アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
伊奈帆side
『デューカリオン…どうして…』
「直接乗り込むしか無かった…と言う事か…」
『コントロール…こちらマスタングリーダー応答願います!』
『………』
デューカリオンの上陸に韻子は驚きを隠せずに居るとユキがブリッジに通信を繋げるが返ってくるのは雑音ばかりで誰一人返事をよこす者は居なかった…その状況に伊奈帆はスレイプニールに装備したコンフォーマル・パワーアシストを使って無理やりデューカリオンの後部ハッチを開けるとそこには力なく倒れているアレイオンの姿があった。
「フィア!」
『プリンセス1!ちょっと!なお君!』
デューカリオン周辺はマスタング小隊以外の部隊が警戒に当たっており、マスタング小隊は中を捜索する余裕が出来ていた…倒れているプリンセス1を見た伊奈帆はユキより先に機体を寄せるとプリンセス1に乗り込み中を確認する。
「フィア!セラムさん!…ッ!」
伊奈帆は中の光景を見て目を見開く…後部座席には無傷で気絶しているセラムさん…しかし問題なのは前に座っていたフィアだ…体の数カ所から血を流し吐血もして気絶していたのだから…それを見た伊奈帆は血の気が引いたのが自分でも分かった。
「フィアちゃん!姫殿下!…ッ!フィアちゃん!」
「ユキ姉!運ぶの手伝って!」
「え…えぇ……」
ユキは伊奈帆の叫びに面を喰らいながらも負傷したフィアをアレイオンから降ろし軽い手当をする…被弾した所に止血テープを張っただけなので気休め程度だが何もしないよりマシだろう。
(フィア…)
「あ…ぁぁ……」
「フィア…」
「いな…ほ……ウッ!」
「無理しないで……」
すると意識を取り戻したフィアが起き上がろうとするがあまりの激痛に顔を歪め伊奈帆は心配する。しかしフィアは無理やり笑顔を作り話しかける。
「行け……姫様を…頼む…」
「……分かった」
「これを…」
「…ありがとう」
正直心配でたまらない伊奈帆はグッと手を握りしめフィアをゆっくりと寝かせ立ち去ろうと立つとフィアは自分の拳銃を渡す…伊奈帆はその意味を悟って礼を言う。
フィアが唯一の武器を渡すと言う事は”心から信じてる”という事だ…伊奈帆は受け取った拳銃を握りしめると自身の拳銃をフィアに託して立ち上がる。
「すぐに行く。それまで頼む……」
「……分かった…無理しないでね」
「お前こそ…」
お互いニヤリと笑い合い伊奈帆はスレイプニールに乗り込みユキが搭乗し起動したプリンセス1がフィアの横を通って行く…それを見届けたフィアは怪我をしながらも駆け寄ってくれたカームに痛み止めと治療用具を持ってくるように頼むのだった。
ーーーー
アセイラムside
プリンセス1のアセイラムと合流した部隊は揚陸城の入り口を探すために中心部へと移動する…そこに向かう途中アセイラムは目を覚ましたのだった。
「う……」
「気がついた?ちょっと荒っぽいわよ。お姫様……しっかり摑まってて」
「伊奈帆さんの…お姉さん……あ!フィアは!フィアは無事なのですか!?」
意識を取り戻し混乱していた思考が元に戻るとアセイラムは悲鳴を上げていたフィアの事を思い出し慌てて叫ぶ。
「大丈夫よ。なお君のお陰で早く処置が出来たからね…」
「そうですか……」
「貴方も大丈夫?見た所何も無さそうだったけど、何かあったら言ってね…」
「……憎い…ですよね。地球をこんなにした、たくさんの人を犠牲にしたヴァースが、憎いですよね……」
ユキの優しさにアセイラムは感謝をしつつも申し訳なさを感じてつい思っていた事を口に出してしまう…それを聞いたユキは思わず黙り込んでしまうと伊奈帆が通信を繋げる。
『セラムさん…どうすれば戦争が終わるか…知っていますか?』
「それは…平和を願い、憎むことをやめれば…」
『いいえ…戦争は国家間の交渉の手段でしか無い…憎まなくても戦争は起こる…どうしても手に入れたい領土、資源、利権、思想や宗教やプライド……それらの目的が原因で戦争は起きる…』
伊奈帆は淡々と戦争の理屈面を語る…全員がそれに耳を傾ける。
『…だから…その目的が果たされれば戦争は終わる…または……利益に見合わない数の人が死ねば戦争は終わる…怒りも憎しみも戦争を有利に運ぶ手段でしか無い…僕はそんな感情に興味はありません…だから…僕は火星人と言うだけで憎いとは思わない…』
「あぁ……」
伊奈帆の言葉を聞き終えたアセイラムの顔は若干だが明るくなった…それを見た伊奈帆は満足そうに通信を切る…しかし伊奈帆らしいと言えばらしい遠回しな励ましである。
『そうか?我は地球人と言うだけで憎いがな……』
「全機散開!」
すると突然暗号通信に割り込んで来た声があった…その声に全員が反応すると同時に多数のミサイルが迫り各機は素早く散開する…すると漆黒の機体が上空から降り立つ。
『ヴァース軌道騎士37家門より…ザーツバルム参上いたしました…お覚悟を……アセイラム姫殿下』
「ザーツバルム伯爵、まさか貴方が!」
『暗号通信が!どうして!』
アセイラムは信じられなかった…ザーツバルムは軌道騎士の中でも王族から信頼を置かれている方で一部の者からは忠臣とも言われているからだ。
「各機!以後送信はレーダー通信に限定!」
『ユキ姉…作戦を継続して…韻子はユキ姉のサポートをお願い…アイツは僕が食い止める…』
「バカなこと言わないで!相手の全力も分からないのよ!一機じゃ勝てないわ!」
ユキは無茶なことを止めようとするが伊奈帆の声色は今まで以上に何かを含んでいたものだった。
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伊奈帆side
「勝つ必要は無いよ…足止め出来ればいい…」
『まさか盾になるつもりじゃ無いでしょうね!』
「そんな方法じゃ時間は稼げないよ…早く行って…」
『だが…相手取るつもりか?たった一機で…我々”二機”を』
「ッ!」
ユキが決心して行こうとした直後…さらに通信に割り込んできた声…それは自分とあまり変わらないであろう少女の声であった…その声の主はユキと韻子の行く先を阻むように立つもう一機のカタフラクト。
『ユキさん!行って下さい!』
『韻子ちゃん!』
するとユキのプリンセス1を守るように立つ韻子のアレイオン…ユキはそれを見て叫ぶが韻子の意志は固くマシンガンをもう一機のカタフラクトに向けたまま動かない。
『大丈夫ですよ!これでも伊奈帆の次に成績は優秀ですから!』
『クッ…二人とも必ず生きて帰るのよ!』
ユキは悔しそうに歯を食い縛りながら揚陸城の中心部分に向かう…伊奈帆は後ろに残った韻子の心配をしつつも向かい合う漆黒の機体ディオスクリアを見つめる。
『蛮勇だな地球の兵士よ。だが容赦はせぬ!』
(誘導ミサイルなら勝機はある…)
敵の声と共に肩のアーマーに装備されたミサイルコンテナからミサイルをばらまく…それを伊奈帆が冷静に思考すると迫り来るミサイルを対処するのだった。
(誘導ミサイルはデコイに攪乱される。でも……無誘導ロケット弾は影響を受けない)
揚陸城降下前にばらまかれたチャフとフレアはまだ若干残っておりその影響でディオスクリアの誘導ミサイルは一部が変な方向に向かってしまう。しかし元々その中での戦闘を備えていた伊奈帆のスレイプニールは攪乱されないロケット弾を装備してきた。これで状況はやや伊奈帆に有利になった。それを悟ったザーツバルムは叫びながらミサイルを撃ち放つ。
『いい気になるな!地球人!アルドノアの輝きを!』
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韻子side
韻子は火星のカタフラクト…ゼダスと対峙していた…元気よくユキを送り出したのは良いが正直たった一機で立ち向かうのは初めてで韻子自身、極度に緊張していた。
(駄目よ私!冷静にならなきゃ殺られる)
『フフフッ…』
そんな韻子の緊張を見透している様にゼダスから不気味な笑い声が聞こえてきた。
『フィアが出てくるかと思ったが…まぁいい、フィアの前に貴様を葬り去ってくれる!』
「貴方フィアの知り合いなの!?なんでこんな事を!」
まさかの言葉に韻子は信じられなかった…。話し方からすれば彼女とフィアは友達かそれに近しい関係なのだろう…それを平気で亡き者にしようとする彼女の思考が…だがゼダスから来た返事は冷たい物だった。
『貴様ら劣等民族に!話す舌など持たん!』
「ッ!」
そう叫ぶとゼダスは装備された刀の様な物を構えると急加速し斬りかかる…その速度に韻子は驚きながらも足の飛行ユニットを全力運転させギリギリ避けるとマシンガンを撃ち放つ…それをゼダスは驚異的な機動力で避けると何も持っていない左手を向ける。
(やばい!)
韻子は本能的な危険を感じて飛行ユニットの全力運転のまま一気に後退すると、直前まで居た所にビームの雨が降り注いだ。
「ビーム!」
韻子は驚いた…今まで見てきた火星のカタフラクトは言ってみれば一芸に特化したタイプ…ニロケラスの次元バリア、アルギュレのサーベルやヘラスのロケットパンチが代表的である…だがこの機体は違う……遠近両方に武装を持ち圧倒的な機動力を持つ実戦を意識した機体。
(こんなのって…)
『隙だらけだぁ!!』
その事実を知ってしまった韻子は一瞬だけ恐怖感を抱いてしまう…それが決定的な隙になってしまった……それをゼダスのパイロットであるマリーンが見逃す筈も無く、急接近したマリーンはゼダスソードでアレイオンの左腕を切断し、更にアレイオンを蹴り飛ばす。
「きゃぁぁぁ!!」
ゼダスの加速も合わせた蹴りはアレイオンを倒すには十分で韻子は悲鳴を上げ、倒れた衝撃で頭部周辺のエアバッグが膨らむ。
『終わりだ…』
「あ……」
そして韻子が見たのは覆いかぶさるゼダスの姿と余裕で勝利を宣言する敵の声…そしてモニターでゼダスの腹部が光るのが見えた。
(ビーム!あんな所にも!)
避けられない…そう感じて思わず韻子は目を閉じて迫り来る”死”に恐怖する…するとビームの直撃とは明らかに違う衝撃が数回響き、敵の驚きの声が聞こえた…そして次に聞こえてきたのは知った声。
『韻子!無事か!?』
「フィア!」
そこに居たのはグレネードランチャーを装備したアレイオン…そのパイロットはフィア・エルスート…韻子が頼りにする人物だった。
どうも砂岩でございます!
今回は韻子ちゃんに頑張って貰いました!韻子も最後まで生き残ってるのを見て腕は確かにあると思うんですよ…何気に伊奈帆助けたりしてますしね。
それに伊奈帆の遠回しな励ましも好きですね!
さぁ次回はフィアVSマリーンと最終に突入!最後まで読んで頂きありがとうございました!