アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
「ちょっと!貴方!」
「舌噛むぞ!」
韻子が叫ぶのを気にせずにフィアはアクセル全快で輸送車を発進させた。その急加速は運転室に居た韻子やカームを椅子に座らせて黙らすには調度良かった。しかしアクセル全快で走行しているにも関わらずスピードメーターの上がりは良くなかった。
「車が重い!何を載せているんだ!」
「後ろにアレイオンが載ってんだから仕方ないだろ!」
大声で怒鳴り付けるフィアに大声で答えるカーム、その横にいつの間にか居た伊奈帆が冷静にフィアに話しかける。
「片足が重いんだ…」
「なるほど…敵の特徴を教えろ!」
「紫、ダンゴムシもしくはダルマ…装甲は何もかも吸収してそう…」
「ニロケラスか!奴との距離は!?」
「代々、17m位…」
「よし!」
フィアと伊奈帆の話に着いていけない韻子とカームがポカーンとしているとフィアが僅かに笑うと叫ぶ。
「何かに掴まれ!」
「え!?」
聞き返す韻子とカームをよそにフィアは思いっきりブレーキペダルを踏みつけると当然、輸送車は急速に速度を落としニロケラスとの距離が一気に縮まる。
その様子を見て二人は悲鳴を上げるがフィアはサイドミラーを伊奈帆は窓から顔をだして冷静にニロケラスを見てアレイオンの足がいい感じに無くなる直前に伊奈帆が叫びフィアはアクセルペダルを踏み軽くなった輸送車は速度を上げる。
「おいオコジョ!」
「ユキさん助けねぇと!」
するとオコジョがアレイオンで気絶しているユキを助けようと車の上に出るのをカームが引き止めるがオコジョはそれを無視してアレイオンに向かう。
「おい!トンネルは!?」
「え?」
「出来るだけ長くて複雑なトンネルを教えろ!」
「は、はい!ここ左折です!」
フィアの突然の質問に韻子は考える間もなく答えると輸送車が傾くのではないかとぐらいハンドルをきり曲がると車上に居たオコジョは当然、飛ばされるが何とか落ちずにすむ。
「オコジョ!」
「大丈夫!」
「上の奴をさっさと中に入れろ!構ってる余裕は無いぞ!」
フィアが叫んだ直後にニロケラスがビルから出現し車が大きく揺れその衝撃でオコジョが宙に飛ばされるが中から出てきた伊奈帆に手を捕まれ何とか落ちずに済む。
「い、伊奈帆…」
「………」
泣きそうな顔のオコジョを見て伊奈帆は手を強く握るが無情にも手はゆっくりと滑り離れて行く。
何とかしなくては…そんな思いが伊奈帆の頭を支配した時、まるで待っていましたかと言うように強い衝撃が地面と車を揺らしついに手が完全に離れてしまった。
「うわぁぁぁぁぁ!」
悲痛な叫び声が響き宙を舞ったオコジョはニロケラスのバリアーによってその欠片すらも残されずに消え失せた。
伊奈帆はそれを黙って見るしかなくただ唖然として身を固まらせると同時に輸送車はトンネルに入り込みニロケラスはその追撃をやむ無く中断したのだった。
「はぁ……」
「ありがとう…」
「どういたしまして…」
流石のフィアも疲れたように席に深く座り隣に居た韻子が礼を言い素直に受けとるのだった。
「もう大丈夫だ!二人とも!奴はもう追ってこない!」
輸送車が止まったのを確認するとカームは車上に顔を出し伊奈帆を見るとそこにはただ呆然とする伊奈帆の姿だけがありオコジョの姿は無かった。
「なぁ…伊奈帆…オコジョは?」
「……」
「嘘だろ…」
質問にも沈黙を続ける伊奈帆の姿にカームはあって欲しくなかった事実を否応なく突きつけられる、するとユキが乗っているアレイオンの無線から通信が入る。
『…こちら鞠戸…聞こえるか?』
「鞠戸教官…」
『界塚か!?火星人はお前を追っている。フェリー埠頭への攻撃はまだ無い…出来るだけ奴を引き付けて…でも無茶はするな!必ず生きて帰れ!』
途切れ途切れの通信は一方的に切られると沈黙を守っていた伊奈帆が呟く。
「さっきの奴…まだ僕らを追ってきてるって。でもその隙に避難民を乗せたフェリーが出発出来るかも…僕らが囮になれば」
「おい!何言ってんだ!」
伊奈帆の言葉にカームが思わず叫び輸送車から降りてきた他の人々も伊奈帆の言葉が耳に入る。
「共同抗を使えばここから学校まで行ける…」
「だから何だよ!?」
「格納庫に行けば練習機がある。火器演習の時の弾薬も…」
「おい……」
伊奈帆の言葉にカームは気づいたようで静かになる。
「戦おう、ユキ姉達の代わりに。今度は僕らが…あの火星カタフラクトと…」
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「姫様…」
「ありがとうございます…」
伊奈帆の提案以外に他に為す術もなく学校にたどり着いたフィアは椅子にアセイラムを座らせると支給された食料を渡す。
「全く…あの界塚と言う地球人はよく分からない人物ですね」
「まぁな…だが私個人としては…考えも無しで言っていた言葉ではないと思うんだがな…」
「あの方の目はとても深くて分かりません…でも信用に値する人物だと思いますよ」
「フィア、姫様まで…」
二人の言葉に深いため息をつくエデルリッゾ、それを見て少し笑うフィアとアセイラムを見てエデルリッゾがさらに機嫌を悪くしたのは言うまでもない。
するとフィアは後ろから声をかけられ振り返るとそこにはスマホを持った伊奈帆が立っていた。
「フィア…ちょっと良いかな?」
「え、えっと…」
「良いですよ…行って下さい」
「あ…はい…すまない。エデルリッゾ」
「そう思うなら早く帰って来て下さい!」
伊奈帆の言葉に若干フィアは伊奈帆とアセイラムを見て考えるが彼女の言葉でアセイラムをエデルリッゾに任せることにし、その場から立ち去ると伊奈帆に案内されたのは会議室のような部屋だった。
「こんな所でごめん…誰にも聞かれたく無かったんだ…」
「それで?用件は?」
「じゃあ単刀直入に…フィアって火星騎士だよね?」
「…何の事だ」
伊奈帆の単刀直入過ぎる言葉にフィアは若干眉を動かすが冷静に聞き返す。
「まず一つはあのダンゴムシの名前と能力を知っていた事。輸送車でニロケラスって名前を叫んでいたし機体を見なくても突差に足を消滅させる事を思いついた…」
「……」
「それと決定的なのは…フィアが持っている拳銃だ。小さくだけど火星の紋章が描かれていた…」
伊奈帆の言葉を聞いていたフィアは焦り始める。このままではアセイラムの正体がばれて今度こそ本当に地球人に殺されるかもしれない…そう思うとフィアは最悪の手段を選ぼうとした時。
「僕は火星人を恨んだりはしない…」
「え?」
伊奈帆の突然の言葉にフィアは思わず考えていた事を忘れてしまう。
「私はお前の友達を殺したんだぞ…」
「君が殺したんじゃない…やっぱり火星人だったんだね…」
伊奈帆の言葉に思わずフィアは口を押さえるが既に遅く伊奈帆はその無表情な顔をフィアに向け続けて話を続ける。
「あのカタフラクトについて纏めておいたんだ…意見を聞かせて欲しいんだけど…」
「私に同胞を売れと…」
「フィアはあの人を護れればそれで良い筈だ。奴の排除は不安材料の払拭になると思う…だから僕とフィアの利害は一致している」
フィアは伊奈帆に全て言い当てられて目を細める。そしてアセイラムの事をあの人と呼ぶあたり正体に気づいているのか気づいてないのか分からない…フィアは少し考えると静かに答える。
「…分かった。だが条件がある、私もその作戦に参加させろ…伊奈帆、お前に興味がある…」
どうも砂岩でございます!
今回はニロケラス戦の前まででこざいます!
原作と違って伊奈帆はアセイラムの正体に若干ですが気づいています…なのでフィアにお願いをするという危険な行動を取った訳ですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました!