アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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皆様のご声援のお陰であります本当にありがとうございます!皆様のご期待に添えるように頑張ります!

では本編をどうぞ!




第六十八星 願い -Wish-

 

 

「ありがとうございました、マズゥールカ伯爵」

 

「いえ、貴方も無事で良かったです。ジュリさん」

 

 サテライトベルトのある軌道上を浮遊しているマズゥールカ伯爵の揚陸城。その司令室では二人の人物が話をしていた。

 

「ところでフィアさんはどこに?姿が見えないようでしたが?」

 

「隊長の行方は知れません。もしかしたら界塚伊奈帆と合流しているのではないかと」

 

「彼ですか…なら安心なのですが」

 

 地球にて助けられたあの少年の顔を浮かべ微笑むマズゥールカ、その思いはジュリも同じようで黙って頷いていた。

 

ーー

 

「フィアは無事なのでしょうか?」

 

「残念ながら、こちらから連絡する手段は現在ありません」

 

「貴方も心配でしょう。リア…」

 

「はい…」

 

 揚陸城の来賓室では避難してきたアセイラムたちの姿があった。これからのことを真剣に話し合う中、フィアのことが気になったのだ。

 

「彼女が居てくれれば状況は改善されるのですが」

 

「フィアがですか?」

 

 クランカインの呟きにその場に居た者、全てが疑問に思う。

 

「はい、彼女は公式には秘匿されている存在です。もちろん、リア副隊長を含む親衛隊の全員が帝国の最高機密なのです」

 

 親衛隊の主な任務は姫の護衛だが彼女達には別の側面で動いていることが多かった。

 それは暗殺などの影の任務だ。皇室を護るためには誰であろうと排除する、ヴァース帝国で表だった革命が起きないのも彼女たちの暗躍があったからだ。

 

「そんな事は当然です。それによる隊長の有無による差が出るのですか?」

 

「えぇ、伯爵クラスの人物しか知り得ない彼女の存在。それが表舞台に出ざる得ない状況であることを知らせると共に宣言を出したアセイラム姫が本物のアセイラム姫殿下だと証明することが出来ます」

 

 アセイラム姫への忠誠心の高さは全ての伯爵が知り得ていることだ。そんな彼女が付き従うアセイラムこそが本物のアセイラムであることは明白だ。

 

「それなら大丈夫だな」

 

「宣言の準備をしましょう」

 

「大まかな内容は私が纏めておきます。シルエさんは怪我人なんですから大人しくしてください」

 

「…大丈夫」

 

 ネール、リア、シルエ、エデルリッゾは彼の説明を聞き終えるとすぐに行動を開始する。いつでもアセイラムの声を届けられるようにするためだ。

 

「え…ちょっと待ってください。聞いていましたか?」

 

 そんな彼女たちを慌てて止めたのはクランカインだった。

 

「今ここにはエルスート卿は居ないのですよ?せめて連絡をつけてから」

 

「大丈夫ですよ、クランカイン」

 

「姫様、それは…」

 

 このまま宣言を行うことに難色を示す彼に優しく微笑んだのはアセイラム、他の彼女たちの表情には迷いなど暗いものは欠片もなかった。

 

「フィアなら分かってくれます。なんせフィアですから」

 

 迷いのない言葉、それを聞いたクランカインはしばらく呆然とし笑う。

 

「それは失礼しました…。無用な心配だったようですね」

 

 クランカインは少々見くびっていたのかもしれない、アセイラムとフィアの絆に…。

 彼女が行動を起こせばフィアはそのために独自に動く、それに言葉など無用でありそれが当然なのだ。

 

「彼女を心から信頼しているのですね」

 

「えぇ、私にとっては掛け替えのない姉のようなものですから」

 

「そうですか…」

 

 その言葉にクランカインは静かに頷く。

 

「マズゥールカ伯爵にも伝えて準備を行います」

 

「ありがとうございます。しかし宣言は最終手段、その前にお爺さまと連絡を…謁見の間に案内してください」

 

「…はい」

 

 アセイラムの言葉、それに対し彼は覚悟を決めたように了承するのだった。

 

ーーーー

 

月面基地展望室。

 

「ねぇ、ケルラ」

 

「はい」

 

「スレインは勝てると思う?」

 

 誰も居ない展望室、つい数日前まではそれが当然だった。だが今はこの空間が無駄に広く思えてくるのだ。

 

「分かりません。隊長もアセイラム姫もここには居ません。必ず大きな行動に出るでしょうね」

 

「この戦い…いえ、戦争を止めるために…。結局、私とお姉様では見ているものが違ったと言う訳ね」

 

 座っていた車椅子に深くもたれるレムリナはただボーッと天井を見つめる。

 

「ヴァースも地球も関係なく、人間を助けたかった姉様とその姉様の背中を必至に追い掛けてた私…。元々のスタートラインが違った」

 

「レムリナ姫は姫で彼を救おうとしました。寄り添うことで支えになろうとしたじゃありませんか」

 

「私は彼に必要とされる事で…生きて良いって思いたかっただけよ」

 

 彼に対しての感情は決して否定しない、だが始まりはとても浅ましいものだった。誰にも必要とされない私を必要としてくれた。そんな甘いぬるま湯に浸かっていたかっただけなのだ。

 

「でも貴方はそれを経て己の命すら彼に捧げようとしています」

 

 ケルラは自身の思うことを全て語る、それが彼女の心の支えになればと思うからこそ。

 

「彼が望むなら、私は持てるものを捧げます。それで少しでも心が晴れるのなら」

 

「姫様…」

 

ーーーー

 

「スレイン…」

 

「なんでしょうか?」

 

 月面基地司令室に訪れたマリーンはスレインの所に歩み寄ると声をかける。

 

「次の出撃は私の好きなようにやらせて貰う」

 

「…どう言う事です?」

 

「アイツが出てくるまでレギルスを温存したいんだ」

 

 アイツ、彼女の指す人物は容易に想像できた。

 

「フィアさんが?」

 

「あぁ…」

 

「しかし敵として出てくるとは…」

 

「アイツは来る、必ず来る。フィアはそう言う女だ」

 

 マリーンなりの確信、それを垣間見たスレインはため息をつきながら頷く。

 

「分かりました」

 

「感謝するよ…」

 

 曲がりなりにもザーツバルム卿の意志を継いだ彼をマリーンは敵視はしていない。

 だが彼の忠実な部下ではない、彼女は彼女なりにザーツバルム卿への忠誠を果たすだろう、それを止めることなどスレインには出来ないことだった。

 

「フィアさん…」

 

 月面基地に彼女の姿はもうない、思い出されるのは彼女の悲しげな瞳。

 自身が行ってきた姫様に対しての不忠に近い行いに対して彼女はそんな瞳を向けてきた。

 怒りでもなく、憐れみでもなく、悲嘆でもない…ただ悲しく光る瞳が彼の脳裏に浮かび上がる。

 

「スレイン様…」

 

 彼の心の中の葛藤を察したハークライトは心配そうに見つめることしか出来なかったのだった。

 

ーーーー

 

「各部隊に告ぐ、作戦はUTC1500に開始する。戦闘配置にて待機せよ」

 

 月面基地の防宙域のギリギリに集結していた地球軍はさらなる増援と合流し攻撃の時を待っていた。

 

「……」

 

 告げられる戦闘待機命令、ライエはデューカリオンの防衛任務にため既にグラニに乗り込んでおいた。

 彼女は唯一の形見である携帯の待ち受けに設定された写真を見ると目を瞑り顔を上げるのだった。

 

ーー

 

 デューカリオンの廊下、そこを歩く鞠戸を呼び止めたのは親友の耶賀頼だった。

 

「鞠戸大尉、出撃ですか?」

 

「ん、あぁ…最後に先生と一杯やりたかったが 機会がなかったな」

 

「らしくないですね」

 

「まぁ、低気圧下だ、悪酔いするとマズいしな」

 

 二人とも分かっているのだ、この状況下における戦いがどんなものかを…。

 

「そうじゃなくて…最後じゃないでしょ」

 

「あぁ、帰ったらな」

 

 だが二人の笑みは絶えない、腐れ縁だがそれなりの付き合い。それ以上の言葉は二人には必要なかった。

 

ーー

 

「これって、最終決戦って奴ですかね」

 

「さぁ、決着が着くんだったらそうじゃない?」

 

司令部が月面基地の壊滅、および制圧を目的とする事を改めて宣言し地球軍には大きな緊張感が生まれていた。

 

「戦死したら、そいつにはその時が最終決戦だな」

 

「もう」

 

「縁起でもないこと言わないでください」

 

「そうですよ、みんな生きて帰るんですから」

 

 筧の冗談に反発するニーナ、その言葉には気楽な口調とは裏腹に大きな覚悟が眠っていた。

 

ーー

 

「ん……」

 

「目を覚ましたか?」

 

「フィア…っ!」

 

 いつの間にか眠っしまった伊奈帆は目覚めの直後で頭が回っていない。しばらくした後、自分が置かれている現状を思い出し跳ね起きた。

 

「なっ!」

 

「あ…」

 

 突然、跳ね起きた伊奈帆に驚くフィア、彼女は彼の顔を覗き込むようにしていたためお互いが頭をぶつける羽目になった。

 

「いっつぅ…」

 

「ごめん、大丈夫?」

 

「なおくん、そろそろ…」

 

 ぶつけた頭を抑えてベッドに転がるフィア、それを心配そうに覗き込む伊奈帆。そんな時に部屋を訪れたのは姉であるユキだった。

 

「あ…」

 

 我が弟がフィアちゃんを押し倒している。予想外の光景に口が開くユキ、その反応に伊奈帆は状況を察して声を上げる。

 

「ユキ姉、これは…」

 

「ごゆっくりしてください!」

 

 オートのドアを手で強制的に閉めるユキ、状況を理解できないフィアは倒れた状態のまま止まり頭に疑問符を浮かべている。

 

「ちょっと待って…」

 

「ちょっと、伊奈帆」

 

 珍しく慌てて立ち上がる伊奈帆、立ち上がる際にフィアの足が引っ掛かり彼は再び彼女にダイブする羽目になるのだった。

 

(待て待て、界塚ユキ。あの冷静で鈍感ななおくんがそんな事をするはずがない、フィアちゃんがどれだけ可愛くても)

 

 部屋の前でユキは大きく深呼吸しながら考える。

 

「そうよ、何かあったのよ!姉である私が言うんだから間違いない!」

 

 そう言って再び扉を開けるユキ、そこで見た光景は…。

 

 フィアの豊満な胸に顔を埋める我が弟の姿だった。

 

「……」

 

「……」

 

 目が合う界塚姉弟…。

 

「女の子と男の子どっちがいいの?」

 

 その後、伊奈帆の声のならない声が上がったそうだ。

 

ーーーー

 

 デューカリオンカタフラクトハンガーではデューカリオン所属の機体たちが整備を終え次の戦闘に備えていた。

 

「まさか地球軍の機体にシナンジュのOSを積んでるなんて思わなかったよ」

 

「このOSの調整なんて誰も出来なかったんでありがたいです」

 

「こっちもシナンジュの整備をして貰ったんだ。お礼くらいするよ」

 

「ごめん、なおくん!邪魔するつもりはなかったの」

 

「いや、邪魔なんてしてないから…」

 

 次の作戦の開始時間はもう間もなくだ。パイロットたちがこのハンガーに集結し始めていた。

 

「機体はどうですか?」

 

「こっちも手伝って貰ったから万全だよ。しかし機体の感度を最大にしてくれって…長く持たないよ?」

 

「もし私が出るときはアイツと戦わなければならないでしょうから」

 

「なるほどね」

 

「フィアも出るの?」

 

 フェインと話していた再び2声をかけたのは韻子、その表情は不安に染まり心配げにこちらを見つめていた。

 

「あぁ、姫様が行動に出るなら私も動かなければならない。だがそれまで私は動けない、私の行動は姫様の意志だと受け止められてしまうからな」

 

「そう…」

 

「気をつけてくれ、これ以上私は人が死ぬのを見たくない」

 

 頭を撫で優しく微笑むフィアの姿に韻子は思わず顔を俯かせる。

 

「本当にフィアには敵わないなぁ…」

 

「韻子?」

 

「聞かせて今までの2年間のことやフィアがどんな道を歩んできたのか」

 

「あぁ、紅茶でも飲みながら…」

 

 お互いが握り拳を作り軽くぶつける。それだけで二人には充分だった。

 

「でも宇宙戦でこれを使う程接近するってよっぽどだぜ」

 

「そのよっぽどになりそうなんだ」

 

「マジかよ!?」

 

 スレイプニール用の宇宙装備をありったけ突っ込んだ代物、スマートな機体が随分ともっさりした印象を受ける。

 

「接近戦を意識した装備、シナンジュのOSとの相性もピッタリだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「いや、彼女が気に入っている人間と聞いてどんな人物かと思えば…。あの子を頼むよ…」

 

「はい…」

 

 フェインの言葉に対し迷いなく答える伊奈帆。その姿に彼女は満面の笑みで返すのだった。

 

ーー

 

「マスタームスイッチオン。燃料電池ヒートアップ。電圧チェック。ポンプ始動。アキュームレーター圧力チェック。」

 

 各機が主機に火を入れ機体を立ち上げていく、伊奈帆は軽やかな操作で機体の起動を行っていた。

 

「フォースフィードバックチェッキングプログラム…スタート。エジェクトンシート正常。IFF確認。戦術データリンク、アクティベート。システムオールグリーン。マスタング00…レディ」

 

 機体のカメラが煌めき重くなった機体の歩を進める。

 

「伊奈帆…」

 

「フィア、どうしたの?」

 

「一つだけ私個人から頼みたいことがある…」

 

 出撃直前、フィアに頼まれた願いを聞き取り伊奈帆は静かに頷くのだった。

 

 

 





ついに次回は最終決戦です!
全てが決着の時一体どうなるのか!?

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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