アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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AfterWar 2.5章 主失騎士編
第七十一星 散華の騎士 -Fall knight-


 

 

 終戦から1ヶ月、ヴァース帝国本星にてフィアは謁見の間を通してほぼ全ての伯爵たちと本星の政治を行っている文官が席を並べている空間の真ん中に立っていた。

 

「今回のスレイン・トロイヤードの暴走を止めるどころか助長していたのは本当かねエルスート卿」

 

 ここで問われているのはスレインの唱えた地球圏国家に対する責任問題だった。アセイラムに対してのみ隠密に開催されたこの会は異様な雰囲気に包まれていた。

 

「いえ、あくまで私は中立な立場として月面基地にいました。それに私は何度も彼を咎め話しを行いました」

 

「中立な立場か…。地球圏国家の建設宣言が行われた時点で止めるべきだったのではないかな?ヴァース帝国を二分する一大事ではないか」

 

「厳重注意は行いました」

 

 フィアの答えにヤレヤレと言った表情で笑う文官たち、それをクランカイン、マズゥールカは心配そうに見つめていた。

 

「帝国に尽くす騎士ならば、その時点で強制的な措置を…」

 

「それはあなた方にも行えた筈!最後の最後まで本星でモグラのように隠れていたあなた方には言われたくない!」

 

「エルスート卿、言い過ぎですよ!」

 

 事実を突きつけられ苦い表情を見せる文官たち、それと同時に声を上げたのはクレラシル伯爵だった。

 彼女はスレッドとアセイラムの放送を聞いていたあの赤髪の伯爵だ。

 

 アセイラム派の彼女はフィアの事を個人的に尊敬していた。だからこそ今回はフィア擁護派である。だからこそ発言で不利になって欲しくないのだ。

 

「今回戦争の舞台となったのは地球ですがヴァース帝国に尽くした多くの方々の命もあの地で失われた。月面基地の兵たちは最後までスレインに尽くした。それは掲げる理想に共感したからです」

 

 フィアが立たされた場所は本来、反逆者を公開処刑するための公開裁判所のようなものだ。この放送にはヴァース帝国の一般兵も視聴が可能である。

 

「私は姫様が望まれる世界に一番近い道を模索していました。少なからず彼は姫様の理想とする世界を創ろうとしていた。私はその行く末がどうなるか見届けようとしただけです」

 

 フィアの演説に感心し共感を得る兵たちは彼女の姿をしっかりと見届けていた。

 

「なるほど、噂通りの忠誠心ですな。エルスート卿」

 

 彼女の高すぎる忠誠心と迫力で根性なしの文官たちは黙ってしまう。このままお開きとなろうと言う雰囲気の中、1人の伯爵が声を上げた。

 

「カーティアス伯爵」

 

 マリルシャンを思い出させるいやらしい笑みを浮かべた伯爵はフィアを見下すように高らかと声を出した。

 

「全ての事の発端はなんだと思いますか?この惑星間戦争がなければスレイン・トロイヤードの台頭もなかったはずなのです」

 

「それとこれとは何も関係ないでしょう!」

 

「それがあるんですよクルーテオ伯爵」

 

 反論するクランカインをカーティアスはあざ笑い話しを続ける。

 

「もし貴方の報告通り先代ザーツバルム卿が姫殿下の暗殺をそそのかしあんな事態を引き起こしたと言う事など些末な問題です」

 

「何をおっしゃりたいのでしょうか?」

 

 嫌悪感を隠そうとしないフィアに対しカーティアスは眉をひくつかせるが彼は言葉を止めない。

 

「貴方はアセイラム女王を護るべき立場でありながらそれを果たせなかった!騎士失格です!」

 

「言い過ぎです!カーティアス伯爵、姫様はこうして無事であり王位も継いでいる!」

 

「影武者であろうとあの出来事が起きたせいで戦争が始まり劣等民族である地球種がヴァース帝国の誇り高き37家門が操られたのですよ。許されざる事態だ」

 

 カーティアス伯爵の言葉に他の伯爵たちはざわめき死に体の文官たちは息を吹き返す。

 

 元々、本星の文官たちはフィアのことを良く思っていなかった。下級階層出身の彼女がアセイラムの側近など許せなかったのだ。

 だがそれだけではない、彼女がただの兵であれば彼らもなにも言わなかっただろう。だが彼女は完璧であった、他の干渉をはね除け自らの意志で自身の使命をまっとうしていた。

 その為文官たちはフィア・エルスートという危険分子を素早く排除したがっていた。

 

「確かに騎士でありながら姫様をお護り通せなかったのは致命的だな」

 

「待ってください。地球軍に軟禁されていた姫様を護っていたのは他でもないエルスート卿でしょう」

 

「そうです、彼女は自らの使命をまっとうしています!」

 

 騒ぎ始める文官たちに対し反論を上げたのはマズゥールカ伯爵、彼の言葉にフィアの擁護派が賛同の声を上げる。

 

「バルト伯爵が生きていれば…」

 

「それは言わない約束でしょう」

 

「分かっているが」

 

 フィアの擁護派の者達が苦い顔をして言い放った言葉に対しクレラシルは睨みつけ黙らせる。

 惑星間戦争にて戦死したバルト伯爵はアセイラム派閥のトップに立ちその権力も絶大だった。彼を失ったアセイラム派閥ことフィアの擁護派は立場的にも劣勢に立たされていたのだ。

 

「その後がどうであれ姫様を護れなかった。あの車に姫様が乗られていたらその身が危険に曝された可能性はあったのでしょう?エルスート卿」

 

「はい…それは事実です。確かにあの事件は私の未熟故に起きた惨事、それは否定しません」

 

 唇を噛み締め握りしめた拳からは血が滲み出る。彼女にとってあの出来事は自分自身でも許せない出来事であった。

 

「フィアさん…」

 

 その様子を見ていたクランカインは心が締め付けられるような悔しさを感じる。

 

「そうでしょう、貴方は騎士でありながら姫様を護れずにあまつさえ大戦の英雄のように一部の人々から崇められている」

 

 カーティアスの一番気に入らなかったのはここだ。下層階級の癖に伯爵に匹敵する権力を持ち力を示し人々から崇められる。由緒正しき自分を差し置いてだ。

 

「今の貴方はただの汚点でしかない!厳正なる処分は追って伝えましょう!」

 

 もはやカーティアスの手中となった議会ではフィアの擁護派はなにも言い返せず。その場は終了となるのだった。

 

ーー

 

 サテライトベルトにてアセイラム女王の仮の居城として機能しているスレインの元揚陸城。

 

「エルスート卿」

 

「クルーテオ伯爵」

 

 現在、この揚陸城の城主であるクランカインはフィアと共に謁見の間を使用し議会に出ていた。

 謁見の間を閉じるとクランカインは心配そうに彼女を見る。

 

「すいません、私たちが至らないばかりに」

 

「姫様を護れなかったのは事実、私も何も言えません」

 

「エルスート卿」

 

「恐らく私は騎士を解任されるでしょう。姫様がどのような顔をされるか」

 

「エルスート卿を失えばヴァースは終わりです。もしその様なことがあっても我々が姫様の側に居られるように尽力します」

 

「重ね重ね、本当にありがたい。しかし、覚悟は決めなければならない…」

 

 必死に言葉を重ねるクランカインに対し頭を下げるフィア。彼女はアセイラムが悲しむのを予見した表情はとても悲しそうだった。

 

ーーーー

 

「何とか上手くいきましたな」

 

 カーティアス伯爵の揚陸城、ヴァース本星の軌道上にに浮かぶその城の中では珍しいワインを開け上機嫌な彼の姿があった。

 

「これで地球の奴らに良い返事が送れる」

 

 話しの相手は数人の文官。

 

「月面基地の所有権を分割する条件がエルスート卿の身柄を地球に引き渡すというものとは」

 

「彼女の存在を奴らは恐れている。5年という期間の中で彼女の弱点を作る魂胆なのだろう」

 

「なるほど」

 

 もしもの時、第三次惑星間戦争の時にフィアが再び暴れることを恐れているのだろう。

 

「彼女の処分についての工作は頼みますよ」

 

「分かっている」

 

ーーーー

 

 地球連合本部の一室。

 

「ヴァース帝国の交渉班と連絡が取れました」

 

「彼女の身柄を引き渡すと?」

 

「本人の同意は得ていないようですが」

 

「ふむ」

 

 交渉班からの報告を受け満足そうに頷いたのはハッキネン中将だった。

 

「彼女は客将として丁重に扱え。彼女の動向に関する監視は界塚伊奈帆少尉を指名する。彼は大戦中に彼女と知り合っている、極力彼女に警戒心を募らせないようにしたまえ」

 

「分かりました」

 

 敬礼をしながら退出する部下を見やりハッキネンは眼鏡を拭きながらため息をつく。

 

「なんとかして彼女を我々の元へ引き込めないものか…」

 

 ヴァース帝国の重要戦力でありアセイラム姫との関係も深く戦いの功績により象徴になろうとしている彼女を手に入れる。

 ハッキネンはほとんど夢物語とも言える理想を呟くのだった。

 

ーーーー

 

「そんな、なぜフィアが責任をとらなければならないのですか!」

 

 クランカインの物となった揚陸城の皇族室ではアセイラムが珍しく大声を上げていた。

 

「誰かが責任をとらなければなりません。この悲劇を起こした事に対しての…」

 

「それでなぜ貴方が!」

 

 フィアの肩を揺らし瞳に涙を浮かべるアセイラムを彼女は直視できなかった。

 

「答えてください、フィア!」

 

「隊長、我々も納得いきません。隊長は誰よりも姫様と帝国を護ろうと尽力したではないですか!」

 

「フィア、私も納得できません。よりにもよって貴方が」

 

 アセイラムに引き続き声を上げるリア達親衛隊とエデルリッゾ、フィア・エルスートと言う人物をそばで見てきたからこその怒りだった。

 下される処分は最悪、処刑。そんな可能性も決してないわけではない。ヴァース帝国の政治班である文官が根こそぎ敵に回っているのだ、彼女がどんな目に会うか…。

 なんとしてもフィアを助ける、それを心に決め叫んでいた者達は彼女の顔を改めて見ると沈黙する。

 

「エルスート卿…」

 

 それは同席していたクランカインも同様だった。

 

「姫様…」

 

 彼女が、フィア・エルスートが瞳に涙を浮かべていたからだ。

 

「私は姫様を護れなかったのです。あの時、体調を崩さねば私は姫様を護れなかった。ずっと目を逸らしてきました、しかしその事実は変わらないのです」

 

 彼女の表情には悔しさが溢れていた。自身の不甲斐なさ、力の無さに対する怒りと後悔が彼女の中で渦巻いていたのだ。

 

「フィア…」

 

「このままでは戦争勃発の責任を姫様が負ってしまう。私が身代わりになれるのなら…」

 

「そんな責任、いくらでも取ります!それが上に立つ者の責務でしょう!」

 

「貴方は綺麗なままで居なければならないのです!」

 

 それでも引かないアセイラムに対しフィアはついに声を荒げた。

 

「汚れのない美しい姿のまま、貴方はヴァース帝国の希望として居てください。かつて、全てを諦めかけていた私を救ってくれたように」

 

「っ!……フィア!」

 

 諭すように放たれた言葉にアセイラムは顔をゆがめフィアに抱きついた。

 

「ありがとうございます。私の唯一にして最高の騎士」

 

「その言葉だけで私はこれまでの出来事が誇りあるものになります…」

 

 胸で泣きじゃくるアセイラムを見つめフィアは静かに、優しく抱きしめ返すのだった。

 

 

 





フィアの戦績

当時、撃破不可能とされたヴァース帝国のカタクラフトを界塚伊奈帆と共に約4機撃墜。

地球軍の宇宙要塞を実質1人で制圧。

機能不全のシナンジュでハーシェルを撃破。

レギルスの撃破。

トライデント基地防衛戦では一瞬で前衛部隊を殲滅、当時の地球軍最高戦力であったデューカリオンを中破まで追い込む。

なにこの化け物恐すぎる。

ついにやってきました第2.5章、全てはここから始まった。
フィアの旅立ちとアセイラムの成長の物語ついに開幕。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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