アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
第三十九星 暁の騎士 帰還 前編 ーOrange of Knightー
ーヴァース帝国姫君失踪により地球とヴァース帝国は正式に戦争を開始…その最中、ザーツバルム卿は地球連合本部強襲を開始、本部は甚大な被害を受けたがそれを撃退…ザーツバルム卿はその際、揚陸城を失ったものの地球連合に捕らわれていたアセイラム姫を救出、一躍ヴァース帝国の英雄となった…ヴァース帝国のそんな“公式見解”と共に真実は闇へと葬られたー
ーその際に活躍した少年少女達の戦いはひとまずの終わりを告げた…しかし、戦いはそれを許さずその渦へと彼らを引きずり込む……あの忌まわしい事件から十九ヶ月と言う時が経とうとしていたー
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サテライトベルト
16年前に起きた月の崩壊により発生した岩隗宙域はサテライトベルトと呼ばれその予測不能な
しかし障害物の多いこの宙域は戦闘における襲撃に置いて圧倒的な優位性を持っていた。
「アンダルシアリーダーより各機へ…目標はあくまでも敵輸送船だ……カタフラクトが出てきても相手をするな…目標襲撃後、カウフマン
「「「了解」」」
デブリを目眩ましとして航行中の輸送艦に近づく四つの影…それは地球連合軍が今だ主戦力として使用しているアレイオンだ。
最近ではグラニ等と言う新型も配備されているが宇宙における高級量産機は末端の兵士まで届いていないのが現状だ。
『いました!目標発見!!』
「全機!攻撃開始!!」
小隊長の命令と共にアレイオンの無反動砲が火を噴きヴァース帝国の輸送船にめがけて飛ぶが弾は生き物のように動き回り当たらない。
「
攻撃を受けた輸送艦隊は機銃で迎撃を始めるがその弾も偏向重力の影響であらぬ方向へと飛んでいく。
「怯むな!向こうも条件は同じだ!接近するまでに当てろ!!」
小隊長は部下を激励しながら機体を加速させ無反動砲を撃ち続けるのだった。
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「高比重衛生多数、この距離では当たりません!」
「弾幕を絶やすな!撃ち続けろ!」
一方、ヴァース帝国の輸送艦内でも弱気になる部下を艦長が怒鳴り散らす…しかし機動力のあるカタフラクトと鈍足な輸送艦、戦い続ければ不利なのは艦長も分かっていた。
「どうしたのもか…」
「六時の方向より高熱源体接近!!」
「敵か!?」
「いえ…これは……」
言葉が続かない部下に眉をひそめつつ前方に映るモニターを見ると後ろから追い抜かすように敵に向かう白い機体。
「あれは…タルシス……」
『下がっていてください…ここは僕が……』
その救いの手を伸ばしてくれた人物に艦長は心からの尊敬と感謝と共にその人物の名を口にする。
「サー スレイン・トロイヤード」
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その時、襲撃部隊は小さな混乱が起きていた、あっと言う間に一機が墜とされ敵が高速で接近しているのだから。
「この距離で当ててくるだと……」
『まさか…マリネロスの悪夢……』
「バカな……」
1年前の悲劇を思い出し小隊長は冷や汗を掻くがすぐに否定する。
「奴の機体は赤色だ、奴は白、先程のはまぐれに違いない!接近さえすれば我々に勝機が…」
『うわぁ!』
『アンダルシア33!!クソッ!!』
「アンダルシア11!駄目だ陣形を…」
『あぁぁぁ!!』
「ッ!!」
残りは自分だけになってしまった小隊長は叫びながら撃ち続けるが敵機は当たる気配すらない。
「当たらない…ここまで接近してなぜ……」
恐怖を通り越し唖然とする小隊長の目に映ったのは敵機の機銃だった。
「そんな…バカな……」
理解できない、そんな表情を最後に小隊長はこの宇宙に命を散らしたのだった。
堕ちていく機体を見てタルシスはまるで黙祷を捧げるように止まる。
そして捧げる、今だ目覚めぬ主に向けて
「我が君、アセイラム姫のご加護の下に…スレイン・トロイヤード、参上いたしました」
その姿は人殺しを躊躇っていた幼い少年は居らず、ただ無慈悲な白い死神が立っているだけであった。
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「地球は幼い頃からの憧れでした…青い海、青い空…水と空気の恩恵を受けたくさんの豊かな資源に恵まれた世界」
ヴァース帝国地球圏における最大の基地、月面基地の謁見の間では車椅子に身を預け静かに語るアセイラム姫の姿があった。
「私はその地球で一度、命を失いました…そして真実を悟りました…豊かな大地で無思慮に生きる地球人の如何に傍若無人なことか資源を貪り自然を破壊し興に浸る愚かな民族」
その後ろ、姫を守るために立っている一人の少女、フィア・エルスートは主である姫の言葉に僅かながら不快感を覚えていた。
言葉にできない物を抱え続けてもう一年近くが過ぎ去っていた、頭に浮かぶ謎の人影、少年のような陰はそこから一行に晴れること無くその存在を強く主張していた。
考え込む自分に気づいたフィアは邪念を振り払い前を見る…自身の感情など関係ない…姫様を守るそれが私の全てだから…。
「彼らに大切な地球を自由にさせてはいけません…私、ヴァース帝国第一皇女アセイラム・ヴァース・アリューシアはその儀に服し偉大なる務めに殉じる、軌道騎士の諸侯らを称え賞賛します」
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「ふぅ…」
「お疲れ様です…姫様……」
「ありがとう、フィア」
演説を終えた姫様に水を渡したフィアにレムリナは感謝を述べるとそれを飲む。
「ところでスレインは今、何処に?」
「現在はこちらに向かっている輸送艦の護衛かと」
「そう…お姉様の所ではないのですか?」
「いえ、現在は作戦行動中です」
「そう…あなたの言葉を信じましょう……エデルリッゾ行きましょ」
「あ!はい!!」
言葉が詰まってしまうフィアを横目にエデルリッゾと共に去って行ったレムリナを見ていた親衛隊はフィアの周りに集まる。
「相変わらず、捻くれてますね」
「ネール」
「だってそうだろ…なぁシルエ」
「………まぁ…」
「しゃべった……のか……」
「………」
ネールの言葉にジュリは咎めるように睨み付けるが当の本人も同感なようで言い方が心なしか弱かった。
「でも…分かる気がするんです……私達も似たような生活だったので……」
「そうだな、彼女も彼女でヴァースという物を見てきている…だから自分にも周りにも期待しなくなったのかもな」
ケルラの言葉にフィアは頷くと静かにその頭を撫でる、その横でリアがおもしろくなさそうにむくれていたのはご愛嬌である。
「そう言えば…隊長演説の途中になにか我々がしたでしょうか?」
「なに?どう言う事だリア?」
「いえ…少々、不機嫌そうだったので」
自信なさげに言うリアを見てフィアは内心驚く、表情には一切出していなかった自信はある…だからこそリアの言葉に驚嘆したのだ。
「あぁ、何となくな…地球を罵られると…私にもよく分からないのだが……」
そう言うとフィアは腰のホルスターに収めている黒い拳銃を優しく撫でる。
その行動が無意識的な物なのは見ていたリアにも分かった。
「隊長……」
ほんの少し弱気のフィアを見てリアは心配になるが自身には何も出来ないことが分かり黙り込んでしまうのだった。
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その頃、地球のとある海上基地付近のビーチでは水着姿の3人の少女がいた。
「そんな海賊放送なんか見てどうしたの?」
「やっぱり気になって…」
ニーナはノイズが入り動かなくなった端末を持ちながら答えると諦めたのか端末を横のテーブルに置く。
「お姫様、どうしちゃったんだろう…地球の味方だと思ってたのに……」
「平和的解決に絶望したのかも…戦うなら火星に着くのは当然…火星人だもの……」
ニーナの言葉にライエは静かに答えると表情に若干だが影が入る…それはある意味当然なのかもしれない、彼女自身は火星人でありながら地球についているのだから。
「うん…ねぇ……韻子……韻子?」
「え?うぅん、何でも無い……ゆっくり出来るのもこれで最後かなって…」
「うん…明日には乗艦、明後日には打ち上げだもんね…」
そう言うとニーナは海上基地の一角を見つめるそこには完全に修復された母艦“デューカリオン“の姿があった。
そんなニーナをよそに置いて韻子はとある少年の姿を思い浮かべる。
「ふ~ん、どうせアイツの事でしょ」
「え!?ち、違うよう!」
「え~、そうなの~韻子ったら可愛い!!」
「ちょっと!!」
ライエの言葉に対し明らかに動揺した韻子を見たニーナは抱きつきはしゃぐ、そんな様子を見てライエも思わず笑みをこぼすのだった。
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デューカリオンカタフラクトハンガー
そこでは明後日の出撃の為に機材が大量に送り込まれていた。
「もたもたするんじゃねーよ、お前ら教練受けてるのかよ!!」
「は、はい!」
デューカリオンのこれからの主な任務は本隊の影響のない所で揺さぶる…つまり捨て駒である、そんな艦にベテランが来るはずが無くデューカリオンに居た経験のあるカームが整備の長に収まったのだ。
「ったく…」
整備班の鈍間さにため息をつきつつ端末に目を通す…その中にはこの艦にはいないスレイプニールの予備パーツ一覧が表示されていた。
それを見るとクラスメイトだった少年の姿を思い出す。
「まぁ…スレイプニールを使うのはアイツぐらいしか……」
何となく呟いた言葉を止めカームは一人の少女を思い出す。
(そう言えば…アイツも使ってたな……)
「あぁ、止めだ止めだ……ったく…情けねぇな、韻子に言っといて…俺も引きずってるじゃねえか……」
あの時もこの格納庫でフィアがアレイオンに乗っていくのをただ見送るしか出来なかった自身はどれだけ無力に感じたか…。
「まぁ、やれる事をやるだけだよな…」
そう呟いたカームは自分で顔を叩くと頼りない部下に指示を飛ばすのだった。
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『私はその地球で……命を失……した…そして真………りました…豊か………で無思慮に生き……人の如何……若無人なことか資……貪り……然を破……興…る愚……民族』
ノイズを交えながら繰り返し演説を流すラジオを聴きながら大型のトレーラーを運転する伊奈帆は僅かだが悲しそうに目を細めた。
「明後日には宇宙に上がる…フィア……必ず会いに行くから……」
伊奈帆は確信を持っていた。セラムさんとフィアに何かが起こっている事を……だからこそハンドルを強く握りしめる。
そんな彼の腰にはフィアから託された銀色の拳銃がしっかりと収められていた。
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ガシン……ガシン…
それぞれの想いが交錯する中、戦いは彼らを決して待ってくれない…。
全てを凍てつかせる絶対零度のカタフラクトが韻子たちデューカリオンに迫っているのが分かるのはほんの少し先の話。
どうも砂岩改め、砂岩改でございます。
ついに二期に突入しました!ここまで来れたのは皆様が温かい目で見てくれたおかげだと思っております。
さて!次回は氷結のエリシウム戦をメインで月面基地を少々ですね。
では最後まで読んで頂きありがとうございました!