アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
「全く…地球ってのは本当に遠いよな」
「ネール、無駄口を叩くな」
「へいへい」
地球、火星航行ルート。アルドノアドライブ運送のための護衛に選ばれたのはアセイラム親衛隊のネールとジュリ、この二人が護衛を開始してから一ヶ月が過ぎようとしていた。
「後半分ってのも疲れる。着いたらすぐにとんぼ返りだもんな」
「仕方ないだろ、私達の任務はアルドノアドライブの護衛、終われば本国に帰還するだけだ」
輸送艦の管制室で話す二人は無駄口を叩きつつも常に警戒を怠らない。残念なことにこの任務は身内にも刺される可能性が高いため気を抜けないのだ。
「戦時中の方がよっぽど楽だったな」
「ネール…」
精神的な面で考えれば敵味方がハッキリしている戦時中の方が楽、その言葉にジュリも大きな言葉は出せなかった。
ーーーー
その頃、地球。フィアたちがノヴォスタリスクに来てから2ヵ月が過ぎていた。
後続の韻子たちも合流した彼女たちは本部の地上施設に割り当てられた部屋で会議をしていた。
「それでどうするんだ、少佐殿?」
「フィアで結構ですよ。鞠戸大尉」
「分かってるよ」
旧デューカリオンメンバーの中で一番階級が高いのは左官であるフィアだ。つまり指揮はフィアが執ることになるがそれに関しては全員、異論はない。彼女の能力は皆が一番知っているからだ。
「アルドノアドライブはシベリア鉄道を経由して運搬した後に飛行機で日本に飛びます」
「本部から日本に飛んじゃ駄目なの?」
フィアの説明に対し韻子は疑問の声を漏らす。わざわざ陸で行くというのは非効率だからだ。
「軍内部では海と空のルートが公開されている。そこであえて陸のルートで運送して後は補給無しで日本まで一気に飛ぶ作戦だ」
「海を越えるなら船か飛行機、そこであえて陸を使うことで攪乱する訳ね」
「そうです」
壁に設置されたモニターに映し出された地図を見ながら説明を聞いていたユキは納得の声を上げる。
「流石はなおくんとフィアちゃんのプランニング。慎重ね」
「細かい事はまた話しましょう」
「よっしゃ、飯だ飯。伊奈帆、行こうぜ」
「うん」
一通りの話を終え会議を閉めたフィアの言葉にカームが背伸びをしながら席を立つ。
「どこか食べに行く?」
「一応、ダイエット中なんだけどなぁ」
ライエの提案に悩む韻子、軍務から離れがちの彼女はそろそろ体系にも注意しなければならない。体を動かす事が少なくなったから仕方がないだろう。
「それだったら良い居酒屋があったぞ」
「良いですね。フィアも行こうよ」
そんな二人の会話に入ってきたのは鞠戸だった。
地球連合本部から少し行くと割と大きな街がある、地球連合本部の隣接地と言う事で様々な国の店が軒を連ねているのだ。
「私は機材をしまってから行く」
「分かった、駐車場でね」
「あぁ…」
鞠戸の言葉に全員が賛同すると地下の駐車場へと向かっていく。それを見送ったフィアはパソコン等の機材を持って執務室に向かう。
ーーーー
派遣してきたフィアたちにあてられた部屋はザーツバルム卿が襲撃してきた2年前の後に建て直された施設で中々、新しい。
ビルの四階。派遣組、全7人が作業するためには充分すぎる広さの部屋の奥にガラスの壁で出来た上官専用の執務室がある。そのガラスには地球連合のマークがマーキングされている立派なものだ。
「よいしょっと…」
機材片手に部屋の扉を開けたフィアは自分にあてられた部屋に誰かがいるのを見つけた。
近くの机に機材を置くと腰辺りを触るが目当てのものがない。執務室の衣類掛けにホルスターごと掛けてあるのだ。
(仕方ないか…)
戦闘モードに移行した彼女はわざと音を立てて近づく。
「おい…」
「少し待ちなさい…」
背後からの彼女の言葉に侵入者は慌てることなくフィアの設置型パソコンを操作している。綺麗な金髪を持った大人の女性、彼女はパソコンを操作しながら話す。
「フィア・エルスートね」
「そうだ、お前が最もハッキングしてはいけなかった人物だ」
左足を僅かに引きいつでも戦える体勢をとる。
「月では仲間が世話になったわ」
「軍の人間か、ならその馬鹿げた真似をすぐに止めろ。さもないと軍法会議に引きずっていくぞ」
「ルートは空?海?」
「そのどちらかだな」
「そう、貴方は噓が下手ね」
女性がそう答えた直後、フィアにパソコンのキーボードが高速で飛来した。
「くっ!」
左手でキーボードを弾いた瞬間、全身を使ったタックルをかまされガラスの壁を突き破って倒される。間髪入れずに肘が顔面に放たれるが左手で受け止め両足を跳ね上げさせ侵入者のマウントを解かせる。
「馬鹿げた脚力ね」
「よく言われる!」
右ストレート、左フック、鋭いキレのパンチがフィアを襲うが紙一重の所で避ける。
(今だ!)
鋭い右ストレートを避け、そのまま相手の懐に入る。相手のジャブも躱した絶好の攻撃タイミングの筈だった。
「んぐぅ!」
「鈍ってるんじゃないの?」
ジャブは囮、首を避けた両腕に掴まれ膝がフィアの腹にめり込む。
苦しむ彼女に更に追撃を加えようとする侵入者だったが彼女も黙っていない、カウンターで左顎に一発お見舞いする。
「よくも…」
脳を揺らされ平衡感覚に支障が出た侵入者は数歩退き構える。
「ただの兵ではないな、ここまで苦戦したのはマリーン以来だ」
少しだけ楽しそうに歩を進めるフィアだったがその足を侵入者の行動によって止められる。相手が銃を向けてきたからだ。
「最後まで殴り合うつもりだった?」
「……」
額に向けられる銃口、フィアはそれを見て心の中で舌打ちするのだった。
ーー
「フィア、遅いね」
「なにかあったのかしら」
地下の駐車場で車を用意して待っていた韻子たちは待っても来ない彼女を気にしていた。
「見てくるね」
「あ、私も行くわ」
フィアの迎えのために伊奈帆とユキが執務室へと向かう。それがフィアが銃口を向けられる少し前の話だった。
ーー
部屋の前に辿り着いた二人は中から激しい音を聞き、携帯していた拳銃を取り出す。
「行くわよ、なおくん」
「うん…」
ユキはドアを蹴破り拳銃を構えて突入する。その後ろから伊奈帆も続く。そして二人が見た光景は衝撃的なものだった。
ダァン!
耳を割くような銃声、宙に舞い倒れるフィア。
「っ!」
「なおくん!」
それを見た伊奈帆の行動は迅速だった。目の前にあった机を飛び越え侵入者らしき女性に発砲する。
「く…」
フルオートで撃ち放たれる銃弾に対し机を倒し盾代わりにする侵入者。
「まったくもう!なおくん、落ち着いて!」
「でも」
ユキの言葉に伊奈帆の注意が後ろに向いた瞬間、手榴弾がすぐ側に投げ込められた。
「あ…」
「なおくん!」
「伊奈帆!」
手榴弾が爆発する直前、伊奈帆を庇ったのは撃たれたはずのフィアの姿だった。
「フィア?」
「やばい!」
爆風から逃れるために部屋から飛び出すユキ、侵入者も爆風に乗ってどこかに去ってしまった。
「無事か?」
「フィア、よかった」
「お、おう…」
机を盾にして爆風を逃れた二人、フィアの無事を確認した伊奈帆は思わず彼女を抱きしめる。
「生きてて良かった…」
「あ、あぁ…」
抱きしめられなぜか顔が熱くなってくるフィアは思わず固まってしまう。
「手榴弾の爆風並みにお熱いわね」
「ユキさん」
「あんな至近距離でよく避けられたわね」
「避けてませんよ」
フィアはそう言うと手を口に添え中から何かを吐き出す。
「これは…」
「伊奈帆、近いから…」
抱きついて為、顔がやけに近い伊奈帆を押し退ける。彼女の掌にあったのは金色に光る銃弾。
「まさか、奥歯で銃弾を止めたの…」
「とっさの行動でしたが何とかなりました」
「はぁ…」
少しだけ濡れている弾丸を眺めながらユキは感嘆の声を出す事しか出来なかった。
どうも砂岩でございます。
久々の戦闘回、今回は軽く戦って貰いましたが今回の侵入者はフィアの因縁の相手となるのか?
では最後まで読んで頂きありがとうございました!