アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第七十星 笑い合うために -To each other laugh-

 

 月面基地をめぐる戦いは地球軍の勝利に終わった。しかし戦いは終わらず激化の一途を辿っていた。

 

 決死の覚悟で挑むヴァース帝国軍と数で押す地球軍が戦いを繰り広げる中、その一角で2機のカタフラクトが激戦を繰り広げていた。

 

「私は負けたがこの戦いは譲らない!勝たせてもらうぞ!」

 

「もはや正義など問わない、我々の間にはそれはもう必要ないからな!」

 

 マリーンとフィア、レギルスとシナンジュがぶつかり合う戦域は戦場の中で最も危険な地帯と化していた。

 

「このぉ!」

 

 レギルスの腹部砲が高出力ビームを撃ち放つ、当然の如く回避するフィアだが避けられたビームはアレイオン、グラニを捉え焼き尽くす。

 

「くそっ!」

 

 躱したフィアは反撃としてライフルを撃ち放つがそれも避けられる。その一撃はステイギスを貫き爆散させる。

 

 互いが互いを狙いながら味方となる機体に当てないように放ち敵機を撃墜するように位置取る。もはや人間の行う戦いの領域を超えていた。

 

「この宙域から離れろ!」

 

「あの2機の戦いに巻き込まれるぞ!」

 

「なんなんだあの2機は!?」

 

 機体の姿すら捉えきれない戦いにその宙域で戦っていた両軍は唖然とするしかなかった。

 

ーー

 

 意志に反して戦闘を再開する部下たちにスレインは歯嚙みする。

このまま自分は終わってしまって良いのか…このまま彼らの想いを無駄にしてしまっても…。

 

「あれは…」

 

 後一歩、いや半歩がとてつもなく重い。

 その時だった、オレンジ色の機体が自分に見せ付けるように戦闘を行っていたのを見たのは。

 

「そうだなハークライト このまま終わる訳にはいかない…僕にはやることがまだ」

 

 不敵な笑みを浮かべたスレインは実に生き生きとしていた。

 月面基地の隔壁を破壊しその爆煙からタルシスが姿を現す。

 

「迎えに来た、スレイン・トロイヤード」

 

「決着を着けるぞ界塚伊奈帆!」

 

 いくつもの因縁に結びつけられた2人の戦いが始まった。 

 

ーーーー

 

「くっ…」

 

 今だに戦い続けるハークライトたちを見ていたバルークルスは悩んでいた。家紋を棄てる覚悟で援軍として向かうか、それともこのまま投降するか…。

 援軍に駆け付ければ間違いなく命を落してしまうだろう。

 

「いや、愚問であったか…」

 

 だがその悩みも考えてみれば簡単なことだった。騎士として1人の男としてこれを見捨ててしまえば一生の恥だ。どうせ1度の人生、悔いのないようにしてしまおう。

 

「オリンポスの砂嵐には抗うなかれ…私も心に従おう」

 

 笑みを浮かべたバルークルスは即座に機体を反転させ戦場に駆けつけるのだった。

 

ーー

 

 デューカリオンの周辺宙域、アレイオンを撃破したハークライトは機体を更に加速させ前進する。

 無数のビットを操るハーシェルは一対多数には打ってつけの機体だった。だが活躍もそれまで、ユキはグラニのアンカーをビットの一つに取り付けると追随するように進行し本体を狙い撃つ。

 

「くっ…」

 

 ハークライトもすかさず反撃するがランダムによって動き回り捉えることが出来なかった。

 

「すご…」

 

「戦術データリンクになおくんの戦闘データが保存されてるわ。各自参照して!」

 

 参照したところで出来るはずがないのだが韻子を含むデューカリオンメンバーならやりかねなかった。

 

「っ!」

 

 その瞬間、細いワイヤーの様な物がユキの機体の背中にあるユニットを綺麗に切断する。

 

「ユキさん!?」

 

「ヴァース軌道騎士37家紋、バルークルス。押して参る!」

 

「バルークルス伯爵」

 

 オクタンティスのカメラが激しく光り、手にしていたボビンが唸りを上げる。駆けつけてくれたバルークルスに感謝しつつハークライトは機体をデューカリオンに向けるのだった。

 

「8時の方向、仰角-25来ます!」

 

「迎撃を!」

 

「任せろ!」

 

 間近に迫る敵機に冷や汗をかくマグバレッジだったが駆けつけた鞠戸がそれを見逃さなかった。

 

「うおぉぉぉ!」

 

 デューカリオンの影から現れた鞠戸は無反動砲を撃ち放ちながらハーシェルに突っ込んでいく。

 

「くっ…」

 

 一発が機体に直撃し残りの弾はビットを楯にして防ぐ、すかさず反撃するが避けられ接近を許してしまう。

 

「これは…」

 

 流石に近づかれすぎている。生命の危機を感じたハークライトだったがコックピット内に響き渡る警告音に目を見開くのだった。

 

「なんだ?」

 

 鞠戸もその異変には気付いていたこちらに高速で接近する光の球、その集団がこちらに向かって飛んできていた。

 

「なに!?うわぁぁぁぁ!」

 

 光の球は鞠戸の乗るアレイオンの両腕を破壊していく。そして目に映ったのはスリット状の目をした白い機体。

 

「貴様らぁぁ!」

 

「止めろぉ!」

 

 左手から出されたサーベルで鞠戸が両断される直前、横から駆けつけたシナンジュがレギルスを蹴り飛ばし、シールドでハーシェルを吹き飛ばした。

 

「もらった!」

 

「くうぅ!」

 

 ハーシェルに意識を向けた刹那、ライフルから放たれたビームがシナンジュの左の肩アーマーを吹き飛ばす。

 だがフィアもただではやられない、ビームアックスでレギルスのライフルを両断する。

 

「クソッ!」

 

 ただちにライフルを手放そうとするマリーンだがそれは許されない。シナンジュの蹴りがコックピットのある頭部に直撃、その衝撃で意識を持って行かれそうになる。

 頭を中でぶつけるもののビットの連動性を高めるため着ていたパイロットスーツに助けられ難を逃れる。

 

「はぁ!」

 

 続いてのタックルでレギルスはデブリに身をぶつける。それと同時にライフルが爆発した。

 

《警告-右マニピュレーターに重大な損傷》

 

「うるさい!」

 

 マリーンは警告表示を切りデブリとの衝突で起きた煙を見据える。そこから現れたのはシナンジュのビームサーベル、狙いは左肩。

 対処のために右の掌からビームサーベルを出現させるが彼女の思惑通りには行かずサーベルは出現しなかった。

 

「っ!」

 

 受け止められず左手を切り離されるレギルス、このままではビームビットの制御が出来なくなってしまう。

 

「餞別だぁ!」

 

 ありったけ放たれたビットはシナンジュのシールドと右足を破壊する。

 

「くはっ!」

 

 被弾の衝撃でフィアは思いっきり計器に頭をぶつけ、血を流す。

 

「ザーツバルム卿、見てください!貴方の夢は私が必ず!」

 

 彼女の全てであったザーツバルム卿はもういない、唯一の手向けであった夢を自身が叶えることも不可能。今までなんのために生きて来たのかマリーンは分からなくなっていた。

 彼女の中では、せめてザーツバルムに恥じない行いとして始めた戦いの意味さえ曖昧になりつつあったのだ。

 

「終わりにしよう、マリーン!」

 

 マリーンを見ていると昔の自分を思い出す。力を求めただ前進することしか出来ない悲しい存在。

 彼女の中には忠誠を誓うべき主ももういないのだから。

 

「親友として私からの手向けだ!」

 

 力ずくでも諭さして貰う、親友としてそれが私に出来る唯一の行いだ。

 

「うわぁぁ!」

 

「マリーン!」

 

 ライフルを棄て顔面を殴りつけるシナンジュ、対するレギルスも残った右手で腹を思いっきりなぐりつけていた。

 お互いがコックピットを狙った一撃は見事に命中するのだった。

 

ーーーー

 

「残弾数3」

 

 フィアとマリーンの戦いに蹴りがつこうと言う時、伊奈帆とスレインの戦いも佳境に入っていた。

 

「これ以上、戦っても得られる物はなにもない」

 

「あぁ、だが失う物もない」

 

 互いが得物を出し激しい接近戦に移行する。

 

「自暴自棄は愚かな選択だ」

 

「分かってないな、これは最も求めた選択だ!」

 

 スレインの高らかな声と共にタルシスの刃が断たれるが反撃にあい伊奈帆も大きな楯を失うことになった。

 互いが互いを削り合い2機は流れるようにして地球に近づいていた。

 

「あれは…」

 

 その様子をアセイラムはマズゥールカの揚陸城から見守るのだった。

 

ーー

 

 バルークルスのオクタンティス相手にライエはグラニの機動性を充分に活かしながら立ち回っていたが性能の差とバルークルスの腕にジワジワと追い詰められていた。

 

「ライエ!」

 

「三方十字砲火、MRSIオートショット!」

 

「くっ!」

 

 3機から放たれた弾丸は全ての回避コースを埋め尽くし避けようがない。

 これまでか…バルークルスはそんなあきらめが頭を過ぎった時、彼を庇うようにハーシェルが突っ込んできたのだった。

 

「ハークライト卿」

 

ーー

 

「ずっと…目障りだったんだ!その色が!」

 

 ハークライトが被弾した時、タルシスとスレイプニールの拳がお互いの機体を破壊したのだった。

 

ーー

 

「大丈夫か!?」

 

「えぇ、片腕を1本失っただけです」

 

「ハークライト様」

 

「戦況は?」

 

「私を含めステイギスマスターが3機、スレイブは4機ほどです。後は地球連合軍に墜とされました」

 

 マリーンとの通信が取れない、恐らくフィアとの戦いでやられてしまったのだろう。ハークライトは静かに彼女に祈りを捧げる。

 

「こちらもバレットはほぼ撃ち尽くした。バルークルス伯爵」

 

「オクタンティスの右腕が効かぬ。どうやら先程の攻撃でやられたらしい」

 

 戦況は最悪、部隊とも呼べない戦力しか持たないハークライトたちだったがその表情は穏やかなものだった。

 

「中々やるものだな地球の連中も」

 

「スレイン様の生まれ故郷ですから…」

 

「オリンポスの砂嵐には抗うなかれ…風を読み間違えたらしい」

 

 バルークルスは清々しい笑みを浮かべ機体を再び戦場へと反転させる。

 

「もう一戦、行くか!」

 

「お供します」

 

「9時の方向、仰角20。敵機編隊が接近」

 

「全砲門狙え。カタフラクト隊、全機一斉射撃」

 

 漆黒の宇宙に灯された無数の光はバルークルスたちを狙い飛翔していく。その後の彼らの命運は分かっていない。

 

ーー

 

 激しい戦いを終え、近づきすぎた地球の引力に引かれる機体たち。スレインはあきらめの表情を浮かべ笑っていると伊奈帆はタルシスとスレイプニールをひっつける。

 

「ドラッグシュートの代わりだ。機体を安定させる」

 

「一緒に死ぬつもりか?機体が燃え尽きるぞ」

 

「カタフラクトのフレームは高密度だ。アブレータとして十分に働く」

 

 相変わらず冷静な口調の伊奈帆にスレインは苛立ちを憶えるがこればかりは運任せと言ったところだろう。

 

「まさか…不可能だ…」

 

「さあ どうかな」

 

 吐き捨てるようなスレインのセリフを伊奈帆は少々、面白げに返すのだった。

 

ーー

 

「また生き残ってしまったか…」

 

 彼方に見える光を目にしたマリーンは静かに呟く。レギルスは機能を停止しぶつかったデブリと共に宇宙を放浪する。

 

「マリーン…」

 

 破損したレギルスのコックピットを覗き込んだのは宇宙服を着たフィアだった。

 

「フィア、お前が羨ましいよ。従えるべき主も、進むべき道もわかってる。私はもう何が何だか分からないんだ…」

 

「私はお前が恐かったんだよマリーン。ザーツバルム卿を失ったお前と話すのが恐かったんだ。私も一歩間違えればそうなっていたから」

 

 フィアにとってマリーンは過去と未来の自分のように見えていた。だからこそ恐かった、親友としてかける言葉もかけずに…。

 

「まったく…そう言うのは不器用だな」

 

「あぁ…。でも私はお前と昔のようにありたいと今も願っている」

 

 フィアの心からの言葉、それを聞いた彼女は静かに微笑む。ザーツバルム卿の事は恐らく一生忘れられない、だが決心した。それを糧として前に進もうと、目の前に居る“親友“と肩を並べられるように。

 

「あぁ、それはいいな」

 

 時間はたくさん必要かもしれないがしっかりと進んでいくことを決めたマリーンの瞼に満面の笑みを浮かべるザーツバルムの姿があった。

 

「やってみよう。お前と…」

 

 もう一度、笑い合うために…。

 

 

―月面基地を主戦場とした戦いは終わりを告げ、戦闘中に地球へ降下した界塚伊奈帆少尉も無事発見。アセイラム女王と地球連合軍の和平条約が締結された。―

 

 その後、マリーンはクウェル家を棄て新たなザーツバルム家の当主として伯爵の地位を得て家紋の復興に力を注いでいるらしい。

 

ーーーーーーーーーー

 

 そして時は流れ、1年後。

 

 3年前の隕石爆撃から復興しつつある新芦原市のマンションの一室では眼帯をつけた伊奈帆が朝食を作っていた。

 

「おはよう。なおくん」

 

「おはようユキ姉。だし巻き卵とスクランブルエッグはどっちが良かったかな?」

 

「んん、だし巻き卵かなぁ」

 

「良かったね。今日はだし巻き卵だ」

 

 いつも通りの風景、だし巻き卵を作り終えた伊奈帆は卵をテーブルに“3人分“置いて朝食の準備をする。

 

「昨日の3時に行われたアセイラム女王のアルドノア1号炉起動式典で…」

 

 テレビから流れるニュースを流し見る伊奈帆は箸を用意してある人物を待っていた。

 

「ただいま。参ったよ、まさかあんな事になるなんて…。仮眠は取ったから別に良いんだが」

 

 透き通るような綺麗な声を持つ少女は着ていた軍服の上着を脱ぐと待機していた伊奈帆に渡す。ネクタイを緩めワイシャツのボタンを一つ外して席に着く。

 

「おかえり、お疲れさま」

 

「おはようございます。姫様の式典関係で大変でしたから」

 

「じゃあ、ご飯を食べようか…」

 

 ユキと挨拶を交わし上着をハンガーに掛け終えた伊奈帆が席に着いたのを確認すると全員が手を合わせる。

 

「「「いただきます」」」

 

「そう言えば…」

 

「どうした、伊奈帆?」

 

 箸を進め食事を楽しんでいた時、伊奈帆は思い出したように言葉を発した。

 

「おかえり、フィア」

 

「あぁ、ただいま。伊奈帆」

 

―to be continued―

 

 




予想外の人気につき続編制作決定!

終戦後、フィアがどう言った経緯で地球に行くことになったのか?アルドノア1号炉を巡る戦いを舞台に繰り広げられる第2.5章

そして戦後から数年後、フィアと伊奈帆の関係模様を主にしつつ燻る動乱の火を消すために奔走する者達の物語を舞台にした第3章

この2つを書く予定であります。完全オリジナル自己解釈マシマシでお送りいたします!

次回は1話丸々使ってあとがきを書きます。
この作品を書き始めるまでの話しやアルドノアとの出会い話、これまでのオリキャラの誕生秘話など。ブルーレイの特典的な事をしていきます。
基本、作者がグダグダと書いているだけです。

その際、キャラの事などで質問などあればその時に返答いたしますので質問があれば受け付けます。

質問コーナーは活動報告の方で受付させていただきます。

そして最高評価をくださいました。捌咫鳥(八咫烏)様と麩菓子様、本当にありがとうございました。

では最後に《アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり》の本編は一区切りいたしました。

これも皆様の暖かいご声援があればこそです。本当にありがとうございました。

では次回はあらすじでお会いいたしましょう!

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