アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第六十六星 合流 -Confluence-

 

 

 膨大な情報を処理していたせいで頭痛が酷くなっている。だがまだ動ける歩を進め自分が発生させた蒸気を抜けたときついに出会った。

 

「フィア…」

 

 凜々しい顔つき、透き通るような銀髪を持った少女は間違いない探し求めていたフィアだ。

 喜の感情が溢れてくると共に彼の思考に過ぎった考えが歩を止めさせる。彼女は自分を憶えているだろうか…。

 

「伊奈帆…」

 

「良かった、無事で」

 

 一気に高ぶった緊張が解けた伊奈帆はほんの少しだけ体の力が抜けふらつく。

 

「おい!」

 

 ふらついた体を支えるようにフィアは伊奈帆を抱き止める。

 

「お前はいつも無茶をして…」

 

「少なくともフィアにだけは言われたくないかな」

 

「失礼な」

 

「今だって少しキツかったでしょ?」

 

「ふっ…」

 

 なんでもお見通しな彼の言葉に思わず微笑んでしまう。2年経ってもこう言うのは変わってないようだ。

 

「そんな事してたら韻子辺りに怒られるぞ」

 

「何で知ってるの?」

 

「遅かったか…」

 

「ふふっ…」

 

「ハハッ!」

 

 ついに声を上げて笑い合う2人、その様子は昔からの幼馴染みのようだった。

 しばらく笑い合うとフィアは伊奈帆の腕を肩にまわし起こさせる。

 

「取り敢えずここは危ない」

 

「大丈夫だよ、自分で動ける」

 

「良い、気にするな」

 

 支えられるように歩く彼の足取りは若干だがぎこちない、そんな様子を見てほっとけるほど人でなしではないのだ。

 

「その銃…」

 

 フィアの手には地球軍で正式採用されている銃が伊奈帆の手にはヴァース帝国で正式採用されているものをカスタムした彼女の専用銃が握られていた。

 

「ああ、お前のだ。そっちも私のじゃないか」

 

「御守りみたいなものだったから」

 

 

 お互いがお互いの銃を2年間大切に使い持ち続けていたのだ。

 

「セラムさんは?」

 

「姫様なら大丈夫だ。私の部下が護っている」

 

「なら安心か…本当ならフィアと一緒にデューカリオンで保護するつもりだったんだけど」

 

「デューカリオンか…」

 

 デューカリオンと言う言葉に懐かしさを覚えたフィアはそれ程の歳月が経ったと言うのを改めて実感した。

 

「セラムさんが脱出したらフィアも…」

 

「うむ…」

 

 伊奈帆の言葉に彼女は腕を組んで思案する。月面基地を脱した後、向かうであろう場所は容易に想像できる、そこからアセイラムは戦争終結に向けて動きだすだろう。

 そのために自分がどこに居ればいいか…。

 

「デューカリオンに案内してくれ…」

 

「フィア…」

 

「地球軍の司令官と話をさせて欲しい」

 

 フィアの出した回答に伊奈帆は静かに頷くのだった。

 

ーー

 

「その…すまなかった。トライデント基地での件は」

 

 伊奈帆も何とか回復し自力で歩き始め、今だに蔓延している蒸気の中を2人は警戒しながら歩き続けた。

 そうした時、彼女の発した言葉に伊奈帆は虚を突かれポカンとした顔になった。(端から見れば無表情だが)

 

「なんだ?」

 

「いや、なんで謝まるのかと思って」

 

「私はお前たちを殺しかけたんだぞ」

 

「誰も恨んでないよ。フィアのことはよく知ってるから」

 

 伊奈帆は知っている。彼女はどこまでも真っ直ぐで純粋で何よりも他人を優先する。強くて美しく完璧そうに見えるがとても脆い面がある普通の少女。

 

「ありがとう…」

 

 静かに心からの感謝の言葉、それを聞いた伊奈帆は静かに微笑むのだった。

 

ーーーー

 

 同じ頃、月面基地カタフラクトハンガーではアセイラムが到着しており親衛隊とシナンジュの占拠部隊と交戦していた。

 

「くそっ、子供ばかりにやら…!」

 

「ラムズ、やろぉ!」

 

 低重力下を無尽に動き回る親衛隊相手にアサルト部隊は数を減らしていく。

 

「っう!」

 

「シルエ!ふざけんな!」

 

 そんな中、アセイラムの護衛をしていたシルエが肩に銃弾を撃ち込まれ血を流す。それを見たネールは激昂し敵兵の顔面にナイフを突き立てる。

 

「シルエ、無事?」

 

「……」

 

 いつも通り黙って頷くシルエにジュリは止血し包帯を強く巻き付ける。

 

「機付き長!」

 

「リアちゃん、助かったよぉ」

 

 弾幕をかいくぐり整備班たちが立て籠もっているエリアに辿り着いたリアはあまりの惨状に目を疑う。

 血まみれの兵が多く転がり数は半分以下まで減っていた。

 

「機付き長…」

 

「情けない話しさ、私が生き残ってしまった」

 

「無事で良かったです」

 

 恐らく部下の血ものであろう血が作業着に付着し体からは硝煙の匂いがする。部下のために必死に戦ったのだろう。

 

「もっと早く来ていれば…」

 

「戦いなんてそんなもんだよ。後悔するんだったら前に進むんだ。奥の格納庫にベルガ・ギロスを隠してあるから」

 

 落ち込むリアの背中を叩いて笑うフェインの笑顔はぎこちないものだったがそれを見ただけで元気が貰える気がした。

 

ーー

 

「私のせいで…」

 

「姫様…」

 

 怪我をしたシルエと目の前に転がるアサルト部隊の死体を見たアセイラムは悲しみエデルリッゾが心配する。

 

「……」

 

 そんな彼女の背後、死んだはずの兵が拳銃を構えアセイラムを狙う。

 

「危ない!」

 

「え……」

 

 突然、何者かに押し倒され驚くアセイラム。その瞬間、彼女の頭があった場所に弾丸が飛来しコンテナに花火を散らす。

 

「てめぇ!」

 

「この不届き者が!」

 

「ぐわぁぁ!」

 

 背後の生き残りに気づいたネールとジュリは持っていたマシンガンでその兵を蜂の巣にする。

 

「すいません、お怪我はありませんか?」

 

「貴方は…クランカイン」

 

「お久し振りです。姫殿下」

 

 アセイラムのピンチをすくったら人物、それは月面基地に客人として保護されていたクランカインだった。

 クランカインは倒したアセイラムを丁寧に立ち上がらせると跪く。

 

「とにかくこの場は危険です。私の船で脱出しましょう、貴方たちも」

 

「おい、どうすんだよ?」

 

「……」

 

 クランカインもといクルーテオ伯爵の忠誠心はとても高い事で有名だがアセイラムを乗せて利用されようものならフィアに会わせる顔がない。

 リアは迷う、隊長の囮作戦に対して相手も気づき始めて居る頃だ。

 

「分かりました。今は姫様の身が優先だ」

 

「信じてくれてありがとうございます。整備班の方々も!」

 

「機付き長?」

 

「私はここに残るよ。あの子を待ってなきゃね」

 

 生き残った整備班がクランカインの船に避難する中フェインだけは動かなかった。

 

「しかし…」

 

「ここは任せよう、リア。隊長なら大丈夫だよ、彼も居るはずだ」

 

「彼?」

 

 ローゼン・ズールに乗り込んだリアはシナンジュの前で座る彼女を見て立ち止まるがケルラのベルガ・ギロスに乗り込んだジュリが肩に手をかけながら進むように促す。

 

「とにかく今は姫様だ!行くよ!」

 

「分かった…。月面基地の外にいる敵機を掃討しながら船を護衛する!私に続け!」

 

「「「了解!」」」

 

 航宙船《ハドリアクス》は親衛隊の護衛の元、ゆっくりと月面基地のハンガーから脱出していく。

 その際に駆けつけたアサルト部隊はネールのベルガ・ギロスの機銃で蜂の巣にされる。

 

「……」

 

 スレインはその様子を歯嚙みしながら見つめるのだった。

 

ーー

 

「申し訳ありません。巻き込んでしまって」

 

「これも私の任務ですから。私は皇帝陛下の命によってここへ参ったので」

 

「おじいさまの?」

 

「レイレガリア皇帝陛下は先代ザーツバルム伯爵死後の地球圏統治に疑問を持たれました。そして私にその調査と共に姫の安否を確かめるよう命じたのですか」

 

「では、おじいさまと連絡が取れれば」

 

「話すことは可能です…しかし」

 

「クランカイン卿 姫をどこへつれていかれるのですか?」

 

「これはトロイヤード伯爵。姫を危機から保護し、避難するところです」

 

 輸送艦のメインモニターに映し出されたのはスレイン、彼は随分と落ち着いた様子だった。

 

「月面基地は強固な要塞。ここをおいて他に安全な場所はありません」

 

「しかし戦闘状態にありました」

 

「ご安心を。すでに基地の敵は排除いたしました。はやくお戻りください」

 

「いいえ!私は戻りません!」

 

 クランカインとスレインの目に見えない攻防の中、アセイラムが叫ぶ。

 

「私は…地球で鳥を見ました」

 

「姫様…」

 

「地球は回復し、人と自然とが共存していました。あなたは教えてくれましたよね?人と自然は…地球とヴァースは共に栄えることができると!」

 

 アセイラムの心からの叫び、それは誰もが戦いの中で理想とした思いだった。その言葉に対しスレインは手を顔に当て涙腺が緩んだような動作を見せる。

 

「…はい その通りです。たしかにそのように申しました…」

 

「ステイギス隊を追跡に向かわせました」

 

「捕捉次第、拿捕しろ」

 

 だが現実は非情だった。

 その様子は周囲を警戒していたリアたちにも伝わっていた。

 

「ステイギスがこっちに来てるぜ」

 

「スレイン・トロイヤード…。ここまでやるのか、クランカイン伯爵に連絡を」

 

 モニターに見せる動作と相容れぬ現実にリアは愕然としてしまう。

 

「どうか戦争をやめてください。そして地球と和平を…結んでください」

 

「わかりました。そのことについて話ましょう」

 

「スレイン…」

 

「その宙域は危険です、クランカイン伯爵。すぐに引き返してください」

 

「承りかねます。私はアセイラム姫の命に従います」

 

 一見すればスレインが考えを改めたであろう状況、だがクランカインはそれを当然の如く拒否し逃亡を選択する。

 

「ステルス起動 最大」

 

「了解」

 

 輸送艦に次々と収容されていく親衛隊のカタフラクト、それと同時にレーダー的にも光学的にもハドリアクスは消えていった。

 

「航宙船ハドリアクス、船影が消失しました」

 

「捜索を続けろ…」

 

「はっ…」

 

 司令室で映し出されたレーダーを睨み続けるスレインの顔はますます暗みをおびていくのだった。

 

ーーーー

 

ピピッ…。

 

「無事に脱出したか…」

 

「こっちも脱出しよう。僕は韻子と合流する、F3ゲートの宙域で合流を」

 

「分かった」

 

 端末で脱出を確認したフィアと伊奈帆は各々の来たいの元へと向かうのだった。

 

ーーーー

 

「脱出をしたけどどこに行けば…」

 

「心当たりはある。信用に足る人物が」

 

 航宙船ハドリアクスの格納庫内で先行きを心配するネールに対しジュリは確信めいた顔で言う。それに対しみんなが耳にした人物は始めて聞く名だった。

 

「マズゥールカ伯爵」

 

「今こそアセイラム姫に我が忠義を示す時。揚陸城、離陸!」

 

 時を同じくしてマズゥールカは地球に存在する揚陸城を離陸させる。目標は姫様の居られるであろうサテライトベルトだ。

 

ーーーー

 

 月面基地及び揚陸城の中間地点、デブリを楯にし戦線を維持していたデューカリオンに新たな命令が届いた。

 

「本部より入電、撤退命令です!」

 

「撤退?」

 

「どうやら結果が出たようですね」

 

「結果?」

 

「我々を囮に使った本命の作戦です。全機に帰還命令」

 

 まるで結果を分かっていたかのように冷静なマグバレッジは幸いとばかりに撤退命令を出しデューカリオンを下がらせる。

 

「マスタング00、11接近中です…これは?」

 

「どうしましたか?」

 

 レーダー手の祐太郎の要領の得ない言葉にマグバレッジはすぐさま問いただす。

 

「もう一機、機体が追随しています。これは例の赤い機体です!」

 

「っ!」

 

「フィアちゃん!」

 

 祐太郎の言葉にマグバレッジは目を見開き聞いていたニーナは歓喜の声を上げる。まさかこれほど上手くいくとは思ってなかったのだろう。

 

「艦長…」

 

「構いません、帰投を許可します」

 

「着艦を許可する!」

 

 不見咲の躊躇いを見通しながらも彼女は許可を出す。フィアがこちらに来れば和平への道がぐっと近くなる、拒否する必要などどこにもないのだ。

 

「大丈夫なの?」

 

「大丈夫です。私はあそこに居ましたから」

 

「私はいなかったんだけどね…」

 

 デューカリオンに近づくシナンジュ、その手には大きな白旗が掲げられておりそのコックピットにはフィアとフェインの姿があった。

 

ーー

 

 月面基地、主戦場。

 

「ふ、敵わぬと見て逃げるか」

 

「どう言うつもりだ?」

 

 撤退を始める地球軍機を見てバルークルスとハークライトが反応する中、マリーンだけ違う点を見ていた。

 

「ふっ……」

 

 レーダーの隅に映っているのはシナンジュを示す点、それが地球軍の艦を示す点と接触している。

 

「やっぱりお前はそっちか…フィア」

 

 悲しみと狂気の歓喜が混じった笑顔を作り出すマリーンの姿はとても不気味だった。だが確かに言えるのは彼女が楽しそうだったと言う事ぐらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 





ついにデューカリオンとフィアの合流。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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