アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
「えぇ!」
「声が大きい!」
大声で叫ぶエデルリッゾをフィアは黙らせると部屋で座っているアセイラムがちゃんと座っているのを確認すると話の続きを話す。
「どういう事です、フィア!ニロケラスを撃退する地球人の手伝いをするなんて!貴方はヴァースを裏切るつもりですか!?」
「言っておくが私はヴァースに忠誠を誓った覚えはない…私は姫様に忠誠を誓ったのだ…」
「ですが!」
「姫様を連合本部にお連れするまで不安材料は少ない方が良い…それに誰が首謀者か分からない状況で私が取れる行動はこれぐらいしかない…」
その言葉にエデルリッゾは黙り込む。フィアが言っている事は正しい…しかし彼女が一番心配しているのは同族を殺すフィアの事だった。
「貴方は大丈夫なのですか?」
「私は姫様の騎士だぞ…簡単にはやられないさ」
「そうではなく!」
「フィアさ~ん!」
エデルリッゾの言葉を遮るように廊下にカームの声が響き渡りフィアはそれに応じるように手を上げ後に付いて行こうとするのをエデルリッゾが引き止める。
「フィア!」
「姫様を頼む…あの方には戦場は似合わない…血を被るのは私だけで十分だ…」
「フィア…」
黙って去っていくフィアの後ろ姿をエデルリッゾは黙って見つめ続けるしか出来なかった。
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「じゃあ…予備のカットを含めて四機で作戦を行おう…」
「なぁ伊奈帆…カットで出るのはフィアさん含めて四人でいいけど囮のトレーラーを含めて後二人は欲しいだろう」
「私に…やらせて下さい」
カームの言葉は最もでこの作戦を行うためには明らかに人数が不足していた…するとカタフラクトを乗せたトレーラーの影から出てきたのはアセイラムだった。
「姫様!いけません!」
「これは私のせいで起こった出来事です!なら私には見届ける義務があります!」
「だとしてもです!もし姫様の身に何かが起これば!それこそ取り返しが付かないことになります!」
フィアは何としても止めようとするが覚悟を決めているのかアセイラムは一歩も引かずに真っ向からぶつかる…すると突然アセイラムはフッと微笑みフィアに語りかける。
「大丈夫です。フィアに言われた通りに私も私の心に従う事を決めました。それに…もしもの時はフィアが守ってくれるでしょう?」
「あぁ…」
フィアはアセイラムの言葉に思わず声を失い頭を抱える。先程のアセイラムの言葉は完全に殺し文句だ…ここまでの信頼を見せつけられてしまったらフィアはそれに応えなければならない。
「はぁ…分かりました…ですが無茶だけはしないように…」
「ありがとう…フィア…」
「いえ…御守りしましょう…それが我が務め…」
二人の意見が纏まったのを見届けると伊奈帆が話を切り出す。
「あと一人だね…この際だからフィアにトレー「私にもやらせて」…」
伊奈帆の声を遮るように同じくトレーラーの影から出てきたのはユキに助けられて輸送車に逃げ込んだ赤髪の少女だった。
「あいつは父を殺した…私にも協力させて」
「こっちも命がけだぜ…」
「分かってる…任せて」
「決行は明朝、日の出と供に出発しよう。あの火星カタフラクトを撃退する…」
伊奈帆の言葉で全員が頷くのだった。
「ごめんなさい…フィア…」
「もういい…起きてしまった事だ…」
少し疲れたような様に居たフィアを見てエデルリッゾは謝るがそれを気にした様子はなくただフィアは自身の主の覚悟に降参するしかなかった自分を怒っていたのだった。
ーーーー
「明日…死んじゃうかもしれないのに…」
アセイラムが眠りに入ったことを確認してフィアは明日使うスレイプニールの調整をするために格納庫に入ると韻子の声が聞こえて思わず身を隠す。
「ごめん…」
「別にさ…怖いもの知らずって訳じゃないよ。助けられると思ったんだ、でもあんなにあっさり…あんなに簡単に…きっとその時が来ても覚悟する暇なんて無いんだろう。その瞬間にどんな後悔をするのか…そう思いながらただジッと待ってるだけなんて…耐えられない。僕も、たぶんカームも……もし韻子が嫌なら…」
「ううん…大丈夫…明日に備えてもう寝る…伊奈帆…風邪ひかないでね」
「韻子も…」
二人の会話を黙って聞いていたフィアは手を強く握りしめる、韻子も伊奈帆も本当なら世界の事なんて考えずにただ普通に暮らして行くはずだった人達。
フィアは悲劇を止められる位置に居ながらも何も出来なかった自分の無力さを改めて実感していると…。
「フィア?」
「な!なんだ!?」
突然すぐそこに伊奈帆が現れフィアは思わず大声を出して顔をそらす。若干泣きそうになっていたフィアはそのプライドから顔を見せるのを見られたくなかったのだ。
「泣いて…「ない!」…そう」
余りにもデリカシーの無い伊奈帆の言葉にフィアは怒鳴り返すと伊奈帆は黙り込みフィアは話題を変える。
「しかしこんなに遅くまでいるとはな…」
「スレイプニールの調整をしてたから…フィアも調整を?」
「まぁな…初めて使う機体だからな」
「良いの?」
「何がだ?」
「僕達は良い…でもフィアは仲間と戦うことになる…」
伊奈帆の心配にフィアは少し笑いながら答える。
「ありがとう、だが大丈夫だ。抵抗は無い事は無い、むしろ少し迷っている自分がいる…だが私は姫様の幸せの為なら」
「……」
胸に手を当てながら静かに話すフィアの姿を見て伊奈帆はその無表情の顔に若干の悲しさを見せるのだった。
キュルル
「!?」
「?」
するとその空気を壊すように鳴った腹の虫に伊奈帆は首をかしげてフィアは顔を真っ赤にする。実はフィアは支給された食事を自分の分も全てアセイラムに渡してしまった為、事件が起きた昨日から何も食べていないのだ。
「食べる?」
「クッ…騎士は食わねど高楊枝…」
「それ…武士だから…」
「………」
伊奈帆の言葉にフィアは顔を真っ赤にして落ち込むとそれを気にせず伊奈帆はタッパーに入っただし巻き卵を出して差し出す。
「なんだ?これは?」
「だし巻き卵…知らない?」
「黄色い塊がたまごと言う物か…」
今まで基本オキアミやクロレラを食べていたフィアにとって未知の物体であるだし巻き卵。
それを訝しげに見つめるフィアを見て伊奈帆はだし巻き卵を目の前に突き出して食べるように目で言うとフィアはそれを恐る恐る食べる。
「…美味しいな……」
「そう…全部食べる?」
「…すまない」
その後、フィアは無言だが本当に美味しそうに食べきったのを見た伊奈帆も満足そうにしていたのだった。
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フィアside
明朝、晴れ渡る空に赤い信号弾が三発界塚ユキの手で打ち上げられフィア達は作戦を開始する。
「姫様…無理しないでくださいよ…」
「見つけた!十時の方向」
スレイプニールでカームと韻子の後ろに続くフィアはトレーラーを見ながら呟くとニロケラスが現れる。
『作戦開始…』
「了解…」
無線から聞こえる伊奈帆の合図と同時にフィアは煙幕弾を空に打ち上げるとニロケラスは動きを止める。
「奴の動きが止まった!」
「伊奈帆の言った通り!」
「全く恐ろしい奴だな…伊奈帆は…」
韻子とカームの歓喜の声を聞きながらフィアも苦笑する…一度見ただけでこれだけの事が読める伊奈帆を心の中で素直に褒めるのだった。
「アイツ、メチャクチャ!」
「援護してくれ!あのコウモリ…アイツの気流で煙幕が乱れる!落とさねえと!」
上空にスカイキャリアが飛来すると同時にニロケラスはなりふり構わず前進を始めカームがスカイキャリアを落とそうと攻撃を開始する…するもスカイキャリアは旋回し機銃をむけてカームのスレイプニールに攻撃をする。
「チィ!」
砲弾がカームのスレイプニールに直撃する直前にフィアはマシンガンをセミオートに切り替えて構えると機銃をピンポイントで狙撃する。
「よし…」
「このぉ!」
機銃を失ったスカイキャリアを韻子は見逃さずに素早く左翼にクレネードを当てるとスカイキャリアは離脱していく。
「ありがとう…助かった」
「気にするな…煙幕を張りつつ指定ポイントへ」
「「了解!」」
カームの礼にフィアは返すと冷静に指示を出し二人はそれに沿って行動を開始する。
『大丈夫?』
「気にするな…問題無い」
『分かった…じゃあ合流ポイントで』
「分かった」
フィアは伊奈帆との通信を終えると足の飛行ユニットを展開し急いで合流ポイントに向かう。
「あの赤髪…姫様が居るのに無茶を…」
合流ポイントである橋の上で時間稼ぎのために挑発するトレーラーを見てフィアは焦る…すると案の定トレーラーは後輪を消滅させられ走行不能に陥る。
「姫様!韻子!狙撃は頼む!」
『え!?どこ行くのフィア!』
いきなりニロケラスに突っ込むフィアを見て韻子は止めるがフィアは止まるどころか更に加速して橋に辿りつくとアセイラムが外に出てニロケラスと対峙していた。
『見苦しいな今になって命乞いとは…』
「控えなさい…目に余る狼藉。許しません…ヴァース第一皇女の名において…」
『あぁ!?アセイラム・ヴァース・アリューシア姫殿下!』
アセイラムがそう呟くとホログラムを解除し元の姿になるのを見てフィアは思わず頭を抱えたくなるがそんな暇は無くアセイラムのすぐ後ろにスレイプニールを立たせるとコックピットを開き自らの姿も見せる。
「控えろ!姫殿下の御前である!その態度無礼であろう!」
『え!エルスート卿まで!?』
ニロケラスパイロットであるトリルランは狼狽し二人を見ながらニロケラスを後退させる。
すると市民の回収に来た揚陸艦からミサイルが発射されニロケラスに直撃するが次元バリアによって掻き消される。
「今だ!」
『は!はい!ファイヤーコントロール!ファイヤー!』
韻子の放った砲弾はニロケラスに直撃するがこれも意味をなさずに消える。
「誤差修正!016、012!撃ちまくれ!」
『了解!ファイヤー!』
フィアの言葉通りに誤差を修正した韻子の砲弾は見事に橋に直撃する。
「姫様!お下がりください!」
それを確認するとフィアは機体に乗り込みアセイラムをスレイプニールの後ろに下がらせると橋にマシンガンの弾をありっけぶち込む。ボロボロになった橋はニロケラスの巨体を支えきれずに海に落ちる。
「カーム!確認急げ!」
『分かってるよ!』
海面から何とか脱出しようと藻掻くニロケラスの周りは海水が吸い込まれる様に消滅していくのをカームはラジコンの偵察機で観察しバリアの隙間を確認する。
伊奈帆side
「カーム…」
『えっと…足の裏?』
「他は?」
『えっと…見つけた!水が吸い込まれない!背面装甲!インテーク右下!爪の隙間!』
「フィア!」
『分かってる!』
弱点の位置を確認し伊奈帆が突っ込むと同時にフィアが煙幕弾を空に打ち上げ視界を奪う。完全に身動きが取れなくなったニロケラスの次元バリアの隙間にナイフを突き立てる。
『クッ…馬鹿な…』
「お前のバリアに隙間があるのは分かっていた。例えば接地面、足の裏にはバリアは張れない。そんな事をすればお前は立つことさえ出来なくなる…お前のバリアはその無敵さ故に全身を覆いきる事が出来ないんだ。外部カメラのデータ受信部、バリアの隙間の一つさ…」
外部マイクから漏れ出る敵の声に伊奈帆はバリアの隙間にあるナイフを横に動かし傷口を広げるとマシンガンの銃口を差し込み静かに…だが明らかな殺意を持って呟く。
「友達の分だ…」
マシンガンの引き金を迷い無く引き銃弾が吐き出されるたびにニロケラスは大きく振動するとその機能を停止し全員が安堵の表情を浮かべる中、伊奈帆は橋の上に立つ金髪の少女を見て呟く。
「やっぱり…火星のプリンセス…」
「ハァ…」
その時、フィアも脱力しながら今後のことを考えるのだった。
どうも砂岩でございます!
随分遅くなりました!色々と忙しくて投稿が遅れました。
とりあえずこれで三話が終了で次は四話ですね!
最後まで読んで頂きありがとうございました!