D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
裕也がヨハンナと戦っている時、ゆりかご内部でのそれぞれの戦いは激しさを増していた
ヴィヴィオの拳が壁を砕き、なのはの砲撃で床が陥没した
蹴りで柱がへし折れ、魔力弾で天井に穴が穿たれた
それほどの戦闘だというのに、最初の一撃以外は互いに致命的ダメージは無かった
その理由は、ヴィヴィオの場合はその眼だった
ヴィヴィオはなのはの攻撃の軌道を見て、拳で弾いたり避けたりしていた
なのはの場合は、経験と魔力の量だった
なのはの魔力量は人並み外れており、簡単に尽きることはない
その魔力を使い、なのははヴィヴィオの攻撃の全てを防いでいた
既に二人の攻撃回数は、百を優に越える
だというのに、互いに直撃は無し
二人は互いに本気で、攻撃を繰り出していた
「ママを……返してよぉ!!」
「ヴィヴィオっ!」
拳と杖がぶつかり、空気が震えた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「麻耶っ!」
「沢井!」
「………」
義之と美夏が何度目か分からない程に名を呼ぶが、麻耶は返答は返ってこない
代わりと言わんばかりに、麻耶から魔力弾が発射され、更には、防衛機構らしいスフィアからレーザーが次々と発射されてくる
義之と美夏の二人は避けたり防いだりしながら、次々と破壊していった
しかし、破壊しても続々と新しいのが出現してきてキリが無かった
「いい加減に、品切れになれっての!!」
「五月蝿いぞ、桜内! 黙って戦え!」
義之の文句に美夏は怒っているが、二人は正確に戦っていた
互いの背後をカバーし、死角を無くしていた
なにせ、スフィアが展開するのは正面だけではない
ここはゆりかごの内部
つまり、敵のまっただ中
敵は360度、あらゆる場所に現れる
獲物たる自分達を、殺すために
だが、二人とて簡単に倒されるつもりはない
義之は学園でも指折りの高位魔導師で、近接に重きを置いた万能型
美夏はロボット故に分からないが、戦っている最中に成長していっていた
その証拠に、見るより早く右側に現れたスフィアに反応し、右手を上げて魔法を発動、撃破
左側からレーザーが来ていたが、それは首を傾けただけで回避
そのスフィアは、義之が飛ばした魔力刃で斬られた
「無理すんなよ、天枷! バナナは!?」
「ここに入る前に、食べた! 問題ない!」
義之の言葉にそう返すと、美夏は羽織っていたジャケットの内から一発のカートリッジを取りだし、それを右手の手甲に装填した
そして、右手を高々と掲げて
「発動!」
と叫んだ
その直後、美夏の周囲に炎で編まれた蜂が多数現れた
それを確認すると、美夏は右手を振り下ろしながら
「行け!」
と号令した
すると炎の蜂達は美夏の指示に従い、周囲のスフィア郡に突撃
次々と破壊した
それにより一時的にだが、僅かに時間が稼げた
その隙に義之は、右手に持っていた刀の柄尻を鞘に当てて
「桜花!」
と叫んだ
その直後
《両刃連結刃!》
刀と鞘が一体化し、両刃剣型の連結刃になった
それが、義之の奥の手だった
裕也達すら知らない、義之の切り札
「麻耶、本邦初公開だ……!」
義之はそう言うと、それを高速で振り回し始めた
すると、連結刃はまるで生き物のように二人の回りを動き回り始めた
操作を少し間違えば、その刃は美夏にも襲い掛かるだろう
しかし美夏は、防御する素振りすら見せない
それは、義之を信頼しているからだった
「頼むぞ、桜内!」
「オオオオオォォォォ!」
美夏の言葉に答えるように、義之は雄叫びを上げながら連結刃を振り回した
それにより、スフィアが次々と切り裂かれ爆散する
新しく現れても、一瞬で破壊された
中には破壊されずに、レーザーを放ったスフィアもあった
しかし、放たれたレーザーは二人に当たる前に連結刃で弾かれた
それを見た美夏は、思わず
「まるで、巣を守る双頭の龍のようだ……」
と呟いていた
後に、この技は《ウロボロス・ガーディアン》と命名され、それを使いこなす義之は《双頭龍の御主》と呼ばれるようになる
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちくしょう……ここまで、なのかよっ……」
と呟いたのは、全身血塗れのヴィータだった
ヴィータは駆動炉とスフィア、ガジェットに攻撃を開始
キズを増やしながらも、大量のスフィアとガジェットを破壊し続けた
だが、最後の一機のガジェットに相撃ちの形で腹部を刺し貫かれた
そのキズとこれまでのダメージで、ヴィータは立つのがやっとだった
目の前に、破壊すべき駆動炉が存在しているというのに、アイゼンを持つ腕が上がらない
その時だった
背後から、新たな機械の駆動音が多数近づいてきていることに気づいた
振り向けば、夥しい数のガジェットが大挙に押し寄せてきていた
「敵の……増援だと……っ」
それが敵の増援と察して、ヴィータは歯噛みした
今の状態の自分ならば、簡単に殺されるだろうことは直ぐに予想出来た
目の前の駆動炉を破壊できず、後数分したら自分は殺されるだろう
それが悔しくて、ヴィータは涙を溢しながら
「ごめん、はやて……ごめんっ!」
と謝った
次の瞬間だった
背後に迫ってきていたガジェットの群れの位置で、広範囲空間魔法が発動
ガジェットの群れは、空間ごと抉られて消え去った
「え……?」
何が起きたか分からず、ヴィータは茫然とした
その時
「謝ること、あらへんよ」
と一人の少女の声が、ヴィータの耳に入った
「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフ・アイゼンがこんな、ボロボロになるまで頑張ったんや……怒るわけ、ないやろ」
そう言いながら駆動炉の部屋に入ってきたのは、ヴィータの最愛の主
八神はやてだった
はやてはヴィータの近くに着地すると、慈しむようにヴィータを見て
「後は、私に任せてええよ」
と告げた
そしてはやては、キッと駆動炉を睨んで
「さあ……壊させてもらうで!!」
と声を上げた