アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第四十二星 引き金は軽く ーlight the triggerー

 

「周辺確認は完了っと…はぁ、早く帰ってシャワー浴びたいぜ…狭っ苦しいコックピットに長時間なんて拷問に等しいよなぁ」

 

「ネール、無駄口を叩くなと何度も言ってるだろ…隊長のお立場は余り良くないんだ」

 

「はぁ?何言ってんだジュリ…隊長より優秀な人がどこに居るんだ?」

 

月面基地周辺の安全確認と輸送艦の進行ルートの確認を終えた二人は親衛隊専用の回線を使って話しながら帰投していた。

 

「そう言う問題じゃない…姫様を一時とは言え危険な目に遭わせたんだ親衛隊長として大きな失点だ…今だに目を覚ましておられないと言う真実が知られていなかろうとな…」

 

「ふざけんな!あんな状況で穏便に済ませられる奴が居るって言うのかよ!!」

 

ジュリの言葉にネールは声を荒げて憤慨する。ネール自身もフィアを心から尊敬する者の一人だ。そんな事を聞けば怒るのも無理はないだろう。

 

「ネール、私たちを叩き潰したがってる奴らは多くいる…それを頭に置いておいた方がいい……マリネロスで何も起きなければいいんだけど……」

 

ジュリの呟きは狭いコックピットに虚しく響くだけだった。

 

ーーーー

月面基地司令室

 

「輸送艦の進行ルートの安全確認が終了しました、親衛隊が帰投します」

 

「輸送艦の最終チェック及び機体の点検を怠るなザーツバルム卿の留守はしっかりとするが輸送艦に何かあったのでは話にならん」

 

「了解」

 

本来、ザーツバルムが立っているであろう場所にその腹心であるマリーンの姿があったのだ。彼女は的確に指示を出しているが不機嫌そうな表情をしていた。

それもそのはず、マリーンはザーツバルムから月面基地の留守を預かったからである。本来なら姫様を護る親衛隊がその任務に就くべきなのだろうがそうはいかなかった。

 

「全く…騎士の誇りはないのか……」

 

元々親衛隊は高い階級の一部の騎士達からは敵対視されていたのだがフィアはそれを“結果”でねじ伏せてきた。

が、ジュリが指摘したとおり“あの事件“以降、一部の騎士達が調子に乗り始め親衛隊を使いっ走りにする傾向が見られ始めた。元々強い格差社会性を持っていたヴァースではそれは強く影響する。

親衛隊とは言え隊員は一般階級、それを拒否する術は持ち合わせていなかった。

 

「大した事もしてないのに調子に乗りやがって……」

 

みるみる機嫌が悪くなっていくマリーンを背後に回したオペレーターは生きた心地がしないのだった。

 

ーーーー

 

アセイラムが眠るアイソレーションタンクを前に立つ二つの人影、フィアとエデルリッゾのものだった。

 

「行かれるのですね…」

 

「あぁ…ここはマリーンが守ってくれる…大丈夫だろう」

 

「そうではな…」

 

「あれから、二年が経つ…」

 

相変わらず自分のことを考えない姿にカッと来たエデルリッゾは声を上げるがそれを遮るように話す。

 

「姫様を守れず、記憶を失い…親衛隊の皆にも迷惑をかけている…私は騎士失格だ……」

 

「フィア……」

 

1年前のマリネロス以降、記憶が安定しないフィアはたまにこう言う言葉を吐くようになった。

無意識なのは間違いないのだろうが本心である。それだけ彼女の精神が安定していないのは確かだった。

 

「それは違います!」

 

「スレイン?」

 

「スレインさま!?」

 

それを真っ向から否定したのは突然部屋に入ってきたスレインだった。

 

「貴方は僕の憧れです!初めてお会いしたとき思いました!なんて綺麗な人だろうと」

 

「キレ……」

 

「突然なにを!?」

 

いきなりの爆弾発言にフィアは顔を紅くし、エデルリッゾはびっくりする。

スレインは憧れていた、あの誇り高い背中に、揺るぎない信念に

 

「だからもっと堂々としてください!最近、萎れて…あの……その…すいません」

 

感情が爆発したのは良いものの言いたいことがよく分からずに自分が萎れてしまった。

そんな姿にフィアは笑いながら頭を撫でる。

 

「え…あの……」

 

「ありがとう」

 

静かに礼を述べるフィアの眼にスレインが一瞬だけ紅い瞳を持つ少年に見えた。

 

「アイツはこんなに素直じゃないからな……」

 

「え?」

 

「今、なんて?」

 

《ベルガ・ギロスの2番機と3番機の収容完了…補給が済み次第マリネロス島に出発します…各員は作業を続行…出撃準備をお願いします》

 

「さ、早く出撃準備だ!」

 

スレインとエデルリッゾの驚きは放送に掻き消されフィアは眠るアセイラムに礼をすると部屋を出る。

 

「あ…では…エデルリッゾさんもお気をつけて……」

 

「あ、はい」

 

スレインも遅れまいとフィアの後に続くがフッと後ろを見ると鳥肌が総立ちした。

スレインの視線の先、通路の角にある姿があったのだが

 

「スレイン殿、随分と楽しそうで……」《なに隊長とイチャついとんねん、ぶっ殺すドおんどりゃ》

 

今にも自身を殺しそうな目で睨みつける親衛隊副隊長ことリアがいたのだ。

 

「大変驚きました、あの様な発言…余計な誤解を生まなければいいのですが…」《綺麗?萎れて?ナニ言ってんだこの野郎、それ含めて隊長は可愛いだろうが…ナニ本人の前でぶちまけとんねん、てめぇの胃の中絞りとったろか!!》

 

噂ではフィアに近づく不届き者をパンツ一丁でロッカーやサンドバックにと突っ込んでたりと…フィアが綺麗なのに迫られない理由は彼女にあるという。

 

「不用意な発言は控えるよう」《次言ったら殺す……必ず殺す》

 

「は、はい……」

 

半泣き状態のスレインを見てリアは通路の角から頭を引っ込めるのだった。

 

せっかくいい感じで締めたはずなのにリアせいで散々な目に遭うスレインだった。

 

ーーーー

月面基地カタフラクトハンガー

 

「シナンジュは?」

 

「大丈夫だよ~カンペキ」

 

「ありがとう」

 

「帰って来なよ、寝覚めが悪いからねぇ」

 

「はい」

 

コックピットに潜り込んだフィアを見て機付き長であるフェインはシナンジュから離れる。

 

「御武運を!」

 

機体から離れていく整備員たちがそれぞれ手を振るのを見てフィア達は機体を動かし出撃していく。

戦士達の出撃に月面基地の人々も各々に見送っていくのだった。

 

ーーーー

 

「スレインはどうした?」

 

「ハークライトさんが何か一悶着あったらしいって…」

 

輸送艦が出て行く中、タルシスの姿が見えないのに気づいた。親衛隊のハンガーとタルシスの置かれているハンガーは違うため何が起こっているのか分からないのだ。

 

ケルラも心配そうに月面基地を見やるとタルシスがザーツバルムの乗せた輸送艦と共に出てきた。

 

「遅れてすいませんでした…」

 

「構わん、各員…ネールとジュリが確認してくれたが何時どこから沸いてくるか分からん…気をつけろ」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

タルシスと親衛隊の護衛の元、航海は順調に進むとモニター 一杯に地球が映る。

 

「すげぇ」

 

「……」

 

「ここまで近くで見たのは……」

 

青く映る地球に親衛隊の各々が感嘆の声を上げているとハークライトが少し申し訳なさそうに通信をよこした。

 

『楽しみの所、すいませんが…大気ブレーキをかけますので帰投願います』

 

「分かった…」

 

「帰投するぞ、ネール」

 

「了解…了解……」

 

ベルガ・ギロス3機を収容、次にリアのローゼン・ズール、フィアのシナンジュを収容する。機体数の関係上フィアはスレインと同じ輸送艦だ。

 

『まもなく、周回軌道に入ります…大気ブレーキを行いその後、上昇離脱しサテライトベルトに突入マリネロス島まで向かいます』

 

ハークライトの言葉と共に輸送艦は静かに揺れ始めるのだった。

 

ーー

 

『減速終了まで5秒……4…3…2…1……離脱』

 

小刻みな揺れが収まるとフィアはシナンジュのシステムを再起動させる。せっかく敵基地の横を通るのだ、やっておくべきことはやるべきだろう。

 

「行きがけの駄賃だ…ステイギス隊よ、目にもの見せてやるがよい…」

 

「ステイギス1…命令のままに」

 

「ステイギス2…命令のままに」

 

「我々も出るぞ、リアは私と…他は艦隊の護衛だ!傷一つ付けるなよ!!」

 

「「「了解!」」」

 

シナンジュとローゼン・ズールはモノアイを煌めかせながらスラスターを噴かしデブリ群に突っ込んでいくのであった。

 

ーーーー

 

フィアの行動の様子はトライデント基地でも既に察知されていた。

デューカリオンブリッジでは急いで宇宙服に着がえる人員に対してマグバレッジが指示を飛ばす。

 

「艦載機、全機出撃!当艦も緊急発進に備えよ!!」

 

デューカリオンカタフラクトハンガー

 

「カーム、僕の機体は?」

 

「修理も終わってる…宇宙装備の換装もバッチリだ」

 

「ありがとう…」

 

「おう」

 

伊奈帆は端的に礼を述べると自身の愛機であるスレイプニールに乗り込む。オレンジ色の派手な機体、本来なら色を変えることを薦めるべきだが。

 

「フィアが見つけられねぇから…これじゃねぇとな」

 

カームはそう呟くとスレイプニールから離れるのだった。

 

ーーーー

トライデント基地周囲のデブリ群

 

「マスタング11…配置よし」

 

「マスタング22…配置よし……敵機との相対速度は秒速約3㎞、一瞬ですれ違うわよ」

 

「チャンスは一瞬って訳ね」

 

デブリに伏せるように配置についた韻子とライエは話している間にも味方が次々と配置について行く。

大型のガトリングを持ったアレイオンはワイヤーで完全に固定されており簡易砲台のできあがりである。

 

「ステイギス1…攻撃開始」

 

「ステイギス2…攻撃開始」

 

敵の輸送艦から出てきた敵機はそれぞれ5つに分裂すると機体に備え付けられた機銃が火を噴く。

敵の攻撃でデブリが削れるがそんなもの構わない韻子は冷静に照準を合わせ引き金を引くが当たらない。

 

「風が複雑だわ……お互いこの距離じゃ当たらない……」

 

「ライエ…」

 

「なに?」

 

「私が3発撃つから風の軌道を計算して」

 

「りょうかい……」

 

ライエは韻子の言葉でハッとする。そうだ、当たらなければ当てればいい…そんな単純なこと、どうやらあのシミュレーターで一番鍛えられたのは韻子かもしれないと内心そう思うのだった。

 

そして韻子の発砲…それぞれ違う軌道で撃たれた弾は大きく軌道を周りながらデブリにぶつかる。

 

「どう?」

 

「オーケー、ここらはだいだい行けるはず」

 

「よっし!これで!!」

 

ライエの答えに元気付いた韻子、自身の機体の無反動砲を向け修正しステイギスを狙う。

 

「これで…」

 

推奨BGMーFULL-FRONTALー

 

獲った…そんな確信と共に引き金を引こうとした瞬間、目の前を黄色い光線が通り過ぎた。

 

「なに!?」

 

先に声を上げたのはライエだった…すぐ後ろに陣取っていたアレイオンがコックピットを貫かれ大爆発を起こす。

 

「狙撃!?ローネス33!逃げて!」

 

「なに!うわぁぁ!!」

 

韻子の叫びも虚しく目の前で機体を固定されたアレイオンは真っ赤な炎に変わるのだった。

 

ーーーー

トライデント基地司令室

 

「敵機を新たに捕捉…」

 

「新手か場所は?」

 

「D72ポイントを高速で通過、七番埠頭に向けて進撃中」

 

レーダー表示がメインモニターに映し出され司令官は戦慄した。デブリを加速源にしているような曲線的な動き…この司令室全員が見たであろう"あるデータ"の動きに酷似するものだった。

 

「データ照合」

 

その時、司令官にとってオペレーターの言葉はまるで死刑宣告に聞こえたであろう。

 

「照合完了…完全に一致……奴です!!マリネロスの機体が!!」

 

オペレーターの声に司令官はなにも答えられずにいるのだった。

 

ーーーー

 

「艦長!」

 

その知らせは直ちに知らせられたもちろんデューカリオンにも…

 

「たった一機で宇宙要塞を墜とした伝説の機体が…」

 

「確認しました…ってこれはやばいって!」

 

「どうしました?祭陽上等兵」

 

「奴の進行線上に韻子ちゃんとライエちゃんが…」

 

「接触時間は!?」

 

祭陽の言葉にマグバレッジは珍しく怒鳴る。しかしそんな事では状況などなにも好転しない。告げられた言葉は絶望的な内容だった。

 

「後、3秒で会敵するっす…」

 

ーーーー

 

祭陽が言葉を発した同じ時、韻子とライエの眼には既に紅い機体が映っていた。

 

「あの機体って…」

 

「マリネロスの悪夢……」

 

韻子とライエ…そしてフィア……望まぬ形の再開それは運命だったのか…ならば……。

 

思わず体が強張ってしまう二人の機体を追い抜くようにしてシナンジュに迫るオレンジ色の機影。

 

「伊奈帆!!」

 

「韻子、ライエさんも下がって!!」

 

この二人が殺し合うのもまた……必然なのだろうか……。

 

距離を詰める紅とオレンジ色、構え合う獲物…お互い心から信頼した仲間だというのに。

 

ーその引き金はいとも簡単に引かれたー

 

 

 

 




どうも砂岩でございます!
早速ですが…
前半のぐたり感が否めない……どうしてもだれてしまうんですよね…文才が欲しぃ!。

ってことで後半はいよいよ、第一次トライデント基地攻防戦!フィアと伊奈帆が!韻子が!ライエが!激突する!!
その運命やいかに!!

では最後まで読んで頂きありがとうございました!!
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