D・CⅡなのはstriker's漆黒と桜花の剣士 作:京勇樹
美夏が目覚めると蓋がゆっくりと開き、美夏もそれに伴って起き上がった
麻耶は嬉し泣きしながら、美夏を抱き締めて美夏もそんな麻耶を抱き締めている
そんな二人を義之は微笑みながら眺めていたが、その時思い出したのだ
美夏のデバイスに搭載予定だったAIの名前が、なんと呼ばれていたのかを
「水越先生! 天枷のデバイスに使う筈だったAIは、どこにありますか!?」
義之が突然大声を出したのに、水越女史は驚きながらも
「え、あの棚の紫色の箱の中だけど……」
と壁際にある棚を指差した
義之はその棚に駆け寄ると、水越女史が言った紫色の箱を手に取って蓋を開けた
中に入っていたのは、綺麗な紅色の球体だった
義之はそれを持つと、麻耶に駆け寄って
「麻耶!」
とそれを差し出した
「これは?」
麻耶は不思議そうにしながら、義之に視線を向けた
「俺の考えが正しいのなら、これは……美秋さんだ」
義之のその言葉を聞いて、麻耶は目を見開いた
「だけど……お姉ちゃんは昔、壊されちゃった筈……」
麻耶の言葉に義之は頷いて
「ああ……でも、麻耶のお父さんはサルベージに成功してたんだろ?」
「え、ええ……」
麻耶が頷くのを見て、義之は手の中にある球体を見て
「さっき美秋さんは、私を一時的に起こしてくれた。って言ってた……だったら、今は休眠状態なだけなんだ」
と言った
「え……?」
麻耶が呆然としていると、義之は球体を見ながら
「多分だけど、美秋さんは待ってたんだよ……麻耶が起動するのを」
と言った
「お姉ちゃん……」
麻耶は紅の球体を持つと、魔力を解放した
すると、今まで沈黙していた球体が光り出し
《魔力承認……完了……起動プロセス開始……》
と言う、音声が聞こえた
その音声はまだ機械的だが、まさしく美秋のものだった
《起動完了……待ってたよ、麻耶ちゃん》
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……!」
美秋の声を聞いて、麻耶はAIユニットを抱き締めた
その光景を見て、義之が微笑みを浮かべた
その直後、研究室内にけたたましい警報音が鳴り響いた
「なんだ!?」
「なに!?」
義之と美夏が視線を上に上げた直後
『緊急事態発生! 緊急事態発生! 研究所内部に侵入者! 繰り返す、研究所内部に侵入者! 所員は避難せよ! 所員は直ちに避難せよ!』
その放送を聞いた直後、水越女史が歯噛みして
「来たわね……インデックス!」
と呟いた
その数瞬後、廊下側の壁が爆発と共に吹き飛んだ
全員が一斉に視線を向けると、縛煙の向こうから現れたのは白い法衣を所々血で濡らしたインデックスの使徒だった
インデックスの使徒は研究室内を見回すと
「この部屋にも居ない……ハズレたか……」
と呟いた
「さて、殺すか……」
使徒はそう言うと、杖を掲げた
その直後
「桜花ぁ!」
叫びながら、義之は駆け出した
すると、警備員に預けられて警備室に置かれていた桜花が光輝いて
《緊急事態発生。遠隔起動!》
と喋り、次の瞬間に義之はバリアジャケットを展開していた
「させるかよ!」
義之はその言葉と同時に肉薄し、桜花を振り下ろしていた
だが、使徒は持っていた杖でその一撃を簡単に防いだ
「義之!」
麻耶が心配そうに声を上げると、義之は肩越しに
「麻耶、天枷、水越先生! 俺が押さえてる間に逃げろ!」
と叫んだ
「義之を置いて、逃げるわけには!」
「すまない、桜内!」麻耶は義之に駆け寄ろうとしたが、それを美夏が阻止
そして麻耶を抱え上げると、水越女史と駆け出した
「義之ぃ!」
麻耶が再度義之の名前を呼んだ直後、研究室で大きな爆発が起きた
「すまない、桜内……すまない!」
今の美夏はデバイスを有していないし、水越女史は元々魔法は使えない
そんな自分に出来るのは、義之の言葉通りに逃げることだけだった
数少ない友人を見捨てるような行動に、美夏はギリッと歯を軋ませながら走り続けた
途中で何回か非常口を見つけたが、その全てはドアが歪んでいて開けられそうになかった
ゆえに、三人は正面玄関を目指した
だが、正面玄関ホールに到着して三人は固まった
なぜならば、正面玄関ホールは地獄絵図へと変わっていたからだ
使徒の侵入を阻止しようとしたのだろう
杖タイプのデバイスや拳銃を持った警備員達が、無惨な死体となって血だまりの中に沈んでいた
「なんて、ことを……」
その光景を目にして、麻耶は顔を青ざめていた
だが、水越女史は冷静に
「研究所で雇ってた警備員に間違いないわね……人数的には、半分ってところね」
と呟いた
「とりあえず、外に出るぞ」
美夏のその言葉に水越女史は頷き、麻耶を支えながら正面玄関から出た
そして、その時になって気づいたが、学園の方角で黒煙が上がっていた
「警察はなにを……」
麻耶が呆然と呟いていると、水越女史が
「これを聞いてみなさい」
と自分が持っていた端末を手渡した
どうやらラジオモードになっているらしく、音声が聞こえた
『繰り返し緊急警報をお知らせします! 今現在、初音島は正体不明の武装者達により襲撃を受けています! 民間人の方々は警察の誘導に従い、所定の場所へ避難してください! 繰り返します!』
と切羽詰まった様子で語っている
「そんな……」
麻耶はその放送を聞いて、地面に座り込んでしまった
その直後、大きな爆発音がして爆煙の中から何かが飛び出した
その飛ばされてきた存在は二三回程地面をバウンドすると、三人から少し離れた場所で止まった
その飛ばされてきた存在を見て、麻耶は驚愕した
「義之!」
なにせ、飛ばされてきたのはボロボロになった義之だった
麻耶は立ち上がると倒れている義之に駆け寄り、義之を助け起こした
「義之! しっかりして、義之!」
麻耶が声を掛けると、義之の目がうっすらと開き
「逃げろ……早く!」
と呟くように逃げるように促した
そのタイミングで、歩く音が聞こえてきて
「まったく……手こずらせてくれる」
と面倒そうな声がして、先ほどの使徒が壁に空いた穴から出てきた
その使徒を見て、美夏は拳を構えると
「沢井……桜内を連れて逃げろ」
と言った
「天枷さん!?」
「美夏が時間を稼ぐ!」
麻耶が止めようと手を伸ばした瞬間、美夏は驚くべき速度で使徒へと飛びかかった
リミッターを解除したのか、地面が美夏の足の形に凹んでいる
「アアアァァァ!」
美夏は雄叫びを上げると同時に、拳を繰り出した
だが、それすら使徒は容易く受け流し
「邪魔だ」
と言いながら、使徒は美夏へと杖を振るった
「ガッ!?」
その一撃はがら空きになっていた美夏の脇腹に直撃し、美夏は先ほどの義之と同じように吹き飛んで地面へと激突した
すると使徒は、自分の杖に視線を向けて
「今の手応えは……」
と呟くと、美夏の方に視線を向けた
そこに見えたのは、苦しそうに直撃を受けた部分を抑えている美夏だった
だが、その部分は内部構造が露出しパチパチと放電していた
「なるほど……貴様、化け物の類だったか……」
使徒はそう言うと、美夏の方へと杖を向けて
「貴様から処理する」
と言って、魔力を溜め始めた
それを見た麻耶は、近くに来た水越女史に視線を向けて
「義之をお願いします!」
と言って、美夏の前に飛び出して両手を大きく広げた
「なんのつもりだ?」
「沢井、よせ……!」
使徒は訝しみ、美夏は麻耶を制止した
だが、麻耶はその場から退かず
「もうこれ以上、私の前で誰も死なせない……!」
と告げた
それを聞いた使徒は目を細めて
「そうか……ならば、貴様から先に逝け……」
と麻耶に照準を合わせた
それを見た麻耶は、固く目を閉じて
(ごめん……義之、天枷さん……私、ここまでみたい)
と思い、死を覚悟した
だが、何時まで待っても痛みすらこない
不思議に思い、麻耶は恐る恐ると目を開いた
すると、使徒は杖を下ろしていて左手を耳に当てていた
「器の確保に成功した……了解した……撤退す……いや、ついでに一人増やそう」
と使徒は言うと、麻耶に杖を向けた
その直後、麻耶の両手両足をバインドが拘束した
「バインド!?」
麻耶は咄嗟にバインドから脱出しようと、もがいた
だが、その瞬間には使徒が懐に入っていて
「眠れ」
と、麻耶の頭を掴んだ
「義……之……」
麻耶は義之の名前を呟くと、ダラリと体から力が抜けた
使徒はそんな麻耶に掛けていたバインドを掛け直すと、麻耶の体を抱え上げて空間転移で消えた
「そんな……」
「沢井……」
その光景を見て、水越女史と美夏は呆然とした
その数分後、蓮華が裏手から現れて事態を知り、悔しそうにグランヴェルを地面に叩きつけた
この襲撃によって、一般人数十名が死傷
襲撃してきたインデックスの使徒は、半数以上が撃破された
こうして、インデックスによる初音島襲撃は一旦幕を閉じることになった