アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
ザーツバルム伯爵の揚陸城陥落からおよそ半年が経ったある日…月面基地では二人の人物が眠っていた…一人はこの火星と地球の開戦の火蓋となった人物…アセイラム・ヴァース・アリューシア姫…もう一人はその騎士であるフィア・エルスート…彼女はアセイラムとは違い簡素な個室で一人、人工呼吸器を付けて眠っていた。
「スゥ…ハァ……スゥ…ハァ……」
規則正しい寝息にただ寝ているような印象を受けるが彼女は半年もの間、一度も目を覚ましていない。
「……」
そんなフィアのベッド傍らに立つのはフィアと同じ灰色の制服を着たスレインだった…彼はベッドの横に置かれた机に赤のポピーを花瓶に備える…花言葉は”感謝”。
「それでは…姫様のお見舞いもありますので……失礼します…」
「………ぁ…」
「ッ!?」
スレインがいつものように退出しようと背中を向けた直後…僅かだが声が聞こえた…それに気づいたスレインは振り向くと僅かだが目がピクピクと痙攣しゆっくりと目を開けたのだ。
「ッ!目を!分かりますか!スレインです!」
「………」
目覚めたフィアを見てスレインはそばに駆け寄り声をかけ続けるとフィアは黙りながらも目をスレインに向けて目を合わせる…それだけだがそれは本人が意識を明確に持っている証だ…それを見たスレインは急いで人を呼ぶのだった。
ーーーー
「フィアぁぁぁ!」
「エデルリッゾ……」
フィアが目覚めたと聞いてエデルリッゾはベッドに座っていたフィアに抱きつき泣く…フィアは驚きながらもそれを受け止めるが当の本人はまだ記憶が混乱しており若干…上の空である。
「よくご無事で…」
「姫様と一緒に運ばれて来た時はどうなるかと!」
エデルリッゾは相変わらずフィアの腕の中で泣き続ける…アセイラムの意識が戻らない半年間…スレインが居たというものの頼りにしていたフィアも瀕死の状態で運ばれ心細かったのだろう……スレインも目に若干涙が浮かび喜んでいる…その後ろからドア越しに傷も完治したマリーンが様子を見に来て居り静かに立ち去るのだった。
「姫様…スレイン…」
「目覚めたばかりなので記憶が混乱しているのでしょう…数分もすれば戻りますよ」
「私は…クルーテオ卿…訪問…ッ!うぁぁ……」
フィアを診ていた医者はそう言うと立ち去りスレインは頭を下げて見送ろうとするとフィアが突然頭を抑えてうずくまるとスレインとエデルリッゾは驚き呼びかけるが返事は無く…苦しむ……それを見た医者は急いでフィアを診る。
「エルスート卿…分かりますか?ここは月面基地ですよ!」
医者の言葉にも苦しむフィアには届かずにその光景をスレインとエデルリッゾはただ…見守るしか無かった。
ーーーー
医者から退出を命じられた二人はフィアが眠っていた部屋の前で待っていると医者が出てきて二人は駆け寄ると医者は少し残念そうな顔で報告する。
「エルスート卿の体自体は問題ありません…しかし……」
「しかし何なのです?」
医者が言葉を濁らせていると耐えきれずにエデルリッゾが聞くと医者は決心したように二人の目を見て話す。
「半年前の記憶が欠落しています……アセイラム姫殿下が地球に降りられる直前から怪我をして運ばれて来た所まで忘れていました…」
記憶障害…二人はその言葉を頭に浮かべて絶句する…元々地球に偏見を持っていたエデルリッゾだが実際に触れて話しているとその意識も薄れていた…特にフィアはよく笑うようになったし本当に楽しそうだった……その事を思うと彼女は胸が痛んで仕方が無かった。
「フィア……」
「大事をとって今日は安静にするように…」
そう言って医者はその場から立ち去るとその場に静寂が訪れる…
「……」
「行きましょうか…」
「はい…」
スレインは静かにエデルリッゾに話しかけるとエデルリッゾも静かに答えスレインの後に続いて部屋に入るとそこには先程の苦しみが嘘のように静かにベッドに座っているフィアが居た。
「フィア…」
「あぁ…エデルリッゾか…どうやら私は色々忘れてしまったらしいな……スレイン…」
「はい…」
「よく見れば騎士になったんだな…おめでとう…この調子ならあっという間に抜かれそうだ…」
「あの…エルスート卿…」
「フィアで構わない…呼び捨てでな…」
「ッ!……フィア…さん…」
フィアの言葉にスレインは思わず息を飲み…泣きそうになる…こんなに優しくされたのは何年ぶりだろう…同じく目の前でアセイラムが撃たれるのを見る事しか出来なかった罪悪感とその優しさにスレインはもう一度涙を流すのだった。
ーーーーー
それから次の日…フィアは杖を突きながらエデルリッゾに案内されある部屋に向かっていた…本来ならリハビリが必要なのだが彼女は大丈夫と言い張りこうして歩いているのだった。
「……こちらです」
「ここに姫様が…」
フィアは少し恐怖に襲われながらもエデルリッゾが開けた部屋に入室するとその光景に思わず杖を落とす…そこに居たのは生命保護用水の中でただ浮かんでいるアセイラムの姿だった。
「あ……あぁ…ウワァァァァ!」
フィアは膝を突き、頭を抱えて泣き叫ぶ…守れなかった……騎士なのに、守ると誓ったのに…後悔と自責の念がフィアを支配しただ己の未熟さを呪い泣く事しか出来なかったのである。
すいません…メチャクチャ短いですがここまでで…一応空白の十九ヶ月間のプロローグと言う事で書きました。
あとスレインのフィアへの呼び方ですがこれからはフィアさんになります。それとフィアは地球の事を丸々忘れていると言う事で少しずつ思い出していく予定です。
では今日は短くてすいませんでした…次からは本格的に書いていきますので…最後まで読んで頂いてありがとうございました!