D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
「あれは13年前だった・・・・」
スカリエッティは眼をつぶると、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
西暦2042年ヴァチカン法王教皇庁 禁書目録聖省《インデックス》地下図書館
「あの計画に関わり始めて、もう3年か・・・」
スカリエッティは1人、誰も居ない通路を歩いていた。
しかし、その表情は暗い。
「ヨハンナは一体、あのような計画を何時まで続けるつもりだろうか・・・・」
”あのような計画”とは、それは人工劫の眼計画、通称プロジェクトα・Ωである。
その計画は西暦2039年から始動しており、既に犠牲者が7000を超えていた。
スカリエッティは最初、人体実験に参加できると聞いて乗り気だったが、途中で過ちに気付いたのだ。
泣き叫ぶ子供たちの声を聴いて”私は何をしている?”と思ったのだ。
「娘達も既に目覚めている・・・、どうするか・・・」
娘達とは、ウーノを含めた戦闘機人たちである。全員で12人居る。
上は勝手に、ナンバーズと呼称しているが・・・
「娘達のために、どうしたらいいのか・・・・」
スカリエッティが1人悩んでいると・・・・
「書架のバルバラ、どうした?」
「あなたが悩んでいるなんて、珍しいわね?」
「まったくだな」
「ええ」
書架のバルバラというのは、スカリエッティの禁書目録聖省での名前だ
禁書目録聖省では聖名を本名にする。
「ああ、書架のスコラスティカに書架のベネディクトゥス。それに、聖銃のシオンに聖骨のセバスティアヌスか・・・」
そこに居たのは、まさしく幸也に彰子。それに、橘博信に美姫だった
書架のスコラスティカが彰子の聖名で、ベネディクトゥスが幸也の聖名
そして、聖銃のシオンが美姫で聖骨のセバスティアヌスが博信だ
「なんなら、相談に乗るが?」
「そうよ、私達の仲でしょ?」
「うむ」
「水臭いわよ」
4人は微笑みながら言う。
幸也と彰子、スカリエッティは腐れ縁で、幼少の頃からの付き合いなのだ。
そして、博信と美姫は同僚だが、気さくな仲なのだ
「・・・・わかった、くれぐれも内密に頼む・・・・」
スカリエッティは周囲の眼を気にして、彼個人の研究室に案内した。
「それで、内密の話とは?」
幸也はスカリエッティの雰囲気で、ただ事ではないと気付いたのだろう。真剣な表情で聞いてきた。
「実はな、私は
「なに?」
「あなた・・・・」
「お前……」
「正気?」
幸也と彰子は驚いた表情で、スカリエッティを見つめ
博信と美姫は絶句していた
「見逃してくれとは言わない、だけど、これは本気だ」
スカリエッティは真剣な表情で、4人を見つめた
「理由は、あの子達か・・・・」
幸也の言うあの子達とは、ウーノ達のことである。
「ああ・・・」
「あなたも人の子と言うわけね・・・・」
「親心か……」
「そうね」
スカリエッティの言葉に4人は頷いた
「悪くても、死ぬのは1人だけだろう、忘れてくれ・・・」
そう言って、スカリエッティが立とうとした時だった。
「待った」
彰子に止められて
「俺たちも、実は逃げようと計画していたのさ」
幸也が衝撃的なことを言った。
「なに!?」
スカリエッティも流石に驚いている。
「本気かね?」
スカリエッティは、念のために確認した。
「ああ」
「本気よ」
「うむ」
「ええ」
4人は即答した。
「しかし、なぜ?」
スカリエッティは納得出来なかった。
4人には、子供は居なかったはずだが・・・と
「実はな・・・」
「子供が居るのよ♪」
「俺達もな」
「そうなのよ」
「な!?」
スカリエッティは大口を開けて驚いて、
「い、何時の間に産まれた!?」
思わず掴みかかった。
「いやー、去年産まれました!」
幸也は、恥ずかしそうに頭をかきながら言い、
「今は外部の家に預けてるの、禁書目録聖省《ここ》には内緒で」
彰子は、口元に人指し指を立てて「秘密ね?」とジェスチャーをしながら言った。
「こちらは2年前だが」
「知り合いに預けてるの」
博信と美姫は頬を染めている
スカリエッティは思考が停止しているのか、中腰で固まっている。
しばらくして
「まぁ、禁書目録聖省に内緒というのは賛成する。下手したら、魔道人形にされているしな・・・」
魔道人形というのは、人としての肉体を捨てて人形の身体に脳髄を入れて思いのままに動かす技術で、体が動かない術士用に考えられたものだが、命令を聞かない術士を無理やり操る事もできるのだ。
「ああ……だから俺たちは、外部の知り合いに子供を預けたんだ」
「子供を
「俺達も話していない」
「子供には……そんな重荷、背負わせたくないのよ」
4人はそこで一旦話を区切ると
「それで、被験体№ E-666は覚えているな?」
「む? ああ、私が最後に手がけた強化人間の子だな・・・・」
スカリエッティは苦い表情で喋る。
「あの子とE-1088はね、銀十字のアガタの子なのよ・・・」
「なんだと!?」
銀十字のアガタ、そいつはスカリエッティ、幸也、彰子の最後の幼馴染だ
が
「確か、あいつは昨年任務中に戦死したと聞いたし、しかもあいつが誰かと結婚していたとは聞いてないが・・・・」
スカリエッティは口元に手を当てて思い出しながら言う。
「あの子はな・・・・」
「外部との子なの、しかも、戦死ってのも嘘よ。本当は始末されたの、背信罪で・・・・」
「それで、アガタの伴侶は・・・・」
「始末されてるわ・・・・、それであの子は戸籍を抹消されて、実験動物《モルモット》扱いで連れてこられたの・・・・」
彰子は暗い表情で俯き、膝の上に置いた両手を白くなるほど握る。
「それを私は……知らず知らずにあんなことを・・・・」
スカリエッティは両手で顔を覆い、ヨロヨロと椅子に腰掛けた。
幼馴染の息子を人体実験で強化したのを悔いていた。
「子供には罪はない、それなのに……上は背信者の子など人では無いって・・・・」
それを聞いたスカリエッティは、顔を上げて
「それで、脱走計画はいつ行うのかね?」
スカリエッティは真剣な表情で聞いた。
「今はまだ未定よ・・」
「だが、必要ならば今すぐにでも発動できる」
それを聞いたスカリエッティは、少し考えると
「2年、待ってくれるか?」
「え?」
「なにを考えている?」
彰子はスカリエッティの言葉を聞いて驚き、幸也はスカリエッティの考えが分からないのか聞く
「あの子達の専用武装を完成させる。2年あれば十分だ」
そう言ってスカリエッティは、研究スペースに向かい開発に専念した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして、2年後
「脱走だーー! 書架のベネディクトゥスとスコラスティカ、聖銃のシオンに聖骨のセバスティアヌス。それに、バルバラとナンバーズが逃げたぞーー!」
地下図書館のあちこちから火の手が上がり、煙が充満している。
「ちくしょー! 猿どもが! 我々に楯突くなんて生意気なんだよ!」
更に外でも同時に攻撃が行われているために、指揮系統が混乱していた。
そのころ
「ウーノあの子達は!?」
「トーレとセインが保護しました!」
スカリエッティたちは裕也を保護して、走っていた。
「トーレ、セイン! その子達は大事に扱ってくれよ! 死なせたら、アガタに顔向けできん!」
「分かっています! 私もアガタには世話になりましたので!」
「右に同じく!!」
トーレは産まれてからは度々、アガタに模擬戦の相手をしてもらっていたのだ。
セインは戦闘技法などを指導してもらった
すると前方に
「バルバラこっちだ!」
幸也と彰子、それに博信と美姫が居た、4人は禁書目録聖省の制服の白い法衣を脱いでおり、動きやすい服を着ている。
「救難十四聖が来る前に早く逃げるわよ!」
救難十四聖とは
ヴァチカン法王教皇庁が認めている聖人は数百に上るが、その中でも特に偉業を成し遂げた14人の聖人が居るのだ。
雷光のバルバラ
聖樹のブラシウス
車輪のカタリナ
鉄腕のクリストフォロ
封魔のキリカス
青炎のエラスムス
幻影のエウスタキウス
虹のゲオルギウス
博愛のジャイルス
聖十字のマルガリタ
銀刀のパンタレオン
聖獣のヴィトゥス
簒奪のアカキウス
不朽のディオニシウス
この名前を受け継いでいるのが、救難十四聖なのだ。
その存在は外では伝説級の扱いをされており、禁書目録聖省《インデックス》の使徒の中でも大幹部なのだ。
尚、その上には2人しか居ない、禁書目録地下図書館の司書長と教皇のヨハンナだ。
その実力は戦闘機人の12人を凌駕しているので、会ったら確実に殺されるのだ。
だが、その強さ故に長期任務に就いている場合が多く、今現在は1人しか居ないのだ。
しかも、救難十四聖のうち4席が空席になっている。
その理由は、選定の基準が高いので簡単には見つからないのだ。
現在、空席なのは
車輪のカタリナ
青炎のエラスムス
虹のゲオルギウス
簒奪のアカキウス
が空席となっている。
しかも、在籍となっている10人のうち、9人は長期任務から未だ戻っていない。
まさしく、今が絶好のチャンスだった。
しかし、残っているのは1人だけとはいえ、楽観出来ないのだ
1人でも、十分に脱走しようとしているスカリエッティたちを殺せるのだ。
そのためにこれは、時間との戦いでもあった。
計画を開始して10数分が経過している。そろそろ危ない時間となってきていた。
「外はどうなっている!?」
「ああ、友人達が頑張ってくれている!」
「東門のほうがもうすぐ制圧できるみたいだから、そこから逃げるわよ!」
「「「「「おう(ああ)(うん)!」」」」」
そうして、計画を開始して約40分後
「これで私達は脱走者ね・・・・」
スカリエッティたちは、外に無事に出られていた。
そして、今はヴァチカン市国の中の協力者の家に隠れている。
ここからローマに逃げ込んで、そこからは飛行機に乗って日本の初音島に向かうのだ。
「初音島なら、奴らも簡単には来れないだろう・・・」
「しかし、なぜ初音島なのだ?」
スカリエッティは逃亡先が初音島なのを疑問に思ったのか、4人に質問した。
「初音島に私の友人が住んでてね、そこに私達の子供を預けてるの」
「それに、あそこには偉大な魔法使いが住んでる」
「あいつらも、相手にしたくないでしょ」
「そうか。それで、名前は考えたのかね? 聖名はおかしいだろ?」
「当たり前だ、俺は幸也、防人幸也だ」
「私は防人彰子ね」
「俺は、橘博信だ」
「私は橘美姫ね」
「私はジェイル・スカリエッティだ」
「それで、この子達はどうするのですか?」
トーレとセインは、両手で抱いている裕也と神夜を見ながら言う
「その子、私達で引き取っていいかしら?」
「男の子が欲しいと思っていたのでね」
「女の子は私達が」
「構わんよ、防人家は生まれた子供は女の子で、橘家は男の子か?」
「ええ」
「それで、こいつは兄貴になるわけだな。名前は考えてある」
「こちらもだ」
「ほう、聞いてもいいかね?」
「ええ、構わないわ」
「こいつの名前は」
幸也と彰子はそこでお互いの顔を見て、息を合わせて告げた
「「防人裕也だ(よ)」」
「いい名前っすね!」
「ああ、優しく育つだろう。」
「ありがとうね」
「うむ、で、そちらは?」
「俺達のほうはな」
博信と美姫は見つめあうと、息を合わせて
「「神夜だ(よ)」」
「そうか」
「綺麗な子になりそうだね♪」
こうして、裕也と神夜は名前を得て、防人家と橘家の一員となった瞬間だった。
しかし、まさか僅か2年後にあのような事件が起きるとはこの時誰も予想だにせずに居た。