fate/to the night material which dies,and goes   作:相馬エンジェル梅太郎

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どうも!3話投稿します!
相馬エンジェル梅太郎です!
最近アメリカに行きたい欲が体中から滲み出てどうしようもない相馬エンジェル梅太郎です!(映画の影響)


召喚

 不動。不機嫌そうな表情で俺を見る少女は不動だった。彼女はこの星の大地が全て崩れ落ちようとも、このままあり続けるのでないかと思えてしまう程に不動だった。そう感じる程の仁王立ち。

「何だよ、ラブレターの相手お前かよ」

「何よ?私じゃ不満なの?」

より一層不満そうな表情を浮かべる少女は、遠坂凛。この学園のアイドルであり、男子生徒ならば一度は憧れる少女である。勿論俺も可愛いと思った。声を掛けた。その結果がこれである。

「不満じゃないけど、凛からだとは思わなかったからさ」

「そう、ならいいけど」

クスリと笑い俺の胸に倒れこむような体制になる。彼女を抱きとめるため、自然と抱きしめる体制になってしまう。

「温かい」

「ああ。そうだな」

「煙草臭い」

「そう?そんなに匂う?」

俺の胸の中で凛が静かに、頭を縦に振る。穏やかな時間が流れる。相手も分からないラブレターを貰って、俺は内心動揺していたのだろう。自分が上手くやれるのか不安だったのだ。また相手の気持ちを踏みにじってしまうのではないかと。

目を瞑る。あの時。俺は目の前で泣き崩れる子に何をしてしまったのだろう。心の中がぐちゃぐちゃになり、相手を泣かせた自分が泣きたくなる程辛かった。それ以来だ。人から好意を向けられるのは少し、苦手だ。

冷たい風が頬を撫でる。凛はより一層体を密着させる。

「何を考えていたの?」

「いや。何も」

隠したい訳ではない。言いたくない訳ではない。けれど、これを口にすることで凛を悲しませるのは本意ではない。だから黙る。凛は全てを見抜いたかのように微笑む。

「士郎はやっぱり優しい」

胸から僅かに顔を上げる。高揚したように、赤く染まる頬。視線は強く、心の全てを見透かされているよう。この少女にはこういう危うさがあった。けれど、俺はこの危うさに魅了された。

「好きよ。とっても」

背に回されていた手が首に上り、後頭部まで上る。ゆっくり押し出される。顔が近くなる。吐息を確認できる程に。唇同士が触れ合う寸前、目が合った。

「好きよ。士郎」

「俺もだよ。凛」

溶け合うように、重なり合った。寒空の下。心だけが温かく、彼女の存在を強くかみしめていた。

 

 

チャイムが鳴り、凛と離れた。高揚した頬を隠しもせずに、悪戯っ子のように笑っていた。

「時間ね」

「ああ。サボるか?」

彼女を抱きしめる力を少しだけ強める。凛は嬉しそうに笑うが、首を横に振る。

「ううん。魅力的な提案だけど、辞めとくわ」

俺の拘束から逃れるように少しずつ離れる。彼女は目先の幸福よりも、先の大きな幸福のため今を犠牲に出来る人間だった。そこも彼女の魅力に他ならない。

「そうか。分かった」

凛がこちらに背を向け、小走りで屋上から去ろうとする。背が消える瞬間。こちらを向き、止まる。ニコリと笑って言ってやる。

「好きだよ。凛。授業頑張って」

「うん。私も好きよ。士郎も気が向いたら授業行きなさいよ」

昼休みの間に何度も交し合った好きの言葉。何度発しても、何度聞いても、感じる温かさは本物だった。

人の消えた屋上は広く、少し寂しい。吹き付ける風に思わず目を瞑る。ここから見渡す冬木の景色は好きだ。人が生き、瞬間、瞬間を精一杯に生きている。そんな人が大勢いる。それを見ることの出来るこの場所が好きだ。名残惜しいが戻ろう。凛が頑張っているのだ、俺も頑張ろう。一度空を見て、手を翳し、力強く握った。

 

 

教室に戻ると静けさに包めれていた教室が、僅かに緩む。皆が口々に俺をからかうようなことを言い、皆が笑う。いい空気だった。教卓に立つ男はそれを無視し、俺を注視する。

「衛宮。どこに行っていた?遅刻だぞ」

「すみません。お腹が痛くてトイレに行っていました」

目の前に立つ男、葛木宗一郎は俺の言葉を聞き、何やら書いているようだった。感情の薄い顔。おおよそこの人間は人間的な感情が廃絶されたのではないか。素直にそう感じてしまう程、彼は感情を表さない人間だった。だが、教師としての人気は相当な物がある。皆、学年が上がる事に葛木の評価が上がる。謎の教師だった。教師としては俺も好感を持てる。真面目であり、紳士的であり、いい意味で実直。だが、疑問もあった。慎二の方を向く。慎二はいつになく鋭い目つきでこちらを凝視していた。授業に集中しているのではない。葛木本人の動向に集中しているのだ。葛木は気づかない。否、無視しているのだ。

「次からは気を付けるように」

こちらに向けられる視線。声は遠く、自身の意識は目の前の男の排除に向ける。視線が重なる。意識より早く、拳が飛んだ。鍛え上げた鉛のような拳。衛宮士郎の放てる最速のスピードで放った一撃。葛木の顔を潰さんとする一撃は、死角から飛んできた一撃によって妨げられる。意識の戦いは呆気無く終焉を迎えた。

「分かりました」

何事も無かったかのように、礼を言い席に戻る。教室の声は徐々に静まる。僅かな時間。行われた俺と葛木の戦いを理解した者は。

「珍しい。士郎が読み合いで負けるなんて」

慎二しかいない。口調はふざけた口調が残っているが、表情は真剣。ふざけた回答を言える空気ではない。教室には葛木の声と、生徒のノートに走るシャーペンの音。ただそれだけ。

「授業終わりに話すよ」

「ああ。分かった」

納得したように頷き、会話を終える。窓に映る自分は奇妙な程笑っていた。

 

 

 

授業が終わり、残す授業はあと1時間。天を見渡す、屋上に俺達は居た。日は徐々に落ち始め、夕暮れが訪れる。家庭に子供が帰り始め、幼いわが子との時間を楽しむ人々が大勢いる。幸せな時間。それに反するように、屋上の空気は険しい物だった。肌を切るような空気が広がり、互いに口を開こうとしない。だが、始まりは唐突に。

「士郎、葛木はどうだった?」

慎二が告げた。煙草を吸いながら、伺うような表情を浮かべていた。

「ああ。中々の奴だ」

「士郎がそう言うんなら、相当だな」

思ったことを正直に伝える。自分が人を中々と評価するのは久しい気がした。慎二も苦笑いを隠そうともせずに言う。だが、その表情に憂いはない。微かな喜びすら感じられる。

「だが、妙だった」

「何が?」

「葛木の攻撃が」

顎を摩る。痛みなど感じない。感じるはずもない。実際に殴り合った訳ではないのだから。

読み合い。武術、または格闘技など様々な物で達人と呼ばれる人間同士が可能にする、意識の中での探り合い。僅かな動きで、相手の動きを予測し意識の中で戦う。それを葛木は可能にしたのだ。故に、達人。

間を置く。慎二に伝える言葉を自身の中から探す。

「奴の攻撃は初見では脅威になる気がする。でも、2度目。または複数回戦えば確実に勝てる自信があるんだ」

自分で言っていて可笑しな気分になる。意識の中の戦いだが、俺は一撃で葛木の前に沈んだのだ。それをもう一度戦えば、勝てるなどと言う。それは根拠のない自信でしかない。なのに、絶対的な確信を含んでいるのだ。

慎二は難しい顔をしている。それを見て、何となく閃いた。

「アイツの技は特異だ。その特異性が特化しているのは、アイツの技がおそらく初見の相手を屈服させるのに特化しているんだ」

つまり、対初見相手必勝術。それが奴の武術の神髄であり、絶対の強みだった。

「なら、士郎は次は勝てるのか?」

慎二が尋ねる。自身の望んでいない回答は必要ないとでも言いたげな表情で。回答は決まっている。

「もちろん」

絶対の勝利を俺はここに誓おう。葛木という強敵がこの地にいる。それを祭典のためだと思うのは当然のことだ。

「葛城はマスターか」

「分からない。けど、強者がいるのは事実だ。この平和的な土地に居るべき人間が持つ強さではない。所詮は推測だ。マスターの可能性もあるが、違う可能性だってある。けど、俺達はアイツが強者であることを忘れてはならない。ただそれだけだ」

「そうか。士郎らしい考え方だ」

慎二が笑う。つられて俺も笑う。

「次の時間はサボるか」

「賛成。僕もそう言おうと思ってた」

今はこの時間。安らかに流れる時間に身を任せよう。穏やかな心のままに俺達は屋上に立っていた。

 

 

放課後、一人の青年が大きな洋風の家の前に立っていた。豪邸と言っても容易い程の大きさだが、屋敷全体を覆う不気味さが異常に感じられる家だった。その前に立つ青年は藤村慎二だった。躊躇いも無く、敷地に入る。彼が踏みしめる足音以外、音という音が存在しない。ドアを開ければ、不気味さはより一層濃くなる。無人の家は薄暗い暗闇に包まれ、不気味さを助長している。だが、彼は微笑む。

アイツらがいた時の方が不気味だったと。

人間が住ない家よりも、人間の住む家の方が不気味。元の住人は薄暗い暗闇よりも、不気味で陰湿な人間だったのだろうか。おおよそ人の存在を感じることの出来ない家の中を進む。彼は地下に下りた。石作りの部屋は凄まじいまでの腐敗臭が広がっていた。常人ならば、呼吸すら出来ずに胃の内容物を吐き出すに違いない。その空間に彼は立っていた。生命の維持を犯さんとする程の異臭の中に彼は立っていた。瞳には憂いを映し、空虚な空間を通して何かを見ているようだった。幾分かの時が経ち、彼は部屋を後にする。瞳に憂いはもう感じられない。音の響く、無音の部屋。そこに一つの声が木霊した。桜、青年の口から紡がれた言葉はこれだけだった。

 

 

放課後、別れた慎二より先に家に着いた。大きな屋敷は一人だと広すぎて、出かけた切嗣が早く帰って来るのを心待ちにしていた幼少期を思い出す。居間に向かわず、久しく入らなかった切嗣の部屋に入る。少し、埃っぽい部屋にそれはあった。仏壇。不器用な笑みを浮かべる切嗣は、昔俺が無理矢理笑わせて撮った写真だ。切嗣の笑顔は好きだった。だが、一緒にいる時間が増えるのに連れて、彼の笑顔には憂いが含まれ、自身を自嘲しているように笑うことが多いことに気が付いた。それに気が付いた時俺は、彼の笑みは好きじゃ無くなった。子供ながらに努力し、必死に笑顔を作らせようと努力した。その中の1枚。仏壇の前に正座し、線香を上げる。小さい鐘を鳴らし、手を合わせ祈る。彼に伝えたいこと。感じたこと。直したいと思ったこと。全てを曝け出す。姿勢を崩す、座布団の上に胡坐をかく。差し込む夕日が頬を染める。

「俺は上手くやれているかな?」

俺が弱音を吐くのはここだけ。この空間。今は父に甘える子供のように弱音を吐く。切嗣を心配させない程度に。

「爺さん。俺はやるよ。今晩」

自身の言葉に心臓が僅かに、強く鼓動する。緊張しているのだろう。覚悟はしていても、行動に移すのは相応の恐怖心がある。けれど、願ったのだ。ならば、行動しなければ。災害の時、救いを願い声に俺は心の中でそう反論したのだから。

玄関の戸が開く音がした。慎二が帰って来たのだろう。

「じゃあね、爺さん。俺は頑張るよ」

次にこの部屋に入るのはいつだろう。分からない。けれど、戻らない。行こう。戦いの果てに。

襖を閉める直前。窓の外の夕日を直視した。

夜は近い。そう感じた。

 

夜が更けた。肌を刺すような風が冬木を覆う。満点の月を隠す雲は無く、生きる全ての生命を見守るように、月は輝いている。土蔵の中に入る。山積したガラクタの山を慎二と退ける。

「いよいよだな、士郎」

「ああ。そうだな」

支配していた無言が一時的に解かれる。けれど、会話は長くは続かない。心待ちにした瞬間が目の前に迫っているのだ。互いに柄にもなく緊張している。ガラクタを全て退かすと、削られるように描かれた魔方陣が姿を現した。

「僕は外で待ってる」

「ああ。そうしてくれ」

慎二が外に出る。土蔵の重い扉を閉める時。

「頑張れよ」

優しい言葉を残して行った。大きな音を立て、扉が閉まる。神々しく輝いていた月の輝きもこの闇を浸食することは出来ない。魔方陣の前に立つ。覚悟は出来ている。この戦いは衛宮士郎が、衛宮士郎になるための戦いだ。故に、敗戦は許されない。負ければ、俺は衛宮士郎という皮が剥がれて別の何かに成り下がる。それを容認することは出来ない。断じて。大きく息を吐く、暗闇の中光る物などない。闇には慣れている。さあ。始めよう。祭典の幕開けだ。勝利する。力はある。お腹を撫でる。召喚されるサーヴァントは俺が切嗣の言葉の意味。その全てを理解出来ていたのなら。召喚されるサーヴァントは最優に他ならない。

「闇と光。礎に石と契約の大公。師には我が父であり、我が師の衛宮切嗣。燃え盛る巨大な火の壁に一人。四方の門を開け、全ての邪悪を招き入れ、王国にてこれを廃絶してみせよう。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

体が燃える。自己の想いを刻み、座に鎮座する者を呼び出す。想いと触媒によって英霊は召喚を受け入れる。

同調(トレース・オン)――――――――――告げる。――――告げる。汝の身は我の物。汝の剣、汝の意志すら我の物。我の意志に従い、全ての想いを捧げろ。さすれば、汝の望みは聖杯によって叶えられる」

もう少し。もう少し。体が熱く、力が回る。座に鎮座する者に、衛宮士郎が飲み込まれる。常軌を逸した力。それを呼び出す。もう少しだ。

「誓いは此処に。我は常世全ての意志を持つ者。我は常世全ての意志を理解する者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

目を覆うほどの白銀。溢れだす魔力。今、目前に立つ神秘の時代に君臨した偉大なる王。

「問おう。貴方が、私のマスターか」

何よりも美しく、何よりも強い少女。アーサー王は真っ直ぐな瞳で、契約の言葉を発した。




英霊召喚の部分はオリジナルです。
専門家の指導の元行っています。
幼い子供が英霊を召喚するときは、保護者の同伴の元召喚してください。


ちなみに召喚の呪文はこの作品の士郎君の想いが読み取れる部分でもあります。
色々判明してくると思うのでこれからもよろしくお願いします!
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