D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
義之side
「さてと、放課後だからグラウンドに行くか」
俺は放課後になったので、グラウンドに向かおうとした。
「~~~~♪」
「・・・・ん?」
「~~~~♪」
歌声だ。
廊下には、まだ残っている生徒がいて、結構うるさいのに。
それでも、聞こえてくる。
清らかで、澄んだ歌声だ。
「どこから聞こえるんだろう・・・・」
俺は、フラフラと誘われるように声を頼って歩きだした。
「~~~~♪」
「・・・・」
声を辿っていったら、音楽室の前に出た。
歌を歌っているのだから、当たり前といえば当たり前なのだが。
「誰か残って、歌の練習でもしてるのかな?」
扉が空いている。
俺は、そっと中の様子をうかがった。
「~~~~~~♪」
・・・・・白河《しらかわ》ななかだ。
歌が上手で、顔もスタイルも良くて、学園のアイドルと言われてる。
全男子生徒の憧れの的の1人だ。(フェイトとアリシアも該当する)
俺はあんまり喋ったことはないが、その人気が相当なものだということはよく知っている。
それにしても・・・・・
「噂には聞いていたが、本当に歌が上手いんだな」
BGMもなにもなしでア・カペラ状態なのに、まったく音階が乱れていない。
高いキーも、微妙なキーもきちんと声が出ている。
すごい。
「ーえ?」
「あっ!」
目が合った。
途端に、白河が歌うのをやめてしまう。
俺は内心、残念に思ったが。
「・・・・・・」
「・・・・・・あ」
なんだか気まずいので、拍手をしよう。
「いやー、すごい。うまい」
「・・・・・えっとぉ」
「ごめん。つい、君の歌に聴き惚れてしまって」
俺が必死に弁明していると
「義之くん」
なぜか、俺の名前を呼ばれた。
「え?」
俺は呆気にとられてしまった。
「桜内義之くん、でしょ?」
「え・・・なんで、俺の名前を?」
俺のことを知ってるなんてな・・・しかし、一体どうして?
「うふふ。さぁ、なんででしょう?」
白河はそう言うと、無邪気な笑顔を浮かべた。
ほほう。全男子生徒が夢中になるのがわかるくらい、眩しい笑顔だ。
「義之くんって、いろいろ目立つからね」
その言葉を聞いた俺は、納得した
「あ、あははは・・・・そ、そうだな」
俺の脳裏に、悪友ふたりの顔が浮かんだ。
確かに、イベントがあるたびに、何かしでかしてるからな。
先生方からも、生徒会からも風紀委員からも睨まれてる。(裕也は例外だが)
そりゃ、有名にもなるか・・・・・嬉しくないけど。
「そういう君は・・・・えっと、白河・・・さん」
俺は、呼び方を気をつけながら言うと。
「ななか」
「え?」
俺はいきなりのことで、呆気に取られてしまった。
「ななかでいいよ」
それで呼べるならば、呼びやすいけど
「いや、えっと」
いきなり呼び捨てってのも、少し気が引ける。
「な・な・か」
更に強く言ってきた・・・
「え~と、じゃ、ななか」
結局、俺が根負けした・・・弱いな~
「はい、よくできました!」
そして、にっこりと笑う。
なんだか、不思議な子だな。
学園ナンバーワンの人気者は、実はこんなにも気さくだったんだ。
「で、義之くんはなにしてたの?」
「え、俺? 俺はグラウンドに行こうとしてたんだけど、そうしたら、歌声が聞こえてきて、誰かなぁって」
俺は質問に返答した。
「わ。そんなに大きな声で歌ってたんだ、わたし」
ななかは、そう恥ずかしそうに言ったが
「いや、なんていうか。雑音をすり抜けて聞こえてきたっていうか」
俺は正直に言ったが
「ん?」
どうやら、少し分かりにくかったようだ。
意味がわからないのか、ななかが小首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。
大きな瞳をクリクリさせて、興味津々といった様子だ。
まるで、猫みたいだな。
そりゃ、この笑顔でこんな仕草されたら、男としては堪らんだろうなー
「上手かったし透き通るような声だから、聞こえたのかな?」
俺は素直な評価を口にした。
「本当に?」
「ほんとだよ。なんか感動した」
俺はもう一回言うと。
「う~む」
なにか考えるような表情で、つかつかと近づいてくる。
「えいっ!」
「へ?」
って、
いきなり、ぎゅっと手を握られた。
手のひらに柔らかな感触。
包み込むように温かい。
すぐ側で、ななかの大きくてきれいな瞳に見つめられ、ドキリと心臓が跳ね上がる。
「・・・・」
えっと、どうしろと・・・
「ありがとー♪」
満面の笑顔を浮かべ、そして腕をぶんぶんと揺さぶられた。
「えっと・・・なに?」
俺は状況が飲み込めなかったので、聞いた。
「握手だよ握手。ふたりの出会いを記念して。よろしくね♪」
ぺこりと頭を下げるななか。
なるほどね
「あ、こちらこそよろしく」
俺はつられるようにして頭を下げる。
そしてふたりで顔を見合わせて、軽く噴き出した。
「でも、初めてかな? 学校でそんな風に褒められたの」
「そんなことはないだろ」
俺は、ななかの言葉に思わず突っ込んだ。
「ううん。ほんと、ほんと。誰もそんなことちゃんと言ってくれないよ? うん、義之くんが初めて」
自分の言葉に頷くように何度も首を振るななか。
歌が上手いのは学園内の評判になってるくらいだから、そんなはずないと思うんだけどな。
「自分ではあまりわからないんだけどね。上手いかどうかなんて」
なるほどね、確かに自分では分かりにくいな
「すごい上手いよ。絶対音感持ってるんじゃない? どのキーも外れてなかったし」
これは、本心だった。
息継ぎの場所も、伸びやかなで出しも、まるでプロのシンガーみたいに完璧だった。
同い年で、こんなすごい才能持ってる子がいたなんて。
「いやー、それほどでもー」
ななかは赤くなって照れながら、頬をぽりぽりと掻いた。
「でも、そういうのがわかるってことは、義之くんも歌が上手なんだね?」
「いや、俺は歌っていうよりは・・・・その、ちょっと、ギターとかやってたから」
俺は内心、恥ずかしいが暴露した。
「わ、本当? ん? やってた・・・・って、今は?」
ななかはどうやら興味を持ったのか、聞いてきた。
「やってるよ。独学で趣味程度なんだ。バンドとかやってないから」
そう、俺のギターは独学だから人前で披露するほどではない
「へー、すごーい。じゃあ、曲とか弾けたりしちゃうの?」
「うん、まぁ。譜面は読めるし、耳コピもある程度なら」
これは、俺の数少ない特技のひとつだ。(料理は別で)
「わー! それってすごいかもー!」
ななかは、何が嬉しいのか俺を楽しげに見つめ、しきりに頷いている。
「いや、ほんとに趣味みたいなものだから・・・」
俺は正直に言った。
ななかにそんな風に言われると、なんだか恥ずかしくなってくる。
「でもでもでも、ほら、義之くんって見た目が格好いいじゃない?」
臆面も無く、またそんなことを言う。
ってか、疑問系で聞かれても返答に困るし。
「その上ギターまで弾けるなんてますます格好いいなぁって思ってさ」
「かっこいいかぁ? たかがギターできるくらいで」
「かっこいいよー。わたしは歌は歌えるけど、楽器はあまりできないから。なんか羨ましいな」
「歌が上手いほうがいいよ、あ、そうなると両方できる奴が一番格好いいのかな?」
「あははは、そうかもしんないね!」
音楽の話は、誰かとちゃんとしたのはこれが初めてかも知れない。
渉たちとはたまにするけど、すぐバカ話になるし。
音姉《おとねえ》と由夢《ゆめ》は、弾いてる音くらいは聴いたことあるだろうけど・・・・
音楽の話はほとんどしなかったしな。
ななかとは初対面みたいなものだが、こうやって音楽の話ができて、ちょっと嬉しいぞ。
「じゃあさ、あの曲知ってる? 最近よくテレビのCMに使われてる・・・・」
ん~と、ななかは思い出そうとしている
「なんだっけ、携帯のCMのー、うーんと」
俺はそれを聞いて分かった
「ああ、『オレンジランチ』の新曲だろ。ちょっと切ない感じの」
それを聞いたななかは、両手をパンと叩いて
「そうそう! あの曲いいよねー」
「確か、もうちょっとしたらアルバムが出るんじゃなかったかな」
俺は音楽雑誌の情報を思い出しながら言った。
「ほんとー? わぁ、買おうかなぁ、あーでも、お小遣いちょびっとピンチだし。んー、どうしよ~」
「ああ。俺、買う予定だから、後で貸してあげるよ」
「ほんとに? 絶対だよ? 約束だよ?」
音楽の話は尽きない。
だがその時、音楽室の扉が遠慮なく開いた。
「・・・・・」
「・・・・・」
なんだ?
知らない生徒が数人、音楽室を見回している。
軽音楽部の連中ではなさそうだが。
「あ、やばい」
「え?」
ななかは何故か、俺の背後に隠れた。
「なに?」
俺は確認のために背後のななかを見た。
「し~っ」
「?」
「白河さん見つけました」
「あちゃ~!」
ななかは、驚いてピョンと跳ね上がると、俺の腕を引っ張った。
「な、なに、なに?」
「逃げるよ!」
なんでさ
ななかは、言い出すと同時に走り出した。
そして、立ちはだかる知らない生徒達の間を、俺を盾にしてすり抜けていった。
「あ、あのーっ?」
「えへへへ」
俺は、ななかにされるがままに走った。
すると
「え!? ななか!? わ! 手芸部!?」
小恋がこっちを見て驚いていた。
なに? 手芸部だと?
その手芸部(?)の連中は、両手を広げて俺たちの前に立ちはだかる。
「ごめんね~、小恋!」
そうして、俺たちは校舎内を走り回って逃げ回った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なぁ、こっちって確か」
「うん、やばいかも」
俺たちは手芸部の連中から逃げ回り、気付いたら生徒会室の近くに来ていたが。
「こっちに逃げたぞ!」
「反対側からも追ってる! 追い詰めたわ!」
どうやら、挟撃されたようだ。
俺たちが迷っていると。
ガラッ!
生徒会室のドアが勢い良く開いて
「うぉ!」
「うきゃ!」
中から手が伸びてきて、俺たちを生徒会室に引きずり込んだ。
『あれ? 何処に行った?』
『すぐ近くに居るはずよ!』
そうドア越しに聞こえると、数人の足音は遠ざかっていった。
「まったく、俺の予想通りに来たから助かったな」
俺は、その声を聞いて後ろを見ると
「裕也!」
俺たちを助けたのは、親友の防人裕也だった。
義之sideEND
裕也side
「なんだか、騒がしいな」
俺は、放課後になってもなかなかグラウンドに来ない義之を探すために校舎に戻ったが、なんか騒がしかった。
すると
「どうやら本校校舎に行ったようだ!」
「私達も応援に向かうわよ!」
俺は横を見ると、そこを数人の男女が走っていく、その顔に見覚えがあった。
「ありゃ、手芸部だな。・・・・もしかして」
俺は予想した
「白河ななか、かな」
白河ななか、風見学園のアイドルと名をはせている美少女だ。その白河嬢に対して激しくアプローチをしているのが、手芸部の連中だ。
「もしかして、巻き込まれたかな?」
俺は逃走ルートを予想した。さっき本校校舎と聞こえたから、恐らく2階の渡り廊下から入ったのだろう
「ふむ、ならば・・・・」
俺はとある場所に向かって、走り出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺が生徒会室のドアの近くで待ってると
『なぁ、こっちって確か』
『うん、やばいかも』
義之たちの声が聞こえた。
ドンピシャ!
俺は内心ガッツポーズをして、ドアを一気に開けた。
「うぉ!」
「うきゃ!」
少し乱暴かもしれんが、ご愛嬌で
俺はふたりを引き込むと、ドアを一気に閉めた。
『あれ? 何処に行った?』
『すぐ近くに居るはずよ!』
そう聞こえると、数人の足音が遠ざかっていった。
「まったく、俺の予想通りに来たから助かったな」
俺がそう言うと、義之がこっちを見た。
「裕也!」
「よ、まったく。厄介ごとに巻き込まれてたか」
義之は立ち上がって、白河嬢に手を差し伸べた。
「裕也って、もしかして、防人裕也くん?」
白河嬢が俺を見て少し驚いている。
「ああ、そうだ。初めましてだな、白河」
俺は軽く頭を下げて挨拶した。
「へー、君がかの有名な剣使い《ソードダンサー》なんだ」
「ふむ、その名前も結構有名になってしまったな。まぁ、そういう君は歌ノ天使《セイレーン》だったか」
歌ノ天使《セイレーン》とは、白河嬢の二つ名だ。
「で、なんでここに居るんだ?」
義之が俺に聞いてきた
「あのな、お前がグラウンドになかなか来ないから、捜しに来たんだよ。そしたら、手芸部の連中が騒がしかったから、先回りしたんだよ」
「うぉ! 忘れてた!!」
こいつ、殴ったろうか
「巻き込んじゃったみたいで、ごめんね」
白河嬢はかわいく謝ってきた。なるほど、これならば確かにアイドルと呼ばれるだろうな。
「少し待て、まだ居るようだ」
外ではまだ、走ってる足音が聞こえる。
「あちゃー、しつこいなー」
白河嬢が困ってるな、ふむ
「少し待ってろ」
俺はドアを開けて外に出た。
「先ほどから騒がしいぞ、廊下を走るな」
「す、すいません」
「あ! もしかして、剣使い《ソードダンサー》ですか!?」
「そうだが」
「お会いできて光栄です! 握手いいですか?」
「構わんが」
「やった!」
ふむ、いわゆるファンと言う奴かな?
「で、先ほどからなにを騒いでるのかな?」
「はい、白河さんを捜してるんです。見ませんでしたか?」
「白河ならば、先ほど上に向かったようだが?」
「ありがとうございます!」
「よし! 向かうぞ!」
男子生徒がそう言うと、全員走り去った。
「だから、廊下は走るなと言っただろうが・・・」
まぁ、これで目的は果たせたが
「もういいぞ?」
「助かった~、ありがとうね」
「構わん、帰るならば今のうちだぞ」
「そうするね、じゃあね♪」
俺と義之は、白河嬢を見送るとグラウンドに向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第3者side
「ようやく、来たわね」
グラウンドには既に、水越先生と天枷が待機していた。
グラウンドの一角は障壁が張られている。
「すいません」
「では、始めましょうか」
「ええ、天枷、これがあんたのデバイスのコロスよ」
水越先生は白衣のポケットから深い蒼の珠がついたネックレスを取り出して、天枷に渡した。
「これが、デバイスか、小さいな」
天枷はデバイスを見て驚いている。
「それはただの待機形態よ。それを胸の高さに持って、『コロス、セットアップ』って言ってみなさい」
天枷はその通りに、胸の高さに持って。
「コロス、セットアップ!」
すると、次の瞬間にはバリアジャケットが展開していた。(詳細は設定参照)
「どう? 違和感はない?」
天枷は色々動かして確認している。
「無いな」
水越先生はそれを満足そうに聞いて
「そう、天枷。あんたにはリンカーコアが無いから、そのコロスには特殊な機構を使ってあんたでも魔法が使えるようにしたの。で、それはあんたが視認した魔法をデバイスに登録してストックするの。本当だったら、インテリジェントデバイスにする予定だったけど、搭載予定だったAIのMIAKIが起動しないから外したのだから・・・」
水越先生は説明を始めた。
以下略(詳細は設定参照)
「さてと、説明も終わったし、デモンストレーションを始めましょうか。裕也くん、お願いね?」
「はい」
裕也は素手で、障壁内に入った。
障壁の大きさは、広大なグラウンドの半分以上を包み込んでいる。
「さて、ガジェットの数はどうする?」
ガジェットとは、正式名称をガジェット・ドローンと言い、AI制御の無人機で警備などに用いられる。
型式によって性能が違い、現在3種類あるがもっとも使われているのが1型で楕円形のボディーをしている。
「お任せします」
「そ、じゃあ数は50で」
水越先生は、手元の携帯端末を操作した。
「ちょ!? 50ってAMFもハンパないですよ!?」
義之は出現した数を見て驚愕した。
「AMFとはなんだ?」
「AMFってのはね、正式名称はアンチ・マギリング・フィールドって言ってね、まぁ要するに魔力が練りにくくなるのよ、簡単にいうとジャミングね」
「ふむ、要するに魔法が使いにくくなるわけか」
「その通りね」
「ちょっと、大丈夫なんですか!?」
義之は落ち着いている水越先生を見て、少し不安げに聞いた。
「大丈夫よ、忘れたの? 彼は”学園最強”なのよ?」
「なに? 学園最強?」
「ああ、あいつは付属生なのに本校生を差し押さえて総合ランクトーナメントで優勝したんだ」
天枷の質問に義之が返答した、その時だった。
「ホーロス・ホーロロ・ホーロギオン」
裕也の声が聞こえた
「え? あれは西洋魔法の始動キー?」
「へんね? 彼なら魔法の射手《サギタ・マギカ》くらいなら、無詠唱で使えるでしょうに」
義之と水越先生が、不思議そうに首を傾げると
「契約に従い、我に従え、高殿の王」
「なに!? あれはまさか!!」
「最大級呪文!? 本校生でも使えるのは数人だけなのに!」
「来たれ、巨神を滅ぼす燃え立つ雷霆。百重千重と重なりて、走れよ、稲妻!!」
「やば! 障壁最大出力!! 天枷、あんたは対閃光フィルター! カメラが焼けるわよ!!」
「うお!」
「『千の雷《せんのいかずち》!!』」
裕也が、上げていた手を振り下ろすと
とてつもない閃光と共に、数えるのが馬鹿馬鹿しい雷がガジェットに降り注ぎ全て熔《と》けた。
「しまった、やりすぎたかも・・・」
その声が聞こえたのは、数秒後だった。
「あんたね、使うなら言いなさい!」
義之たちの居る位置に歩いて戻ってきた裕也に、水越先生が怒ってると
「おい、裕也。左手から出血してる」
と、義之が指を挿した。
「む?」
裕也は、自分の腕を見て多少驚いているようだ。
「・・・・・」
水越先生の眼が細くなる。
「天枷、コロスはちゃんと起動してる?」
「む? ・・・・ああ、大丈夫だ」
天枷は自分のデバイスの手の甲を見た。そこには、3つの宝石みたいなものが着いており、右手の真ん中の宝石が黄色く光っている。
これが、ストックした証だ。
「そう、桜内くん。悪いけど後お願いできる? わたしは裕也くんの手当てするから」
水越先生は手短に確認すると、義之に聞いた。
「あ、はい。大丈夫です、魔法を使えばいいんですね?」
義之は頷き、要点を確認した。
「ええ、お願いね、裕也くん来なさい、手当てするから」
そう言うと水越先生は、裕也を伴い保健室に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はい、そこに座って」
「・・・・」
裕也は無言で、指定されたイスに座った。
「裕也くん、スカリエッティ先生に話は聞いてるわ。あんまり無理しないの。あんた、ただでさえ寿命削って短いのに」
「・・・・」
裕也は制服の上着を脱いでから、ワイシャツを脱いだ。
そこは、先日戦闘で撃たれた場所だった。
今回、最大系呪文を使った反動で出血したようだ。
「うーん、これはわたしだけでは無理ね。シャマル、神夜《かぐや》手伝って?」
水越は奥に向かって声をかけた。
「はーい♪」
「はい」
奥から2人の若い女性の声が聞こえて、姿を現した。
1人は肩の辺りで切りそろえた金色の髪に灰色に近い紫色の瞳に優しい微笑みの女性だった、名前はシャマルと言い、シグナムと同じくはやての所持している魔導書の「夜天の書」の守護騎士プログラムの1人だ。
もう片方は、膝下まで伸ばしている薄い青が混じった黒髪。そして、少しつりあがっている眼に整った顔立ちの美少女だった
名前は橘神夜《たちばなかぐや》だ
「治療しますから、動かないでくださいね」
シャマルの領分は、戦闘よりも治療や索敵といった裏方を本領としている。
「シャマル先生、新しい包帯です」
「ありがとう♪」
「すまん」
「ワイシャツと制服の上着は、そこに予備があるから使いなさい。ワイシャツは上げるから、上着はクリーニングして返してね」
「わかってますよ」
裕也は、シャマル達に治療されながら返答した。
「今、初音島の守護者《ガーディアン》にはあんたしか居ないんだから、無理しないでね?」
「・・・・・」
「あんたが死ぬと、悲しむ人が居るんだからね?」
「はい・・・・まぁ、少ないでしょうけどね・・・」
裕也は自虐的に笑った。
◇ ◇ ◇ ◇
第3者side(別視点)
廊下の保健室の前で、固まってる1人の影があった。
それは、金髪を腰まで伸ばしており髪先で黒いリボンで纏めた美少女だった。
腕には、生徒会を表す白い腕章を着けている。
「・・・・裕也が、守護者《ガーディアン》?」
フェイトの言葉は震えていた。
「しかも、寿命が短い・・・?」
フェイトは、自分の言葉が信じられない思いだった。
「・・・・どうして?」
その言葉には、誰も答えなかった。