アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
「火星の宣言もあったし、状況は色々と変わっているよね」
「あのお姫様が結婚なんてなぁ」
「そこ、興味…」
耶賀頼を含めた韻子たちメンバーはデューカリオン内で昼食を取りながら宣言のことについて話していた。
カームの言葉に思わずライエがつっこむが彼も彼なりに思うところがあるようだ。
「いやぁ、だってさ…。姫様が心変わりしたのもそう言う相手が居たからじゃないのか?その相手にそそのかされたとか……すいません」
自身の解釈を入れつつも目の前にあったライエのトレーから食べ物を摘まもうとフォークを伸ばす。それは見事に回避されライエのジト眼が返ってくるのだった。
「フィアが許すかなぁ…」
「立場上は姫様の護衛だから口出し出来ないんじゃないの?」
「お姫様を利用しようとしてたら誰であろうと問答無用で殺しそうなんだけど」
「「「あぁ……」」」
韻子の言葉に全員が納得の声を上げる。彼女にとって相手のことなど知ったこっちゃないだろう。
「あのお姫様が偽者だったらフィアも口を出さないかも…」
「確かに…。でもどうだろう」
「伊奈帆君は偽者だと主張して居るみたいだけど、彼はどこまで見据えているのか…」
ライエの言葉に全員が納得の表情を表す。二年前に見てきたアセイラムとは真逆の宣言に対して皆思うところがあるのだろう。
「伊奈帆は独自に進めてるみたいだけど…」
「アイツももう少しこっちを頼ってくれても良いんだけどなぁ」
韻子とカームの言葉にニーナは深く頷くのだった。
ーー
デューカリオン、カタフラクトハンガー。
「食事はしたの?」
「もう少し、切りの良いところまで」
「変わらないなぁ、昔から。夢中になるとそればっかり」
愛機のスレイプニールの前で調整していた伊奈帆は上から話し掛けたユキを軽く見ると作業を続ける。
「はい」
「お、ありがとうユキ姉」
目の前に持ち出されたフルーツサンドをユキから受け取った伊奈帆は笑いかける。
「聞いたよね。あの、アセイラム姫の」
「うん」
「あの宣言、なお君の言っていることを証明しているように思えた。なんだか話がうまく行き過ぎてるし本当にアセイラム姫が本物なら、地球圏に王国なんて考えるかなぁって」
伊奈帆は貰ったフルーツサンドを食べると一人の男の名を静かに呟く。
「スレイン・トロイヤード」
「私のかわいい弟を撃ったクズ野郎ね」
「ありがとう、でも言葉使いが汚いよ」
「彼女が本物かどうかなんて関係ない…」
そう、関係ないのだ…。火星騎士にとって大義名分の意味しか持たない彼女の正体が本物でも偽者でも関係ないのだ。
自身が得をする方のアセイラム姫が彼らにとっての本当の姫様なのだから。
「誰も耳を貸さないだろうな…。彼女がもう一度、地球と火星を平和に導こうとしても」
伊奈帆はその言葉を呟きながら、ただただ悲しんでいるであろう彼女の事を案じているのだった。
ーーーー
「まずは無事で何よりだった、マズゥールカ卿」
「ご心配をおかけ致しました、バルークルス卿」
「彼女は…」
無事揚陸城へと帰還したマズゥールカは揚陸城の指令室でバルークルスと会話をしていた。
するとマズゥールカの後ろに立っている少女を見やったバルークルスはその少女の正体に気付く。
「はい、同じく捕虜となっていたアセイラム姫親衛隊の者です」
(あの方は…)
マズゥールカの背後からバルークルスを見ていたジュリは彼の存在を思い出す。マリネロスの時、マリルシャンの行動を諌めていた伯爵だったはずだ。
(隊長…)
隊長は無事だろうか、姫様の様子に変わりはないか…。考えることはたくさんある、思考の海に浸かっていたジュリはフッと我に返りマズゥールカの話に意識を戻す。
「うむ、親衛隊を助けたとなればアセイラム姫、ひいてはトロイヤード卿に対しても良い印象を持たれるだろう。分かった、拝謁の件は私から話を通しておく」
「ありがとうございます」
通信が切れ目の前のモニターが暗くなるとマズゥールカとジュリは静かに目を合わせ頷き合う。
「ひとまずはこれで良いでしょう」
「ありがとうございます」
「いえ、これを放置していたら騎士の名折れです。細かい話はシャトルでしましょう」
「はい」
「宇宙に上がる、シャトルの用意を」
「はっ!」
部下にシャトルの準備を進めさせたマズゥールカは現在の状況を詳しく知るために行動するのだった。
ーーーー
月面基地、スレインの執務室。
「基地内の士気は良好だ。ステイギス隊の練度も上がってきている。武力面では月面基地がトップだろう」
「バルークルス卿、ヴァルト卿は全面的に協力をオルガ卿、ラフィア卿も今まで意思を鮮明にしていませんでしたが新王朝を肯定する側に立たれたようです」
内政面ではハークライトが武力面ではマリーンが指揮を執り順調に事を進めている。これでマリーンもスレインの部下と言う事だ。
「……」
「スレインさま…」
心ここにあらずと言った感じでいたスレインを心配するハークライト、それに対しマリーンは執務室の窓を見つめ待っていた。
「失礼ながら、アセイラム姫のご快癒と関係が…」
「……」
ーーーー
「エデルリッゾとフィアに
「しばしの間で構いません。アセイラム姫の急変に彼女たちも痛く衝撃を受けておりまして…」
「仕方ありませんね…貴方はどうなのですか?」
フィアとエデルリッゾがアセイラムのことを心から思っていることを知っていたためなんの疑いも無く許可を出す。
それよりもレムリナが気になるのは目の前に居るスレインだった。
「お気遣い感謝します。もう、僕には姫様の他に頼れるお方はおりません」
姫様、その言葉にはどのような意味が込められているのか…。
「ヴァースをこの手に掴んで見せます。姫様の御ために…」
その言葉はレムリナに対してか、それともアセイラムに対しての言葉なのかは彼本人のみが知る。
ーー
「っ!」
展望室から去り、窓に映る自分を見たスレインはその場に止まる。自身を慕ってくれる少女を平然と騙すその顔を思いっきり殴るのだった。
ーーーー
「綺麗…」
「はい、スレイン様が姫様のためにとこの庭園を」
今やスレインの揚陸城と化した揚陸城は無機質な廊下にも花が装飾され色鮮やかになっている。その最もたる場所がこの庭園だろう。
「美しい…」
色鮮やかな花に豊かな草木に包まれたこの空間は悲しみに暮れていたフィアの心も癒やしてくれる。
「そうですか…地球の景色ですね」
「はい!思い出してきましたか!?」
アセイラムの言葉にエデルリッゾのも喜び喜々として話しかける。その様子を少し遠くからフィアは見つめる。
「隊長、行かなくてもよろしいのですか?」
「揚陸城と言っても完全に安全とは行かないからな」
「いえ…その…なんでもありません」
リアはそんなフィアを見かねて話し掛けるが彼女の事務的な返答に戸惑う。本来ならもっと傍に居たいであろう事は数年付き従ってきた彼女にはよく分かる。
(警戒している…)
偽のアセイラムことレムリナが発した演説のせいだろうかフィアはいつも以上に警戒していた。
(空か…何故か懐かしい)
庭園の天井に設置されたモニターに映し出される青空をフィアは感慨深げに見る。
「青空も良いが夜空も素晴らしかった…」
「夜空ですか?」
「あぁ…」
宇宙のように真っ暗な空にキラキラとした星が彩る。その光景で感じるのは深黒に対する恐怖では無く美しさに対する感動だ。
(誰かと見た気がする…。姫様だっか、いや違う…誰だったかな)
あと一歩、あと一歩がとてつもなく遠い。おぼろげにフラッシュバックする記憶から見られるのは誰かがいたと言う事実だけ、顔がどうしても思い出せなかった。
ーー
「かいつか…いなほ……」
フィアが感傷に浸っていた時、アセイラムがとある人物の名を口にするが残念ながら彼女の耳には届いていなかった。
「どうしました…おい!?」
「……」
「どうしたんだろうなぁ」
「……」
「お前に聞くんじゃ無かったぜ…」
庭園の通路を見回っていたネールとシルエは急いで庭園を出るスレインとすれ違い呼び止めるが彼は止まらずそのまま庭園を去るのだった。
どうも砂岩改でございます!
今回は短めで火星sideでした。そしてグダグダ感が今回は一層強くなってる…本当にすいませんでした!
そろそろジュリも帰ってくるので一気に話が進むと思います。
次回は伊奈帆sideを中心に…相手はあの三騎士ですね。
そしてアンケートのお知らせです。実はこの小説、エンディングが二つ存在します。
正規エンディングは決定しておりますがそうなればせっかく考えたもう一つのエンディングを止めることになる…それは棄てがたい。
なので読者の皆様に決めて頂こうと言う事になりました!アンケートの方は活動報告の方でやりますので是非参加下さい!
では最後まで読んで頂いてありがとうございました!