D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
「お姉ちゃん……なの?」
目の前に現れた女性、美秋を見ながら麻耶は呆然と呟いた
「久しぶりね……麻耶ちゃん」
美秋は座り込んでいる麻耶を見ると、微笑みを浮かべた
「お姉ちゃん……お姉ちゃん!」
麻耶は美秋にすがりつくように、涙を流した
すると、美秋は麻耶の頭を撫でながら
「麻耶ちゃん、何があったの? 麻耶ちゃんがそんな風に来る時は、大抵何かあった時だから……」
美秋がそう問い掛けると、麻耶は唇をつぐんでから
「あのね、お姉ちゃん……私……友達に酷いことを……しちゃったの……」
「話してみて……」
美秋が先を促すと、麻耶はポツポツと語り出した
少し時は遡り、場所は変わって桜公園
「ごめんね、弟くん……こんなお姉ちゃんを……許して……」
そう呟いたのは、朝倉音姫である
彼女は《枯れない桜》を枯らせるか枯らせないか大いに悩み、どうやら枯らせる決断を下したようだ
そして、音姫が桜公園に一歩入ろうとした時だった
「決めたようですね、音姫さん」
という、裕也の声が聞こえた
音姫が声のした方向、背後に視線を向けると、そこに居たのは二本の刀を手に持った裕也の姿があった
「ここは俺が抑えます……行ってください」
「それって、どういう……」
裕也の言葉に疑問を覚えて、問い掛けようとした瞬間
音姫は空間に満ちている殺気に気付き、視線を裕也の向こう側に向けた
そこに居たのは、白地に金色の刺繍が施された法衣を纏った大柄な男だった
「イ、インデックス……っ!」
しかも、纏っている法衣は救難十四聖を示している
たった一人だけだと言うのに、音姫は生きた心地がしなかった
「音姫さん……行ってください!」
裕也はそう言うと同時に、相手に向かって飛び出した
裕也はそのままの勢いで、両手に持った刀を繰り出した
だが、相手はそれを巨大な金棒《クリストフォロの戦鎚》で防いだ
「クリストフォロの戦鎚っ!? ということは、鉄腕のクリストフォロか!」
裕也はそう言いながら、鍔迫り合いを保った
「若いな……貴様ほどの若さで、この腕か……久方ぶりに楽しめそうだ!」
クリストフォロはそう言うと、手に持っていた戦鎚で裕也を押し飛ばした
しかし裕也は、押し飛ばされた勢いを利用して一気に距離を取った
しかし、着地点付近に音姫が居ることに気づいて
「行ってください。早く!」
と声を上げた
「っ!」
それまで固まっていた音姫は我に帰って、桜公園の奥へと駆け出した
「行かせん!」
「させるか!」
音姫をクリストフォロが追いかけようとしたが、それを裕也が阻んだ
なお、この襲撃は一カ所だけではなかった
風見学園、高町家、天枷研究所に計二十名余りが同時に襲撃してきていた
もちろん、裕也だけでなく、蓮華や神夜、更にはトーレ達も出撃及び交戦していた
その頃、天枷研究所内の水越女史の研究室での麻耶の独白は終わっていた
語り終えた麻耶は、泣きながら
「私……あの子に酷い事を……」
と呟いた
すると、美秋は麻耶の頭を撫でながら
「大丈夫よ、麻耶ちゃん……美夏姉さんなら、きっと許してくれるわ」
と言った
「でも、でも……」
麻耶がためらっていると、美秋は眠っている美夏を見ながら
「大丈夫。美夏姉さんは優しいから、麻耶ちゃんが自ら行動すれば、許してくれるわ……」
と美秋は悟った
美秋の言葉に、麻耶はしばらく黙り込むが
「うん……わかった」
と頷いた
麻耶が頷くと、美秋は満足そうに頷いてから義之に視線を向けて
「君が、麻耶ちゃんの彼氏さんかな?」
と問い掛けた
「あ、はい。そうです……」
義之が肯定すると
「そっか……」
と美秋は義之を見つめてから頷いて
「うん……君なら、大丈夫そうね」
と言った
そして、麻耶の頭を撫でながら
「麻耶ちゃんをよろしくね……麻耶ちゃんって、意地っ張りだけど、本当は優しくって泣き虫だから……」
と言った
「はい、わかりました……」
美秋の言葉に義之が頷いた時、美秋の体が透け始めた
「お姉ちゃん……体が!」
麻耶が驚いていると、美秋は自分の体を見ながら
「時間が来ちゃったみたいね……君なら分かるかな?」
「……え?」
美秋の言葉に、義之は首を傾げた
「私を一時的に起こしてくれた存在が、終わったみたいなの……」
「……そう、ですか……」
美秋の言葉に、内心で首を傾げながら義之はそう言った
(一時的に起こしてくれた……?)
義之が考え込んでいると、美秋は麻耶に視線を向けて
「大丈夫よ、麻耶ちゃん……すぐにまた、会えるわ……だから、美夏姉さんを起こしてあげてね……」
と言った
「うん……わかったよ、お姉ちゃん……」
美秋の言葉に麻耶が頷き、それを見た美秋は微笑んでからその姿を消した
「お姉ちゃん……」
「麻耶、スイッチを……」
麻耶が美秋の消えた場所を見つめていると、義之は麻耶の肩に手を置いて美夏の眠っているカプセルを指差しながら促した
「うん……」
麻耶は微笑むと、美夏が眠っているカプセルのスイッチを押した
少しすると、モーターの駆動音が聞こえて美夏の瞼がゆっくりと開いた
美夏は目を覚ますと、キョロキョロと周囲を見回して、麻耶に気付いた
そして、カプセルの蓋を麻耶が開けると美夏は微笑んで
「沢井……」
と麻耶の名前を呼んだ
「おはよう……天枷さん……」
麻耶は美夏の名前を呼ぶと、嬉し涙を流しながら美夏を抱きしめた
こうして、二人の少女の諍いは無くなった
だが、崩壊の序曲は既に始まっていた……