fate/to the night material which dies,and goes   作:相馬エンジェル梅太郎

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弓兵

 

 

 「ねえ士郎」

先程の宣戦布告がありながらも、凛の対応は普段と変わらない。

もちろん俺も変えるつもりはない。

甘えかもしれないが、これまで自分が培ってきた物を全て壊そうとは思えない。

故に、凛との関係も壊したくない。

「どうした?」

「さっき今日サーヴァントを召喚するって言ったでしょ?」

「ああ」

言いたいことが何となく分かった気がする。だが、それを伝えるのは凛だ。

伝えたいことは自分の口で言わなければならない。俺はそう思っている。それを凛にも求めている。だから分かっていても、凛の口から聞きたかった。

「今日サーヴァントの召喚に立ち会って欲しい」

「ああ。勿論だ」

それは好都合だ。

「それじゃあ、今日の2時前に私の家に来て」

「ああ。分かった」

深夜2時。その時間が凛のベストタイムだということは、既に知っている。

残る席はあと1つ。3騎士のアーチャーに他ならない。強敵であることは最早疑う余地すらない。

だが、裏を返せば俺達は心強い味方を手にしたと言ってもいい。

凛と共に屋上を後にする。扉を開けるとそこに立っていたのは。

「セイバー」

「あ」

盗み聞きをしていたセイバーと慎二だった。

彼女は悪戯がばれた子供のような表情をしている。あたふたしていて、彼女があの騎士王だとは想像出来ない。

慎二はそんなセイバーを見て、面白がっている。

「シロウ!これは、その、違うのです!」

一体何が違うのだろうか。そんな疑問を胸の中に秘め、大きくため息を一つ。

「まあ、別にいいけどさ」

セイバーは露骨に安心したような表情になり、俺の後ろを注視する。

「そちらは?」

「ああ。遠坂凛だ。今回の聖杯戦争で同盟を組むことになった」

セイバーの目がすっと細められる。歴戦の騎士の気迫はそれだけで凄まじく、凛は一瞬怯えるように自身の体を抱いた。

慎二には既に相談していたため、興味がなさそうに大きな欠伸をしている。

「分かりました。シロウがそう言うのであれば私に異存はありません」

「そうか」

この答えは既に“理解”していたが、彼女の口から聞けるのは嬉しかった。

「シロウのサーヴァントのセイバーです」

「ええ。知ってるわ。同盟の遠坂凛よ。今晩サーヴァントを召喚する」

二人は軽い自己紹介をし、硬い握手を結んだ。

「凛。悪いが彼女の真名を教えることは出来ない」

「ええ。それくらい分かってるわ」

行きに比べて随分大所帯になったが、教室に向かう。セイバーと凛は同性ということもあり、直ぐに互いを認め合う関係になることは“知っている”。

「そうだ。凛」

足を止め、後ろを振り返る。凛はこちらを真っ直ぐな瞳で見つめている。

「残るサーヴァントは何だって言われた?」

「その話か。残る席は一つよ。それは」

“アーチャー”

「アーチャーよ」

「そうか。分かった」

嘘はついていない。最も凛が俺に嘘をつくようなことは無いが、確認するのは当然のことだ。

「それじゃあ、私はここで」

「ああ。それじゃあ2時に」

「ええ。分かってるわ」

優雅に微笑み、教室に消える凛。その姿をずっと見ていた。

「それじゃあ俺達も行こうか」

「はい」

歩みを再び進める。幕開けの時は近い。

 

 

 夕暮れが終わりを迎え、星が煌めき夜風が肌を突き刺す。

時刻は2時になる直前。俺達は凛の洋館に赴いていた。

「どうぞ。上がって」

「ありがとう」

この家には何度も上がったことがあるが、今晩に限っては緊張感があるで違う。

外よりも冷えた感覚が体を襲う。誰も言葉を口にせず、ただ時が進んで行く。

「俺達はここにいるよ」

「ええ。分かったわ」

リビングのソファーに腰かる。地下の工房に繋がる扉を開ける凛に言葉を投げかけた。

「凛。お前はあの時のお前とは違うからな」

俺は知っている。この言葉を俺が投げかけてやるのが、凛にとって一番の応援になることを。

「ありがとう。それじゃあ行ってくる」

笑みは堅かったが、それでも気丈に振る舞っている。大丈夫だと確信した。

秒針の音のみが木霊する。静寂に包まれ、地下から凛の魔力が感じられる。

心臓が知らずに、早鐘を打つ。

彼女の魔力が静まった瞬間。

「サーヴァントが来ます!」

上空に圧倒的な魔力を感じた。

思考は既に切り替わり、ソファーから飛び去る。

セイバーは俺と慎二を守るように、前に立つ。

慎二は非常用に持ってきたサブマシンガンを手に取っていた。

俺も既に“投影”の設計は終わっている。魔力を込めれば次の瞬間には双剣が表れる。

そして、屋根を突き破るようにしてソイツは降り立った。

赤い外装。褐色の肌。白髪の男。優雅に座るソイツは。

「随分粗末な召喚だな」

己のマスターを卑下するよに、笑っていた。

「で、お前達は私の敵か?」

値踏みするような表情。それが癇に障った。

歯を食いしばり、奥歯が砕けそうになる。そして1枚の扉が突き破られた。

「あーもう!何なのよ!」

それはこちらが言いたい。だが、凛は白髪の男を凝視している。

「ふむ。どうやら君が私のマスターようだな」

「ええ。そうよ。私があなたのマスターよ」

不敵な笑みを浮かべて、サーヴァントを見返す。

「そうか。ならばこの状況を説明して貰いたいな」

こうして全員がソファーに座り、戦略会議をすることになった。

 

 

 

 「ふむ。同盟か」

「ええ。そうよ。これはもう決定事項なの」

正面からアーチャーを見る。久しぶりの感覚に自分自身が戸惑う。

腹の底が沸騰するような苛立ち。血が冷えるような嫌悪感。

今までの人生でそう無かった感覚。

「では紹介して貰おうか?マスターの同盟相手を」

皮肉の笑みを浮かべて深くソファーに腰かける。その態度すらも苛立ちを生む。

「分かってるわ。それじゃあまず」

凛が俺を紹介しようとする。それを切り上げるように、声を発した。

「お前気に入らないな」

「え?」

戸惑いの声は誰のものだっただろう。凛は驚きを隠せない表情。セイバーは目を大きく見開き、こちらも見ている。慎二は呆れたように頭を抱えていた。

だが、奴は違う。奴は興味深そうな表情を浮かべながら、笑い、言った。

「奇遇だな。私も同感だ。私もお前が気に入らない」

これには慎二も驚いたようだった。肩を震わせ、アーチャーを見ている。

「アーチャー!何てことを!」

セイバーが立ち上がり、大声を張り上げる。

そんな彼女を見て、アーチャーは少し目を見開き、悲しむように視線を僅かに下げた。

「セイバー」

声と視線で彼女を静止する。セイバーは不満を滲ませながら、再び座った。

「まあいい。とりあえずは同盟だ。これは凛が言ったように決定事項だ」

「らしいな。まあ最も了承したわけではないがな」

「ああ。俺もお前みたいなサーヴァントが召喚されるって分かったら別の方法を取りたかったよ」

「同感だ」

言葉を交わせば、交わすほど苛立ちが大きくなる。

「だが、凛のためだ。同盟は続行だ。だが」

奴は目を細めている。これから続く言葉を探っている。そうすることは“分かっている”。

「最後に俺達が残ったら凛は無傷のままで、お前だけは必ず殺す」

「ふ。いいだろう。だが、忘れるな。それは私とて同じ考えだ」

「気にいらねえ奴だ」

「まったくだ」

大きくため息を吐く。自分でも驚くほど見っともないことを言っている自覚はある。だが、抑えようもないこともある。

「セイバーのサーヴァントのマスター。衛宮士郎だ」

「ふむ。衛宮士郎か」

“俺の名前”を口にし、一度下を見る。そして。

「ますます気に入らないな」

声に僅かな怒気と侮蔑を含み、呟いた。今までよりも僅かに苛立ちを感じさせる声だった。

冬の夜。新たな仲間が表れるはずの夜。

俺は赤い外装の男の一端に触れた気がした。






更新サボってごめんなさい。
反省してます。

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