地球連邦軍艦襲撃から1か月後、ヨハンはすでに数回の襲撃をこなしていた。
その中には物資の強奪など海賊らしいものがなかったわけではないが、ほとんどは周辺の警備と他パイロットへの教導であった。
ユキによれば一応大人のパイロットもいるそうだが未だお目にかかったことがないせいか、このバルバロスそのものがこどもの城のように思え、虚無感に似た感情を抱いていた。
この日、彼は自室にて久々の非番を満喫していた。任務が厳しいわけではないが、やはり休日というのはあるだけで精神への負担は軽くなるもので、彼の抱えていた不安もこの日ばかりは鳴りを潜めていた。
部屋にはヨハンの他にユキが、備え付けられたキッチンで昼食の用意をしている。現実と同じように空腹を感じ味覚も存在するGBWF内では調理も可能であり、戦いに身を置くプレイヤーにとって失い難い癒しであった。
出来上がったスープとトーストをユキがダイニングテーブルへと運び、向かい合うように席に着いた二人は食事を始めた。
ヨハンは無口ではなかったが口下手であり、彼の方から口を開くことは少なかったし、ユキの方も必要以上は話さないので二人の食事はいつも静かなものであったが、この日は珍しくヨハンがユキに話しかけた。
「なあ。ユキは、どうしてバルバロスに入ったんだ」
ユキは少し驚いて顔を上げる。
返答を待たずにヨハンは続けた。
「ユキの他にもだ。みんな、子供ばかりだ。何か理由があるのか?」
GBWF内の情勢に詳しくないヨハンであったが、この戦いの世界で子供の立場が強くないことは知っていた。そんな子供たちだらけの組織がよりにもよって宇宙海賊をやっているのである。
普段一緒にいるユキにしても、普段は料理や掃除の得意な普通の少女なのだ。わざわざ宇宙海賊であるバルバロスに身を置く理由が気になっていたが、落ち着いた今だからこそ聞いてみようと思ったのだ。
ユキは手に持っていたスプーンを置くと、言葉を選びながら話し出した。
「えっと、私たちは最初からバルバロスにいたわけじゃないんです。ずっとここにいて、でもチュワン様が来て、それでそうなったんですけど……」
どう言ったらいいだろうかと言葉を区切りながら彼女は続ける。
「自分で守らなきゃいけなくて、でも、だからチュワン様がいて。うん。戦わなきゃ、いけなかったんです」
「そうか」
ぶつ切りで、文法もあったものでない答えであったし、ヨハンもよく分かったとは言い難かったが、ヨハンはそれ以上聞くことをしなかった。
どう聞いたらいいかがわからなかったのもあるが、ユキが言葉を選ぶときに苦しそうな表情をするのが見るに堪えなかったから、かもしれないと彼は思った。