アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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5000文字なんて初めて書きました…自分で自分にビックリしてます!


第十九星 あなたの優しさに私は心を引かれたー Your kindness captured my heartー

 

伊奈帆side

 

種子島に眠り続けていた航空戦艦『デューカリオン』はその名を冠したカタフラクトから得た反重力能力により空を飛び、敵の攻撃を受けること無く目的地である地球連合本部に向かっていた…順調だと思われた最中、突如デューカリオンの要であるアルドノアドライブが停止したのである…それが原因でデューカリオンは雪原に不時着したのだった。

 

「大丈夫?」

 

「う…はい…」

 

突然の衝撃は艦内全てに襲いかかった…当然、廊下で話していた伊奈帆とエデルリッゾも例外なく衝撃が襲いその場に座り込んでいた…伊奈帆はエデルリッゾを心配するとエデルリッゾは何とか返事をする。

 

「一体なにが…」

 

「アルドノアドライブが停止したようです…」

 

伊奈帆の質問にやって来たデューカリオン艦長であるマグバレッジが答えるとエデルリッゾが異を唱える。

 

「そんな筈ありません!この船のアルドノアは姫様が起動したのです!姫様が生きている限り他人が勝手に止める事はありません!」

 

その答えに伊奈帆は最悪の事態に気づく。

 

「セラムさんは…どこだ!?セラムさんは!!」

 

「シャワールームです…フィアと一緒に…」

 

「クッ!」

 

鬼気迫る伊奈帆の質問にエデルリッゾは戸惑いながら答えると伊奈帆はシャワールームに向けて走り出す…それを見てマグバレッジとエデルリッゾも追いかけるのだった。

 

ーーーー

 

「フィア!!」

 

シャワールームに到着した伊奈帆が先に見つけたのは頭から血を流して倒れているフィアの姿だった…伊奈帆はその姿を確認するとフィアを抱き上げて珍しく大声を出す。

 

「きゃぁぁ!!姫様!!」

 

すると奥からエデルリッゾの悲鳴が聞こえ伊奈帆は気を失ったフィアをマグバレッジに託して向かう…そこに居たのは明らかに息をしていないアセイラムの姿だった。

 

「姫様が!」

 

「…呼吸…心拍…共に停止…」

 

伊奈帆はすぐにアセイラムにバスタオルを掛けると一生懸命、心臓マッサージを始める。

 

「姫様…」

 

「タオルを…除細動器を使う…水を拭かないと…早く!!」

 

「あ!はい!!」

 

伊奈帆の言葉に弾かれるように動き始めるエデルリッゾだがマグバレッジが既に用意しておりタオルをエデルリッゾに渡す。

 

「手伝おう…」

 

「艦長…フィアは?」

 

「止血はした…後はメディックに任せよう…」

 

それを聞いて安心したのか伊奈帆はアセイラムの心臓マッサージに集中する…その際にエデルリッゾが交代を申し出たが体重の関係で却下された。

 

号泣して祈るエデルリッゾの横に居たマグバレッジは冷静に伊奈帆の手際の良さに驚いていた。

 

「手際がいいですね…」

 

「学校で習います…」

 

「学生は真面目に習いません…人工呼吸を冷やかすだけ…」

 

「命が掛かっています…」

 

「……う…」

 

伊奈帆の答えにマグバレッジは感心していると心臓マッサージを受けていたアセイラムの顔が変化し体が動き始める…その様子に気づき伊奈帆は心臓マッサージを止めるとアセイラムは苦しそうに顔を歪めると気がつき大きく息をする…。

 

「く……ハァ!!」

 

「姫様!!」

 

「良かった…大丈夫ですか?」

 

「いな…ほ…さん…私は…」

 

「シャワーを浴びて倒れたみたいです…どうしたんですか?」

 

いつも通りの冷静な伊奈帆の声にアセイラムは落ち着き混乱していた記憶が戻りハッとする。

 

「私は…彼女に…」

 

意識を取り戻したアセイラムに全員の気が向いている時、今回の事件の犯人であるライエがマグバレッジの後ろに忍び寄り腰のホルスターから拳銃を取り出す。

 

「動かないで!!」

 

ーーーーーーーー

 

フィアside

 

デューカリオンの墜落によりバランスを崩して壁に思いっきり頭をぶつけそのまま意識を失ったフィアはマグバレッジによって止血をされ…壁にもたれかかった状態のままで放置されていたが突然の銃声に意識を取り戻した。

 

「あ……」

 

(私は………姫様!!)

 

記憶の整理がついたフィアは動こうとするが頭を強く打ったせいか手足が痺れて動けない。

 

「君は…一体何者だ……」

 

「ヴァース……火星人よ…」

 

「だろうな…」

 

「あなた…」

 

「ッ!フィア!」

 

ライエの告白にフィアは少しでもアセイラムから気を逸らすために話しかける…その声を聞いたライエはフィアを睨み伊奈帆は驚きの中に少しの安堵を混ぜた声を上げる。

 

「失礼なのは分かっているが…ケータイを見させて貰った…お前の父親は新芦原のパレードで私が捕まえ損ねた暗殺者共の実行犯だ…」

 

「そうよ…」

 

ライエはフィアの言葉を肯定しながらフィアに銃を向ける…フィアの居る位置は伊奈帆とライエのちょうど真ん中で距離が近いフィアの方が脅威だと考えてのだろう。

 

「父は地球に住む火星のスパイ…貴方を殺せば地位と報酬が約束されていた…でも任務を終えると無残に殺された…口封じの為に…」

 

「だから…火星人を恨んでいたのか…」

 

「火星人は信用できない!火星人は皆敵!!…私は…火星に戻れない…地球人でも無い……」

 

フィアは納得の声を上げるとライエは大声を出して銃を握りしめる…その様子に嘘偽りは無くそれを見たフィアは悲しそうに顔をうつむける。

 

「なのに…貴方は火星人だって明かした…火星人なのに受け入れられて!火星人なのに居場所が出来て…火星人なのに!!」

 

ライエの叫びにフィアは俯きながら静かに話し始める。

 

「そうだな…私達が火星で大人しくしていれば済んだ話だ…いくら暗殺を企てようと地球に来なければ何も起こらなかった…」

 

「そうよ!貴方達が来たから!」

 

ライエの感情は最高潮に達してフィアに向けている拳銃は強く握りしめ大きく震えていた。

 

「ごめんなさい…私が…貴方を不幸にしたのですね…」

 

「姫様!」

 

意識を取り戻したばかりでフラフラなのにアセイラムは立ち上がりライエの元に歩き始める、それを見たフィアは慌てて叫ぶがその叫びも虚しく歩を進める。

 

「私が…愚かだったのです…平和を願ったつもりでした…正しい事をしたつもりでした…でも…私が我が侭を通しただけにすぎませんでした…」

 

(頼む!動いてくれ!)

 

うっすらと涙を流しながら近づくアセイラムを見てライエは銃を向け直し後ずさる…それを見たフィアは動こうとするが若干痺れが残っており瞬発的に動くにはまだ時間が必要だった。

 

「むしろ…地球との関係は悪くなってしまった…たくさんの人が死にました…どんなに正しい事をしたと思いこんでも…現実には…大勢の人に不幸が…降りかかって…貴方にも…貴方のお父様にも…」

 

アセイラムの言葉はその場に居た者、全員が聞き入り同時に悲しくなった…誰かの為にと行動した事が全て悪い方向に向かってしまう事を感じたアセイラムの心中は常に自責の念と後悔が渦巻き…他人には計り知れない物だっただろう。

 

「許して欲しいとは言いません…でも…ごめんなさい…」

 

「どうして…どうして貴方が泣くの?お父様は貴方を殺そうとしたのよ!私も貴方を殺そうとしているのよ!どうして憎まないの!どうして許すの!?どうして優しくするの!!」

 

ライエにはアセイラムのとっている行動が理解出来なかった…謝っているのだ…殺そうとしている相手に、彼女を苦しめる原因を作ったというのに、怒らず更には謝り、泣き崩れている…怒って恨んで貰った方がどんなに楽か…混乱するライエにフィアが刺激しないように静かに語り掛ける。

 

「それが姫様なんだ…どこまでも優しくて、純粋で、でも真実を見続けている…だから私は忠義を誓った…このお方ならヴァースを変えてくれると…」

 

「………貴方達…本当にバカじゃないの?」

 

先程の様子とは打って変わって力なく銃を下に向けると生気の無い笑顔を作り自身のこめかみに銃口を向けた。

 

「何やってるんだろ…私……」

 

「ッ!ダメ!!」

 

その様子を見たアセイラムはライエを止めるために叫ぶと動いた影が二つ…伊奈帆とフィアだ……伊奈帆は拳銃をスライドさせ撃発を防ぎ取り上げるとフィアは倒れないように肩を掴みライエを思いっきりグーで殴る。

 

「何をッ!」

 

殴られ倒れたライエは叫び終わる前にフィアは再び立たせて睨み、今までに見せなかった程の怒りを見せて叫んだ。

 

「甘ったれるなぁ!!生きたくても生きられない奴が大勢居るんだ!!」

 

フィアは許せなかった…もちろんアセイラムを殺そうとした事も許せないがそれ以上に…死を選ぼうとした事がだ…贖罪の為の死を選ぶのは償いではない…ただ辛い事から逃れようとしているだけだ…今こうしている間にも戦争は続き、多くの人達が全力で生き、その命を散らせているのを考えると到底許せる物ではなかったのだ…その言葉にライエはハッとした表情になりフィアの顔を見る。

 

「お前は受け入れられないんじゃない!お前自身が拒まれるのが怖くて線を引いてるだけじゃないか!」

 

「ッ!うるさい!私は貴方とは違うの!暗殺犯の娘なのよ!!」

 

「悲劇のヒロインを気取るな!周りをちゃんと見ろ!姫様を見なかったのか!?」

 

フィアの言葉にライエは黙り込みその場に座り込む…それを見た伊奈帆は座り込んだライエと顔を合わせるようにしゃがむと静かに語り掛ける。

 

「僕にとって…君が火星人か地球人かなんて…正直どうでもいい…僕らと一緒に戦って来た…それだけで十分だと思うけど…」

 

伊奈帆の言葉にライエの顔には生気が戻り始め目の前に立っていたフィアに向かって笑いながら言い放つ。

 

「…後悔しても知らないわよ……」

 

「その時は全力で止めてやる……」

 

ライエの言葉を聞いてフィアは笑うと伊奈帆と一緒に手を差し伸べる…それをライエはしっかりと掴んで立ちあがるのだった。

 

ーーーーーーーー

 

その後…ライエはユキに連れられその場を去ったがどことなくその表情は今までとは違い明るかったのだった。

 

そしてデューカリオン医務室、アセイラムは大事をとってベッドで横になりその横にエデルリッゾが心配そうに待機しフィアは耶賀頼先生に切った頭の消毒をして貰っていた。

 

「イタタッ!」

 

「騎士なんだから我慢しないと…全く……凄い勢いで頭を打ったんだね…」

 

「正直覚えていません…一瞬の事だったので…」

 

「あれ程の衝撃を受けてしかも石鹸水が床に散らばっていたら仕方ないかもね…はいこれでいいよ」

 

「ありがとうございます」

 

フィアは改めて頭に巻き直された包帯を触ると耶賀頼に礼を言い立ち上がる…すると医務室にマグバレッジがアセイラムの様子を見に来た。

 

「耶賀頼先生…姫殿下とフィアの容態は?」

 

「異常ありません…ただ姫様は大事をとって安静にした方が良いですね」

 

「そうですか…でもそう言っても居られません…」

 

「大丈夫です…」

 

マグバレッジの言う通り一度アルドノアドライブが停止した以上、デューカリオンを動かすためには再起動しなければならない…それを悟ったアセイラムは立ち上がろうとするがフィアが止める。

 

「いえ…姫様はどうか安静にしていて下さい…私が起動してきます…」

 

「そうですか…ありがとうフィア…」

 

「いえ…では行って参ります…」

 

ーーーー

 

アセイラムを何とか安静にさせたフィアはアルドノアドライブの部屋にたどり着き起動させる。

 

「アセイラム・ヴァース・アリューシア殿下の騎士、フィア・エルスートが命じる…目覚めよアルドノア」

 

フィアの声と共に暗くなっていた部屋は一瞬にして明るく灯されデューカリオンにエネルギーを与える…任務を終えたフィアが戻ろうとすると出入口に一人、いつの間にか壁にもたれて居た人物がいた…伊奈帆だ…。

 

「伊奈帆か…驚いたぞ…」

 

「ごめん…人払いでお見舞いにも行けなかったから…」

 

「ありがとう…お前のお陰で姫様が助かった…」

 

「戦争だしね…」

 

「照れるな…照れるな…」

 

素っ気なく言う伊奈帆を見てフィアは笑いからかう…フィアは何となくだが伊奈帆の感情の変化が分かってきたのが少し嬉しかった…するとデューカリオンが離陸する振動が伝わる。

 

「もうすぐ地球連合本部だね…」

 

「そうだな…」

 

伊奈帆の言葉にフィアは目を閉じながら静かに答える…その表情からは何も感じられないがその声色はどことなく安堵と寂しさに溢れているように伊奈帆は感じた。それは本当なのか…それとも伊奈帆自身が無意識に求めた物なのかは…静かに佇むフィアしか知らないのだった。

 

 

 




どうも砂岩でございます!
今回はアセイラムの絞殺未遂でした!そしてフィアちゃんのブチギレシーン…フィアは基本本気で怒ったりしませんが命を粗末にする奴とアセイラムにちょっかい出す奴には基本キレます。
それとフィアは元々人の心の機微に敏感な方なので伊奈帆の感情の変化は結構早めに何となく理解しています。
伊奈帆とフィアですがお互い一緒に居ると居心地が良いって位ですね!(聞いてねぇよ)すいません!
さて今回は地球側ですが次回は火星視点を基本に書いていきます!最終決戦までのタイムリミットが近づく中、それぞれのキャラがどう思い行動するのか!
では最後まで読んで頂きありがとうございました!



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