D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
西暦2050年 6月某日
封鎖結界内
そこは…激戦区だった。
「美樹よすんだ! 眼を覚ませ! 美樹ー!」
そこでは、望まれない兄妹対決が起きていた
だが、美樹のほうは目が虚ろで焦点が定まっていない。
「・・・・・」
裕也は美樹を殺したくないから、直撃コースで攻撃が出来ない。
「あはははは! 兄妹で戦うなんて、面白いでしょう? 存分に殺しあいなさい!」
美樹の10mほど後ろでは、白い法衣の使徒が醜く笑っている。
「お前ーーーー!!」
「この外道がーー!」
裕也は使途に向かい刀を構えて突撃する
蓮華はアームドデバイスの<グランヴェル>の戦斧モードで、ゴーレムと戦っている
「私をその身をもって守りなさい!」
使徒が命じると美樹は裕也の前に滑り込んできて、何処からともなく鎖で裕也を攻撃してくる。
「があぁ!?」
裕也は最低限のダメージで済むように避けるが、それでも鎖は容赦なく裕也の体を切り裂く
「「裕也くん!」」
クイントとメガーヌは使徒のゴーレムと交戦しながら、裕也を気にかけ
「裕也、離れろ!」
空にはオレンジ色の髪をポニーテール状にしている男性、ティーダ・ランスターが両手に拳銃型のデバイスを展開して使徒を撃とうとしているが
「ハエがウルサイんだよ!!」
使徒が睨むと同時に、美樹が鎖をティーダに向けて放った
「がは!」
その鎖は……無慈悲にも、ティーダの胸部を貫通した。
「ティーダさん!!」
ティーダは血を噴出しながら、落下して地面に激突する。
「「ティーダさん!!」」
ティーダは裕也達にとって、兄に等しい人物だった
両親が死んでから、優しく接してくれた
「「ティーダ君!!」」
クイントとメガーヌの二人は、ゴーレムを破壊すると、裕也の方に向かった
「邪魔だ、異教徒の猿が!!」
使徒は手に持っていた剣をデタラメに振った
しかも、距離も離れているのに
しかし、剣はまるで蛇腹のように伸びた
「くぅ!」
クイントはシールドを展開して耐えて
「はぁ!」
メガーヌは姿勢を低くして回避した
「うぉ!?」
「くぅ!」
蓮華は斧を楯にして、神夜は後退して回避した
「それは聖遺物ね!」
「ほう、異教徒の猿でもわかるのだな。これの神々しさが」
使徒の男は、剣を見せびらかしながら言った
聖遺物、それは昔、偉業を成し遂げた聖人が所持及び使用していた武具や書物、衣類を指す
そして、使徒の男が持っているのも、その1つだった。
「この聖遺物の名は、龍骨剣だ」
「龍骨剣! あの伝説上の生き物、龍の骨を使って作ったとされる剣ね!」
メガーヌは出自を知っていたようで、身構える
「その通り、直撃を食らえばタダでは済まんぞ?」
使徒はさらに剣を振るう
「くっ!」
裕也は左手に持っていた妖刀、濡れたカラスの羽のように黒い刀、
「野郎!」
蓮華は伏せるように、姿勢を低くし避け
「この!」
クイントはかろうじて避ける
が
「がはっ!」
クイントの胸部を、鎖が貫いた
「クイントさん!」
クイントは力なく、地面に倒れ付した
「クイント!」
メガーヌはクイントが倒されたことに、意識が集中した
「隙あり!」
使徒は剣を振った
「しまっ!」
メガーヌの体を、龍骨剣が逆袈裟懸けに切った
「かはっ!」
メガーヌの口から鮮血が溢れる
そして、メガーヌは仰向けに倒れた
「メガーヌさん!」
裕也は刀で鎖をはじいて、クイントとメガーヌの近くに寄った
「クイントさん・・・・」
クイントは即死だった
メガーヌは生きているが、早く治療しないと危ない
裕也はメガーヌの傷口を自身の服を脱いで、キツく縛った
「ぶっ殺す!」
蓮華はグランヴェルを変形させて、弓モードにして、狙撃しようとしたが
「邪魔なんですよ!!」
使徒が指差すと、美樹の鎖が伸びた
「くぅ!」
それを、蓮華の前に滑り込んだ神夜が自身のデバイス<シャーリーズ>の鉄扇形態<花月>で防ぐ
が
「仕舞いです!」
そこを狙って、使徒が蛇腹剣を振るった
「しまっ!」
蛇腹剣が神夜に迫った
(駄目! 避けきれない!)
神夜はそう直感でわかり、凶刃がゆっくりと迫った
が、そこに割り込む影
「がぁ!」
それは………蓮華だった
「な!?」
「蓮華!!」
蓮華は、仰向けに倒れた
防御に使ったのだろう
グランヴェルは途中で折れていた
「そんな……兄さん!!」
神夜は涙目で駆け寄った
「カフッ! なんだ……初めて……だな…兄さんって…呼んでくれんの…」
「そんなことどうでもいいです! なんで私を!」
神夜は花月の回復魔法で治療するが、血が止まらない
「なんでって……たった一人の妹を……守るのに……理由が…いるか?」
「私は本当の妹じゃないんですよ!? それなのに!」
「そうかも……な…だけどな……俺にとっては…大事な妹なんだ…」
「兄さん……」
神夜は全力で治療に専念している
本来、蓮華には再生系の希少技能があるが、扱いが難しいために、この時はまだ扱いきれずにいた
「どうだ? 被験体よ、我々の元に戻らぬか? まぁ、行き着く先は戦闘人形だがな!」
使徒は倒れている全員を見て、笑いながら言い放つ
裕也は使徒を睨む
「美樹・・・・」
その時、美樹の顔が見えて気付いた
「泣いてる・・・・」
美樹の両目の端から涙が溢れているのだ
「ん? まだ精神が保っているのか。わざと自我は残してやったというのになぁ」
使徒はつまらなさそうに言う
「お前は・・・・」
つまり、美樹は自分の能力でティーダとクイントを殺してしまったことを理解しているのだ
それで美樹は泣いているのだ
「・・・・」
裕也は両手の刀、鉋切長光と小烏天国を構える
「貴様…なんのつもりだ?」
使徒は眉を上げて、裕也を睨んだ
「お前を殺して、美樹を取り戻す!」
裕也はあらん限りの殺意を込めて、使徒を睨んだ
「ああ…私を殺した所で、戻りはしないさ」
「なに?」
「この娘を操っているのは私ではなく、教皇のヨハンナ様だ。まぁ、今は私が操っているがね」
「なん・・・だと?」
「だから、私を殺したところで無意味だ! そもそも、私に勝てると思っていることが愚かなのだよ!!」
使徒は大声を上げながら、笑っていた。
「そんな・・・・」
「・・・・・」
美樹は涙を流しながら、虚ろな表情で見ている
「ごめんね、美樹・・・・」
裕也は両手の刀を握りなおす
「約束したのに・・・・守るって約束したのに・・・・」
裕也は泣きながら美樹を見る
そして思い出す
両親が死んで1年経って、守護者に入った後の夏に両親の墓前で美樹と両親に約束したあの時を
『僕が美樹を、皆を守る!』
と、約束したのに
「守れなかった・・・」
「ごちゃごちゃとウルサイですね」
使徒は裕也の言葉が耳障りなのか、表情をゆがめた
「せめて、僕が・・・・」
裕也は俯いていた顔を上げる
その眼には覚悟の光が宿り、左目に意識を集中する
「ええい! 捕まえなさい!」
使徒が命じると、美樹の鎖が伸びて裕也に向かう
「
その瞬間、裕也にとっては全てが2重にボヤけるように遅く見えた
裕也が使った
これは、使い手に周囲の全ての行動の先を見せつつ、さらに使い手の時間を数10倍から最大で数百倍まで延ばして本人は普段通りに動けるのだ。
「僕は自分の罪を肯定する、受け入れる、これから僕が犯す罪もだ!」
裕也は走りながら言い放つ
「だから、美樹。恨むなら約束を守れなかった僕だけを恨んで、憎むなら僕を憎んで」
裕也は涙を流しながら走る
「僕は、僕に向けられた全ての恨み憎しみを受け入れる。悲しみは僕が背負う、僕は戦う!」
裕也は、右手の小太刀の鉋切長光で美樹の胸を刺した
「ごめん・・・・」
そして、目の前でゆっくりと龍骨剣を振っている使徒が居る
裕也は
そして、その瞬間に時間の流れは戻る
「あ? いぎっ、ぎやああああ!」
使徒は最初、なにが起きたか分からなかっただろう
数10メートル離れていた裕也が気付けば目の前に居て、さらに気付けば自分の手が手首から切られていたのだ
「貴様ァァァ!」
使徒は残った手で龍骨剣を握ろうとしたが、それを裕也が許すはずがなかった。
「死ね・・・」
裕也は左手の小烏丸天国で背中を刺して、右手の鉋切長光で首を切り飛ばした
「・・・・・・」
裕也は無表情に使徒の死体を見る
そして、両手の刀を空間魔法で仕舞うと
裕也は背後で倒れ付している美樹に、ゆっくりと歩み寄り
「・・・・・・」
美樹の遺体を両手で抱えた
美樹の顔は……安らかだった
「ごめん・・・・これで、最後にするから・・・」
裕也の肩が震える
「う、ひっく、うあぁぁぁぁぁぁ!」
裕也の慟哭が……封鎖結界の解けた蒼天に響く
スカリエッティたちが着いた時に見たのは、美樹の遺体を抱き抱えながら泣き叫ぶ裕也の姿だった。
この戦いでティーダ・ランスター、そしてクイント・ナカジマの両名が戦死
そして、メガーヌ・アルピーノは意識不明の重体
橘蓮華も重傷を負った
メガーヌはそれから2年近く意識不明に陥り、意識が戻った時は目の前に泣いていた自分の娘のルーテシア・アルピーノが居た