた。

スロットルを少しずつ絞りながら方向舵は維持する。

 

チラリとF-222搭載の電探を確認するとC-134の反応が四つ一瞬だけ映り込んだ。

相対速度でいえばマッハ5。映り込むのは一瞬なのは当然だ。

そのまま進むと、ナウル鎮守府からの誘導信号をキャッチする。

なまじ高速な機体が多い為、500kmの距離で信号が発せられているのだ。

 

信号がきた為スロットルを引いて行く。

段階的に引かないと慣性やら作用やらが面倒なのだ。コクピットは重力制御が施されている為どんな動きだろうが身体に影響を及ぼさないのだが、今回は初搭乗の鹿島がいるのだ。

 

F-222は減速を始める。

主翼のスラスターが仕事をし始め、電子表示の速度メーターが目まぐるしく変動する。

視界が通常に戻った。丁度第一隔壁を通過する頃。ここまでくると500km/h程に減速している。

 

「わぁ....」

「ここまで要塞化された鎮守府は珍しいだろう」

「はい、こんな巨大な隔壁なんて初めて...」

「私達は一度鎮守府を棄てた経験があるからな。過剰になってしまうのだ」

 

パラオ鎮守府の事は忘れない。

既にナウル鎮守府での着任がある今、経験がある艦娘とない艦娘があらわれている。

まぁない艦娘もそれ以外でヘビーな経験を積んでいるわけだし鎮守府を出た身だからある意味ナウル鎮守府の艦娘は皆鎮守府を失ったことがある経験を持っていることになる。

 

第二隔壁に差し掛かると、訓練なのか艦載機仕様のF-222の編隊や輸送機が目につく。

白の一本線。今日は翔鶴のようだ。

見渡すと、他にも赤の一本線が。どうやら赤城との合同訓練らしい。

 

海上に目を向けると今日の当番の筈の第三艦隊が洋上に居た。

縮尺を間違えたような巨艦がならび、びっしりと主砲や対空砲が生い茂る様は心にくるものがある。なんたって秋月型でさえ大和と同サイズなのだ。

いうなれば他の鎮守府の艦娘を1/1000スケールの船とするとアメストリアスペックたるナウル鎮守府の艦娘は1/350。もしかしたらそれ以上。

 

そんな隔絶されたサイズ差があり、それから生まれる莫大な搭載量の余裕はミサイルガン積みと主砲モリモリに割いている。

だからバ火力を手にしているわけだが、これは参考にならない。今回はダウンスペックの艤装に関しての教練なのだ。

うーん。一番マシなのは吹雪型くらいか?あとは規格外すぎて例えにも使えない。

 

「なんだか別世界みたい...です」

「成る程、言い得て妙だ。ここは正直参考にならんからな。悩ましい所だ」

 

主翼が垂直に旋回し、スラスターが至る所から噴出。その場でホバリングする。

丁度飛行場は輸送機が待機しており、管制塔の指示に従って待機する事になったのだ。

 

滑走路に進入したC-134を傍目に、代わりに着陸できる場所はないか、と探してみる。

.......別に地上である必要なくね?

 

態々CT-7が飛べる移動式滑走路が居るのに活用しないのは勿体無いだろう。

早速提案してみる。

 

「蒼龍、飛龍。どちらかF-222を今すぐ受け入れる事はできるか?」

『はいはい!アメストリアさん!私の方でできるよ』

 

応答したのは飛龍。

明るいすみぺボイスに鹿島も誰か分かったようだ。

 

「そうか。では飛龍、今からF-222を着艦させるので車輌の方の用意を頼む」

『かしこまりー!多聞丸、車輌の用意お願いね』

『了解!私が用意してあげるね!』

 

飛龍の方へ操縦桿を向ける。

空母艦娘らは一箇所に船体が並んでいるため実に個性豊かだ。

加賀なんかは半分戦艦だし、何より横幅が違う。

赤城は二段空母とあって全高が高く、翔鶴や瑞鶴、大鳳は装甲空母の為ズッシリとして濃い灰色に包まれている。

他には雲龍の姉妹達は龍驤と隣り合っており、龍驤の小ささがより際立つ。

 

件の蒼龍飛龍は姉妹艦として再設計したので正真正銘姉妹となり、仲良く並んでいる為わかりやすい。

飛龍は左側に艦橋がある方だから...あっちか。

スクランブル待機用なのか飛行甲板にはF-222やFB-99が並んでおり、スペースを捻出した所らしい痕跡が見て取れた。

スペースに着艦する。

 

古今東西着艦というのは至難の技で、数多くの失敗例がある。

というのも空母とて船のため波の影響を受ける。

大体1mは上下するのだ。そんな不安定に動く滑走路に着陸しようというのだからそりゃ難しい。

着輪した途端に船体が跳ねて直撃。機首から突っ込むなんてこともあるし、そもそも幅も長さもギリギリなのだからワイヤーで無理矢理急停止しているわけだ。

 

しかし、アメストリアスペックを侮ってはならない。なんたって4桁全長である。

長さは余裕。幅もCT-7が載せられるほどで、無理すればC-4も載っかるくらいの広々さ。

当然のごとくワイヤーなど無く飛行場と同じ運用がされる。

更にF-222は垂直離着陸機なので滑走路を使わない。駐機スペースを確保するだけで充分なのだ。

 

主脚が衝撃を吸収し一旦縮む。スプリングがそれを跳ね返し、巨体に似合った重量を支えた。

航空機用粒子エンジンが切られ回転数が落ちてゆく。別にターボファン式とかじゃないが部品構造上タービンがある。

主翼が平行へと戻って行き、同時にコクピット部に梯子がかけられる。

私もコンソールを操作してキャノピーをあけると途端にムワッとした懐かしい空気が駆け抜けた。そうそうこの風だ。

赤道が近いから常夏の状態となり、常に真夏日。

湿気を多く含んだ陸風が吹くこの環境こそがナウル鎮守府のいつもだ。

 

「鹿島、そのまま梯子を下りてくれぬか?」

「あ、はい。分かりました」

 

いそいそと降り始めた鹿島を横目に走り回る妖精さんを注視する。

整備担当の妖精さんがあちこちを走り回り乗ってきたF-222にも取り付いている。

 

「アメストリアさん!おりました」

「そうか」

 

そう言って梯子を使わずに飛び降りる。

F-222ってデカイから全高も中々にあり4m。本当に戦闘機なのか怪しくなるが、まぁ機首に六門積んでたからこうなる。

 

「では行こうか」

「はい!」

「あ、いたいた!アメストリアさーん!」

 

飛龍が駆け寄ってくる。

どうやら今日は非番らしく私服だった。態々迷惑をかけたかね?

 

「すまないな飛龍。折角の非番に」

「いえいえ!私達も暇だったからねー。あとこのままだと加賀さんに捕まりそうで...おっと。今のなーし!」

「ふふ、大方赤城が翔鶴に付いているから加賀も暇しているのだろう。放っておけば瑞鶴辺りが絡むだろう」

「あー、そーだよね。以前みたいにほぼ実戦にならないといいけどねぇ...」

「それは貴官らも同じことだがな。重巡との演習ではヒヤヒヤしたぞ」

「んふふふ〜!そぉ?ちゃんと手加減したんだよぉ〜?」

「あの...飛龍さん、でよろしかったですか?」

「ん?なになに鹿島...さん?」

「はい、香取型練習巡洋艦二番艦、妹の鹿島です。あの、ここでは航空母艦と重巡洋艦で演習をするのですか?」

「んふふ、そぉだよ!この艤装になってから出来ることいぃーぱい増えたからね!深海棲艦の艤装もこっち側になってきてるし、対応出来るように訓練は必要なんだよねぇ」

「なるほど...」

「深海棲艦にも私達の艤装と旧艤装の二種類がいるからな。侮れば私達とて無事ではない」

 

経験者は語る。何度も痛い目見てきたからな。いやでも警戒するというもの。

おっと、来たようだ。蒼龍飛龍共に1000mを超える巨艦。移動は時間がかかってしまうため私にあった艦内鉄道や道路が導入されている。無論縦方向にも道路は走っており、丁度蒼龍が運転してきたと思われる七式装甲車輌が船体横のスロープを使って甲板に登ってきた。

 

ハマーのような要人警護用の大型護送車、といった風といでたちは威圧感満載でカクカクとしている。アメストリアの兵器の特徴たる直線で構成された洗練されたフォルムは見ていて飽きないものがある。艦娘達に貸与されている車両となると塗装されていたりマークがあったりするのだが、意外なことに蒼龍の車両にはこれといった加工はなく、原色のジャーマングレーのままだし、マークといえば錨がプリントされているくらいであとは二航戦と描かれていた。シンプルなのが好きなのかね?

運転席と装甲ドアが開き、ひょっこりと蒼龍が現れた。

 

「あ、多聞丸!今回はそっちにしたんだ〜」

「そうね、今回はお客さん迎えるって聞いたしこっちの方が良いかなぁ、って思ったんだけど。どうかなぁ、飛龍?」

「うんうん、良いと思うよぉ。おっきい方が飛龍は好きだけどあれは飛龍達用だもんねー」

「...蒼龍、提督棟まで頼めるか?」

「え?あ、わかりました。てっきり寮か工廠かと思ったんだけど、違うんだねぇ」

「もう船体の輸送は終了したのか?」

「ん?そーだよアメストリアさん。聞いてなかったー?」

「先程C-134が船体を運び終えてましたよ?。多分妖精さんが既にいじり始めてるんじゃないかなあ」

 

流石はC-134。

7000tなど荷物に入らないか。しかしそうか。既に船体が到着したとなれば話は別だ。鹿島本人の意見を反映させたいし、工廠の手順自体もまた知識となるだろう。

 

「鹿島、貴官の船体だが、此方で改装する事は以前にも話したが、貴官自身の希望等があれば妖精さんに伝えてくれれば大体は実現してくれる。蒼龍、工廠の方へ目的地を変更だ」

「かしこまりー!直ぐむかっちゃうよ!」

「あ、あの...具体的にはどのような...?」

「む?そうだな...飛龍、例えば言ってみてくれ」

「え?飛龍?んー...あ、あのC-4の着艦に関してなんだけどいーい?」

「良いぞ。言ってみろ」

「んーC-4ってとってもおっきぃと思うんだけど、今だとクレーンで引き揚げて専用のカタパルトで飛ばしてるじゃん?」

「そうだな。」

「あれはちょっと隙になるかなぁ〜って飛龍は思ったなぁ。カタパルトの方で回収出来ないかなぁー?」

「ふむ...船体自体を速度に乗せてC-4の逆噴射を利用すれば行けるな。カタパルト自体も小規模改修で行ける。」

「あの...しぃーふぉー?というのは...」

「む?あぁ、C-4と言うのは我がナウル鎮守府が運用する大型飛行艇でな。貴国にも富嶽があっただろう?あれの四倍程度の大きさの物でな。現在航空母艦に艦載出来るよう順次改修を施しているのだ。」

「あの富嶽の四倍っ!?そ、それは凄いですね...富嶽でさえ陸上機がやっとなのに...」

「全長的には大和型と同率だな。無論それに見合った搭載量を誇り、様々な場面で活躍することが期待されている」

 

具体的には上陸作戦とかな。

強襲にも使えるし、当初の目的である空挺降下が出来る。また...砂漠に着陸も出来る。かなり無理やりだが海のような広さなら、いける。

 

さて、工廠だ。蒼龍姉妹に別れを告げ、工廠に足を踏み入れる。

既に船体は運び込まれているようだが...まぁ案の定地下工廠の方にあるようで地上の設備には鹿島の船体が見当たらない。

 

 

「まぁ..,ここも巨大ですね...」

 

確かに此処には私達の乾ドックもあり、運河のような広大さがある。

移動式のガントリークレーンや100kt級クレーンが整然と並んでおり、確かに巨大だ。

感覚が狂ってしまうのが難点。

 

「まあ此処の艦船のサイズに合わせるとどうしても施設の巨大化は避けられない。本土には設置できまい」

「そうですね...せめて柱島...いえ沖ノ鳥島なら配備できますか?」

「ふむ...出来るだろうがそこまでしてする必要は無いだろうな。そもそも...」

''艦娘さん艦娘さん、ロー○ンさんの船体、改修どうします?どうします?''

「鹿島、何か要望はあるか?」

「そう、ですね...私、練習艦ですが母艦としての能力もあった方が便利でしょうかと思った事は...海防艦の子達の休憩出来る娯楽室を作って頂けますか?」

「どうだ妖精さん」

''がってんしょーちです?かしこまです?''

''他にあるです?''

「そうね...最低限の自衛ができる武装とヘリコプター搭載機能が欲しいです」

''あいあい!すぐ作るです?艦娘さん、装甲はどうするです?''

「そうだな、母艦としての機能を鑑み、対56糎装甲にしてくれ」

''がってんしょーち!''

「56糎!?そんな口径を持つ戦艦が深海棲艦に...?」

「うむ。私達の大和型も56糎主砲を使っている。これなら避難所としても守る事ができよう」

「ありがとうございます!アメストリアさん」

「お礼は妖精さんに言ってくれ。私は橋渡し役だからな」

 

まぁ練習艦もとい補給中継艦として見てもそんなに要らないとは思うが、まぁ念の為ね?

あと自衛用の砲熕か。んー、香取型は14糎連装砲を装備していたはず。

多分既に妖精さんにバラされているだろうから当てにできないと考えても20.3cmが妥当だろう。対空砲には最近緊急生産して余剰している88mm四砲身対空機関連装砲と剥がした45mm対空機関連装砲を流用すればいいだろう。

機関が多くなるがまぁ仕方ない。

あー、観測機器等も必要になってくるか。電子化は必然だが慣れてくれるか不安があるな。

いずれ艦娘には全艦導入されるだろうから教導する側ならマスターして欲しいところ。

 

EVを使って地下へ。

珍しくゴンドラ式のEVから見える景色は特殊であった。

船体の出し入れをする大型EVを中央に置きそれから放射状にドックが並んでいる。一回層につき五個のドックがあるようで、サイズは加賀が入るサイズが一つに残りは大和が入るサイズ。

成る程、各階には航空母艦、戦艦、戦艦、戦艦、戦艦の配置がされているようだ。

航空母艦の中でも最大の加賀をベースにする事でスペースに余裕を持たせている。また他のドックも大和型に合わせる事で全艦収容可能。

また地下に作った事で四方にクレーンやら機械を設置可能になり、ここからでもロボットアームが確認できる。

 

EV自体はオーブンのトレーを出し入れする様に船体を乗せたプレートが上下するようだ。

ここはパラオ鎮守府と変わらないようだ。まぁたしかにあれ便利だもんなあ。

 

鹿島の船体は...と。あった。

第二階層のドックに収まっている。現在は...何時もの骨組みまでバラしている段階のようだ。

しかし既に工廠から艤装は届いているあたりがなんともまぁナウルらしいというかなんというか。

 

「わぁ......これは凄いですね」

「うむ...私も初見だが、こんなものを作っていたとは...」

「これ程大規模な地下建造物は見た事がありません...」

 

規模で言えば洪水時に一時的に水を貯める地下貯水池のようなものがズラリとならんでいる。

そんな浮世離れした空間を鹿島と歩く。

階段をいくつか下ると、絶賛解体中の船体が。

 

こんかい鹿島の改修に伴い、船体は70mの延長。船舶用粒子エンジンを搭載し、電子機器山盛り。

対56糎装甲に20.3cm連装砲を四基配備。88mm四砲身対空機関連装砲を四基に45mm対空機関連装砲を三十。

 

武装は既に運び込まれており、四方のアームには装甲板が握られている。

竜骨から弄っているため天井のクレーンには特殊鋼の骨組みが吊るされ、今元の竜骨に接続。

さらに元の竜骨では船体が支えきれないためもう二本全長分の竜骨が追加され最中式に挟まれた。

 

そして左右にブロック単位で小骨が設置されてブロックのように船が組み上がって行く。

装甲板がパチパチ組み上げられ、艦内の床や壁が敷き詰められる。そしてあらかじめ配線が積み込まれた後第一甲板で蓋をされ、上部構造物がこれまたプラモのように設置されて行く。

艦橋は一体成型。内装も既に積まれており、艤装として積み込まれた途端配線工事が始まった。

あとは煙突が差し込まれ排気管と接続。またマストが立ち、最後に主砲と対空砲が設置されて行く。

 

これで調度品やら生活に必要なものを除き進水可能な状態まで組み上がった。

この時間実に2時間。もう手馴れたものなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 




色々申し訳ない。
失踪は誓ってしません。

らっきょを走り抜けてました。おい塩川2月はもう終わったぞ?
龍田改ニに一目惚れしてガン回ししてました。昨日達成しました。

イベントe-3まで行って燃料弾薬が尽きました←今は武蔵のせい。5-4しゅごい。
秋月が始めて来ました。日振ちゃんかわいい。

春イベ例の作戦ワンチャン?大和60で止まってるんだけど...磯風も育てなきゃ(´・ω・`)

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