アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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砂糖及びポンコツ、キャラ崩壊 警報発令中





第八十一星 進展 ―Progress―

「い、伊奈帆…」

 

 フィアの窮地に駆け付けたのは伊奈帆。彼は拳銃で二本のナイフを止めると落ちていたもう一丁の拳銃で反撃する。反射神経はあくまで一般的だがアナリティカルエンジンの恩恵で素早く攻撃をかわして隙を伺う。

 

(せめてあの女だけでも!)

 

 伊奈帆が駆けつけたと言うことは他のメンバーが殺られたという事だ。作戦は失敗、これは素早く離脱するのに限る。ミーシャは袖からデリンジャーを出して撃ち放つ。

 

迫り来る銃弾、それを横飛びで避けたフィアは地面に転がりながら飛ばされていた拳銃を拾い上げて撃ち返す。 

 

「っ!」

 

 放たれた銃弾は相手の頬を擦り背後のコンテナから火花を散らせる。戦況が不利だと察したミーシャは黒いロングコートを靡かせながらその場を後にした。 

 

「フィア!」

 

「伊奈帆、無事か?」

 

「こっちは何とか…その血は」

 

「ただの返り血だ」

 

 心配する伊奈帆を余所に首元に付着した返り血を袖で拭うフィア。彼女は酷く疲労しその場に座り込んだ。 

 

「いったいいつまで続くんだ…」

 

 硝煙と血のむせ返るような匂いが立ち込める空間で彼女は珍しく弱音を吐く。まだヴァースの部隊が残っている。これから相手するのは個人的に限界だった。

 

ーー

 

「ぬぁ!」

 

「くっ!」

 

 黒フードと隊長の戦いは一進一退で拮抗していた。しかし隊長は精神的に追い詰められている。後ろには友が残した娘、前には騎士と名乗る謎の女性。

 部下もほとんど虫の息である。ここで死ぬのも本望だが少し調べたいことが出来た。どのみち、アルドノアドライブの奪取は不可能だ。

 

「くっ、さらばだ娘よ!」

 

「なに、ぐは!」

 

 強力な蹴りを貰った黒フードは転がりその隙に隊長が逃げ出す。

 

「まって!」

 

 ライエの言葉も虚しく隊長は素早く飛行機から離脱するのだった。

 

ーー

 

「ライエ、無事か!?」

 

「フィア、伊奈帆…」

 

 伊奈帆に肩を貸してもらい駆けつけたフィアは黒フードを見て警戒する。

 

「何者だ…」

 

「…お久しぶりです。隊長」

 

「ケルラ…」

 

 月面基地からかなり立派な顔つきになったケルラの顔を見て笑みを溢すフィア。近くで暗躍していたのは薄々、気づいていたがまさか救援に駆けつけてくれるとは思わなかった。

 

「どうやって地球に降りたんだ?レムリナ姫は?」

 

「あの後、地球軍に保護されまして。現在は姫様の治療を地球で行っています」

 

「フィア、この子は?」

 

「私の部下だ」

 

 月面での別れはジュリたちから聞いていた。ヴァースのどこかに居ると思っていたがレムリナの立場からして地球に居た方が安全だろう。

 

「片付けましたかね」

 

「そうだな、取り敢えず重石になってる車をなんとかしねぇとな」

 

「う…」

 

 一気に静かになった機内を見渡していたユキと鞠戸。その後ろで無視の息の地球軍兵が懐にしまってあったスイッチを取り出す。

 

(せめて…道連れにしてやる!)

 

 持てる力を使ってスイッチを押す地球軍兵。それと同時にエンジンの近くで引きずられていた車が爆発した。

 

「なに、なに!?」

 

「どうしたのニーナ!」

 

 各所から警告が鳴り響く計器を操作しながら無理矢理エンジンを切る。

 

「4基中、3基のエンジンが吹き飛んだんだよぉ!」

 

「えぇ!」

 

「総員、機外退避ぃ!!」

 

 ニーナの叫び声が機内に響き渡る。爆発のせいで制御が効かず減速が出来ない。このままでは海に激突してしまう。

 

「私がアレイオンに乗るわ!」

 

「アルドノアドライブの固定を外せ!」

 

 素早くアレイオンを起動させたユキはアルドノアドライブが入っているコンテナに手を伸ばす。

 

「後方ハッチに車が3台ある。それで離脱するぞ!」

 

「たすけぇてぇ!」

 

「ひぃ!」

 

「ありがてぇ。キーはつけっぱなしだ」

 

 操縦室から逃げてきたニーナと韻子は急いで後方に移動すると車のエンジンをかけていた鞠戸の車に乗り込む。

 

「カーム!」

 

「全部外してある!」

 

「よし、伊奈帆。私たちも」

 

「うん…」

 

「隊長、後ろです!」

 

「なっ!」

 

 その瞬間、フィアと伊奈帆の後ろに積んであった積み荷が崩れ二人に襲いかかる。フィアは伊奈帆を突き飛ばして積み荷の下敷きになった。

 

「フィア!」

 

「隊長!」

 

「フィアちゃん!」

 

 その事にユキも気づいたがアルドノアドライブのコンテナを支えるので精一杯なアレイオンはユキの気持ちとは裏腹にそのまま滑り降りてしまう。

 

「早く離脱しろ!」

 

 下半身が完全に埋まったフィアは身動きが取れずに先に行くように促す。

 

「しかし隊長!」

 

「お前にはレムリナ姫がいるだろう!私のせいで責任を放棄するな!」

 

「っ!」

 

 ケルラは涙を溜めながら歯を食い縛ると身を翻す。

 

「すいません!」

 

「…それでいい。伊奈帆、お前も」

 

「それは無理だ」

 

 そう言って伊奈帆は彼女の手を握り座る。

 

「やめろ、伊奈帆。お前を巻き込みたくない!」

 

「もう僕は君を失いたくない」

 

「伊奈帆…」

 

 伊奈帆の強い目に見つめられ言葉を詰まらせるフィアは伊奈帆の手を強く握り返す。

 

「死んでも離さないからな…」

 

「うん…」

 

ーー

 

「何してるんですか。離脱しますよ!」

 

「……」

 

 後方で呆然としているライエを見つけたケルラは彼女を引っ張って乗ってきたバイクに乗せ離脱する。

 

「降りるぞ!」

 

「待ってください。まだフィアと伊奈帆が!」

 

 バイクが輸送機から飛び出したのを見てアクセルを踏む。鞠戸、乗っていた韻子、カーム、ニーナが叫ぶが鞠戸は悔しい思いで輸送機から降りる。

 

「伊奈帆、フィア!」

 

 韻子が叫ぶ中。輸送機は滑走路を走り終え、海に叩きつけられるのだった。

 

ーーーー

 

「っ!」

 

 一瞬だけ気絶していた伊奈帆は奇跡的に助かり水中で目を覚ます。すると横には気絶しているフィアがどんどん沈んでいく。

 

(フィア!)

 

 伊奈帆は急いで彼女を掴むと海面に引っ張り上げる。運良く目の前に人工の小さな岸を見つけ全身が軋む中、フィアを引き揚げた。

 

「げほっ、げほっ!」

 

 肺に入った水を吐き出した伊奈帆はピクリともしないフィアの服を剥いで心臓マッサージをする。マッサージを一通り行うと人口呼吸、それを何度も繰り返す。そして四回目の人口呼吸の際。

 

「う、がはっ!ごぽっ!」

 

 フィアは息を吹き返し体内に侵入した水を吐き出す。水を出し終えた彼女は数ミリ先にいる伊奈帆の顔を朧気ながら見つめる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「フィア…」

 

 様々な感情や思いが混濁し互いを見つめ、そして互いに意識することなく口を合わせた。俗に言う接吻と言うものだ。

 

 何故したか、実に無粋な疑問だが本人たちからしても分からない。むしろ理由などない、生と死の狭間から生まれる生存本能?どれを言ってもとりとめのないものだ。

 

 ただ言えるのはこの瞬間は二人の心が真の意味で一緒にあったと言うことだろう。

 

 短くも長いような時間、二人は顔を離し見つめ合う。

 

「ん…」

 

「あ…」

 

 そして二人は自分達が起こした行動を省み、言葉を失ってしまう。

 

「あ、あぁぁぁぁぁ!?」

 

 もはや言語など発せるわけがなく二人は離れると二者二様の反応を見せる。その場で振り返り、両手で顔を隠す伊奈帆と顔を真っ赤にしてその場で悶えるフィア。

 

(私は…)

 

(僕は…)

 

((何てことをしたんだ!!))

 

 接吻がどのような意味を待つかフィアでも知っている。

 

(それを、私は躊躇いもなくぅ!)

 

 右足首、そして左足を折って動けないフィアであるが物凄い速度でコロコロ転がっている。

 

(どうすればいいの!?)

 

 海に落ちた二人を探すために駆けつけていたユキは実の弟の逢い引きを目撃してしまい彼女は身を隠しながら目の前に広がるシュールな光景に呆然としていた。

 

「伊奈帆…」

 

 そんな光景を繰り広げていたフィアは突然停止するとムクリと上半身を上げて伊奈帆の方に顔を向ける。

 

「な…に…?」

 

 彼女の声に対し顔を向けた伊奈帆は思わず言葉を失う。

 顔を真っ赤にしてワナワナと震える彼女の姿などもう二度と見られないだろう。

 

「子供が出来たらどうしよう…」

 

「「がはっ!」」

 

「ど、どうした!?」

 

 伊奈帆は鼻血をユキは吐血し倒れる。

 

(もうやだこの二人…)

 

 ユキはやけに晴れた空を眺めながら頭の中でそう呟くのだった。

 

 

 




もうやだこの二人…
早くくっつかないかなっと思いつつ投稿。

と言うことで重要そうな敵二人を取り逃しつつも戦闘が終了。次回は軽くまとめを入れて第3章の予告も同時に投稿していきたいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!


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