アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第八十四星 役者 ーactorー

 

 

「伊奈帆」

 

「ライエ、どうしたの?」

 

「それはこっちのセリフよ。もう何日も寝てないじゃない、ユキさんも心配してたよ」

 

「そうか、もう何日も経ってたんだね」

 

 自身の執務室に籠りっきりであった伊奈帆は息を吐きながら椅子にもたれかかる。

 ライエはそれをあきれながら見ると彼に簡易食を渡す。

 

「なにか分かった?」

 

「まぁね、久しぶりに左目が欲しくなったよ」

 

「次は死ぬわよ」

 

「分かってる」

 

 ライエは伊奈帆から渡された資料に目を通す。

 何日も徹夜しただけあってすごい量だ、彼女は伊奈帆を風呂に叩き込むと資料を熟読する。

 

※噛み砕いて書いてます

 

 DNA結果 フィアである確率99.8% ただし一部の血痕には確率83.6%の不可解な血も混在していたもの。

 またダントリウムも検出され拉致された可能性が極めて高い。

 

 さらに戦闘の形跡からすると敵対者は素手で攻撃を行ったものと推定、少なくともフィアと互角に戦う技量の持ち主と思慮される。

 

 状況から推察するに襲撃したのは火星側である可能性が高いと考えれる。

 フィアは火星側の人間ではあるが非交戦派の筆頭であり、彼女がこれまで地球軍として活躍した功績を考えて地球側にとって彼女の存在はメリットの方が大きい。

 対してヴァースの交戦派にとっては彼女の存在はもっとも警戒すべき人物である。

 さらに地球で行方が分からなくなっている以上、それが理由で戦端が開かれる可能性がある。

 一ヶ月後には再建されたハイパーゲートの開通式が行われる。

 それも関係している可能性もあり。

 

「読んだ?」

 

「軽くは、聞いても良いかしら?」

 

「DNAでしょ?」

 

「えぇ」

 

 83.6%と言う数字が解せない。

 

「僕もこれが分からなくて止まってる。結局、推測の域は出なかった」

 

「なに?」

 

「それは…」

 

ーーーー

 

「うっ…」

 

「ふっ、帝国最強の騎士も墜ちたものだな」

 

 地球の某所、そこではわき腹に大きな杭を打ち付けられ壁に磔にされたフィアの姿があった。

 彼女は襲いかかる激痛に悶えながらも笑みを浮かべる敵対者を睨み付ける。

 

「まだまだ元気そうだな。恨むなよ、手錠や縄なんて中途半端なものじゃあんたはすぐ抜け出す。これしか方法がないんだよ」

 

 しっかりと止血され死なないように器用に打ち付けられた杭はフィアに激痛のみを与える。

 常人なら半日も持たない激痛を彼女は既に3日も耐えていた。

 

「さぁ、お互いに楽になろうぜ。ロイヤルルームの暗証番号だよ」

 

 ロイヤルルーム、ヴァース帝国の王宮にある皇室に関わりのある者しか入れない空間。

 それがロイヤルルーム、それこを出入りできる数少ない人間の一人がフィアであった。

 

「…」

 

「おいおい…」

 

 無言で唾を吐きかけられた敵対者はやれやれと言った感じで話すと彼女のわき腹に突き刺さった杭を動かす。

 

「ああぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ご立派な騎士道だな、なら一旦死ねや!」

 

 激痛に叫ぶ彼女を見て笑う敵対者は意識を失うまでその杭を動かし続けたのだった。

 

ーー

 

「フィアが行方不明に?」

 

「はい、地球からの連絡でそのようにと」

 

「…そうですか」

 

 ヴァース帝国王宮、そこでフィア行方不明の情報を聞いたアセイラムであったが静かに答える。

 本来なら心配になって慌てふためくところであるがこの4年で彼女も立派な女王としての態度を身に付けていた。

 

「隊長…」

 

 側にいたリアも表情こそ浮かべないが心配そうな声色をしていた。

 

「地球側はどのような対応を」

 

「はっ、既に捜索と調査が行われております。あちらにとってもエルスート卿は大切な客将、無下にいたすことはありません」

 

 玉座においてアセイラムに報告しているのはカーティアス伯爵、彼は四年前、フィアを地球送りにした張本人だが文官としての能力が高く、こうして地球との交渉約としての地位を築いていた。

 

「各軌道騎士に通達、軽挙妄動は慎むようにと。こちらの指示なしで動く者は反逆者として処理すると伝えなさい」

 

「承知しました、それと私の息子が地球にてエルスート卿の捜索にあたっていおります。今後はこちらにも情報を回すように伝えておきましょう」

 

「エリスですか…頼みます」

 

 この状況は自身が経験したことと酷似している。

 第二次惑星間戦争の引き金であるアセイラム暗殺事件、この再来だけは決して許してはならない。

 

(やはり隊長に似てきたなぁ)

 

 普段生活では穏やかな昔と変わらない彼女だがいざ玉座にいるとしっかりとした威厳と口調をもった女王になる。

 それを見ているとどことなくフィアを連想させられる。

 そんな感想をジュリは抱きながら静かに玉座から姿を消すのだった。

 

「カーティアス伯爵は信用なりませんがエリスなら大丈夫でしょう」

 

 カーティアスが玉座から去った後のリアの発言に全員が驚いた表情を見せる。

 

「珍しいな、リアからそんな言葉が出るなんて」

 

 ネールの言葉に全員が頷く。

 

「エリスは私ほどではないが同志だ…」

 

 リアとは通称ヤンデレズストーカー。

 フィアの心から愛しておりその変態的もとい常軌を逸した行為で有名な人物なのだ。(腕はめちゃくちゃいいのが腹立つ)

 

「……」

 

 シエテは思わず遠い目をしてネールも思わず言葉を失う。

 

「ファンサイトでもあんのか?」

 

「あるが?」

 

「「あんのかよ!」」

 

ーー

 

「現代において一人の人間を運び出すのは難しい。痕跡を残さなくても逆にそれがヒントになったりすることもあります」

 

 新芦原市の駐車場、その車内で端末を操作しながら考えを巡らせる。

 中性的な顔立ち、一見すれば女の子にも見えるその人物は立派な男性だ。

 深みのある蒼いショートヘアーと小さな背丈も彼の中性的な見た目を引き立たせる。

 

「やはり現代は情報が全てと言っても過言ではありませんね」

 

 端末の操作を終えた彼は車のエンジンを着ける。

 

「貴方には負けませんよ、界塚伊奈帆さん」

 

 

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