D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
「これが、君達の知りたかった裕也くんの過去さ」
部屋の中を、沈黙とすすり泣く音が交互に覆った
「そりゃ……強くなるはずだよ……」
まゆきは、涙を目元に溜めながら呟いた
「あの目も……納得ですわね……」
エリカは、裕也の目に納得して
「ずっと……1人で……戦ってたんだ……」
音姫は、涙を拭きながら、呟いて
「ずっと……私達の……ために……」
フェイトは、胸元で両手を合わせて、泣いていた
「そして、1年前にイギリスに行き、エリオくんとキャロちゃんを救助した」
「はい」
「そうです」
エリオとキャロの二人は頷くと、顔を見合わせて
「先生、僕とキャロの話をしてもいいですか?」
「なに? しかし、いいのかね?」
スカリエッティは、エリオ達の提案に驚いている
「はい。裕也義父さんの事を知るには、私達の事も話すべきだと思いました」
キャロはスカリエッティを見ながら、毅然と言った
「………わかった。しかし、私は君達に関しては、詳細を知らないのでね。お願いしていいかな?」
スカリエッティは、数瞬黙考すると、エリオたちにお願いした
「はい、構いません」
「それでは、話しますね。裕也義父さんと私達の出会いを」
そして、エリオから話だした
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エリオの始まりは、西暦2052年だった。
「ただいまー!」
友達と遊んでから帰ってきたエリオは、ドアを開けながら、中に居るはずの両親に帰ってきた報告をした
しかし、両親からの返事はない
「? 買い物に行ったのかな?」
エリオは首を傾げながら、靴入れを見た
すると、靴入れには両親の靴が置いてあった
「お父さん? お母さん?」
エリオは両親を呼びながら、電気の点いていたリビングに向かった
「エリオ! 来てはいかん!」
エリオは、その声を聞いて慌ててドアを開けると
数人の白い法衣を着ている男達が、両親を囲んでいて
「黙れ!」
「お父さん!? お母さん!?」
エリオの目の前で、両親は
切り殺された
エリオは、倒れている両親に駆け寄ろうとしたが
エリオの腕を、法衣を着た男が掴んで、乱暴に持ち上げた
「あなた達は誰ですか!? お父さん達に何をしたんですか!?」
エリオは痛みを堪えながら、男に叫ぶ様に問いかけた
が、男達は質問には答えずに、頷きあうと
「こいつは連れていくぞ。貴重な実験素材だ」
と言うと、エリオの頭を掴み
「スタン」
「がっ!?」
エリオに電撃を当てて、気絶させた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして
そこからは、エリオにとっては地獄だった
何度も調整と言われて、体を弄ばれ
何度も、訓練と言われて、同い年の子供と戦わされて
気付けば、2年経っていた………
2054年 5月某日
「さて、今日も訓練をするぞ。立て、11番」
と、男がエリオの入っていた牢屋の鍵を開けた時だった
牢屋に、いや、牢屋だけではなく、施設中に甲高い警報音が鳴り響いた
「何事だ!?」
「敵襲です! 恐らく、例のガーディアンと名乗る異教徒共かと!」
「なに!? ちぃ! 異教徒のサル共が! 我らの崇高な目的を邪魔するか!」
部下なのだろう、新たに現れた使徒からの報告を聞いた男は苛立った様子で声を荒げた
「すぐに殺せ! 神の御心のままに、殲滅しろ!!」
「はっ!」
男が敬礼して、振り返ろうとした
その時だった
男の胸部から、刃が生えた
「な……に……?」
使徒は、驚愕に眼を見開いていたが、刃が消えると、鈍い音を立てながら倒れた
「貴様、我らを禁書目録聖省の使徒と知っているのか!」
「ああ、知っているさ。そして、貴様らに相応しいのは、死だけだ!」
エリオが見たのは、使徒の着ている白い法衣とは真逆の黒いローブを纏っている人だった
声で男というのは、エリオにもわかった
「異教徒のサルが!!」
使徒が、魔法を放とうとしたが
「遅い」
気付けば、使徒の後ろに立っていて、刃が煌いた
そして、刀を鞘に仕舞うと、使徒から血が噴出して、使徒は倒れた
「死んで償え」
死んだ使徒を見下ろしながら、呟いた
すると、別の通路から、血に濡れた槍型デバイスを持った中年の男性
ゼスト・グランガイツが現れた
「終わったようだな。こちらは、融合器を1体保護した」
「融合器ですか、珍しいですね」
「ああ、古代ベルカ式みたいだ」
と、二人が話していると、別の通路のドアが開いて蓮華が現れた
「あ? なんだ、俺が最後だったか」
「蓮華か。そちらはどうだった?」
ゼストからの質問に、蓮華は苦い表情で首を左右に振った
「そうか………こちらは、あの子ですね」
と、黒いローブを着た若い男がエリオを見た
顔には、白地に血の涙のペイントが施された仮面が装着されている
エリオは改めて、怖くなった
保護と言ってるが、ここと同じ扱いにならないとは限らない
そう思うと、エリオの体は震えた
エリオは、素早く視線を左右に巡らせると、足元に使徒が持ってきていた剣型のデバイスが見えた
エリオはそれを素早く掴むと、切っ先を向けた
「? ああ……しまった。仮面を着けてるから怖がらせっちゃったか」
若い男はそう言いながら、仮面を外した
見えたのは、丹精な顔立ちに黒い髪
そして何よりも、左目に着けた眼帯だった
その時は知らなかったが、それが裕也との初めての出会いだった
裕也は仮面を仕舞うと、ゆっくりとエリオに近づいた
「来るな……来るな!」
エリオが言っても、裕也は止まらなかった
そして、エリオの前で止まると、片膝立ちになって、エリオに手を伸ばした
が
「僕に触るなーーー!!」
エリオは恐怖から、剣を振り下ろした
エリオは振り下ろした剣は、裕也の右肩あたりから腰まで切っていて、血が流れた
「防人!」
「裕也!!」
ゼストと蓮華が慌てて、近寄ろうとするが
「大丈夫です!」
裕也は、声で制した
そして、裕也は微笑んで
「遅くなって、ごめんな……怖い思いをさせて、ごめんな……でも、もう大丈夫だ」
と言いながら、裕也は優しくエリオを抱きしめると
「これからは、1人じゃない。俺が居る。だから……泣いてもいいんだよ?」
と優しく、エリオの頭をなでた
それを聞いたエリオは、目元に涙が溜まった
「あ、うぁ……」
そして、手から剣が離れて、カランと音を立てて、地面に落ちた
そして、両手を裕也の背中に回し、顔を裕也の胸板に押し当て
「怖かった……怖かったよぅ……」
エリオは
久しぶりに、泣いた
心の底から泣いた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
場所は変わって、輸送機内
「助けられたのは、エリオ・モンディアル君と融合器だけでしたね……」
裕也は悲しそうに、眠っているエリオを見ている
エリオは泣きつかれて、眠っている
裕也は、そんなエリオの頭を優しくなでている
すると、輸送機内に警報音が鳴り響いた
「何事だ!」
ゼストは大声を張り上げて、操縦席のパイロット。ヴァイス・グランセニックに問いかけた
「近くに展開している、友軍からの援軍要請っす! インデックスの強襲部隊がルシエ族を襲っているらしく、向かったのですが、敵の戦力が予想より多いらしく、近づけないようっす!」
「ルシエ族といえば………」
「龍召喚を扱う、遊牧民ですね……あいつらは……!」
裕也は、表情を怒りに染めた
「一番近くの部隊は!?」
「我々だけっす! どうしますか!?」
ゼストの問いかけに、ヴァイスは笑みを浮かべながら、問い返してくる
「決まっているだろう? 行くぞ!」
「了解! 進路変更します! 少し揺れますよ!」
ヴァイスの言うとおり、輸送機は揺れた
すると、それで気付いたのか、エリオの瞼が開いた
「ど、どうしたんですか?」
「インデックスの連中が、遊牧民を襲ってる。それを助けるのさ」
不安そうにエリオが問いかけてきたが、裕也はエリオの頭を撫でながら、答えた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はあ…はあ…はあ」
ピンク色の髪の小柄な女の子が、キャロ・ル・ルシエが走っていた
「キュクル~?」
そんな彼女の僅か上に、白い子龍が飛んでいる
「うん、大丈夫だよ。フリード」
キャロは心配してくれたフリードを安心させるために、笑顔で返事した
(お父さん………お母さん……!)
キャロは自分が逃げるために、残って使徒と戦っている両親が心配だった
そして、背後の集落は燃え盛っており、怒号と悲鳴が途切れ途切れに聞こえてきた
キャロはそれを聞いて、涙が溢れた
(どうして、こんなことになったの? あの人たちはなにがしたいの!?)
キャロは、突然現れて襲撃してきた使徒達の目的がわからなかった
そして、考えることに意識を割いたためか、キャロは転んでしまった
「もう……もう嫌だよぅ……お父さん…お母さん…」
キャロはうつ伏せで泣きながら、呟いた
すると、近くで土を踏みしめる音が聞こえた
「お父さん! お母さん!」
キャロは、それが両親が来た音だと思った
しかし、そこに居たのは
血に塗れた使徒だった
「あ……うぁ……」
キャロの心中は、絶望に覆いつくされた
「たっく、こんな所まで逃げやがって。さてと、さっさとこいつを殺して帰るか」
使徒は気だるそうに言いながら、腕を上げた
「キュクルー!」
フリードリヒが攻撃しようとするが、使徒が手を無造作に振るうとフリードは地面に叩きつけられた
「フリード!?」
「やれやれ、邪魔なトカゲめ。これで、終わりだ」
使徒は再び、手を上げた
その手には、赤い魔力弾が出来上がり、徐々に大きくなっていく
(あ、私…ここで死んじゃうの?)
キャロには、目の前の現象が遅く見えた
がそこで、神も救いの手を差し伸べた
キャロの背後
つまりは、集落の方から刀が飛来して、使徒の頭に突き刺さった
「………え?」
使徒は、仰向けに倒れた
キャロは、目の前の現象が信じられなかった
キャロが呆然としていると、背後から誰かが走ってくる音が聞こえた
キャロは、ゆっくりと背後に振り向いた
そこには、黒いローブに白地に血の涙のペイントが施された仮面を被った人物が走ってきていた
「はあ……はあ……はあ……間に合った………」
その人物はキャロの隣に片膝立ちになると、仮面を外して放り投げた
「キャロ・ル・ルシエちゃんだね?」
「はい……そうです………あなたは?」
「俺の名前は、防人裕也だ………すまない……俺達が来るのが遅かったから……」
裕也はそう言いながら、キャロを助け起こした
そして、近くで横たわっていたフリードを抱き上げると
「親御さんのところに行きたい?」
と、悲しい表情で言った
「……行けるんですか?」
「ああ……インデックスの連中は殲滅したからな。もし居ても、俺達が排除する」
裕也はそう言いながら、キャロに手を差し伸べた
キャロは、裕也の手を握った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お…父さん……お…母さん……?」
キャロの目の前には、血まみれで倒れている両親の姿があった
「俺達が来た時には既に、虫の息だった……」
キャロは呆然と両親を見ながら、ヨタヨタと覚束ない足で歩み寄ると、両膝を突いた
「そんな………そんな………っ!」
キャロは首を左右に振ると、額を地面にこすり付けて泣いた
あの優しかった両親に、もう会えないなんて
あの暖かい手に、もう2度と触れないなんて
キャロの心中を、悲しみが覆いつくした
すると、泣いているキャロの肩に、裕也の手が優しく置かれた
「君の母親の遺言で、君を、『キャロをお願いします』って、言われた………だから、一緒に来るか?」
と、裕也は悲しそうに微笑みながら首をかしげた
その数十分後に、ガーディアンの本隊が到着
ルシエ族の遺体は、丁重に葬られた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、エリオとキャロは裕也とフェイトの養子となったのである
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「以上が、僕達の話です」
エリオが話し終わると、学生組みはほぼ全員が泣き崩れていた
フェイトは泣きながら、エリオとキャロに走り寄ると、両腕で2人を抱きしめた
「それからは、裕也義父さんは、約束を守ってくれてます」
「はい、授業参観にも来てくれました」
しばらくの間、地下室内を沈黙が覆った
すると
「さて、これで裕也くんに関する過去話は終わりだ。そして、私から君達に提案がある」
スカリエッティの言葉に、全員が視線を向けた
「裕也くんは、恐らく今後も戦う道を選ぶだろう。だけど、君達だけは、今まで通りに接してほしい」
そこまで言うと、スカリエッティは学生組みを見回して
頼む
と、頭を下げた
それを聞いた学生組みは、1回全員で顔を見合わせると
「「「「「もちろん!」」」」」
と、笑顔で親指を立てた
そして、全員が帰った後
「ふむ……念のために、彼を呼び戻すか」
と言いいながら受話器を取って、どこかに電話をかけた