アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第五十四星 決闘 -Duel-

 

 

「地球に咲く、薔薇と言う花です」

 

 

 

アセイラム姫が眠るアイソレーションタンクの前にはスレイン、フィア、エデルリッゾがおり日課と化したスレインの地球講座を聴いていた。

空中には数々の薔薇の写真が投影されており華々しい。

 

「わぁ…」

 

「薔薇には色々な花言葉があるんです。赤い薔薇は貴方を愛しています。」

 

薔薇の写真にエデルリッゾは関心の声を漏らす。それをフィアは静かに笑う。

 

「これほどの色があるとはな…」

 

「はい、フィアさんには紫が似合うと思いますよ。」

 

「紫?」

 

「紫の薔薇の花言葉は誇りなんです」

 

「誇り…確かにフィアにピッタリですね」

 

「そうか…ありがとう」

 

スレインにとってもエデルリッゾにとってもフィアは誰よりも誇り高い騎士だ。これほどピッタリなものもないだろう。

それを言われてフィアも嬉しそうにする。それに対し二人も笑顔になる。彼女の笑顔を見たのは久しぶり、それが二人にとって嬉しかった。

 

「青い薔薇の意味は奇跡、でも青い薔薇にはもう一つの意味があるんです。」

 

「意味だと?」

 

「はい、それは--」

 

ーーーー

 

月面基地、カタフラクトハンガー。

そこでは万全に整備されたシナンジュが鎮座していた。

 

「どうだい?」

 

「完璧です。流石ですね」

 

「そりゃ、専門だしね。頑張ってねぇ」

 

「はい」

 

コックピットから離れていくフェインを見届けるとコックピットハッチを閉じる。システムが立ち上がり暗闇に包まれていたコックピットが明かりに包まれる。

 

「フィア…」

 

「姫様」

 

真っ先に届いた通信を広げるとそこにはレムリナが映っていた。レムリナからの通信に驚きつつもフィアはその顔を見つめる。

 

「これは私の至らなさが招いた結果です。すいません」

 

「姫様…」

 

「必ず勝ちなさい、貴方は私の騎士でもあるのだから」

 

「分かりました」

 

レムリナの態度にフィアは思わず笑みを浮かべると力強く頷く。

 

「姫様に私の勝利をお届けいたしましょう」

 

「分かりました。待っていますよ」

 

通信が切れコックピットは再び静寂に包まれる中、彼女の笑みは消えなかった。

 

「捧げる勝利、こんなことは久しぶりだ」

 

ーー

 

「参りましょうか。ハーシェル、出撃!」

 

「シナンジュ、出るぞ!」

 

指定された時間が訪れ2機の機体が月面基地の傍観室の目の前に対峙する。その光景は月面基地にいる殆どの人物が見守っていた。

 

「卑しき物の傲慢な振る舞い。目に余ります、ヴァース軌道騎士の名にかけて成敗いたしましょう」

 

「私利私欲の為に姫殿下に近づこうとしたこと、親衛隊として許しません。ここで断罪させて頂く」

 

機体越しに睨み合う二人、そんなシナンジュの後ろから鉄の塊の様な物が慣性の法則に従いゆっくりフィアに近づいていた。

 

「これより、マリルシャン伯爵とエルスート卿の決闘を行う。……始め!!」

 

立会人として月面基地に訪れていたバルークルスの号令と共に決闘が始まる。まずはお互いの様子を見るために高速で移動し合う……筈だった。

 

「っ!なんだ!?」

 

「ふ…」

 

お互いがメインスラスターを点火し動き出そうとしていた瞬間だった。シナンジュの背後で大きな爆発が起きたのは。

 

「どうしたのですか?止まっていてはやられますよぉ!」

 

マリルシャンはハーシェルの右手に持っていたバレットを撃ち放つ。"普通なら"完全に回避できる攻撃、だが彼女は左手に備えられたシールドで防ぐ。

 

「なにが起きてるんだ!?」

 

「メインスラスターが点火してない!」

 

決闘の映像を見ていたフェインはモニターを持ち上げ現状を確認しようのする。

 

「電子系統がおかしくなったのか」

 

「そんな訳ないですよ!整備は完璧でした!」

 

「先程の爆弾…。高出力の電磁パルス爆弾!?」

 

突然の電子系統の不調、それしか考えられない。EMP対策をしていなかったらシナンジュは機能不全になっていただろう。

外からの診断だがメインスラスターがイカれただけのように見えるが、足を奪われたシナンジュをフィアはどう扱うか。

 

ーー

 

「メインスラスターがやられたのか。電子系統に異常が、エネルギー供給ラインも止まっている」

 

「動かないならこちらから行きますよ!」

 

機動力が失われたシナンジュに対しハーシェルは無数のバレットを展開する。

 

「ちぃ!」

 

このままでは袋叩きだ、近くを漂っていた岩石を蹴り迫るビームを避ける。

 

「ビームライフルも四発しか撃てない。バズーカ展開」

 

漂う岩石を蹴ることで徐々に加速するがバレットが迫りシナンジュを撃ち抜かんと迫ってくる。フィアはシールドに内蔵されていたバズーカ砲をライフル下部に装備すると距離をとろうとする。

 

「くそ!数が多い!」

 

ビームが機体をかすめ、脚部スラスターが爆発を起こす。

 

「ふふ…。流石にそう易々と墜とさせてもらいませんか」

 

バレットから逃げるシナンジュを見やり細く微笑む。高出力の電磁パルス爆弾かシナンジュを襲ったのは当然、偶然などではない。マリルシャンが密かに用意した秘策だ。

 

「さぁ、狩りに出かけましょうか!」

 

誰が密かにヴァース帝国最強と呼ばれる奴と正面からやり合う物か。戦いにルールなどないのは当然、彼女が警戒していないのが悪いのだ。

 

「こんな手を使ってくるとは!」

 

迫り来るバレットに対しフィアはバズーカの散弾を撃ち放つが三発分をまんべんなくばらまいて2機しか墜とせなかった。

接近用のビームサーベルもエネルギー供給ラインが停止したせいで沈黙を守っている。一瞬にして打つ手をなくしたフィアは岩石を足場にして逃げ回っているがそれも限界があるだろう。

 

「フィアさん!」

 

「隊長!」

 

それを月面基地で見ていたスレイン、リア達は大声で叫ぶがそれしか出来ない自分たちに対し怒った。

 

「こんなことで!」

 

虎の子のビームを二発撃ち放ちハーシェルを狙うが外れる、シナンジュのスラスターが不調のせいで姿勢制御が行われていないのだ。

 

「儚い儚い!儚いなぁ!」

 

マリルシャンの勝ち誇った声と共に放たれたビームはメインカメラに着弾し爆炎を上げる。

 

(青い薔薇の花言葉は不可能…)

 

そこで思い出されるのはスレインの言葉、奇跡と不可能相反する意味を持つ花の名を思い出す。

 

「不可能だと…。ふざけるな、私の血塗られた道に不可能など許されない!」

 

咆哮するフィアの目はまだ死んではいなかった。

 

ーーーー

 

海上にて停泊中のデューカリオン甲板で伊奈帆は月の様子を見ていた。そんな伊奈帆の不自然な行動は韻子の目に止まった。

 

「伊奈帆、何してるの?」

 

「フィアが戦闘している」

 

「え、どこ!?」

 

予想外の言葉に思わず辺りを見渡す韻子、だがそれは見えない。何故ならそれは遥か遠くの月面で行われていることなのだから。

 

ーーーー

 

「お前がここで死ぬたまかよ……フィア!」

 

親友(ライバル)であるマリーンも月面基地の強化ガラスに手を付き心配そうな様子で決闘を見る。

 

直撃したシナンジュのモノアイは沈黙したがモノアイレールの奥の紅い瞳がハーシェルを見据える。それはまるでフィアの瞳の様に。

 

「このままではジリ貧だ!くっ!」

 

周囲を忙しなく見やるフィアの瞳は全方位から襲いかかるバレットに向けられていた。

 

「なんだ?」

 

その異変は突然現れた、シナンジュの被弾が極端に減った。と言うより皆無になったのだ。

身をよじり、細かく四肢を動かし岩石を蹴り反転や進路変更をする。

 

「バカな…どう言う事ですか!?ですが悪あがきも終わりです」

 

マリルシャンはフィアの異常な光景に驚きつつも手早く始末するため持っていたバレットをシナンジュに向ける。

 

「チェックメイトです!」

 

「間に合え!」

 

撃ち放たれたビームは真っ直ぐシナンジュに直進し着弾すると同時に漆黒の宇宙を染めたのだった。

 

「隊長!」

 

「フィアさん!」

 

「フィア!」

 

リア、スレイン、マリーンがその光景に肝を冷やすと大声で名前を叫ぶ。アセイラムに扮していたレムリナも思わず両手で口を押さえた。

 

「……」

 

誰もが絶望を覚える中、地球で見ていた伊奈帆だけが彼女の勝利を確信していた。

 

推奨BGMーFULL-FRONTALー

 

「ふっ…しぶとかったですがこの程度ですか…」

 

決闘は終わりだと警戒を解くマリルシャン、だがそれは早計だった。

燃え盛る爆炎の中、黄色の閃光がハーシェルに向けて伸び右手に装備されたバレットを撃ち抜いたのだ。しかもシナンジュを包囲していたバレット4機を撃ち墜してだ。

 

「なんと!?」

 

「アセイラム親衛隊が隊長、フィア・エルスート。これより刑を執行する」

 

爆炎から現れたシナンジュは高速でハーシェルに接近しライフルを構える。

 

「くっ!この死に損ないがぁ!」

 

怒りを露わにしたマリルシャンは残ったバレットを操作しシナンジュの後ろから追わせる。

 

「想定通りだ!」

 

ライフル下部に装備されたバズーカ砲が火を噴き撒き散らされた散弾がバレットを全て破壊する。フィアはその爆発すら加速に使いハーシェルに迫る。

最後に残されたビームは残りカスのような物だ、接近してから使わないと装甲を抜けないかもしれない。

 

「この私が追いつめられただと!?こんな汚い雌犬にぃぃ!」

 

武器を失ったハーシェルは何もする術もなく立ち尽くす。そこにシナンジュが蹴りをかまし岩石に埋めるとライフルの銃口をコックピットに向ける。

 

「貴様、雌犬の分際で軌道騎士を殺せばどうな……」

 

「詫びろ……」

 

マリルシャンの言葉は最後まで続かなかった。シナンジュの撃ち放ったビームにより骨すら溶かされたのだから。

 

「勝者、エルスート卿」

 

立会人として参加していたバルークルスは静かにその結果を口にする。

決闘の掟に則りマリルシャンの資産は全てフィアに渡るがその資産丸ごと便宜上、彼女の上司であるスレインへと渡ることになった。

 

「このバルークルス、立会人として確かに見届けた」

 

バルークルス卿はその事実を騒ぎ立てもせずただ静かに口にするだけであった。

 

ーーーー

 

「終わった…」

 

「何でも見えるんだね、伊奈帆は」

 

「うん」

 

デューカリオン甲板、静かに告げた韻子の言葉に伊奈帆も同意する。この目で多くのことを見て役立ててきた…だが。

 

「でも、本当に知りたいことは何も見えないんだ」

 

韻子でも分かる伊奈帆の悲しげな声に彼女は両手を静かに握りしめる。対する伊奈帆も甲板に座り込み静かに話す。

 

「ごめん韻子、巻き込みたくなかった」

 

「もう…」

 

伊奈帆の言葉に韻子は何も言えなくなる。あれでは殺し文句のような物だ、だが彼女は静かに微笑む。そんな小さな気遣いが何より嬉しかったからだ。

 

ーーーー

 

「一つの旗の元に集い、ヴァース帝国の未来のため共に戦うときが来たのです。私は私の持つ権限の一切を新たに力を得た城の城主であり、やがて私の伴侶となるトロイヤード卿に委ねました」

 

「どう言う事だこれは!」

 

決闘の直後、レムリナから放たれる新たな宣言。それはフィアにとっても寝耳に水であった。

 

(すいません、フィアさん。僕はもう…待つことは出来ないのです)

 

例えフィアと対立しようとも自身の道を歩み始めたスレイン、その一方で一人の少女が2年の時を得て目覚めるのだった。

 

 





どうも砂岩でございます。
かなり早めの投稿になりました。やったね!
今回の決闘なのですがまぁ、まともにやり合ってたらマリルシャンが可哀想なのでフィアには少し苦しんで貰いました。フィアの機体が人型でなかったた本当に死んでました。
ついにここまでやってきました!
そして物語はついに最終章へと突入、伊奈帆、スレイン、アセイラム、フィア…四人の運命がついに交錯し絡み始める。

では最後まで読んで頂きありがとうございました!
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