アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
迫るジープに対して弾幕を張るが効果が見られない。おそらくガラスにも防弾ガラスが張られているのだろう。ニーナはすばやいてぎわでエンジン出力を上げて離陸を試みる。
「ライエ、ハッチは閉まらないのか!」
「修理する。待って!」
コンソールのガワをナイフで無理矢理開けたライエは作業用のゴム手袋をつけて火花を散らしているコード類に手を突っ込む。
「フィア、前だ!」
「っ!」
その間にもジープの一台が大型ハッチに乗り上げフィア目掛けて突っ込んでくる。彼女は格納されているアレイオンの装甲の隙間に手を突っ込むと飛び上がり両足でフロントガラスを粉砕、運転手の頭を潰す。
車の速度とフィアの異常な脚力によって頭がトマトのように簡単に潰れる。ついでに助手席にいた奴にも脳天に二、三発撃ち込み、転がるようにしてジープから降りる。
「くそ、無茶しずきたか!」
両足で蹴ったためこちらのダメージを出来るだけ抑えたつもりだが右足首の感覚がなくなっている。折れてはないだろうが完全に捻挫した。
「フィアちゃん!」
後部座席から降りてきた敵を牽制しながら駆けつけたユキはフィアを後方へと引きずっていく。
「早く、掴まって!」
「すいません!」
ーー
「これは不味いかも」
「え、なに韻子ちゃん!」
操縦席でニーナの護衛をしていた韻子は機体の両面から姿を表すジープを見て呟く。屋根にはモリのような尖ったものが頭を覗かせている筒が設置されてる。
「両面のジープにハープーンが着いてるよ!」
韻子が叫んだのもつかの間。ハープーンが射出され翼とエンジンの間に絡まる。両面、二両ずつ。計四両の車がスピードを落とすと機体バランスが著しく悪くなる。
「あわわわわ!」
「ニーナ、大丈夫!?」
「飛行に問題ないけど離陸できないよ!」
無理矢理エンジン出力を上げるニーナ。さらっとやっているがこれは神ワザと呼べる芸当である。
「早くなんとかして!」
現在、走っている滑走路は宇宙からのスペースシャトル着陸場となっているため長さは通常の滑走路の3倍ほどある。通常の飛行機の離陸時時間が5分ほどなのでタイムリミットは15分。
止まると言う選択肢はない。そうすれば周りから袋叩きに会ってしまう。最悪でも襲撃してきている連中を排除しなければ止まれない。
「カーム!」
「おう!」
「アルドノアドライブとアレイオンの大型接着パーツを外せ。もしもの時は二つとも滑り下ろす!」
「マジか!」
「早くしろ!」
フィアの言葉にカームは驚きながらも作業に移る。その間にも両脇の人員用ハッチが壊され敵が入ってくる。更に後部ハッチからも二両か乗り上げてきた。
エンジンの基部が持たなかったら終わりだ。もしもの時を考えなくては…。フィアは業務用のテープで靴ごと足を固定するとライフルを手にする。
「無理しないでね。フィアちゃん」
「えぇ、ユキさんは笑顔の方が似合いますから」
「あぁー。フィアちゃんが男だったらなぁ…」
ライフルを構えて様子を伺うフィアを見てユキが嘆く。彼女が男だったらこれ以上ない優良物件であったのに。
(なおくんには少し勿体ない気がしてきた…)
「死ぬだろこれは!」
ユキもライフルを構えていると銃弾に晒された鞠戸が逃げてきた。流石に数で押されては無理だったようだ。
「どうする、フィア?」
「操縦室は死守するしかない。向こうはアルドノアドライブは壊したくないはずだ。落ち着いて減らしていくしかない」
両脇から来た敵を相手していた伊奈帆も逃げてきてフィアの周りにあらかた集合してきた。ライエもカームも作業を中断して身を隠している。
「向こうさんは約20ぐらいだな」
「しかも向こうも軍隊経験があると…大変ですね」
「軍人といっても崩れれば弱い。なんとかなる数字だ」
「たぶん、それはフィアだけだと思う」
月面基地でその身一つで地球軍の特殊作戦部隊を壊滅させたフィアと比べられても困る。
「この…」
その瞬間、ライエが敵の横腹をショットガンで吹き飛ばし交戦する。それを機に一斉に飛び出す伊奈帆たち、ヴァースとの戦争が始まって3年間文字通り修羅場を潜ってきた彼らに取って落ち着いて対処すればやれない相手ではなかった。
「なんとか…」
敵の数を大分減ったのを確認したライエはショットガンをリロードしていると横合いから剣が振るわれた。
「っ!」
咄嗟の判断で斬撃をライフルで受けるも弾かれ左腕に大きな切り傷を作る。素早く一歩退いて腰から拳銃を取り出し構える。
「貴様、火星人か!」
「……」
ライエ、独特の外見を見て襲撃犯は驚く。しばらくは使えないであろう左腕を庇いながらライエは敵を見つめる。相手はヴァースの特殊部隊の隊長であった。
「このタイミングでか!」
「フィア!」
「私に構うな。伊奈帆はライエの援護に迎え!」
地球軍の兵をタコ殴りにして脇のハッチから殴り落とす。すると敵は悲鳴を上げながら飛行機に引っ張られている車に牽かれ絶命する。
それを見届けたフィアは拳銃を取り出し構える。ハープーンのワイヤーを狙うが背後の殺気を感じて身をよじる。
「くそっ!」
「く!」
フィアを基地で襲った張本人。ミーシャは彼女を蹴り落とそうと蹴りを入れたが避けられ腹に重い一撃をかまされる。
フィアはミーシャの腰に吊るしてあったホルスターを拳銃ごと吹き飛ばすが彼女の回し蹴りで持っていた拳銃を飛ばされる。
「強いな、だがここで終わらせる!」
「貴方こそ、そんな傷だらけの体で大丈夫かしら!?」
そう言われ、フィアは一瞬だけ頭によぎる。最近、体が思うように動かないことが多々あった。最初は火星と地球の重力差によるものだと思っていたが…。
「いいハンデだろ」
「生意気ね」
互いにコンバットナイフを取り出して切り込み合う。フィアは一本、ミーシャは二本のナイフで殺りあうがフィアの足が上手く動かないのと気付かされた違和感のせいで上手く動けない。
「動きが鈍いわよ!」
「だろうな!」
ナイフを弾かれ額に刃を掠めるフィア。細かく飛びながら後退する彼女だが額から流れてきた血で視線が塞がれる。
「くっ!」
「怪我人の癖によくやったわ。でもこれで終わりよ」
二つの刃がフィアに迫り彼女は思わず言葉を失うのだった。
ーー
「ぬう!」
「くっ!」
ヴァース隊の隊長とライエは互いににらみ合いながら互いの獲物から火花を散らせる。剣とナイフが火花を散らせライエが力負けし徐々に態勢を低くさせる。
「貴様、火星の民でありながらなぜ地球に与する!」
「私は火星人が大嫌いだからよ!」
「主義者か…いや、違うな」
ただ気に入らないから皇族に賛同できないといった眼じゃない。なにか大きなことが起きて一度絶望した目だ。
「お前、裏切られたのか…」
「……」
ライエの事情を察した隊長。そんな彼の言葉を聞いたライエは眼光を強くさせる。その目に対して隊長は少しだけ狼狽える。
「お父さんはヴァースのために力を尽くした。なのにそれを笑って踏みにじった!」
「くっ!」
「ザーツバルムのせいで!」
「まさかお前、ウォルフの娘か!」
「え…」
隙を見て拳銃の引き金を引こうとしていたライエの耳に驚きの言葉が入ってきた。ライエの父の名はウォルフ・アリアーシュ、その男の言う通りの名だったからだ。
「そうか、話だけは聞いていたが…」
「あなた…」
「隊長!ぐはっ!」
「なに!?」
後部ハッチ。そこで鞠戸たちの攻撃を凌いでいたヴァース隊たちが黒マントに黒いフードを被った人物に次次と殺されていく。
その敵はレイピアを片手に相手の間接や致命箇所を的確に突いて倒していく。
「……」
「おのれ!」
隊長から振るわれる高速の斬撃。マントが切り裂かれその中からはヴァース帝国軍の紺色の制服があらわになる。
「お前もか!」
斬撃を受け止めたのは鞘、その鞘は杖のようなデザインを持つ特殊なものだった。言うなれば仕込み杖だ。
「私は幻の皇女の騎士。姫様のために消えていただく!」
すいません、今回も遅くなってしまいました。
2.5章もあと1、2話ほどで終わります。
最後まで読んで頂きありがとうございます。